旅は終えても勇者の苦労は終わらない   作:アオノクロ

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あまりに暑いのでアイスを買ったら雨なんかで気温が下がりました、なんでや


第6話 仕事に慣れてもできないオーラは変わらない

 どうもリヒトです。

 旅の仲間であるカレンは現在アイドルをしており、自分もその手伝いに呼ばれたのですが、

 

「そっちの照明こっちに持って来て!」

「これグッズが入った箱だから販売テントによろしく!」

「魔導砲の最終確認のために起動するからちょっと手伝って」

「あんたらさっき助け呼んだのに無視したよなぁ!!」

 

「「「そんなの後でいいから仕事」」」

 

「くそったれが!!!!!」

 

 絶賛パシリにされています。

 

 

 

 カレンのテントからおっさんに引きずられて行くと、見覚えのあるステージの裏方。というかさっきまで吊り下げられてた木の目の間に戻ってきた。

 しかもおっさんに猫のように持ち上げられてぶら下げられて…………さっきと一緒じゃねぇか。

 

「みんな手を止めずに耳だけ貸してくれ」

 

 とは言ってもスタッフの人に紹介するだけだろうし大人しく、

 

「この兄ちゃんがカレンさんが言ってた都合の良い助っ人だ」

「おい待ておっさん、都合の良い入らなくないか? 助っ人だけでいいんじゃないか?」

「荷馬車のごとく働かせて良いと許可はもらっている」

「あいつにそんな権限はねぇ!」

「体力に魔法知識と豊富だから好きに使えそうだな」

「最後に至ってはおっさんの意見じゃねぇかおい!」

 

「「「よっしゃ」」」

 

「よっしゃ!?」

 

 それからはあっちへ行ってこっちへ行ってと明らかに人一人に任せる仕事量じゃない仕事をこなした。

 しんどくも汗水たらして走り回っていると徐々に何かが身体を満たしていく、これは誰かのために幾度となく走り回っていた、勇者時代の記憶…………。

 

「何も変わってねぇ「そこ、過去を憂う暇があるならスタッフ用の水運んで」うーす…………」

 

 反論も愚痴も言う暇もなく言われた通りに動く。そこには本来あるはずの強さも関係なく。

 

『今日もアタシを身体も心も余すところなく焼きつけなさい!!』

 

 もしや自分はパシリになる運命なのだろうか。

 ライブの始まりを告げるカレンの声が遠くに聞こえながらも、身体は出された指示の通りに動いていた。

 

 

 

「はーい昼の部終了! 今日も盛り上げ最高潮! 流石アタシ!」

「お疲れ様です最高でした、ちゃんと休息と栄養とってくださいね」

「もちろん! プロとして体調管理も完璧にするわよ!……………………で、何あれ」

 

 ライブは今日1日を通して行われる、昼から夕方にかけての昼の部に時間を空けて行われる夜の部。

 どちらも手を抜くなんてことはないが、夜の方が時間が長くその分の準備なんかも多い。

 

「機材の見取り図「置いときます」」

「誘導案内の人員「グッズ販売テントから呼ぶので待っててください」」

「予備のライト「第三テントに余りがあるので持って行かせます」」

 

 企画書は全て頭に入れてあるから、後は声をかけた人と最初の一言で予測。聞かれたことを予測し全て聞く前に答える。

 

「予想以上に有能だったので代理現場指揮官の立ち位置に着いたみたいですよ」

「気持ちワル」

 

 今ある道具、人員を把握して時間ごとに必要な場所で配置、補給していく。計画書があるがズレが起きるのが現実。ゆえにどこを削り、どこに力を入れるのかを計算しなければならない。

 そしてもちろんこのライブの主役にはちゃんと労いの言葉をかけるのも仕事だ。

 

「お疲れ様ですカレンさん、昼のライブはカレンさんのおかげで大盛況でした。夜の部に向けてゆっくりと休んでください。必要なものがあったら「ファイアバレット」アッチャァ!!」

 

 急に頭燃やすとか何してくれんだこいつ!

 慌てて頭に着いた火をはたいて消すも、一部は焦げていた。

 

「おい何しやがりますか! 今日のプログラムに人体発火マジックはないですぞ!」

「いやアンタ誰よ、アタシがライブやってる間に何があったのよもっかい燃やすわよ」

 

 そう言って手のひらに炎を灯す。だけでなく背後にも四つの火の玉が浮かんでいる。

 

「何で魔法を全力で撃とうとしてるんですか!!」

 

 通常魔法使いは魔法を一つ、出来ても三つしか同時に発動できない。

 それをカレンはスキルによって五つ同時に放つことができる。

 単純計算で五倍の威力になる。もちろんそんなものを喰らって無事に済むわけがない。

 

「いや待って、待ってください。ちょっと仕事してたらどんどん慣れてきて気が付けば」

「今日はアタシのパシリだってのに「それは絶対にちげぇ」」

「お、直りましたね」

 

 まさかマネージャーさんに突っ込まれる程のめりこんでいたとは、パシリ根性が…………いややめておこう。わざわざ認める必要もない。

 

「なんかあれよね、パシリ根性ここに極めりって感じよね」

「ダメですってカレンさん、あれでも勇者ですから」

「カレンてめぇ!! あとマネさん自分何かしたっけ!?」

 

 初対面な気がするけど辛辣すぎない!? 以前の幼女をはじめみんな勇者にきつすぎる、しまいには拗ねてぐれるぞ。

 

「いろいろお話伺ってるので」

「すいませんでした、何でもおっしゃってください」

 

 一言でひれ伏した。何を言ったのかは分からない、分からないがロクなことを話してる気はしない。旅の全てを詳細に覚えてるわけでもないが、やらかしたことが多いことだけは記憶している。

 悲しいことに、成し遂げたことよりもやらかしたことの方が多かった旅だ。

 

「言いふらしてほしくなければ、そうですねカレンさんの話でもお聞かせください「マネージャー!?」」

「仰せのままに「アンタも何言ってんのよ!!」」

 

 仕方がない、弱みを握られてしまったのだ。こうなれば1人でも多く道連れにするほかできることはない。

 

「ではカレンが大っぴらに豆知識をひけらかして間違えた時のことを」

「ほほう、それまたカレンさんらしい」

「はぁ⁉ そんなことないですけど!? 記憶を捏造するのやめてもらえる!?」

 

 そんなマネージャーさんの要望通りにカレンのやらかしを話そうした瞬間、小さな声が聞こえた。

 

「あれ? 魔法貯蓄機から変な音しない?」

「ほんとだーすいませーん、ちょっといいですか?」

 

 テントから少し離れた場所で、二人の魔法使いが扱っていた魔道具から謎の異音が発していた。

 

「カレン」

 

 魔道具が熱を持ち膨らんでいく。

 その様子を見ていた者たちの目には時間が引き延ばされたかのようにゆっくりと、元の形より一回り膨らみ、

 

 大きな音と共に爆発した。

 

 

 

「何の音だ!?」

「大丈夫ですか!?」

 

 音を聞きつけて集まってくるスタッフたち、その中心では爆発した機器の破片が散らばっていた。

 

 

「おい何があった!?」

「…………演出に使う花火打ち上げ用の魔導砲に使う魔法貯蓄機が、爆発したみたいです」

「何っ!? 怪我人はいるか!!?」

「っ!! 近くに魔法使いの方が2人いたはずです!!」

 

 現場にいたスタッフの説明で責任者や周りにいた者達が慌てて辺りを確認しようと走り出した。

 

「ぜん!! いんっ!! アタシを見なさいっ!!!!」

 

 先ほどの爆発音にも負けないカレンの声が響く。

 歌って踊るアイドルの声量に人を引き付けるカリスマが合わさり、心を埋め尽くしていた焦りをカレンの魅力が塗り潰す。

 

「焦らず、落ち着いて、何をするのか考えなさい。あなた達ならそれができる」

 

 頭の片隅では目の前で起きた事件の対処をしなければいけない。誰もが分かっているのに、カレンの些細な動き、一挙手一投足全てを見たいと心が奪われる。

 

「と、言っても大丈夫だけどね」

「え?」

 

 カレンに釣られてスタッフたちも振り向けば、爆発時の煙が晴れていき、

 

「あーミスった、二人とも大丈夫? ケガない?」

「ゲホッゲホッ、わたしは、大丈夫です」

「こっちも、ゴホッ、少しすりむいただけで」

 

 転んでいた二人に手を貸して立ち上がらせる。急だったのでちゃんと抱えて離れるつもりが、勢いが付きすぎて途中で放してしまった。

 爆発地点を見れば地面に円形の焦げた跡。それも散らばる形ではなく、途中でぷっつりと途切れている。

 ちゃんとカレンが魔法防壁で囲んでくれたらしい。

 正直なところ、カレンがいたので自分が何もしなくても良かったかもしれないが、念のためといったところだ。

 相性が、状況によっては爆発が防壁を超えたかもしれない。

 旅をして身に着いた、念のため、予防策。

 以前剣を忘れて盗賊に挑んだろって?

 そんなことは忘れた。

 

「マネちゃん!!」

「はい、リヒト様ありがとうございます。お二人は念のため救護テントへ」

「あれ俺は?」

「リヒト様がこの程度でケガをするとは思えませんので」

 

 信頼ととるべきか雑に扱われていると思うべきか、悩ましいが今はそれどころではない。

 マネさんが呼び寄せたスタッフと一緒に、魔法使いの二人に付き添って行った後ろ姿を見送る。

 振り向くことなく、いるはずの相手に声をかける。

 

「カレン」

「よくやったわね、ほめてあげるわ」

「はいよ」

 

 カレンと一緒に現場を確認するスタッフを眺める。

 

「原因は?」

「魔法貯蓄機の使用による経年劣化、あとは使いきった急クールタイムを挟むことなく魔法を貯めたので、そのせいかと」

 

 夜の部のプログラム、そして被害を踏まえて計算する。

 

「どう?」

「無理」

 

 魔法貯蓄機は名前の通り魔法を保存することができる。これを魔導砲に接続することで、ため込んでおいた魔法を放出、ライブでは演出用の花火などに使う予定だった。

 しかし、

 

「必要な魔法貯蓄機が三つ分足りない、魔法使いで補おうにも今いるメンツだとレベルが足りない」

 

 魔法貯蓄機の利点として、ため込んでおく以外にも複数の魔法を混ぜ合わせ威力を増大させることもできる。つまり駆け出しの魔法使いであっても、時間か人を集めることで熟練の魔法使いと同じ規模、威力にすることもできる。

 その特性を生かし、ライブの演出にする予定だったが、

 

「つまり?」

「熟練の魔法使い、それも三人か、三つ分の魔法をスタック、同時発動できるやつがいる」

 

 それができるやつはめったにいない。

 そもそも魔法を使えるという時点ですごいのだ。人には魔法を使う源である魔力が備わってるが、大抵が魔道具を使える程度。

 呪文の詠唱や道具を使って魔法を発動する、というのは限られた者だけ。

 それをさらに研鑽し、熟練者と言えるのはわずかほどしかいない。

 

「つまりアタシが必要ってことね」

「分身の術覚えて出直せ」

 

 ドヤ顔でポーズを決めるアホは無視して、頭の中で計画を立て「じゃ、アンタしかできないわね」

 

「熟練の魔法使い、もしくは魔法の三スタック発動。両方当てはまるのはアンタだけよ」

 

 まっすぐとこっちを見つめる赤い瞳。そこには迷いも疑いもなく、いつものカレンの自信が燃えているようだった。

 

「…………ぶっつけ本番になる準備しとけ」

「ふっふーん!! まっかせなさーい!!」

 

 ご機嫌なカレンを見送り、歩き出す。

 

「リヒト様、いかがしましたか」

「話があります、人を集めてください」

 

 救護テントから帰ってきたマネさん、その他のスタッフを呼び集め説明する。

 

「結論から言います、今のままでは夜の部のメインプログラムである魔導砲による花火ができません」

「えっ!?」

「そんな」

「やはりさっきの爆発で」

「落ち着いてください、本来なら魔法貯蓄機をローテーションで使い、魔法使いの方々の補充で花火を打ち上げる予定でした。ですが魔法貯蓄機が壊れ、今いる魔法使いの数を合わせても花火分の魔法はせいぜい一発分が良いところでしょう。だけどそれじゃ間に合わない」

 

 ざわつくスタッフたちの言葉を遮り、現状の説明をする。ちらりと企画者であるオッサンも頷いている。

 本当ならこの空気を変えてまとめたほうが良いのだが、あいにく自分にはカレンやルーシーのようなカリスマはない。

 なので強引に、

 言葉と行動で、

 示すしかない。

 

「自分が変わります」

 

 マネさんの顔がピクリと動く。

 

「魔法の三スタック同時発動、それを繰り返して演出のタイミングに合わせて魔導砲に、直接魔法を装填します」

 

 

 

「リヒト様…………それは…………」

 

 マネさんも心配する理由は分かる。同時に三つ分の魔法を使うということは、単純に威力も三倍、そして魔力の消費量も三倍になる。

 魔力が枯渇しても死ぬことはないが、回復するまで意識は朦朧として気絶することもある。

 逆に言えば枯渇するまで使いきらなければ、理論上は、いくらでも使い続けることができる。

 非常用の魔力回復用ポーションもある、夜の部の間くらいは持つはずだ。

 

「なので、ポーションと手の空いている魔法使いの方々とで、ローテーションを組めばできます」

 

 ぶっつけ本番になってしまうがこれ以外に現状の解決策はない。自分を信じてもらうしか、

 

「どうかお願いします」

 

 頭を下げてお願いする。自分はあくまで急に割り込んできた助っ人だ。

 ずっと前から準備をしていた人達の企画に、自分を混ぜろと言うのだから下げなければ始まらない。

 

「…………そうですね」

 

 マネさんをはじめ、周りにいたスタッフたちが微笑んで自分を見ていた。

 企画者であるオッサンが目の前にたち、自分へ手を伸ばす。

 出会ったばかりではあるが、ここには確かに信頼が、

 

「彼も救護テントへ、どっか頭を打ったのかもしれない」

「…………へ?」

 

 思ってた言葉と違う。

 ここはこう、任せた! とか、俺たちはチームだろ! みたいな言葉と共に手をガシッ、とか肩を組む場面ではなかろうか?

 

「魔法は使えるとしても三スタックはねぇ」

「子供の頃から練習してもできない、二つが限界って人もいるのにそう都合よくいるものでもないし」

「あ、気遣いは受け取ったよ! できないなりにプログラムを変更したりはできるから、ゆっくり休んできなよ」

「来たばかりの子にここまで言わせたんだ、全員気合入れろよっ!!」

 

「「「はいっ!!」」」

 

 オッサンの掛け声で動き出すスタッフたち。

 その中でぽつーんと1人立ち尽くす自分に、近寄る影。

 

「リヒト様のおかげでみんなの心が纏まりました、すごい魔法が使えるんですね」

「マネさん分かってて言ってるでしょ!!」

 

 ちょっとにやけてるし!!

 

 

 

 この後、実際にやって見せるまでいくら説明しても微笑ましい笑顔で流された。




Q,魔法を三つ同時発動できるんです? A,リヒト「できらぁ!!」

Q,彼女はできるんです? A,…………
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