それが起きたのは、翌日の放課後だった
明久と悠は、部活を早めに切り上げて帰ろうとした
その時、校門の前に一台の黒い車が止まった
その車を見て、悠が
「あれは……桐島財閥の車だ」
と言った
そしてドアが開いて、中から一人の男性が出てきた
それは、先日会った男性
河平専務だった
河平専務は降りると、まっすぐに悠に近寄り
「悠お嬢様、大至急本社にお越しください」
と言った
それを聞いた悠は、片眉を上げて
「どういうことだい?」
と問い掛けた
しかし、河平専務は答えず
「ここでは、お話ししづらい事ですので……」
と言った
それを聞いた悠は、少しすると
「わかった」
と言って、明久に顔を向けた
「すまない、明久君。今日は、帰れそうにないよ」
と言った
それを聞いて、明久は
「急用なら、仕方ないですよ」
と言った
それを聞いた悠は、河平専務に先導されて車に乗った
だがその時、明久は河平専務がニヤリと笑みを浮かべたのを見た
見送った明久だったが、嫌な予感がしていた
その日、確かに悠は帰ってこなかった
場所は変わって、更に時は遡る
場所は、桐島財閥本社
そのある一室
「どういうことだい?」
と悠は、目の前の男性
河平専務を睨んでいた
すると、河平専務は
「ですから、一部役員の中には新しい代表を立てるべきだという意見が出てきているのです」
と言った
それを聞いた悠は
「だったら、既に重役に顔が効く兄さん達のどっちかじゃないのかい? なんで、僕なんだい?」
と言った
すると、河平専務は
「お二方には、未だに相続する権利を与えるべきではない。というのが、重役会の総意です。ですから、悠お嬢様と誰かを結婚させて、代表として立てることになりました」
と言った
それを聞いた悠は、河平専務を睨みつけて
「それを、僕が了承すると? そもそも、お父様とお祖父様が死んだと決まったわけじゃないのに、早計じゃないのかい?」
と問い掛けた
悠の表情は迫力が凄いが、河平専務は受け流して
「しかし、現地スタッフからの情報では、一日経ってもヘリの残骸すら見つからないようです。念の為、先手を打つことも重要事項です」
と言った
それは、確かに理屈が通っている
だが、悠は納得出来なかった
まるで、父親と祖父が死んだと決まったようだったからだ
悠はまだ、父親と祖父が生きてると信じていた
だからこそ、悠は
「悪いけど、僕は同意出来ない」
と返した
それを聞いた河平専務は
「どうしても、ですかな?」
と首を傾げた
その問い掛けに、悠は
「どうしても、だよ」
と言いながら、椅子に座った
その姿は、何者の意見も受けない
という意志が、アリアリと現されていた
それを感じたからだろう、河平専務は
「わかりました……本日は、こちらでご用意したお部屋でお休みくださいませ」
と言って、その部屋から出た
すると、河平専務は
「小娘が……下手に出てたら、図に乗りおって」
と忌々しげに言ったのだった