翌日、明久達が朝練の為に登校すると、校門付近が騒がしかった
余りの人数で、状況が把握出来ない
その時、人混みの中に海を見つけた
「海先輩!」
明久が大声で呼ぶと、海が振り返った
そして、明久達を見つけたらしい
海は人混みを掻き分けて出てくると
「明久! 良かった、早く来てくれて」
と安堵していた
「朝練がありますからね。何があったんですか?」
明久がそう問い掛けると、海は
「それが今朝早く、いきなり数台のトラックが来てね。屋外プールを工事すると言って、封鎖したんだ」
と説明した
そう話してる間に大分人が居なくなったので、屋外プールを囲うように展開している壁に近付いた
そして久住は、ある物を見つけた
それは、工事許可証だった
その許可証を見ていた久住は
「東藤俊治……東藤俊治!?」
と驚きの声を上げた
その声を聞いて、明久が
「どうしたの、くす姉」
と問い掛けた
すると久住は、その許可証下部を指差して
「この依頼主の東藤俊治って、確か、父さんの会社の部下の名前……」
と呟いた
するとそこに、眼鏡を掛けたスーツ姿の若い男性が来て
「貴方が、吉井明久さんですね?」
と明久に視線を向けて、問い掛けてきた
「そうですが、貴方は?」
明久が問い掛けると、男性は懐から名刺を取り出して
「私は、東藤俊治。この工事を依頼した者です」
と言った
渡された名刺には
《苧島書店グループ 経理部部長 東藤俊治》
と書かれてあった
「は、はあ……」
「此度は我が社の意向で、文月学園の屋外プールを工事することにしまして、そのことをお知らせに参りました」
明久は状況の把握が追い付かず呆然と返事したが、俊治はそう言った
その時、明久は相手の顔を見た
俊治は微笑んでおり、その微笑みは好青年と言えるだろう
しかし明久は、相手の眼が気になった
強い野心の光を、明久は感じた
すると、明久の背後から久住が出て
「東藤俊治さん。私は、そのような連絡は受けてませんが?」
と毅然とした態度でそう言った
すると俊治は、初めて気付いたという風体で
「おや、久住お嬢様。まさか、文月学園に居らしたとは存じませんでした」
と言った
そして、深々と頭を下げながら
「此度の事は、急遽決まりましたので、私が先に知らせに来たのです」
と言った
それを聞いた久住は、ジッと俊治を睨んだ
実は昨日、久住は実家に連絡しようと電話を掛けた
しかし、どういう訳か一切繋がらなかったのだ
それは携帯も同様で、深く心配していた
その矢先に、重要ポストに就いている東藤俊治が護衛すら付けずに一人で来ている
久住には、疑わしく見えた
「では、私はこれにて」
俊治はそう言うと、黒塗りのベンツに乗って去った
その日は結局、場所の確保が出来なかったので練習は無しとなった
そして授業も終わり、明久と久住、そして悠が一緒に歩いていた
そして、ある場所に来た時だった
明久達目掛けて、一台のトラックが凄まじい勢いで走ってきた
しかもよく見れば、運転席には人の姿が無い
「くす姉、悠さん!」
「わっ!?」
「つっ!?」
久住は明久が抱き締めて、悠は自力で横に跳んだ
その直後、そのトラックは先程まで三人が居た所を通過
そのままの勢いで、トラックは電柱に激突して止まった
その轟音を聞きつけて、次々と人々が集まった
その数分後、警察が到着
明久達がアパート近くに帰ったのは、すっかり暗くなった時だった
しかもアパートの前には、一台の車が止まっていた
白いワンボックスが
最初は警戒したが、明久が
「あれ、あのナンバー……母さんの?」
と首を傾げた
すると、アパートの明久の部屋のドアが開いて
「良かった! まだ無事だったわね!」
と明恵が現れた
「母さん……一体、どうしたの?」
「ここでは言えないから、車に乗って。二人も」
明久の問い掛けに明恵はそう言うと、車のドアを開けた
三人が乗ると、明恵は
「ちょっと、飛ばすわよ」
と言って、車を急発進させた
そして明久達は、今起きてる事態を知る