僕と水泳とお嬢様   作:京勇樹

45 / 67
まだアンケ間に合いますからねー
割烹にて


終結

銃声が鳴り響いた直後、明久の右肩から血が溢れた

 

「が、ぎ……ぐぁぁぁぁぁ!?」

 

「アキくん!?」

 

「明久くん!?」

 

明久の絶叫を聞いて、久住と悠は声を上げた

すると、俊二が笑いながら

 

「あっはははは! このガキ、バカだ! 自ら銃口の前に出てくるとはな!?」

 

と言った

実は先の銃撃は明久を狙ってではなく、久住と悠に向けられていたのだ

明久はそれに直感で気付き、二人を庇ったのだ

 

「私のせいで……」

 

明久が痛みで蹲っているのを見て、久住は思わずそう漏らした

そして俊二は、明久から視線を外し

 

「このガキの始末は、後回しだ!」

 

と言って、久住と悠を見た

それを見て、悠は毅然とした態度で久住の前に立った

すると俊二は、鼻で笑い

 

「んじゃま、てめえから撃ってやるよ」

 

と言って、少し前に出てから拳銃を構えた

その時

 

「あ、が……」

 

明久が少しずつだが、立ち上がり始めたのだ

今も血が流れ、右腕は痛みからまともに動かないらしい

だがそれでも、明久は立ち上がった

 

「ダメ、アキくん! 動いちゃダメ!」

 

久住が制止するが、明久は構わず立ち上がった

そして、俊二を睨んだ

 

「なんで動ける、てめぇ!」

 

立ち上がった明久を見て、俊二は一歩後退りした

そんな俊二を見て、明久は

 

「バカは……死なないと……治らないってか」

 

と言いながら、歩きだした

 

「来るな! 来るんじゃねえ!」

 

俊二は明久にそう言いながら、左手を振り回した

その時、思い出したかのように

 

「それ以上近付いてみろ! 撃つぞ!」

 

と拳銃を構えた

だがその手は、ガタガタと震えていた

明久の気迫に、押されているのだ

明久もそれが分かっているのか、一歩ずつ確実に俊二に近付いた

そして、最後の一歩を踏み出しながら左手を振り上げて

 

「お前の……負け!」

 

と渾身の力で、俊二の顔面を殴った

 

「あがっ!? がは!」

 

殴られた俊二は吹き飛び、寮の門柱に背中を打ち付けて倒れた

それを見た明久は、両膝を突いた

すると、久住と悠が駆け寄り

 

「アキくん!」

 

「まったく、無理をして!!」

 

と倒れそうになった明久を支えた

明久の右肩からは、今も止めどなく血が流れている

だからか、久住と悠はハンカチを出すと結んで明久の傷口を縛った

その時

 

「この、ガキ共がぁぁぁぁ……」

 

と俊二が、ヨロヨロと立ち上がった

明久に殴られたからか、俊二の鼻からは血が溢れている

俊二は血走った目で三人を見ると、三人を指差し

 

「ガキ共、覚悟しろよ! 東藤家だけじゃねえ! 取り込んだ苧島の力も使って、終わらせてやる!」

 

と言った

その直後

 

「いや、そこまでだよ。東藤俊二君。君は苧島処か、東藤家の力すら使えないよ」

 

と男性の声が聞こえた

三人が後ろを見ると、そこに居たのはスーツ姿の男性

東方院宗継だった

 

「て、てめぇは……東方院の!」

 

「苧島書店は今朝、私が買収させてもらったよ」

 

俊二が驚いていると、宗継はそう言った

それを開いて、俊二は

 

「な!? それにしたって、金はどうした!? 幾ら東方院とはいえ、簡単に集められる額じゃ!」

 

と言った

すると、悠が

 

「それなら、この学園には何人の令嬢が通ってると思ってるんだい?」

 

と言った

その直後、次々と車が到着

中から次々と、居なかった生徒達が出てきた

その中には、かつて敵対した筈の麗の姿もあった

そして最後に

 

「明久さん! 大丈夫ですか!?」

 

「明久! 生きてるわね!?」

 

静歌と明恵が姿を見せた

 

「彼女達の家も出資してくれたが、一応の代表は私となっている」

 

「大人しくするんじゃな、小僧」

 

気付けば宗継の隣に、桐島影章の姿もあった

 

「だが、東藤の力すら使えないってのは!」

 

「それに関して、君の父親から伝言だ。『言うことを聞かないバカ息子など、もう知ったことか。煮るなり焼くなり、好きにしろ』だ、そうだ」

 

俊二の問い掛けに、宗継はそう言った

それを聞いて、俊二は歯を食い縛り

 

「あの、日より見親父があぁぁぁあ!」

 

と怒鳴った

その時、影章が杖で地面を叩いた

その直後、数人の黒服が現れた

すると、宗継が

 

「連れていけ、銃刀法違反で警察に引き渡せ」

 

と言った

それを開いて、黒服達は俊二を押さえ込んだ

 

「畜生! 離せ! 離せぇぇ!」

 

俊二は怒鳴るが、黒服は一切加減せずに俊二を結束バンドで拘束し、車に放り込んだ

それを見送ると、宗継と影章は明久に視線を向けて

 

「大丈夫か、明久君」

 

「二度目じゃな、悠が世話になったの」

 

と言いながら、明久に近寄った

その時、一台の車が止まり

 

「久住!」

 

「久住ちゃん!」

 

と中から久住の両親が出てきた

 

「お父さん! お母さん!」

 

久住は二人に駆け寄ると、二人と抱き合った

そして、明久は宗継の手配でエトワール私有地にある病院に担ぎ込まれた

幸いにも弾は貫通し、太い血管も傷つけてはいなかったらしい

翌日は絶対安静を言い渡され、面会謝絶となったが

入院して三日の間に、凄まじい数の見舞いが来た

その殆どが、エトワールの生徒達だった

そして明久として困ったのは、見舞い品の多さだった

個室に居るのだが、個室の左側にある棚は既に満杯状態だった

そして少し前に、明恵が来て苧島書店に関して話した

苧島書店は東方院財閥が中心となり、大きく人材の変更がなされたらしい

ただし、経営者は久住の父親が続投

俊二に従っていた者達は、全員閑職に回されたらしい

クビにしなかったのは、せめての温情らしい

そして明久が、窓の外をボーっと眺めていたら

 

『アキくん……入って、大丈夫?』

 

と久住の声が聞こえた

 

「大丈夫だよ」

 

と明久が入室を促すと、久住がオズオズと入ってきて

 

「傷……大丈夫?」

 

と明久に問い掛けた

すると明久は

 

「弾は貫通してたみたいだし、主要な血管も無事だから、一ヶ月もすれば退院だってさ」

 

と答えた

それを開きながら、久住は

 

「そう……」

 

と言って、椅子に座った

それを見て、明久は

 

「くす姉」

 

と久住に声を掛けた

すると久住は、涙声で

 

「私の行動の、せいで、また、アキくんが、怪我しちゃった……」

 

と喋った

どうやら、明久が撃たれたのを気にしているらしい

すると明久は

 

「でも、くす姉が撃たれるよりマシだよ」

 

と言った

それを開いて、久住が顔を上げると

 

「くす姉は女の子で、僕は男だ。男にとって、誰かを守って出来た傷は勲章だ。それが、好きな女の子なら、尚更だよ」

 

と言った

それを聞いて久住は、声を上げて泣いた

そして明久は、久住が泣き止むまで久住の頭を撫で続けた

この二週間後、明久は再びエトワールに向かうことになるが、それは後の話

この数年後、世界に名を轟かせる水泳選手が産まれることになる

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。