翌日の放課後
マラソンから明久が帰ってきた時だった
「あ、明久!」
と海が慌てた様子で、明久に駆け寄ってきた
「どうしたんですか、海先輩?」
と明久が問い掛けると、海は
「これ、見たか!?」
と明久に、携帯の画面を見せた
そして、携帯を見た明久は
「なにこれ」
と自分でも驚くほどに、低い声を漏らした
海が見せたのは、学園生徒だけが使えるコミュニティーチャット
それの裏版だった
そこには、こう書かれていた
《水泳部の吉井明久とかの大財閥の御令嬢が付き合ってる!?》
《あの野郎、調子に乗るなよ!?》
《どうせ、あの野郎が騙してるんだろうぜ》
《あいつの練習、邪魔してやれ!》
《そうだそうだ!》
と書かれていた
そこまではいい
自分に来るなら、ある程度は対処出来る
しかし
《だけどよ、あのお嬢様もチョロすぎね?》
《そういや、一時期あいつ学校に来なかったよな》
《どうせ、その間に出会って騙したんだろ》
と書いてあった
実は、明久が事故にあったことは学校の生徒の殆どが知らない
夏休み期間だったために、知られなかったのだ
一応学内新聞にて知らせてはいたが、マジメに読んだ者は殆ど居なかった
だから、何故明久がエトワールに行けたのかも知られていない
文月学園学園長、藤堂カヲルは、そういう所がかなり適当だった
それが災いしていた
「流石に、誹謗中傷は頭に来るなぁ……」
自分だけの影口や悪口
妨害等は、明久は大抵は受け流せる
しかし、他の人を巻き込むやり方は明久は嫌いだった
特に、恋人の静歌を悪く言われるのは頭に来ていた
「とりあえず、風紀委員会に学園内の巡回強化をお願いしてくる。少しの間、我慢してくれ」
海はそう言って、校舎に走っていった
そして明久は、振り向いた
その時、明久は見つけた
静歌が、近くに居たことに
しかも、静歌の顔は張り詰めていた
「静歌ちゃん……聞いてた?」
「い、いえ……」
明久からの問い掛けに、静歌はそう言って首を振った
しかし、明久は気付いていた
静歌が、先程の話を聞いていたのだと
そして、静歌は責任感が強い娘である
(頼むから、何も起きないでよ)
と明久は思いながら
「さてと、僕はまた走ってくるね。タイムお願い」
と言った
すると静歌は
「あ、わ、わかりました」
と言って、ストップウォッチを持った
それを見た明久は、グラウンドのトラックに立ち
「じゃあ、最初は100mから行くよ」
と静歌に言った
すると静歌は、ストップウォッチをしっかりと持って
「はい! 何時でもどうぞ!」
と促した
それを聞いた明久は、クラウチングスタイルを取って静歌に視線を向けた
すると静歌が
「では、よーい……スタート!」
と言いながら、ストップウォッチを押した
それと同時に、明久は走り出した
何も起きないで、と祈りながら