僕と水泳とお嬢様   作:京勇樹

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露呈

それが起きたのは、雅と同棲を始めて一週間程経ったある日だった

明久が料理を作っていた時、雅の携帯が鳴った

 

「はい……あら、マネージャー。どうしたのかしら? え? テレビ?」

 

雅はそう会話しながら、食卓の上に有ったチャンネルでテレビを点けた

そして、固まった

 

「雅、どうしたの?」

 

料理を盛った皿を持って明久が居間に来ると、雅はテレビ画面を見て固まっていた

そのことを不思議に思って問い掛けたが、雅は答えなかった

明久は不思議そうに首を傾げながらも、雅の視線を追ってテレビを見た

そこには、黒い線で目元が隠されていたが、雅の写真が映されていた

その内容は

 

《あの御嬢様タレントに、熱愛発覚!? お相手はとある学校の学生か!?》

 

だった

その写真には、後ろ姿で分かりづらいが明久だった

写真から察するに、どうやら買い物帰りのようだ

 

「つっ……不味いわね……」

 

「どうしよう……」

 

と二人が呟いた直後、ドアが叩かれながら

 

『NOKの者です! 高鷲さん! 取材をお願いします!』

 

『週間文柊です! 出てきてもらってよろしいですか!?』

 

と声が聞こえた

どうやら、マスコミが来たらしい

しかも、近くにかなり居るようだ

明久が窓から外を見たら、脚立に登っているのも見える

どうしたらいいか分からず、固まっていると

 

『うわわわわ!?』

 

『危ねぇ!?』

 

『逃げろ!!』

 

と外が騒がしくなった

そして数瞬後、鍵が開いて

 

「明久、雅ちゃん! 最低限の荷物を持ってきなさい!」

 

と女性の声が聞こえた

明久が見ると、居たのは明久の母親

吉井明恵(よしいあきえ)だった

 

「母さん!?」

 

「急いで!」

 

明久は雅に声をかけて最低限の荷物を持たせると、一緒に外に出た

すると、すぐ前の道路にワンボックスが一台止まっていた

周りを見ると記者が転んでいたり、脚立に潰れたりしている

それを尻目に、明久と雅は車に乗り込んだ

そして、明恵が運転席に乗り込んで

 

「出すわよ! しっかり捕まってなさい!」

 

と言うと、アクセルを踏み込んだ

余りの加速に少しの間シートに押し付けられたが、少しすると速度が落ちた

それを見計らって

 

「母さん、早かったね」

 

と声を掛けた

明恵は運転しながら

 

「まー、ちょっとコネが有ってね。それで知ったのよ」

 

と答えた

すると、バックミラーで後ろを見ながら

 

「雅ちゃん。所属事務所には連絡してあるから、今から我が家に行くわよ」

 

と言った

 

「え、いいんですか?」

 

「いいわよ? 建宮君とも話し付けたしね」

 

「……社長とお知り合いで?」

 

「学友よ」

 

雅からの問い掛けに、明恵はそう答えた

そして、ある道を走っていると

 

「母さん、まさか……」

 

「ええ……まだ着けてきてる奴が居るわね……大丈夫よ。手は打ってあるから」

 

明恵のその言葉を聞いて、明久は後ろを見た

後ろには、バイクが見えた

 

「バイクか……」

 

「明久、座ってないと倒れるわよ」

 

明恵がそう言った直後、車が曲がって明久は倒れた

雅の胸元に

 

「ひゃっ」

 

「ごめん!」

 

明久が謝ったタイミングで、エンジンが切れた

その直後に、隣を一台のワンボックスが通りすぎた

同じ型のワンボックスだった

数瞬後、その後をバイクが追い掛けた

そして、他に追い掛けてきていた車両が来てないのか確認してから

 

「よし、大丈夫そうね。ありがとうね、斎藤くん。今度奢るわ」

 

と言った

 

(母さんの舎弟かな?)

 

明久はそう思いながらも、体勢を立て直した

吉井明恵

彼女はその昔、相当鳴らしていたらしい

そして、父親

吉井玲慈(よしいれいじ)は、苧島家の血筋だったのだ

結婚した理由は、互いに一目惚れ

明恵はそれを理由に足を洗ったが、未だに繋がりは残っている

当時の仲間達も就職しているが、明恵が一声掛けたら集まるのだ

恐らく、その一人だろう

 

「それじゃあ、行くわよ。今度は、安全運転でね」

 

明恵はそう言うと、ゆっくりと車を進ませた

そして、明久の部屋から出て約一時間後

 

「はい、到着」

 

「ここが、明久の自宅……」

 

吉井家に到着した

 

「普通の家だよ」

 

明久はそう言うが、所謂武家屋敷だった

 

「旦那の家よ。普通に入っていいわ」

 

明恵がそう言って入ると、一人の女性が近寄り

 

「奥様、御客様のお部屋の準備は整っております」

 

と言った

 

「ん、ありがとう。雅ちゃん、着いてきて。明久、部屋はそのままよ」

 

「あ、はい」

 

「わかった」

 

雅は歩きだした明恵の後に続いた

歴史を感じる家屋だが、キチンと手入れされているから古臭さは感じない

雅も御嬢様だが、明久もそうだったようだ

 

「明久、アタシの血を濃く継いでるからねぇ……お坊ちゃんらしくないでしょ?」

 

「あ、はい。そうですね……」

 

雅がそう言った直後、明恵が右手を上げて雅を止めた

その理由を聞こうとした

その直後、前の部屋の襖が開いて中から誰かが飛び出してきた

明恵は飛び掛かってきた人物の頭を掴むと

 

「ほい」

 

と、軽い調子で庭の方に投げた

投げられた相手は、庭にあった池に落ちた

 

「ったく……(あきら)……いい加減にしなさい!」

 

投げた相手

明久の姉

吉井玲に、明恵は怒鳴った

 

「母さん……しかし……」

 

「家族愛は認めるけど……弟の恋人を襲わないの」

 

池から出てきたのは、容姿端麗な女性だった

玲は容姿端麗で頭もいいが、常識が欠けてるとしか言えない

その理由が、弟たる明久を異性として愛しているのだ

勿論だが、明恵と玲慈は何回も諫めている

しかし、中々聞かないでいた

おかげで最近は二人して、どこで教育を間違えたのか頭を抱えていた

 

「まったく……玲、後で家族会議ね」

 

明恵はそう言うと、窓を閉めて歩きだした

そして、ある部屋の前に到着すると

 

「雅ちゃん。今日は、ここで寝てね」

 

と言って、襖を開けた

中はかなり広く、真ん中には布団が敷かれている

 

「ありがとうございます」

 

「いいのよ、じゃあね」

 

明恵はそう言うと、部屋から出た

そして雅は、パジャマに着替えてから

 

「……不味ったわね……用心はしていた筈だけど……」

 

と呟くと、布団に潜り込んだ

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