僕と水泳とお嬢様   作:京勇樹

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またアンケートします


突入1

明久達が久住が居なくなったことに気付いたのは、朝食を食べに来ない久住を明久が起こしに行った時だった

久住に宛がわれた部屋は、綺麗に片付けられていた

そして机の上には

 

《私が解決しに行きます》

 

と書かれた紙が置いてあった

 

「ちい……まさか、久住ちゃんがね……」

 

「久住のバカ……」

 

「久住……すまない……」

 

メモを見て、明恵は歯噛み

悠は涙目で久住を罵り、久住の父親は涙を流していた

そして明久は、意外なことに座っていた

だがその手は、組まれてる腕を強く掴んでいた

恐らく、怒りで暴走しそうなのを必死に押さえているのだろう

すると、一人の女性が明恵に近付いて何やら耳打ちして端末を渡した

それを見た明恵は

 

「どうやら、今から約二時間近く前に家を出たみたいね」

 

と呟いた

恐らくは、防犯カメラに映っていたのだろう

 

「問題は行き先だけど……多分、エトワールよ」

 

明恵がそう言うと、全員の視線が明恵に集まった

 

「その証拠は、久住ちゃんの格好よ」

 

明恵はそう言うと、端末を机の上に置いた

そこに映っていたのは、制服姿の久住だった

確かに、制服姿となればおいそれと変な場所には行けない

 

「だけど、エトワールに行っても、男の人が居たら変に思われるよ?」

 

と言ったのは、明久である

すると悠が

 

「……今日エトワールは、建校記念日で生徒も先生方も居ないはずだ」

 

と言った

 

「そうなの?」

 

「うん……生徒は前日には家に一時帰宅してる筈だ。先生方も、軒並み居ない」

 

明久が問い掛けると、悠は思い出しながらそう言った

星令会副会長だった悠が言うのだ

本当なのだろう

確率的には、半々と言った処だろう

すると悠が

 

「明久君」

 

と明久の名前を呼びながら、視線を向けた

その意図に、明久は勿論気付いた

明久は立ち上がると

 

「行きましょう、悠さん。時間が惜しい」

 

と言った

その目に宿るは、強い決意の光りだった

なんとしても、久住を助けるという強い決意

それを見た明恵が

 

「止めるのは、無理そうね……いってらっしゃい。私たちも、なるべく早く追い掛けるわ」

 

と言った

すると、久住の両親が

 

「ごめんね、明久君……」

 

「あの子を……久住を……」

 

と涙を流しながら、頭を下げた

すると明久は、一度片膝を床に突いて

 

「大丈夫ですよ、叔父さん、叔母さん……僕に任せてください」

 

と真剣な表情で言った

そして再び立ち上がると、居間から去った

それから約一時間後、明久と悠はエトワール学園の駅に着いていた

周囲には、一切人の姿は無い

悠の言った通りのようだ

そして明久と悠は視線を合わせると、一気に走り出した

高校生トップクラスの二人の速度は早く、恐らく一般人が居たら驚きで振り向いていただろう

そんな二人は示し合わせたように、公園の方に入った

だが、それは正解だった

二人が向かっている学園寮に行く最短ルートには、東藤俊二が配置したガードマンが居た

もしそっちを通っていたら、間違いなく捕まっていただろう

少し遠回りだが、二人は公園の道を走った

しかしその道は、二人にとっては慣れ親しんだルートだった

だから二人は一切減速せずに、駆け抜けた

そして数分後、明久と悠は寮近くの生け垣に隠れていた

 

「案の定だね……凄い人数だ」

 

と言ったのは、悠である

二人の視線の先

寮の正面玄関の周囲には、凄い人数のガードマン達が居た

間違いなく、東藤俊二の私兵だろう

 

「さて、どうやって入ろうかな……」

 

と明久が言った時だった

二人は、背後に人の気配を感じた

二人が振り向くと、すぐ近くに黒いスーツを着た40代半ばと思われる男性が居た

二人はその男性に、飛び掛かろうとした

すると、その男性は口元に人差し指を当てて

 

「お静かに」

 

と言った

拍子抜けに合った二人は、軽く目を見開いた

するとその男性は

 

「ここも危ないですので、こちらへ」

 

と囁いて、静かに歩き出した

恐らく、その男性も東藤俊二の私兵に間違いない筈だ

しかし二人は、その男性の後に続いた

そして到着したのは、少し離れた場所にある倉庫だった

男性はその倉庫の鍵を開けると、中に入って

 

「お早く、中に」

 

と二人に手招きした

二人は言われるがままに、中に入った

そして、男性は軽く周囲を見回してからドアを静かに閉めた

そして、二人に視線を向けると

 

「ここは安全ですよ、吉井明久様。桐島悠様」

 

と二人の名前を言った

 

「貴方は?」

 

明久が問い掛けると、その男性は頭を下げて

 

「私は、彼等の統括者です」

 

と言った

つまりは、東藤俊二の私兵達のリーダーだ

その言葉に、二人は軽く身構えた

だが男性は、そんな二人の前に手を掲げ

 

「ですが私は、東藤俊二様を見張り動向を調べるように、東藤修平様から仰せつかっております」

 

と言った

つまりは、内部調査をしていたらしい

東藤修平というのは、恐らく父親の名前だろう

 

「東藤修平様は、何回も止めるように仰いました。しかし、俊二様は独断行動を続けています」

 

どうやら、今回の騒ぎは東藤俊二の独断専行らしい

男性は軽く開けた隙間から、外を見ると

 

「今からお二人を、寮裏手まで案内します。そこには、人は配置していません」

 

と言った

騙すにしても、酷く手が込んでいる

信用出来ると、二人は判断した

そして、男性の先導で二人は寮の裏手に回った

確かに、人は誰も居ない

そして男性は、非常階段の鍵を開けて

 

「俊二様と苧島久住様は、八階の12号室に居ます」

 

と言った

その部屋は、明久が使っていた部屋だった

場所は、すぐに分かった

二人が非常階段に入ると、男性は

 

「申し訳ありませんが、私は此処までです。そろそろ戻らねばなりませんので」

 

と言って、頭を下げた

その男性に二人は

 

「案内してくれて、ありがとうございます」

 

「必ず、久住を助けます」

 

と言った

そして二人は、静かに、しかし早く階段を昇り始めた

その二人に、男性は

 

「お気をつけて」

 

と言って、頭を下げた

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