クソッタレな世界だけど、本当に欲しかった物を手に入れた   作:ソーダ缶詰

8 / 11
いつも読んでくれてありがとう。今日も何とか更新です。


ダンジョン内での立ち位置

 ダンジョンの9階を人間の住居に改造してから三日が経過した。あれからダンジョン内の10階談話室は……空気が最悪です。

 

『いつまで使えない人間を飼うつもり? 地上の土地は余っているのだから地上に住まわせればいいのに』

「地上が住めないって話はしただろ?」

 

 ミリムだけではなく、全てのエルフは筋金入りの人間嫌いだった。

 比較的話が通じるミリムですらこれなのだ。しかもりんさんを馬鹿にする意図をもってエルフ語を使う始末である。

 人間の中でも魔法を使える者に対してはまだマシな態度を取るが、魔法を使えない者に対してはミリムを含め全てのエルフ達が終始この調子なのでたまったものではない。

 

「そこのエルフが何を言っているのかは分からないが、貶されていること位はわかるぞ」

『魔法も使えないデクの分際で口答えするな。土を肥やす役目を果たせ』

「流石に言いすぎですよ」

 

 スノーが呆れているがミリムはどこ吹く風といった所だ。りんさん達にはDPでスキルを習得させられなかったのも相まって終始この調子だ。

 「土を肥やす役目を果たせ」はエルフ流の罪人に対する言葉で、ニュアンスとしては「死をもって償え」が近いだろうか。

 

「殺して来た魔物の数が数だからな。恨み言の一つも言われて当然だ」

「それ、エルフの事情とは全く関係無いんだよね。もういっそ決闘でもさせるか?」

『来れ、審判の時』

 

 スノーはやたらとかっこいい詠唱で2本の氷製の旗の造って片方を渡して来た。旗だけどただの氷だからカッチカチだが、スノーの言いたい事は分かった。

 

「りんさん、正式にミリムと決闘でもしてくれない? 殺さない程度に加減してくれればそれでいいから」

「私は別に気にしないぞ?」

「ミリムの言動は私でも不快なんです。人間を舐めたら痛い目を見ると教えてやるのです」

『マスターも、ダンジョンマスターと人間の、生物としての格の違いを感じるでしょう?』

「ダンジョンマスターの俺も元人間なんだけど?」

『今も人間のつもりだと?』

「心まで人間を辞めたつもりはないけど」

 

 ミリムにわざとらしくため息をつかれてしまった。あー、もう、本当に話が通じないや。俺の知ってるエルフと違うんだけど。

 現実のエルフは性格が地雷すぎないか? そりゃあ人間とエルフが対立する物語も書かれるよ……。誰かこのエルフをお仕置きして分からせてくれ。あ、薄い本だとこの場合、お仕置きするのは俺になるのか? ……俺にだって、選ぶ権利はあるぞ。

 

『魔法から逃れられる人間は居ません』

「魔法も万能ってわけでもないのですよ」

『それは、スノーさんが魔法を使いこなせていないだけでは?』

 

 あ、スノーがめっちゃいい表情でニコニコしてる。終わったな。

 

「なるほど。ミリムはエルフ達を代表する、魔法を使いこなせる素晴らしいエルフなんですね」

『当然でしょう?』

「では、りんさんとの戦い方を私に指導して貰えないですか?」

 

 終わったな。あ、終わるのは当然だけどミリムの方だよ。当のりんさんは平然としている辺り、魔法使いの相手も慣れているのだろうな。

 この世界に溢れる魔法はマンションを一瞬で氷のオブジェに変えてしまえる威力がある。しかも、手間暇かけて魔法の杖を生産すれば似たような威力の魔法の杖が生産出来てしまう。だから、魔法の杖の生産や使用にとんでもなく有利な種族であるエルフが慢心するのも分からなくはないのだ。

 ただし、その理屈が通るのは弾幕を張れる頭数を用意できる場合だけである。1対1ではミリムがりんさんに勝てる要素は無いと思っている。その理由は……時期にわかるだろう。

 

「りんさんの仲間達や他のエルフも呼んでいいです?」

『何故ですか?』

「マスターの為に、戦闘中はどう動くかを指導して貰いたいのですよ」

『良いでしょう。エルフには指導は必要ありませんが、人間達には必要ですからね』

 

 スノーに乗せられたミリムはりんさんと決闘する事になり……現実をわからせたいスノーの思惑で観客を呼ぶことになってしまった。

 

「ダンジョンマスターも大変だな。適当に負けてこようか?」

「バカエルフ達は1度、現実ってものを知るべきです。それでエルフ達が変わらないなら、排除するか、それとも役職を取り上げるかするべきです」

「……排除まではしたくないんだけどなあ」

「なら勝ってくるよ」

 

 スノーはミリムにもあえて聞こえるように喋っているが、ミリムはどこ吹く風といった様子だ。これにはりんさんも流石にまずいと思ったのか、真剣な表情に切り替わった。

 全員を9階に【転送】し、集まったエルフ達によって急造された決闘ステージへと向かうりんさんを見送り、エルフ達をどうにか改心させられないかと悩んでいたらスノーがやってきた。

 

「はぁ、そんな態度だから役に立たないエルフ達が付けあがるんです。マスターがお人よしだから生かされているだけだという現実を理解させないと駄目です」

「役に立たないは流石に言い過ぎ。ダンジョンの維持管理業務くらいならやれてるし、エルフ達の拠点を拡張してるからダンジョンの収支も増えて一応プラスではあるから」

「その程度ならうちで寝てる仲間(おばか)達でも出来るんです。マスターが命令すればすぐですよ」

「命令は使わないよ。スノーの気持ちも分かるけどね」

 

 確かにスノーの仲間達にも積極的に活動して欲しいとは思う。でも、こんな世界だからこそ静かに暮らす自由を認めてあげたいのだ。休みたければ好きに休んでいい。それを俺が認めなければ、戦えないし働けもしない人達は、食料の無駄だから出ていけという話になりかねない。

 その時に俺がそれを許しても、仲間となった人間達が活動できない人間を許す社会を築くかどうかはまた別の話なのだ。だから、取り返しがつかなくなる前に活動できなくても許す社会を作っておくのだ。

 

「はぁ、やっぱりお人よしですね。それと……」

「案の定、ミリムが負けたな」

 

 結果は俺とスノーの予想通り、風の刃で腹を傷つけられながら突っ込んだりんさんが、強引に正面突破してミリムの首にブロードソードを突き付けて勝利した。

 人間も含めた全ての生物は、頭が潰されない限りは即死したりはしない。仮に致命傷を負ったとしても即座に動けなくなるわけでは無いのだ。

 派手に血を流したりんさんだが、ポーションポーチから取り出したポーション一つで傷口は全て塞がって回復したようだ。

 

「まあ、勝ち目なんて無いよな」

「上級治癒ポーションや極めた治癒魔法は欠損だって治るんです。即死しない攻撃なんて無視して突っ込んでくるに決まってるんです。一撃で気絶させられなかった時点でミリムは詰みですよ」

 

 スノーの氷属性魔法はとても強力だ。だけど、相手が簡単に即死してくれるわけじゃない。生きたいと抗う全ての生物は、死ぬ最後の瞬間まで確認しないと本当に危険なのだ。だが、エルフ達はそんなことすら理解出来ていないのだ。

 

「ミリムが他のエルフに怒られてるです……ちょっと行ってくるです」

 

 人間達がりんさんの強さに盛り上がる中で、仲間から責められているミリムの元へとスノーが向かう。

 

「他のエルフが挑まないのは勝てる自信がないからですか?」

「なんだと、馬鹿にしているのか!」

「ふふっ。いい気味ですね」

 

 スノーは怒鳴るエルフ達を無視して俺の元に戻って来た。

 

「煽りすぎでしょ。後で揉めるよ?」

「知らないです。危なくなったらマスターの部屋に住むから良いんです」

「やめろよ。エルフ達が俺の元まで来るだろ」

「マスターナラナントカデキルトオモッテイルノデス」

 

 思いっきり棒読みしたスノーを軽く小突くと、反省の態度を示す様にベーっと舌を出して来たので後ろにまわってこめかみをグリグリしておいた。

 

「いたっ、痛いです。反省、反省してるです!」

「本当に?」

「マスターに対する態度は反省してるです!」

「こいつ何も反省してねえや」

 

 そういいながらもスノーを解放した俺はスノーを贔屓しているのかもしれない。でも、俺が困っているとスノーはよく手伝ってくれるのだ。好き勝手やっているだけのエルフとは違って、この位の贔屓はしても良いと思う。

 そんな風にスノーとじゃれあっていると、決闘の準備が整ったのか自信満々の男エルフが魔法の杖を片手にりんさんと対峙する。

 わざと様子を見ているりんさんがエルフに先手を譲り、エルフが杖を振ると石の防壁を造り出され、りんさんの移動を阻害した。そして、その防壁を叩きつけるようにりんさんに向かって倒し……りんさんは頭だけ守って普通に正面突破して勝ってしまった。

 

「石による質量攻撃ですか。無意味なことしてるです」

「回避すらせずに正面突破はえぐいって」

「りんさんは痛みで片腕を庇っているけどそれだけですね。ポーションで全快です。これは私でも止められないです。りんさんが【守護者】を持つ程の温厚な人で良かったです」

 

 

 

 鈴野りん 上級戦士Lv36 経験値31%

 HP100% MP0% 状態:正常

 身体能力補正x6.4

 魔力補正x0

 武器補正x2.8

防具補正x1.9

 アイテム補正x1.9

 生産技能補正x0

 

 【保有スキル】

 【大剣適正+++++】【大剣技+++++】【重力耐性+】【統率】【直感++】【怪力+】【悪路走破+】【壁走り】

 

 【称号】

 【大剣技の継承者】【守護者】【クラスチェンジ達成】【ダンジョンマスター殺し】

 

 【装備】

 【歴戦のミスリルブロードソード】   全長85cmと少し長めの幅広の剣。ミスリル製武具は魔力に干渉する事が出来る。 【歴戦】特定の人物が長く使用し続けた武器。荒木将か鈴野りんが装備時に大剣適正上昇。

 【イビルリザードの全身革鎧】   悪魔と称されたリザードマンの革を剥いで作られた鎧。鎧が傷ついても自己再生する。物理と魔法に若干の耐性を持つ。

 【軽業の靴】   魔法が付与された靴。履くだけで効果がある。  【エンチャント】壁走りなどの危険な動きを補助する。

【造血の腕輪】   魔法が付与された腕輪。  【エンチャント】HPを回復した時、同時に血液を補充する。

 【自然治癒力の指輪】   魔法が付与された指輪。  【エンチャント】自然治癒力が向上する。

 

 

 

 人間だから頭を潰せばそれで死ぬとはいえ、スノーが戦いたがらないのも納得する強さだ。しかも、俺達は誰も持っていない【称号】持ちで【ダンジョンマスター殺し】持ちだ。そんなりんさん相手に実践経験が無くて頭が固いエルフ達では勝てるはずも無い。ここでコテンパンにされて学習してくれると良いんだけど。

 

「エルフ達が立場を守る為に人間を排除しようとするのなら、ちゃんと始末をつけるのですよ?」

「大人しくしていてくれれば、排除したりしなくて済むんだけどな」

「ぜーったい無理です。自由に使えるDPでレベルをあげたらまた慢心するに決まってるです」

「嫌な予想だなあ。そうならない様にやれることはやるよ」

 

 床に崩れ落ちて呆然としているミリムよ、頼むから俺に仲間殺しなんてさせないでくれよな。ただ傲慢さを捨てて、森の中で穏やかに暮らしてくれるだけで良いんだからさ。




閲覧数とかの確認方法を今日知ったけど、ちゃんとお気に入り登録されていたんだね。
なんというか、読者の皆ありがとう。

1話に大体8時間くらいかかるんだけど、慣れたら早くなるのかなー。なると良いな。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。