「私は……」
と言ったのは、一人学校の屋外プールの更衣室に居た静歌だった
今静歌は、今後どうすればいいのか悩んでいた
「私が居たら、明久さんや皆さんが怪我するかもしれない……」
静歌はそこまで言うと、俯いて
「どうすれば……」
と頭を抱えた
その時、外に出るドアが開いて
「ああ、やっぱりここに居たね」
と海が現れた
すると静歌は、驚いた表情で
「え、海先輩!? なんで!?」
と声をあげた
すると海は、微笑みながら
「なんでって、忘れ物をしたからさ」
と言って、静歌に近づいた
「忘れ物……ですか?」
海の言葉を聞いて、静歌が首を傾げた
すると海は
「そう。明久にとっての特大の起爆剤の君をね」
と言った
それを聞いて、静歌は
「でも、私が居たら……皆さんに迷惑が」
と言った
だが、それを聞いて海は
「一度でも、僕たちが君が居たら迷惑だ。なんて言ったかい?」
と問い掛けた
すると静歌は、首を振りながら
「いえ、言ってません……ですが」
と何かを言おうとした
しかし、それより前に海が
「まあ、確かにね。一部の連中が妨害を仕掛けてきてる。だけど、僕たちだって後手に回るだけじゃない。対策もしたさ」
と言った
そして、続けて
「そいつらには報いを受けてもらうとしてだ……君は最近、明久が練習に身が入ってないって知ってたかな?」
と静歌に問い掛けた
すると静歌は
「そう、なんですか?」
と首を傾げた
すると、海は頷いて
「そうなんだ。そしてそれは、僕の見立てでは……君が明久の近くに居ないからだ」
と言った
「私が、居ないから……?」
静歌が不思議そうに首を傾げると、海は頷き
「そう。明久にとって、君は大切な存在なんだ」
と言った
そして、続けて
「だから僕は、明久の大事な忘れ物……君を呼びに来たんだ」
と言った
すると静歌は立ち上がり
「大会の場所は、何処でしたでしょうか?」
と海に問い掛けた
その問い掛けに、海は素直に場所を教えた
すると静歌は、一気に更衣室から走り去った
それを見送り、海は
「お膳立てはしたよ、明久……後は、君次第だ」
と言った
そして、数十分後
その大会の場所では、明久が入場していた
だがその明久本人は、何とも気が抜けた表情だった
明久は今から、大事な個人メドレーの決勝戦だ
今までは、明久の実力ならば何ら問題はない予選だった
しかし、この決勝戦は違う
今ここに集まっているのは、その予選を越えてきた猛者達だ
その実力は、今の明久では危うい
しかし、どうしても明久は本気が出せなかった
その理由は、明白
関係者用応援席に、静歌の姿が無いからだ
そして、明久の名前が呼ばれて台に乗った
その時だった
「明久さん!!」
と待ち人の声が聞こえた
そして、声がした方
関係者用応援席に目を向けてみれば、そこには静歌の姿があった
走ってきたのだろう
呼吸が荒いのが見てとれた
そして、明久が軽く目を見開いていると
「頑張ってください! 明久さん!!」
と静歌は、応援した
そして少しすると明久は、獰猛な笑みを浮かべて片手を上げた
そして
(僕も現金な奴……一気に、やる気が沸いてきた。負ける気がしない!)
と全身にやる気が満ちたのを自覚した
そして明久は、スターターの音と同時に飛び込んだのだった