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居間に居た明久は、高鷲雅緊急会見という項目が表示されていたニュース番組にチャンネルを合わせた
すると、そのニュース番組の
『えー、間もなく、あの話題のお嬢様アイドル。高鷲雅が緊急会見するという時間ですね……現場の高宮さん!』
と言った
どうやら、丁度よかったらしい
『はい! こちら、会見会場。高鷲ホテルの高宮です! ご覧ください! 会見会場には、既に多くの報道陣が詰め掛けています! これから、今話題の高鷲雅さんが、何らかの発表をするということで、大変注目されています!』
と担当らしい、女性アナウンサーが興奮した様子で言った
確かに、そのホールには夥しい数のマスコミが今か今かと待っている
正面には長机が一つ置かれており、その机の上にはマイクが三つ設置されていた
恐らく、そこに雅と社長、マネージャーが座るのだろう
『それで、会見はまだですか?』
とMCが問い掛けると、アナウンサーは腕時計を見ながら
『はい。もう間もなくだとは思うんですが……』
と言って、正面方向を見た
すると、あっと小さく声を上げて
『来たようです! カメラさん!』
とカメラマンに声を掛けた
すると、カメラの向きが正面に向いた
確かにそこには、雅の姿があった
雅はアイドルらしく、白を基調としたドレスを身に纏っている
雅の前には、五十代と思われる厳つい顔の男性が居た
恐らく、その男性が社長だろう
貫禄を感じる
そして雅の後ろには、若い男性が居た
キッチリとスーツを着ており、眼鏡と相まってか、敏腕マネージャーという雰囲気だ
その男性を見て、明久は心中で
(よく、あの人と恋仲にならなかったなぁ)
と思った
その間に、三人は着席
そして、深々と頭を下げた
その瞬間、凄まじい早さでフラッシュが焚かれた
その眩しさに、明久は思わず目を細めた
そして、三人が頭を上げると、一旦フラッシュが止んだ
すると、社長がマイクを握り
『皆様、今日は急な会見に来ていただき、誠に感謝します。私は社長の建宮清吾と申します』
と挨拶した
そして、一拍置くと
『これより、我が事務所所属の高鷲雅より、重大な発表があります』
と言って、席に座った
それを確認してか、雅が同じようにマイクを握り
『皆様、初めまして。私の名前は、高鷲雅です』
と名乗った
その直後、再び凄まじい早さでフラッシュが焚かれた
しかし雅は、それを意に介さず
『今日私は、皆様に重大なことを二つ、お話します……まず、一つ目……最近、私に恋人が居るかどうかというお話ですが……』
雅はそこまで言うと、一旦間を置いて深呼吸した
そして
『全て、事実です』
と断言した
その瞬間、フラッシュが焚かれながら、会見会場にどよめきが走った
明久は飲んでいたお茶を吹きそうになったが、なんとか堪えた
雅がなんと言うのか、それを見守ると決めたからだ
すると、一人のマスコミが立ち上がり
『お相手は一般の学生と聞いてますが、本当でしょうか!?』
と問い掛けた
すると雅は、毅然とした態度で
『はい、本当です』
と答えた
すると再び、どよめきが走った
それも雅は意に介さず
『相手のことに関しては、一部の方々は既に御存知かと思います……』
と雅が言うと、一部のマスコミがざわめいた
どうやら、明久に行き着いたマスコミらしい
『その相手の名前を、今ここで、発表します!』
「ふぁっ!?」
余りにも予想外だったので、明久は奇声を上げた
すると、いつの間にか来ていた明恵が
「私が許可したわ!」
と親指を立てた
「母さんェ……」
明久は両手を突いているが、玲慈はガハハハと笑っていた
その時、マネージャーが机の下から一枚のフリップを取り出した
そのタイミングを見計らってか、雅は前を見て
『その相手の名前は……吉井明久君です!』
と言った
それと同時に、マネージャーがそのフリップを裏返した
そこには、明久の写真が写されていた
『彼との出会いは、本当に偶然です……彼は、私がお嬢様でアイドルだと知っても、一人の私として接してくれました……そんな彼に、私は惹かれました』
と雅が語ると、凄まじい早さでフラッシュが焚かれて、マスコミ達がざわめいた
すると、一人のマスコミが立ち上がり
『その吉井明久と言うのは、将来有望な水泳選手の吉井明久さんのことでしょうか!?』
と問い掛けた
どうやら、スポーツ関連のマスコミらしい
『その通りです』
と雅が答えると、一部が興奮した様子で
『これはスクープだ!』
と言っていた
「そんなにかな?」
と明久は首を傾げていたが、仕方ないだろう
日本で、高校生の時点で有名な水泳選手は数少ないだろう
特にここ数年は、日本は水泳で目立った成果を上げていない
そんな矢先に、既に実業団から注目されているのが明久だった
しかも明久は、既にその実業団の一つ
高鷲グループから、先行投資を受けている
そんな明久を、スポーツ関連のマスコミが知らない訳がなかった
そして、マスコミが一段落したからか、雅は
『もう一つ、大事なお知らせがあります』
と言った
それを聞いて、明久も
「あ、二つって言ってたっけ?」
と思い出した
先程の明久の紹介で、度肝を抜かれて驚いたから、忘れていたのだ
『私、高鷲雅は……今日を持ちまして……芸能界から引退します!』
と雅が言った直後、またマスコミ達がざわめいた
それは明久も完全に予想外で、固まった
すると、雅は続けて
『これに関しましては、社長とも念入りに話し合った結果です……既に、全ての手続きを終えています』
と言った
すると、一人のマスコミが立ち上がり
『引退に至った理由は、なんでしょうか!?』
と雅に問い掛けた
それに対して、雅は毅然と
『私に恋人が出来た、という報道が為されてから、彼は自宅に身を隠すことを余儀なくされています。それだけではありません。一部の方々は身に覚えがあるかと思います……一部のしつこいマスコミが彼の通う学校にまで押し掛け、取材しようとしています。彼は学校に迷惑を掛けまいと、現在休校し身を隠しています』
と語りだした
確かに、休校すると決断したのは明久だ
その理由も、雅が言った通りだ
それに関しては、明久は雅に気にしなくていいと言ってある
しかし、責任感の強い雅はそれを許さなかったようだ
『更に、休校したことにより、彼は満足に練習すら出来ない状態です……それが理由で、彼の将来が閉ざされたら、私は自分を許しません』
雅がそう言うと、それまでざわついていたマスコミ達が、一気に静かになった
どうやら、雅の気迫に圧されたようだ
すると、玲慈が
「明久……あの子、いい女じゃねえか」
と言った
それを聞いて、明久は頷いてから
「そうだね……自慢の彼女だよ」
と誇らしげに言った
すると、画面向こうで雅が
『明久、これからもよろしくね』
と微笑んだ
それを聞いて、明久は内心で
(さてと……これからの学校生活、大丈夫かな?)
と真剣に、命の心配をした