時は経ち、数年後
「はーい、そこの男の子ー! プールサイドは走らないでねー」
明久は、プールの監視員の仕事をしていた
明久が注意すると、注意された男の子は謝ってからまた走っていった
「だから、走らないでー!」
明久が再び注意すると、その男の子の母親が男の子を捕まえて頭を下げてきた
それを見て明久が溜め息を吐くと
「はーい、明久。お疲れ樣」
と雅が声を掛けてきた
「あ、雅。雅もお疲れ」
明久がそう返すと、雅は胸元から一通の封筒を取り出して
「はい、これ」
と明久に渡した
「ん、いよいよ来たね……」
「ええ、来たわよ。世界大会の案内状がね」
明久が受け取りながら言うと、雅はそう言った
あれから明久は、
海、愛子と一緒に、高鷲グループ所属の水泳選手として活躍
そして明久は、過日に行われた大会にて日本代表選手として世界大会に出場が決まったのである
なお、愛子と海の二人も団体戦でだが選出されている
そして雅は、専業主婦となっている
だが、その傍らで行っているブログが大人気となり、つい先日に出版することが決まった
「というわけで、明久は早上がり。代わりの人員が来るわ」
「ん、了解」
雅の言葉を聞いて、明久は監視用のイスから降りた
そのタイミングで、若い女性が来て
「交代です。吉井さん」
と明久に声を掛けてきた
「ん、了解。今日は子供が多いから、注意して」
「わかりました」
明久は注意事項を言いながら、着けていた監視員という腕章をその女性に渡した
すると、その女性が
「吉井コーチ……頑張ってください!」
と言った
その直後、上階の窓から
《祝 吉井明久選手、世界大会出場!》
や
《目指せ! 世界一!!》
という横断幕が張られた
「あれま……」
「あらあら」
明久は少し呆然と、雅は嬉しそうにそう声を漏らした
すると、プールに来ていた利用客達が
「頑張ってください!」
「応援してるぞ!」
「目指せ、優勝!!」
と応援してきた
その声援を受けて、明久は少し恥ずかしそうに頬を掻いてから
「不肖、吉井明久! 世界大会にいってきます!!」
と宣言してから、左手を高々と上げた
すると、プール場全体で拍手が巻き起こった
それに頭を下げつつ、明久はプール場を後した
そして着替えて出ると、外には一台の黒い車が停まっていた
その車に近寄ると、運転手が
「お待ちしてました。どうぞ、お乗りください」
と頭を下げながら、ドアを開けた
明久と雅が中に入るとドアが閉められて、車は静かに走り出した
その中で明久は
「あれから、あっという間だったなぁ」
と喋った
「そうね、本当に」
明久の言葉を聞いて、雅はそう同意した
すると明久は、持っていたカバンに手を入れて
「ねえ、雅……大事な話があるんだ」
と言った
「なにかしら?」
雅が問い掛けると、明久は一回深呼吸してから
「今まで待たせちゃったけど……」
明久はそう言いながら、カバンで中から小さい箱を取り出して……