クソッタレな世界だけど、本当に欲しかった物を手に入れた 作:ソーダ缶詰
あと、残酷な描写のタグをつけ忘れていたのでつけておきました。
「あのさ、今から村中のエルフ達を集めてくれる?」
「負けた私達を笑い者にしに来たのか? ゲスな人間どもめ」
「そんな事しないっての。単純にダンジョンについての話し合いだよ、話し合い」
そこのイケメンエルフよ、被害者でもないのに普段から醜い思考回路をしているから性格がブサメンになるんだぞ。言ったら喧嘩になるから言わないけどさ。ミリムがアレでマシな方だと思うと今から気が滅入るよ。
権利関係や人間関係の問題は後回しにすればするほど禍根を残すし、ミリムを含めたエルフ達には俺の意図がちゃんと伝わって居ないようだからな。
こういう時に話し合いに使われるのは大抵村長の家とかだったりするけど、今回は村の広場を予定している。何故かって? 俺にはエルフの村を自由にできる権限が無いからだよ。
「全員に聞きたいんだけどさ、俺がなんでここに来たのか分かるか?」
「ふん、人間に媚びる下等な貴様の考えなんぞ分かるわけが無い」
「森に砦を建築しろとでも言いに来たのか?」
あー、あー! もう、こいつら本当に何もわかってないな。いや、これは俺達人間と、エルフの寿命の長さから来る価値観の違いだろうからちゃんと説明するけどさ。それでも駄目ならエルフ達から権限を取り上げるだけだ。
「君達が越権行為をしているからな。苦情を言いに来ただけだ」
「ふん、あの30年も生きていない若造に負けたから笑いに来ただけか」
さっきからクソみたいな発言を繰り返してるこのイケメンエルフ、こいつが扇動者のリーダー格なのかな。他も正直似たり寄ったりだけど、ミリムを中心としたグループはまだマシだからな。
「違うっての。良いから話を最後まで聞けよ。いいか、俺はエルフ達にDPを稼ぐ代わりに召喚以外のDPの使用については自由に出来る権利を与えたし、森をエルフ達で自由に管理する権利も与えた。さらに、ミリムを通して俺に意見する権利と、ミリムにゴーレムとエルフ達を指揮する権限を与えたわけだけど、そこの所、ちゃんと理解してるか?」
そう、エルフ達には森を自由に管理する権利がある。だからダンジョンマスターの俺に、エルフの村を自由に歩く権限が無いわけだ。だけど、エルフ達が関わらないことに関しては権利も権限も与えていないんだよな。
「俺は、エルフ達に他種族を評価する権利も権限も与えてはいないんだよ。なんで勝手に人間達を侮辱して、俺を決定を無視して勝手に評価をくだしてるわけ? ダンジョンマスターは俺で、最終決定権を持つのも俺だ。人事権を持っているのも俺なんだよ。なんで勝手に人事権を行使してるんだよ」
「私達はちゃんとDPを稼いでいる。あの強い人間ならまだしも、何もしてない人間や雪女達が優遇されているのが気に入らない」
「俺はそんな話してないから。君達が権利と権限を超えているからやめろって言ってるだけだ。論点をすり替えんな」
「あいつらは優遇されているだろ! 何故私達エルフだけがこんな扱いを受けなければならないんだ!」
はー、感情的になってる人の相手は面倒だなー。うーん、ミリムを含めた一部……合計で6人か。6人はまだ冷静だし話を聞いてくれる気はあるみたいだけど、残りの14人は駄目だな。この
「分かった。で、どこが不満なんだよ。別に優遇なんてしてないけどな」
「スノー以外の雪女達は碌に役に立っていないだろ! なのになんで特別扱いされているんだ」
「特別扱いとかしてないけどな。君達もDPを稼ぐのが嫌なら権利と権限を返還すればいいだけだ」
俺はちゃんと最初に話したんだけどな。俺は"可能なら"人間とも他のダンジョンとも争わずに生き残る戦略を取るって。だから俺は雪女達にのんびり生きるという権利を認めてはいるけど、雪山を所有する権利は与えていない。雪女達の村ごと潰す雪崩トラップも設置したし、そこには当然スノーの家も含まれてる。それについてもちゃんとスノーにも説明してあるし。
エルフ達は驚いているようだけど、防衛の為にはそれくらい当たり前だろ。本音を言えば、俺はエルフの村でも焦土作戦を実行したいくらいなんだよ。土地の権利を渡したからやらないけど。
この事実に1番驚いているのは、スノーを1番知っているミリムのようだ。
「スノーは何も言わなかったの?」
「むしろスノーに雪山の権利を渡そうとしたら辞退されたんだよ。10人いるのに全てを1人で管理するのは面倒だってな。だからスノー以外の雪女達は何の権利も権限も渡してないぞ」
スノーも俺に意見する権利と、戦闘においては俺の決定を覆して命令できる権限を与えているくらいだしな。
「俺は、エルフ達がダンジョンの奥で他種族と関わらずに暮らすというのならそれを止めはしない。稼ぎたくないならDPだって稼がなくて良い。召喚したのに送還が出来ない以上、それ位の権利は与えられるべきだと思っている。だけどな、君達エルフは侵略者対策に森に罠を仕掛けようとすると森を荒らされたと怒るし、自由にできるDPが無いと怒るじゃん。だから権利とセットで義務を与えただけだ」
「そんなものはただ詭弁だ。私達はちゃんとDPを稼いでダンジョンに貢献している。貢献に見合うだけの待遇を寄越せ」
「話をちゃんと聞いていたのか? 森を自由にする権利とダンジョンに多少なりとも貢献する義務はセットなんだよ。義務をこなしたからって特別に褒められることじゃない。それに、そういうのはスノーより活躍してから言え」
ミリムを含めた6人はスノーより劣るのが理解できるのか、苦い表情をしている。……残りは駄目か。まだなんか喚いているし。最初にちゃんと説明したんだけどなー。ここが長命種族の付き合い辛さだよな。ダンジョンマスターの俺でも、自分達の半分も生きていない年下の人間でしかないから、子供扱いされて聞き流されるし。
もうあの6人だけ引き抜いて、残りは権利と権限を取り上げたいわ。チャンスを与えない
「権利と権限を放棄して制限はあるけど自由な生活を謳歌するか、権利と権限を得る代わりに義務をこなすか選べ。それと、送還は出来ないけどダンジョンからの解放は出来るから、出て行きたかったらダンジョンから出て行っても構わないぞ。こんな状況だから外でまともに暮らせる場所があるのかは知らんし、ダンジョンからのエネルギー供給が切れたらどうなるか分かったもんじゃないけど、そんなに自信があるのなら地上で暮らせばいい」
不満を溜め込んで内紛を起こされる位ならさっさと出て行ってもらった方がマシなのだ。それが原因で人間達がここを攻めてくるのなら、その時はこの世界が
エルフ達の意見は、あんまり変わらなかったか。ミリムを含めた6人は現状を理解したみたいだけど、それ以外のエルフは子供みたいに若い俺に意見されるのが気に入らないって態度を変えないなー。まあ、これ以上は付き合いきれないからどうもしないが。
「ふん、やはり貴様には従えないな」
「出ていくなら好きにしろ。一緒に出ていく奴は今日中に持っていく物をまとめておけよー」
この調子だと結構な数のエルフが離反しそうだが、離反したエルフ達はちゃんと生きていけるのかね。どっちにしろ、俺の手を離れるというのならもう俺には関係のないことだ。後はミリムになんとかして貰うしかないな。
――――――――――――
「なあ、見送りにりんさんまで呼ぶ必要あったか?」
「用心するに越したことは無いのですよ。それと、使える物は何でも使うべきです」
「私はスノーに呼ばれたから来たが……私に話しても良い内容なのか?」
「その辺は気にしなくて良いのですよ」
「隠し事なんて、ここがダンジョンであること位しか無いからな」
「マスターは嘘をついているのです。電気が使える様になったらすまーとほんとやらの中身を確認するのです」
「おいやめろ。誰だこいつに馬鹿なことを教えた奴は」
出ていくエルフの見送りに俺とスノー、そしてスノーが呼んだりんさんの3人でエルフ達を見送りに来たわけだが。エルフ達は全員集まっているな。
「全員で出ていくのか?」
「8人だ。さっさとダンジョンから解放しろ」
「8人なのか。意外と少なかったな」
出ていく側のリーダー格である|イケメン<クソ>エルフは相変わらずだった。でも、残る側のリーダー格であるミリムは、外の現実を知っているからか、俺を見つけて即座に近づいてきた。
「今からでも引き止めて貰えませんか?」
「言うだけ無駄だよ」
「危険だと思います。それでも止めないんですか?」
「俺に言うな、向こうに言え。それが無駄だと分かってるから俺に言ってるだけだろ」
転職したいと言っている奴と似たようなもので、こういう場合は引き留めても無駄なのだ。その場では何とかなっても、結局いつかはやめて出て行ってしまう。それをミリムは理解していないのだ。
俺より年上の筈なのに、随分と思考が若々しい事で……。変化の乏しいエルフ社会で生き続けると、俺もこんな風になっていたのかな。
そんなあり得ない世界を想像しつつも、システムメニューから8人のエルフのステータスを開く。そこから解放を選択すると、エルフ達の前にそれを承諾するか否かの選択肢が表示された。
「待ってください。外は危険です。水だって手に入るかどうか」
「そんな事は分かっている。ミリムは黙って見ているがいい」
そして、8人のエルフが順番に承諾を選択していく。
「じゃあな。達者で暮らせよ」
「あぁ、そうさせて貰う。――ダンジョンでな」
それだけ言うと、エルフ達は杖を構え……『凍てつく氷よ遮る壁となれ』スノーの生成した氷の壁に魔法の杖から放たれた魔法が突き刺さった。
スノーが用心の為にりんさんを呼べと強弁していたから従ったけど……まさか本当に実力行使に出るとは思わなかったな。
「ダンジョンマスターを殺せ! そうすれば誰の指図も受けない完全なる自由が手に入るぞ!」
「お、お前達! 何をしている!」
俺はスノーに言われた通り、残った12人のエルフ達の様子を観察しているが、本当に何も知らなかったのか、全員ただただ混乱しているだけだ。
「プランCです。りんさんは予定通り片付けをお願いするのです」
「本当に良いのか?」
「相手はただの野盗なのです。躊躇う必要はないのです」
「野盗、だと? 待ってくれ、まさか殺すのか?」
「もう遅いのです。あいつらはただの野盗なのです」
ミリムの言葉を一蹴したスノーの一言を皮切りに、突撃したりんさんがエルフを躊躇いなく斬り捨てた。そして、その真っ二つになった肉体は光の粒子となってりんさんに吸収されて消滅した。
仲間の死に動揺している間に隣のエルフも真っ二つになった。その事実に、エルフ達は冷静をさを取り戻す暇もなく、パニックで発動した魔法もスノーの壁とりんさんのブロードソードに斬り捨てられて追い詰められていく。
「何故だ、何故その人間を守る! 貴様だってダンジョンマスターになりたいだろう」
「冗談じゃないのです。権力欲や名誉欲に取りつかれているお前と一緒にするなですよ」
スノーに冷静な突っ込みを入れられたエルフはすぐにりんさんに斬り捨てられて消滅した。
「やめろ! 今すぐ杖を捨てるんだ!」
叫びながら咄嗟に走り出したミリムは、戦いを止めるべくりんさんとエルフの間に割って入る。そこで無慈悲にもブロードソードで薙ぎ払われてダンジョンの地面をバウンドしながら5mほど転がっていった。そして、本来ミリムに当たる筈だった【爆炎】の杖の魔法がりんさんに直撃して燃え上った。
「今だ、奴を殺せ!」
「私も居るのですよ?」
『凍てつく氷よ遮る壁となれ』
『水よ、かの者を洗い流せ』
『傷つきし者に治癒の奇跡を与える。【治癒】』
流れるように発動したスノーの魔法が、りんさんをあっという間に回復させていく。
回復されている側のりんさんも流石というべきか、燃えて死にそうになっているというのに冷静さを失わず、スノーが援護してくれるのをしっかりと待っていた。
この間、たったの5秒。たったそれだけの時間で戦線復帰したりんさんは、躊躇う事なくあっという間にエルフ達を全滅させてしまった。
「あ、あぁ……仲間達が……」
ミリム以外のエルフ達も、現実を認識したのか涙を流し始めた。
「仲間じゃないのです。ただの野盗エルフなのです」
「野盗、野盗ですか……」
「そうです。エルフ達は、ダンジョンを襲う野盗を支持するのです?」
スノーの無慈悲な問いかけに、エルフ達は力なく項垂れるしか無かった。
おかしい、閑話の筈なのに話が重い。というか実質これが第二章なのでは?
長命種の描写って難しいね。かわいい、かしこい、つよい! って描写にすれば色々と楽になれるんだけど、これ、ポストアポカリプス物なのよね。