とはいえ、後二人ですが
大会が始まってから、約一時間後
明久はどうにも、試合に集中しきれていなかった
予選は突破したが、本調子とは言えなかった
そのタイムは、ベストタイムより遅かった
そして今明久は、準決勝戦のために文月学園に割り振られたロッカールームから出た
その時だった
「明久さん!」
と彼女の声が聞こえた
明久が振り向くのと同時に、彼女
東方院静歌が、明久に飛び付くように抱き付いた
走ってきたらしく、息が荒い
そんな静歌を抱き留めた明久は
「静歌ちゃん……」
数日振りに、静歌の温もりを感じた
そして、明久が静歌の頭を撫でていると静歌が顔を上げて
「明久さん……私、もう離れません」
と言った
その目には、強い意思を感じさせる光があった
「私は生涯、明久さんの隣を歩きます……だから、明久さん……勝ってください!」
その言葉を聞いた直後、明久は自身の体に力が満ちるのを感じた
それに、内心
(単純だなあ……僕って)
と苦笑した
そして、しっかりと静歌の目を見て
「わかった……必ず、優勝してくるよ」
と宣言した
そして、最後に静歌の頭を撫でると
「それじゃあ、行ってくるよ!」
と左腕を突き上げて、歩いていった
この後明久は、その宣言の通りに優勝
2位とのタイム差は5秒も開き、ベストタイムを三秒も速めた結果だった
そして明久は、全国大会のキップを手に入れたのだ
この後のことを説明すると、職員室のとある人物の机の上に掃除用具を落とそうとする写真や、バイクの傍でヘルメットを脱いでいる写真数枚が置かれていた
それを見たその人物は、凄い形相でその生徒達を連行
全員に、地獄のような補習を課した
そして逃げれば、もれなく倍になったらしい
その後明久は、全国大会も優勝
将来有望な水泳選手として、名を馳せた
そして卒業後は、東方院グループ所属の水泳選手として活躍
世界水泳に出場することが決まった
そして、卒業から数年後
「うぁぁぁぁ……緊張する」
スーツ姿の明久が、体をガチカチにしてある部屋に居た
その隣には、ドレス姿の静歌が優雅に微笑んでいた
そして、緊張している明久に
「大丈夫ですよ、明久さん。あんなに練習したじゃないですか」
と助言した
すると、明久は頷いてから
「わかってるけどね……やっぱり、義父さんと義母さんに直接言うとなると……」
と言った
これから二人は、両方の両親の前で誓いの言葉を言うことになっている
それを以て、東方院グループは明久を静歌の婚約者として発表することになっている
なお、本来だったらもっと早くに発表するはずだったのだ
しかし、明久の
『世界水泳のキップを取るまで、待ってください』
という言葉を、宗継が受け入れたのだ
明恵が受け入れた理由を問い掛けたら、宗継は
『漢の願い、受け入れないわけがないだろう』
とのことだった
どうやら、明久の目に漢を感じたらしい
そして、明久が何度目かの深呼吸をした時、ドアがノックされた
どうやら、来たらしい
二人が返事をすると、ドアが開いて四人が入ってきた
そして、二人の正面に立った
それを見て、二人は一回顔を見合わせてからしっかりと誓いの言葉を口にしたのだった