「昨日は、結局帰ってこなかったな」
明久はそう言いながら、朝食の用意をしていた
その時だった
玄関のドアが乱暴に開けられて
「明久、居るわね!?」
と明久の母親
明恵が乱入してきた
「か、母さん!?」
予想外の乱入者に、明久は目を丸くして固まった
そんな明久を、明恵は無視して
「ちょっと、付いてきなさい」
と言って、親指で外を指し示した
流石は、元レディース
堂に入った仕草だった
とりあえず明久は、調理を中断
出していたもの全て仕舞い、明恵の後に外に出た
そして明久は、明恵が運転してきたらしい車に乗った
すると、明恵は
「悠ちゃん昨日、桐島財閥の人が迎えに来たわね?」
と明久に問い掛けた
その問い掛けに、明久は頷きながら
「そうだけど……何か起きてるの?」
と明恵に問い返した
すると明恵は
「どうやら、桐島財閥の乗っとりを画策してる輩が居るみたいね……」
「乗っとり!?」
予想外の言葉を聞いて、明久は驚愕した
まさか、そんなことをしようとする輩が居るとは、と
そして明久は、もしやと
「まさか悠さんは……そいつらに利用されようとしてる?」
と明恵に問い掛けた
すると明恵は
「その通りよ、明久……悠ちゃんは賢い子だから、気付くかもしれないけど……相手は既に、手を打ってた」
と言った
それを聞いた明久は、二日程前の話しを思い出し
「まさか……悠さんの父親とお爺さんのヘリが消息を断ったのって!?」
と声を上げた
すると明恵は
「でしょうね……今、情報を集めてる最中よ」
と言った
どうやら、実家も動いてるようだ
となれば、苧島家も動いてるだろう
悠の親友たる久住が、動かない訳がない
「で念のために、明久もしばらく隠れてなさい」
「そういうことか……」
明恵の言葉に納得し、明久は一人唸り始めた
桐島財閥の乗っとりを画策する程ならば、悠の恋人たる明久を始末しようとするのも頷けた
しかし明久は、自分だけが安全な場所に居るのが納得出来なかった
すると、明久の葛藤に気付いたらしい明恵が
「大丈夫よ、明久……あんたにも、やってほしいことがあるから」
と言った
それを聞いて、明久は
「僕に、やってほしいこと?」
と首を傾げた
すると、明恵は
「簡単よ……お姫様を救う、騎士になるのよ」
と言った
それから明恵が運転する車は、ある一軒の家に到着
明恵と明久は、明久の家から持ってきた私物を運び込み
「ここは、昔の舎弟の持ち家よ。安全は保証出きるわ」
と言った
それを聞いて、明久は
(本当……母さんの舎弟の人脈が謎過ぎる……)
と思ったのだった
その頃悠は
「してやられた……まさか、この建物が電波が不通なんてね」
と呟いていた
悠が居る建物は、河平専務が案内したアパートの一室だった
しかしどういう訳か、携帯は圏外
室内に、電話の類は一切設置されていない
外に出ようにも廊下には、その河平専務が配置したらしい黒服を着た護衛が多数居た
幸いにも、電源は有るから、携帯の充電は出来ていた
だから、外に出てしまえば、明久に連絡が取れるのだ
「ベランダは無いしね……やれやれ」
幾ら身体能力に自信が有るとは言っても、悠一人で護衛全てを排除は出来ない
だが悠は、諦めていなかった
それは、明久を信じていたからだ
「待ってるよ、明久君……」
悠はそう言いながら、天井を見上げたのだった