旅は終えても勇者の苦労は終わらない   作:アオノクロ

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最近二次創作を書いてみたんですが、これが文章の練習になるし、案外楽しいで夢中になってたら日刊ランキングに入ってました。

メインはこっちです、ホントです


第19話 金剛石でも磨いたガラスに敵わない

 天狗になるな、という言葉がある。

 これを簡単に言うと調子に乗るな、である。まったくもってその通りだと思う。

 特に自分のパーティーにはぶっささる。どいつもこいつも、バカばっかりで煽てられて褒められて一文無しになることが何度もあった。

 

 あー、自分のことはいいじゃん別に。いや、うん、確かに自分が原因でやらかしたこともあるけど、パーティー内だと三番目だから! ちなみに一番はカレン、依頼を達成してほめられると調子に乗って魔法を使い報酬以上の被害を出すことの多いこと多いこと。

 

 まぁそんなわけで、何が言いたいかっていうと、

 

 調子に乗ったら足元すくわれて痛い目に合うよってこと。

 

 

 

 

 

「つまりわたしも遊んでいいと」

「そこで立ってるだけな」

 

 何故か闘技場のフィールドへ降りてきたミカ。何があったと思いきやお菓子を食べきってヒマになったらしい、子どもか。いや子どもだったわ、走り回って鬼ごっことかしてたわコイツ。

 

「フハハハハハ、わたしを手に入たければゆうしゃを倒してみせよ! 見事たどり着いたものには褒美を授けよう!」

 

 腰に手を当てて、置くまで通る声で煽りだすミカ。まるでおとぎ話に出てくる勇者を試す魔王みたいだ。いやホントに魔王なんだけど、堂に入りすぎて兵士もあの子演技上手いなーって顔してる。

 

 ごめん、これ本物です。

 

「どうした? 怖気ついたのか? 生涯遊んで暮らせる財宝を手に入れたくはないのか? そこにいる彼女いない歴が年齢のお前、金が手に入れば女もできるぞ? そこのハゲ、妻に邪魔とか言われて娘には話しかけないでと言われてそうなお前だ。金を手に入れて家での立ち位置を取り戻したくはないのか? そう、ゆうしゃを倒しわたしのもとへたどり着けばなんでも願いは叶うのだぞ?」

「ほ、ほんとだな!?」

「あぁ、もちろんだとも、もっとも、たどり着けばの話だがな?」

 

 ミカの煽りにやる気のなかった兵士たちの目に生気がともる。息がきれて座り込んでいたもの、こそこそと隠れていたもの、まだ意識があり病室へ運ばれていないものたちが息を吹き返し、立ち上がってくる。

 

「おし、うだつの上がらない人生だったが、ここいらで一発逆転狙ってやるかぁ!」

「帰ったら家族に自慢できるな」

「おれは手に入れた大金で初めてを美人なお姉さんに捧げるんだー‼」

 

 それぞれがそれぞれの目標や夢のため、強敵へと挑もうとする。一人一人の力は弱くても、束ねればそれは風穴を開ける一手になると、そう信じて。

 

「おっし、おれたちの底力、あの野郎にみせてやろうぜぇー‼」

「「「「ウォォォォォォ‼」」」」

 

 年長者っぽい兵士が剣を掲げ、ほかの兵士を鼓舞する。折れていた心はどこにもなく、夢という希望に目を輝かせ、体中から活力がみなぎっていた。

 

 威勢よく、大声をあげながら突撃していく兵士たち。その強さはかの勇者と比べても、

 

「くらえ、勇者ァ! これがおれたちの「はいドーン」ギャアァァァァ‼」

 

 まぁ、くらべても弱いよね。うん。

 

「よい、っしょー!」

「「「「ナァァァァァァァ‼」」」」

 

 ちょっと力強く大剣を大振りすると吹っ飛んでいく兵士たち、さっきまで見ていた光景と何も変わらない。逃げ惑うの追うのから、かかってくるのを反撃する作業に変わっただけだ。

 

「おーよく飛んでるなー。ひぃーふーみぃー」

 

 なおたきつけた本人は、倒れた兵士の上に座って眺めている。さっきまでカリスマはどこへいったのやら、子どもみたいな無邪気な目で飛んでいく兵士たちを数えていた。

 

 これもこれで魔王っぽくはあるか。

 

 とりあえず追いかける必要のなくなった相手を適当に吹っ飛ばしていく。うん、これはこれでなかなか楽しい。

 

 こうしてミカが煽ることで突撃してくる兵士たちは楽しく吹っ飛ばす作業に没頭した。

 

 

 

 

 

 さて、だいぶ吹っ飛ばしたのだがまだ出てくるのだろうか。

 

 周りを見渡してもボロボロになって倒れている兵士しかいない。流石にやりすぎたかと反省。でも楽しかったので満足。

 

 そう思ってたら奥の通路から足音が聞こえる。やった側なのだがまだやるのか、いろいろと大丈夫なのだろうか。どうせ引っ込みがつかなくなっただけな気もするが。貴族というのは得てしてそうだ。

 

「ゆうしゃゆうしゃ」

「ん? どうした」

 

 充分楽しんだのでそろそろ終わるかと考えていたら、ミカに後ろから裾を引っ張られた。

 

「わたしも遊びたい」

 

 こちらを見る目には「ひま」の二文字が浮かんでいる。さっきまで空を見上げてどんな形に見えるかって遊びをしていたが、飽きたのだろう。というかもはや暇つぶしだよなそれ。

 

「いいぞ」

「やったぁ」

 

 しばらく考えて許可をだす。一撃くらいなら大丈夫だろうし、それも自分がやったことにすれば問題ないだろう。

 

「いいか、派手に吹っ飛ばすだけで危なくないようにな」

「わかった」

 

 どれほど伝わったのかは不明だが、ほんとに、ほんとにヤバそうだったら間に割り込んで威力を落とせば大丈夫だろう。そう、気楽に考えていたのだが、

 

「ありゃ?」

 

 少し目を離すといない。闘技場ないは隠れられる場所もないし、もうすぐ追加の兵士も来るのだが、トイレにでもいったか? そう思ってキョロキョロしていたら、あんぐり口を開けて驚く観客席の貴族たち。目線の先は自分よりもズレていた。

 

 そう思った時、上から魔力の昂りを感じた。

 

 見上げれば上空で魔法の準備をするミカ。

 

 あーうん、やらかしたかも。

 

 一般の魔法使いが見れば杖を落とし、土下座で弟子入りか諦めて田舎に帰るレベルの高度でとんでもない量の魔力が貯まっている。カレンのライブで打ち上げた最後の一発くらいかもしれない。

 

 通路から出てきた兵士も足を止めてポカーンと見上げている。

 

「はぁー!」

 

 気合いが入ってるのか入っていないのか分からない、そんな掛け声と共に魔法を打ち出す。それなりにゆっくりだったのだが、避けたり逃げたりする思考は誰にもなく、真正面から受けた。

 

 闘技場を光が破裂し、一泊空けて轟音が鳴り響く。

 

 光と煙が収まると、そこには死屍累々の兵士たちとボロボロになった闘技場。砂埃を被って咳き込む自分を見て、ミカは上空から笑顔でピースしてみせた。

 

 空を舞い、纏った服をはためかせながら佇む姿は魔王と言っても過言ではなかったが、こちらに見せる笑顔は天使のように眩しかった。

 

「リヒト、説明してもらうよ?」

 

 誰もが呆然とする中でバンクだけが次にすべきことを考えていた。

 

 

 

 

 

「で、これはなに?」

 

 あの後また控え室へ案内され、お腹が空いたと言ったミカとお菓子を食べていたら、何やら偉そうな人に呼ばれた。着いていくと豪華な部屋に、大量のご馳走が並べられ、闘技場にいた貴族たちが並んでいた。

 

 ふむ、排除ではなく懐柔に来たのか? と思っていると、こちらに気がついた貴族、あ、チョビひげじゃん、がこちらへ来た。

 

「この度は、我らの無礼大変申し訳ございませんでした。代表して謝罪申し上げます」

 

 まさか謝罪、後ろの貴族たちも同じように頭を下げている。

 

「いやまぁ、別にいいけど」

「その恩赦に、感謝いたします勇者さま」

 

 だいぶ態度がアレだが、どうやら彼らの中で何かがあったらしい。誠心誠意謝っているし、後ろにいるミカもご馳走に目がいってお腹を鳴らしてる。こっちも久しぶりに運動したのでご飯を食べたいのだ。

 

「あーならここのご馳走「と影武者さま」はい?」

 

 今なんて言ったこのチョビひげ?

 

「まさか真の実力を隠し、さらには影武者を用意しておくとは、その慧眼恐れ入ります」

「はい?」

「世間一般で聞くのはパーティーメンバーの三人ばかり、それもそのはず情報漏洩を防ぐための手段であったとは!」

「え、なにそれ知らない」

「何をおっしゃる影武者さま、彼女こそが勇者さま! 先ほど見せたその実力! そして腰に着けている勇者の剣こそ、その証!」

「え、えーっと」

「えぇえぇ、詳しいことは聞きません、今日の出来事も漏らしたりはしませんとも‼︎ 隠されていたその実力、我らが拝見できたことを家宝とさせていただきます‼︎」

 

 そしてすでに料理へ手を出しているミカに大勢の貴族が向かっていく。数々の褒め言葉に適当な相槌をうちながら食事をするミカをポツンと見るしかない。

 

 執事っぽい人に渡されたグラスをグイッと傾ける。

 

 ふむ、どうやら勇者は魔王の影武者だったらしい。

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