僕と水泳とお嬢様   作:京勇樹

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お風呂パニック!

食事が終わると、明久はあてがわれた自室へと戻った

 

「ヤレヤレ……テーブルマナーが難しくって、味なんて覚えてないし、そもそも味わえなかったよ……」

 

明久はそう愚痴りながら、ポケットからカードキーを取り出して鍵を解錠して中に入った

 

その時、ドアに据え付けられている郵便物入れの中に大きめの茶封筒が入っているのに明久は気づいた

 

「なんだこれ……」

 

明久は茶封筒を取り出すと、封を開けてから中の紙を取り出した

 

「何々……《交換留学生のお知らせ》……?」

 

それは要約すると、異例ではあるが交換留学生として明久を受け入れました

 

という知らせだった

 

「えっと……僕のクラスは光組?」

 

明久は紙に書かれているクラスを見て、どんなクラス何だろう? と考えた

 

その時、明久は紙がもう一枚あることに気付いた

 

「ん? もう一枚ある……」

 

明久は紙を捲り、もう一枚を確認した

 

「……入浴時間変更のお知らせ?」

 

紙に書かれてある題名を読み、明久は首を傾げながら内容を確認した

 

それを読み終えた明久は、頬を掻きながら

 

「なんか、申し訳ないなぁ……」

 

と呟いた

 

内容は

 

明久が来たので、彼の為の入浴時間を設けます

 

その間、他の生徒達は使用を自粛してください

 

というものだった

 

しかも、時間は一時間も確保されてある

 

明久は時間を確認するために、視線を時計に向けた

 

入浴時間まで、後十分少々という所だった

 

「せっかくの好意、無駄にしちゃいけないよね」

 

明久はそう言うと、着替えとお風呂セットを持って地図を頼りに大浴場へと向かった

 

途中途中で、先に入浴を済ませたらしい女子とすれ違って、明久はとりあえず会釈しながら進んだ

 

そして、とあるガラス戸の前に到着すると

 

「ここ、だよね……」

 

と手元の地図で確認した

 

「うん……合ってる……時間も大丈夫」

 

地図を仕舞うと、次に携帯で時間も確認した

 

明久としては、中で女子とブッキングというのは一番避けたいのだ

 

最後に、中から出てくる人がいないか少し待ってから中に入った

 

「おおぅ……」中を見た明久は思わず、感嘆の声を漏らした

 

「脱衣所の時点で、かなり広い……」

 

やはり女子校だからか、脱衣所はかなり広い

 

それだけで、明久の期待は大きくなった

 

明久は手早く服を脱ぐと、それを脱衣籠に放り込んだ

 

そして、腰にタオルを巻いて入浴セットを持つと浴室へと入った

 

「うわぁ……」

 

中に入った途端、明久は素直に感嘆した

 

湯気でよく見えないが、浴室はかなり広く湯船に至っては一度に二十人以上は入れるだろう広さだった

 

「うわっ……映画とかでしか見たことないよ、コレ……」

 

そう言いながら明久が見つけたのは、お湯を吐き出すライオンの彫像だった

 

「さてと、入る前に体を洗おうっと」

 

明久はそう言うと、一つの洗面台に近づいて椅子に座ってから体を洗い始めた

 

体を洗い終わり、頭も洗うと明久は掛け湯をしてから湯船にゆっくりと足から浸かった

 

「あー……いい湯」

 

と明久が思わず、声を漏らしていたら

 

「ふぇ……?」

 

という、聞こえてはいけない声が聞こえた

 

「ゑ?」

 

明久が声のした方に顔を向けると、最初は湯気で分からなかったがそこに居たのは……

 

「し、静歌ちゃん……?」

 

「明久……さん?」

 

なぜか、静歌がそこに居た

 

「…………」

 

「…………」

 

二人はしばらくの間、無言で見つめ合っていた

 

その時

 

「……きゅう」

 

静歌が目を回して、湯船に沈み始めた

 

「うわぁ! 静歌ちゃん!?」

 

沈んでいく静歌を見て、明久は慌てて救助を始めた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「うん……あれ?」

 

「あ、起きた?」

 

団扇を扇いでいた明久は、静歌が目覚めたことに気付いた

 

「あれ? ……明久さん?」

 

「や、気分は大丈夫?」

 

明久が問い掛けると、静歌は頷きながら

 

「はい……それは大丈夫ですけど……」

 

「それは良かった。あ、先に謝っておくけど、なるべくは見ないようにしたからね」

 

明久はそう言うと、静歌にもう一枚のバスタオルを手渡した

 

「え……? ……っ!?」

 

何があったのか思い出したらしく、静歌は顔を赤くした

 

「すいません、明久さん! 私、とんだご迷惑を!!」

 

静歌はそう言うと、深々と頭を下げた

 

「ああ、それはいいんだけど、なんで居たの? 紙は見なかったの?」

 

明久がそう問い掛けると、静歌は顔を覆いながら

 

「い、いえ……お知らせは見たんですけど、ついウトウトしちゃって……」

 

「あー……うん、わかる」

 

静歌の言葉に、明久は納得したように頷いた

 

なにせ、明久も経験があるからである

 

しかも、今の季節は冬

 

お風呂に浸かっていると、自然と眠くなってしまうのは道理である

 

「まあ、とりあえず……早く着替えてくれるかな?」

 

「へ?」

 

明久の言葉の意味が分からないのか、静歌はコテっと首を傾げた

 

そんな静歌の反応に、明久は視線を逸らしながらある一点を指差した

 

静歌は明久が視線を逸らしたことを不思議に思いつつ、視線を下に向けた

 

そこに見えたのは、タオル一枚のみの自分の体

 

「…………っ!?」

 

数秒間見つめて静歌はようやく、自分が今まで裸に近い状態で居たことに気付いた

 

「お、お見苦しいものを見せてすいませんでした! き、着替えてきます!!」

 

静歌はそう言いながら、明久から貰ったバスタオルで胸元を隠しながら駆け出した

 

明久はそれを見送ると、頬を掻いて

 

「外で待ってよ……」

 

と呟くと、服を着終えていたので、廊下に出た

 

そして、正座で待つこと数分後

 

「お待たせしました……」

 

静歌がゆっくりとガラス戸を開けながら、出てきて

 

「なんで、正座してるんですか?」

 

と、明久に問い掛けた

 

その問い掛けに、明久は首を振りながら

 

「気にしないで」

 

と言いつつ、体を静歌のほうに向けた

 

「すいませんでした」

 

と、土下座を敢行した

 

「なんで、明久さんが謝るんですか?」

 

静歌からの問い掛けに、明久は頭を上げて

 

「居るとは思わず入って、体を見ちゃったから」

 

と言った

 

すると、静歌は首を振りながら

 

「いえ、今回は私が悪いんですから、気にしないでください!」

 

と告げた

 

しかし、明久は腕組みして

 

「でも……」

 

と納得してないようだった

 

すると静歌は、数秒間無言で考えると

 

「でしたら、今度一緒に買い物に行ってくれませんか?」

 

と提案した

 

「買い物に?」

 

「はい。それで不問にする、というのはどうでしょうか?」

 

静歌のその提案に、明久は少し考えてから

 

「静歌ちゃんがそれで良いなら、一緒に行くよ」

 

と頷いた

 

「決まりですね♪」

 

明久の言葉を聞いて、静歌は嬉しそうに頷いた

 

「それじゃあ、あらぬ誤解を受ける前に部屋に戻ろうか」

 

「はい」

 

明久は静歌が頷いたのを確認すると、立ち上がって歩き出した

 

この時から静歌は、買い物に行くのが楽しみだった

 

こうして、明久のエトワールに於ける一日目が終わったのだった

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