旅は終えても勇者の苦労は終わらない   作:アオノクロ

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花火席転売ニュースを見ていろんな意味でなんやこれって思いました。


第7話 場所は違えど重ねた思いは変わらない

「次、赤青赤!」

「はいっ!」

「一拍開けて緑赤緑!」

「行けますっ!!」

 

 隣のスタッフから飛んでくる指示に合わせて魔法を放つ。

 魔法の同時並行のコツはジャグリング。自分の手から離れたものも、何がどこにあるのかを把握しておかないといけない。焦って必要のない魔法や、上限以上の魔法を発動しようとしたら限界を迎えて終わってしまう。

そうならないためにも、そうしないためにも練習を重ねるのだ。

 世界一なのかはさておき、自分は紛れもなく世界最高峰の魔法使いに教わったのだ。

 人によっては全財産を投げうってでもおかしくない、恵まれたシチュエーション。魔法はずぶの素人だった自分がそれなりに使えるようになったのは紛れもなく、言いたくはないが、カレンのおかげである。

 そんなカレンに教わった練習方法は簡単。

 

 

 

 ひたすらにランダムな魔法を発動し続ける。

 

 

 

 理論も応用もへったくれもないシンプルな方法、ただひたすらに数をこなして身体で覚える。

 知識が必要であるはずの魔法に、あいつは堂々と言い放った。

 

「分かっていてもできないものはできない! ならできるまでやるしかないでしょ!」

 

 自分もルーシーも魔法には詳しくないのでそういものかと納得し、言われるままに練習した。

 その後、一般的な魔法の修得方法を知った時は二人がかりでシバいた。

 それはまぁいい。

 

「青緑赤!!」

「はっ!!」

「白赤白!!」

「せいっ!!」

 

 魔法を身に着けてからは気が向いた時にしかしていない、カレン独自の練習。

 正しい練習方法を知ってからも、身についてしまったそれは、奇しくもそれは、今と同じ状況だった。

 旅での経験が、まわりまわって他のことにも役に立つ。

 

 

 

「いや花火打ち上げるために練習したわけじゃねぇよ!!」

 

 思わず叫んだ。

 周りのスタッフたちが振り返るが、自分を見た瞬間に顔を戻す。

 出会って一日も建っていないはずなのに、リヒトという存在の扱い方を身に着けているようだ。

 …………これも自分の魅力による親しみやすさというものか。

 

「アンタ、またバカなこと考えてるでしょ」

「バカにバカって言われたくねぇよ」

「は?」

「あ?」

「お二人とも、今は休憩時間です。仲が良いのは良いですがその辺にしておいてください」

 

 戻ってきたカレンと流れるようにケンカを始めようしたのだが、マネさんに怒られた。

 この人は最初から遠慮がなかったが、二人そろって怒るあたり自分たちの扱いを分かって、

 

「良いですかリヒト様」

「俺だけ名指し!? 最初に言ってきたのカレンじゃん!!」

「子供みたいな言い訳しないでください」

「ま、まぁ? アタシとこいつはほら、仲良いし? 仲良すぎて逆に悪いみたいな? しょーがないっていうか?」

「お前は何を言ってるんだ」

 

 何故か壊れてよく分からんことを言いだすカレン。

 旅の最中でもたまにあったが、原因は未だに分かってない。

 タイミングが分からないので戦闘中になるとどうしようもなく、担いで逃げることもしばしばあった。そのまま爆発したり、逆に調子が良くなって本にできるような逆転をしたり。…………たまになってた気もする。

 

「たまーにポンコツになるけど大丈夫なのか? 休憩時間もすぐ終わるだろ」

「休憩? そうね休憩しに行かないとね、ってどこに休むのよ! 休憩するなら気合入れないとダメでしょ!」

「反省してくださいリヒト様」

「何で俺!?」

 

 理不尽である。慣れたものだが。

 

「カレンさん、そろそろお時間でーす!!」

「時間が…………来たのね…………夢は終わるのね」

「これから夢のような時間をすごすのです、お力をお貸しください」

「そう、夢ね、アタシはアイドルだからみんなの夢を!! 叶えないとね!!」

 

 呼ばれるままに気合を入れ直して歩いていくカレン。

 たぶん大丈夫だろう……………………たぶん。

 ポンコツカレンの調子、感情の流れは自分には分からない。

 どうしようもなく自分ではできなかった時はルーシーたちに頼んでいたので、未だに解決方法は知らないままだ。

 一生分かることはないでしょうね、とポンコツカレンを納めて髪をボサボサにしたルーシーに言われたことがある。

 

「すいません、あのー」

「あ、さっきの」

「はい、私たち魔法貯蓄機が壊れたので仕事は無くなったって思ったら」

「手伝ってほしいことがあるって言われたので来たんですが」

 

 旅をして衣食住を共にして、命の預け合いもしたが未だに分からないこともある。

 

「自分がお呼びしました、最後の最後にお手伝いをお願いしたいのです」

 

 どんな調子だろうとカレンがライブをやりとげることだけは分かっているが。

 

『待たせたわねっ!! アタシこそが夢で!! アイドルで夢!! 夢のアイドル!!』

『何言ってるかよく分かんないけどいいぞカレンちゃーん!!』

『どんな言葉でもかわいいよーっ!!』

 

 方法は知らない。結果が成功なのは間違いない。

 

 そしてカレン一人だけでは成功できないのも間違いないので、手伝うのだ。

 

 

 

「あの、大丈夫ですか?」

「ちょっとだけ、休ませて、ください」

 

 魔法を連発するだけでもしんどいのに、それを三つ同時に使うのは疲労も3倍に、というわけでバテて膝をついている。

 休憩が終わった直後の魔法花火の連続打ち上げ、そのためにがんばってみたのだが、

 

「割としんどい…………」

「飲みもの貰ってきたのでどうぞ!!」

「ありがとうございます…………」

 

 一息で飲み込んで、立ち上がる。

 演出用の魔法花火だが、ずっと打ち上げるわけじゃない。

 曲によっては一切使わないこともあるし、逆にその曲の最中ほぼずっと打ち上げるときもある。

 なので、空いた時間に休むだけでなくやることもやっておかなければいけない。

 

「お2人にやってほしいことなんですが、別にそれほど難しいことじゃありません」

 

 

 

「あ、あのーそっちも手伝いますよ?」

「だいっ!! っじょ!! ぶっ!! タイミングだけっ、おねがい、しますっ!!」

 

 幸いというか、一人で三人分の魔法を使うことはできるのだ。それもそこそこの威力で。

 なので今回の魔法花火でも威力は充分足りているのだ、が。

 最後の一発。

 ライブのシメにあげる大きな花火、こればっかりは1人ではできない。

 三つの同時発動ができるできないではなく、単純に威力が足りないのだ。

 旅の途中で必要な時は三つを合わせて威力を底上げしていたのだが、今回は数も必要なのでできない。

 結果として、

 

「でもできるんですか? 同時発動ができる人が自分の魔法を掛け合わせるのは知ってますけど」

「他人ですよ? しかも三人、相殺して爆発の可能性もあります」

「できますっ!! なので準備を」

 

 手の空いている二人に協力してもらう。

 基本的に魔法を撃ちあえば、相殺するというのが通常だ。

 だが、個人で同時発動ができる場合、それらを混ぜ合わせることで威力を上げることができる。

 それは個人で魔力の質が変わっているから、などという理論は今はどうでもいい。

 威力が欲しいので、他人の魔法を混ぜ合わせる。ただし、爆発する。

 カレンに魔法を教わって以来、どうにかできないかと二人でよく研究したのだが、こればっかりはどうしようもなかった。

 水と油が混ざらない様に、魔法も混ざらないのだ。

 

「じゃあ無理じゃないですか!?」

「多少花火の規模が小さくても大丈夫ですって!! 変に大事故を起こすよりはマシですよ!!」

「三人なら大丈夫です!!」

「人数の問題じゃなくてですね!?」

「え、もうすぐなんですけど!!?」

 

 二人ではできない、これどうしようもない魔法の性質と言ってもいい。

 たとえカレンが魔法の天才と言っても、できないことはある。

 

「何かあったら自分が責任取るんで!!」

「それはちょっと揺らぎそうですけど無理ですって!!」

「限界まで魔力込めたので消すのもしんどいっ…………!!」

 

 自分みたいなとりあえず魔法が使える人間ではなく、ちゃんと魔法を研究、学んで身に着けた魔法使いの2人からすればわざわざ失敗しようとしに行くのが不可解だろう。

 とはいえ、こればっかりはやってもらわないとどうしようもない。

 

「二人とも」

 

 言葉と行動で、信じてもらうしかない。

 

『魔法を使えるようになりたい? でもあんた使えなくても戦えるじゃない』

『自分は弱いって、強いから勇者になったんでしょ? アタシは生まれながらのアイドルだし、そこは似てるわよね』

『まぁ良いわよ、でもちゃんとお願いしてくれないとダメ。たまたま出会ったから、で教えらえるほど安くはないのよ』

 

 

 

「頼む、助けてくれ」

 

 

 

「「……………………はいっ!!」」

 

 

 

 三色が混ざり合い夜空を覆いつくす巨大な花火が花開く。

 空気の震えが花火のものなのか、歓声によるものなのかは分からないまま、ドサリと地面に倒れた。

 

 

 

『さっきの大花火で今日は終わり!! アタシはまたステージにあがる、だからアンタたちもまた来なさいっ!!』

 

 どうにか魔法を混ぜることができないかと試行錯誤していたところ、偶然近くで練習をしていた人の魔法が飛んできた。

 てっきり二人の時よりも大きな爆発を起こすのかと思いきや、キレイな混色の魔法の珠が出来上がったのだ。カレン曰く二つの魔法だと水と油のように反発するが、三つになると相殺しあう動きが一定になり、逆に安定するのだという。

 あくまで推定に近いので未だに公式な発表はされていないのだが、使用禁止などはされていないし問題ないだろう。

 ライブが終わった安心感と魔法を使いすぎた疲労感で起き上がれないが、スタッフたちは終わりに向けての仕事に動き出している。

 横を見れば手伝ってくれた魔法使いの彼女たちも座り込んでいる。

 魔法を使いすぎた、のではなく緊張から解放されて気が抜けたのだろう。

 顔を見合わせて笑っている。気が付けば自分も笑っていた。

 カレンも、お客さんも、今は笑っているんだろう。

 確認したわけでもないがそう思った。




花火ばっか書いてんな、いや好きですけども。一緒に行く相手いませんけども!?
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