旅は終えても勇者の苦労は終わらない   作:アオノクロ

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第17話 金は借りても溜まったツケは払わない

 旅の途中にハプニングは多々あれど、逮捕されることはそりゃあった。

 勇者という称号が届かない田舎だとか、そんなものを無視する貴族とか。

 今回のように勇者ということを知った上で突っかかってくる輩も少なくなかった。

 そりゃこっちのやらかしが原因ということもあったが、今回はさすがにやっかみがすぎる。

 なのでちょっとはっちゃけようかと思った。

 

 

 

「よっ、お疲れ。バンク」

「お疲れじゃないよリヒト〜、今回は何やらかしたんだい」

 

 令状を持ってきた兵士に王都へ連れて行かれたのだが、現在のんきに茶菓子をむさぼっていた。

 貴族が使っても問題のないお金のかかった装飾された豪華な部屋、真ん中の机にはミディアに貰った時と同じくらい美味しいお菓子が山盛りになっていた。仮にも犯罪を犯して連行されたやつがいるような場所ではない。

 もっとも悪いことをした気もないのだが。

 

「なんかチョビひげが突っかかってきたからズラ取ってやった」

「もしかしてチュラ・ビヒゲ? まためんどくさいタイプにケンカうったねぇ」

 

 そう言いながらも目の前で笑っているのはバンク。貴族ではないものの国の金勘定をやっており、貴族とそう変わらない権力を持つ男だ。旅の途中、資金をもらう際に色々と話す機会があり、向こうも貴族ではない自分への話が楽だと仲良くなった。

 困っている時に相談する頼りになるやつだ。主にお金関係で。

 ミディア? 公園を作る時に山を開拓するやつに何を相談しろと。

 

「ミーアの誕生会を邪魔したのが悪い」

「そりゃ悪い、でオタクはどちら様だい?」

「ミーアの友人だ」

「バンクが困ってるだろ、ミカだ」

 

 そしてついてきた魔王もといミカ。

 連れてくる気はなかったが、せっかくなので着いて行きたいと言われたし、自分としてももう少し村以外の世界を見せたいと思ったのが理由だ。

 流石に三人の前に連れていくとばれるかもしれないが、初対面のバンクなら大丈夫だろうという判断からだが、迷惑だっただろうか。

 

「んー? ちょいと聞きたいんだが」

「どうした?」

 

 呼ばれて振り向けば顔を近づけてひそひそ話の態勢、こちらも身を乗り出して顔を近づける。

 バンクはチラリとミカを見ると口を開いた。

 

「そちらのお嬢さんのこと、他の三人は知ってるのかい?」

「いや何も言ってないが」

 

 流石に言えないし。

 顔を覚えているかは分からないが、ルーシーに至ってはスキルによってバレる可能性もある。なので初対面でかつそれほど口が軽くないやつにしか紹介できない。

 

「あーそーなの?」

 

 顔を引き攣らせたバンク。

 やはり連れてきたのは迷惑だっただろうか。

 

「いや人はいいの、リヒトの知り合いだってなら何十人連れてこようが問題ないのよ。ただね?」

 

 チラッとミカを見ると頭を抱えるバンク。

 

「誰も知らない美人な子連れてくるのは想定外で」

「勇者、勇者、美人って言われたぞ」

「おー良かったな、とりあえず飯食って静かにしとけ」

 

 喜んでいるミカをはがして座り直す。

 バンクが悩んでいるのは分かったがミカの正体がバレたってわけでもないだろうし、自分には分からない商人の悩みがあるのだろう。

 頭を抱えたまま準備があるからとバンクはフラフラと部屋を出て行った。

 急に無茶なことを頼んだので迷惑をかけたかもしれない、次出会うことがあれば土産でも渡そうか。

 

 

 

「ところで勇者、ここへは何をしに来たのだ」

「お前さては話聞いてなかったな?」

 

 準備があると出かけたバンクを見送り、用意されたおやつを食べているミカが聞いてきた。

 いや出かける前に話したはずなんだが。

 

「前にズラを取ったオッサンが俺たちに文句言いたいんだと」

 

 言われるがままに王都に来て説明を受けたが、貴族への無礼な行為が罪であるとか元勇者だとしても許されるものではないとか、好き勝手に言ってたが要するに気に食わないから罰を与えると。

 旅の途中でも度々あったことだ。

 

「勇者の方が強いだろう? なぜ戦わん」

「いろいろとめんどくせーんだよ人間の世界は」

 

 強さ、なんて言ってもたくさんある。それなりに鍛えたりはしたものの、大抵のことが許される勇者の称号もなくなったので、個人としては腕っぷしに自信のある一般人でしかない。人それぞれが持つ強さなんて、発揮する機会、タイミングが合わないと意味は無い。そういう意味じゃ自分は全然弱いのだ。

 今回に限ってはこっちの事情もあるし、今回発揮できる強みを持つ三人の誰かを頼るわけにもいかない。

 内密に、貴族相手でも対応できるという条件を満たしているのがバンクしかいなかったのだ。

 

「そーろそろ来るとは思ってたしな、ここいらでちょっとやっとかねぇと」

 

 背伸びをする自分をミカは不思議そうに眺めていた。

 

 

 

「言われたとおりにしたけど、ホントにいいのかい?」

「あぁ、助かる」

 

 バンクに準備ができたと呼ばれたので無駄に装飾された長い廊下を共に歩いていく。

 

「こっちの方で無罪にすることもできたけど、わざわざ受けるのかい」

 

 貴族からお前は犯罪者だ!と言われて無罪を勝ち取るのはなかなかに難しい。権力も力には違いないので証拠や証言もある程度は自由なのだ。もっともルーシーのようなスキルを持っている奴に見抜かれて逆にご用なるやつもいるが、

 

「そりゃそうだろうけどな、この手の奴は何度も来る。そうならないよう初手で折る」

「念のために聞くけど物理的にじゃないよね?」

 

 今回のように、執着心があるやつは適当に相手をすると増長して大事になる。

 昔、カレンの路上ライブをした時も、変な追っかけができてめんどくさいことになった。最初は穏便に注意してすましていたが、徐々に問題が大きくなり、結局ぶん殴って牢屋に放り込む大事になってしまった。

 その時の経験があるからこその今回、この手のやつは初手で心を折るのが手っ取り早く確実に終わらせる。

 

「だから他の貴族もいっぺんに集めたのかい?」

「また聞きよりも自分の目で見ないと納得できないやつは多いだろ、そんで自分ならって同じことをするやつもいるかもしれない」

 

 バンクの影響力はそこいらの貴族以上にある。それこそ刑を変更するなど朝飯前だ。

 あといろいろできる。ほんとにいろいろ。昔酔った勢いで言った冗談がホントになりそうでちょっと怖かった。

 そんなバンクに頼んだのは二つ。

 一つはチョビ髭みたいにめんどくさそうなことを考えている貴族を集めること。理由はさっきの通りタダではすまないということを広めるため。

 もう一つは、

 

「そのために貴族のお遊びに付き合うなんてねぇ」

「なんかダメだったか?」

「いやいや、皮肉がきいてていいと思うよ?まぁあえて言うなら」

 

 これを考えたのはどこのバカなのか、貴族だったり商人だったりが思いついた暇つぶしなのだろう。

 罪人に武器を持たせ闘技場へ送り出す。

 そこへ訓練された兵士やら猛獣やらと戦わせる。最初に決められた相手に勝つことができたら釈放されるという条件付きで。

 実際に釈放されたやつもいるみたいだが、所詮趣味の悪いおふざけ。

 だがバンクの力も借りて今回は逆に利用させてもらおう。

 

「見せつけてやりたまえ勇者」

「おうよ」

 

 差し出された拳に拳を当てる。

 

「かかった費用は後で請求するよ」

「おー、ツケといてくれ」

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