クソッタレな世界だけど、本当に欲しかった物を手に入れた 作:ソーダ缶詰
(コンビニが日本語だったからここは日本だと思うんだけど、スマホも電波が届いて無いし地図アプリも動かないんだよね。異世界乙)
ため息をついた所で何も変わらないのでダンジョンの奥へと急いで戻って入り口を塞ぐ事にする。ダンジョンコアに手を触れてシステムウィンドウを呼び出してダンジョンとは何かを確認していく。
ダンジョンのレベルは1。フロア拡張上限が地下3階まで。配下はランク1まで召喚可能。ここまでは今はまだ関係ない。重要なのは次、ダンジョンポイントだ。略してDPと呼ぶが、それが1000DPあってこれを使ってダンジョンを拡張したり配下を召喚したりアイテムを購入したりするようだ。お外の状況以外は俺の願った通りの世界で涙が出るね。錬金術スキルが泣きながら命乞いしそうなDPサンはどうやらダンジョンの経験値と連動しているらしく、DPを消費すればする程ダンジョンが経験値を獲得する仕様らしい。
取り急ぎダンジョンに入ってすぐの場所に小部屋を100DPで設置し、玄関側の扉を50DPで買える鉄で補強された扉に変更しておく。これでゾンビがとても賢くない限りいきなり襲撃される事は無くなるだろう。ついでにダンジョンコアが置いてある一番奥の場所も俺専用の部屋として小部屋を設置して残り750DPになった。その階層に敵が居なければ設置された小部屋は自由に動かせる仕様なのは無駄が無くて最高だ。一々売却して再設置させられる仕様だとめんどくさ過ぎるからな。
設置した小部屋は何も無い殺風景なただの部屋だけど、トラップ以外の設備の追加も出来るみたいで私室としても問題なく使えそうだ。それに、ダンジョン全てが何故か明るいファンタジー仕様なのも助かるな。……ここに勘の良い人が入ってきたら不思議な明るさでダンジョンだって即バレするじゃん。対策は……無理か。ダンジョンの入り口は洞窟スタイルだけどそれが駐車場にあるんだよ? そんな入り口をどう隠せって言うんだ。現状で出来そうなのは今の入り口を塞いでしまって他の場所に新たな入り口を作る事だけど、DPが無いので諦めるしかないね。
食事も買えるみたいなのでざっくりと調べてみたが、調理済みの食事が買えるとはいえ、三食まともに食べる計算だと1日で50DPくらいになりそうだ。そこに2ℓペットボトルのお水2個10DPを追加すると1日で60DP程度の食費がかかる計算になる。現在の収入が1日102DPなので、1人で生活するだけならギリギリ何とかなるって所だろう。
端数の2DP? これは拡張した小部屋から得られる収入だ。100DPをダンジョンに投資する毎に1日1DPを追加で得られる素敵仕様らしい。鉄で補強された扉分の50DPは端数なので今は切り捨てられている。ダンジョンを拡張してダンジョンという名の資産を積み上げれば快適に暮らせる未来が約束されていて涙が出るね。
いつか出会うかもしれない生存者を一人拾うだけで収支がマイナスになるって? やめろ、それ以上の発言は宣戦布告とみなすからな。
「これはアレか? 侵入者コロコロしたり、ゾンビコロコロしたり、外の物資を売却してDPに変えれば良いのか?」
コロコロ作戦は置いといて売却システムが無いか探してみると、案の定存在したのでただのゴミと化した仕事鞄を中身ごと売り払ってみた。これがなんと120DPで売却出来てしまった。これでDPは870DPになった。120DPと言えば二日分の水と食料でしかないのでとても安く思えるが、小部屋1つが100DPなので変換レートは気にしたら負けだと思う。ちなみに、足元に置いてあるレジ袋の中身だった未調理の食材とヨーグルトは全部で160DPで売れた。あの、仕事鞄くん……。
この状況を生き抜く為にも外に放置されているあらゆる物資を可能な限り回収し、売却して得たDPをダンジョン拡張に投資する必要がある。ダンジョン入り口のすぐ目の前にあるマンションを直接売却出来てしまえば俺の頭の中で感動のエンディングムービーが流れる所なのだが、ダンジョンの外にある物の売却は許されなかったのでどうしても外のゾンビを狩る必要がある。
現状では鈍そうなゾンビ1体しか見ていないのであいつを倒してしまえば駐輪場にある自転車とか、コンビニのスタンド看板や放置された中の資材を持ち帰って売却できるかもしれない。マンションの中? 扉を開けたらゾンビとこんにちはするかもしれない場所とか後に決まっている。
「チュートリアル戦闘が感染能力を持ってそうなゾンビとか冗談きついわー」
俺の直感が戦闘は危険だと叫んでいる。失敗するぞと叫んでいる。それでも俺はゾンビと戦って、ダンジョンを拡張しなければならない。今やらなければ、いつか出会うかもしれない生存者を見殺しにしなければならない過酷な現実が俺を待っている。その恐怖が今の俺を突き動かしていた。
「そもそもゾンビは感染するのか? いや、感染する前提で準備すべきだ。戦闘だって、体が上手く動かない事を前提にして準備するんだ。状況が変わってもやる事はいつもと同じで良いんだよ」
仕事では取引先との会話を想定して事前に簡単なメモを作り、頭が真っ白になっても絶対必要な会話だけはこなせる様にメモをスーツのポケットに仕込んで商談に臨んでいた。名刺を貰った相手の事を忘れてしまわない様に名刺の裏に相手の趣味や会話した内容を書き込んだりもした。今回はゾンビと戦う事だとしても、やる事は仕事と同じで事前準備をしっかりする。ただそれだけで良い筈だ。
HP100% MP100% 状態:正常
身体能力補正x1.1
魔力補正x1.1
装備補正x1.1
アイテム補正x1.1
生産技能補正x1.1
配下総数0/3
【保有スキル】
比較対象が居ないので俺のステータスが高いのかは分からないが、筋力が1.1倍になった所でぶっちゃけ誤差だと思う。余裕が出来たら体を鍛える事も考慮すべきかもしれない。
HPとMPが%表記なので実数値が分からなくて不安感を拭えないが、今までと同じだと言い聞かせてみれば多少の不安は消えてくれた。
空欄である保有スキルの欄も弄ってみたが何も反応が無かった。習得するにはDPでスキルを買うか、レベルをあげるか、訓練するかのどれかだろうか。
配下の召喚は……能力に関してはざっくりと書かれているが、維持費についてや注意事項の項目が無いのを見て直感でコレは駄目だと理解した。
「ランク1にしては強そうなオークに注意事項が何もない。ファンタジー定番のオークが飯も食わず、魔力も必要とせず、言葉もちゃんと通じて従順で忠誠心も高い。それが全て満たせるとかそんな事ある? それでいて同ランクの弱そうな魔物達と同じ価格帯とかありえないだろ。50DPだぞ50DP」
配下総数が0/3しか無いのも正直不気味だ。もしかして、ダンジョン防衛に使うオークなんかは配下として登録しないで放し飼いにしろという事なのか? オークを放し飼いにしたらダンジョンがオークに乗っ取られる気しかしないんだが。おっさんダンマスのくっころモノとか誰が得するんだよ。やめろよ、それは俺の業界でも拷問だぞ。
それに、例えばオークが忠誠心が高くて有能な配下だと仮定して。もし俺がオークを連れ歩く奴を見たら何も考えずにヤベーと思って敵認定すると思う。だからオークを連れ歩くのはなしだ。オークでふと思ったけど、オークの服って召喚したら付属品としてちゃんと付いてくるのかな? オークの服が無かったら……うん。配下を召喚して戦わせるのはひとまずなしの方向で。
次はアイテム購入だ。DPで買える品を色々物色してみたが、ダンジョンなのに銃が当然の様に買えてしまうのには少し驚いた。ゾンビ物と言えば定番の銃だが当然却下だ。何より音が大きいのが駄目だ。それ以前に銃の扱い方なんて俺は知らないんからな。中二病患者ならFPSをやっていたから銃を扱えて当然だと思い込んで即購入する馬鹿が居るかもしれないが、俺は中二病患者でも銃を買ったりはしないのだ。
銃を扱うには訓練が必要だ。"冷静に""しっかり構えて""狙って撃つ"。そして初めて命中する"かもしれない"のが銃という武器だ。走りながら敵に命中させたり、二丁拳銃でバカスカ撃っても何とかなるのはゲームの中と中二病患者の妄想の中だけだ。例外があるとすれば近距離では絶大な威力と命中率を誇るショットガンか。誰が使ってもそれなりに当たる設計になっているので"訓練すれば"選択肢としてはアリだと思う。ただし、音が大きいので使うとしても決戦兵器としてしか使えないだろうが。
そんなショットガンも本体だけで最低1500DPなので当然買えません。安いハンドガンと弾だけで500DP位は平気でするし、現状で銃を買う選択は最終手段かな。正直ハンドガンを使う位ならライオットシールドと先端をとがらせた鉄パイプとかの方が強そうだ。
魔法も含めたスキルもここから買えるみたいだが、一番安いのが2000DPの奴で自身の身体能力に直接プラス補正が付く【筋力小アップ】とかそんな微妙な効果の奴しかなかった。魔法が習得出来そうな【火の魔法の才能】や【毒耐性】【病気耐性】は最低ランクの奴でも5000DPもした。正直欲しいが……とてもじゃないが買えないね。
そうして隅々まで確認して、今の俺でもまともに扱えそうな武器を発見した。使い捨ての魔法の杖だ。
魔法の杖の使い方は簡単で、対象を指定して杖を振るだけ。100DPで3回使えて魔法の矢や火の矢なんかが撃ててしまうお手軽武器なのに有効射程が30mもある。この対象を指定して発動するという点が非常に重要で、指定した場所に命中する仕様なら狙った対象が少し移動するだけで回避されてしまう。でも、対象を直接指定する魔法であれば魔法発動後に対象が少し移動した程度では避けられないようになっていると思われる。もしこの予想が正しければ、魔法の矢や炎の矢は回避行動を取られなければ基本的に必中するものだという事になる。これが事実なら恐怖に竦んで体が動かなくても、腕を振るだけで命中するし最悪の状況でもゾンビに勝てる筈だ。
問題は、使用回数に対して値段が異常に高い点だろうか。ハンドガンの弾は36発で50DPだったので1発のお値段は約1.38DP。魔法の杖は1回で約33.3DPとコスパが最悪だ。しかも使用回数を増やせば増やす程に値段が跳ね上がる仕様らしく、魔法の矢の杖が最低使用回数の3回で100DP、4回だと140DP、5回で190DPと値段がどんどん増えていっている。そのデメリットを考慮しても必中ならば魔法の矢の杖の方が便利そうだ。
さっそく魔法の矢の杖使用回数3回の奴を2本購入すると、先端に透明な石が取り付けられた1メートル程の長さのシンプルな杖が目の前に出現し、重力に逆らえずに床に落ちて転がった。
「……反抗期かな?」
床に転がる杖は見た目よりも軽く、手に持つだけで何の杖か理解できるし使用回数も理解できる素敵仕様だったのは素晴らしいと評価したい。これなら杖を沢山買って分からなくなって困る事にはならないだろう。
次は回復アイテムだ。HPを回復する治癒の杖は値段が魔法の矢の杖の3倍もするようだ。しかもHPを回復する治癒系の杖、状態異常を回復する癒しの杖、病気を回復する生命の杖、呪いを治療する浄化の杖の4種類もあるようだ。……呪いってなんだ。いや、呪いについては今考えなくていい。
問題は、ゾンビの感染が状態異常なのか、病気なのかという事だ。一番安い奴で300DPもするので今は二つも買いたくないし、買ったとしても確実に感染を治療できるという保証はどこにも無い。600DPも使用して効果がありませんでしたはいくらなんでも笑えないのだ。
「そういえばポーションがあったな。容器がガラスビンだから最悪割れるから避けてたけど、HPが回復する治癒のポーション(赤)に状態異常の癒しのポーション(青)、病気治療の生命のポーション(緑)が1個50DPで買えるし今はこれにしておこう。残りは680DPか。200DPで鑑定の杖を買ってゾンビを鑑定するかどうかだけど……。今後の事を考えるなら一度はゾンビを鑑定すべきか」
もし鑑定に反応してゾンビが襲ってきたら、鑑定結果の確認をせずに倒すとしよう。勿体ない気もするけど、今は命を大事に、だ。