旅は終えても勇者の苦労は終わらない   作:アオノクロ

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えー数ヶ月ぶりの更新です。でも年内なのでセーフ()

評価バーに色がつきました、ありがとうございます!!


第9話 階級違えど人の好みは変わらない

 この世界には貴族という人種が存在する。

 人種というか、正確には階級だが。

 一応国から認められた土地を預かる者、なのだが自分はみたいな一般の出には関りがない。

 確か村長はたまに使いの人と話してた気もする、とはいえそんなもの。

 世界が違う、ではなく職業が違うので関りがないと言った感じだろうか。

 勇者になってからは旅先でたまにアイサツしたりする…………外交? みたいなのはあったが基本ルーシーに丸投げしてとりあえず出された料理を食べていた記憶しかない。

 そんなこんなで関わることの無い人種、職業、だったのだが。

 

「流石おフィリレンソの紅茶ザマス、上品なワタクシ達にピッタリですわ」

「フフフ、お嬢様のためにお取り寄せいたしましたのでソワール」

「オーホッホッホッホッホ!! 産地しか知りませんがとても貴族っぽいですわー!!」

 

 やっぱ貴族は違う人種なのかもしれない、何言ってるのかよく分からん。

 それに今飲んでる紅茶の味もよく分からん、水の味しかしない。

 

「紅茶は味ではなく香りを楽しむ飲み物です」

「あ、そーなんですね」

 

 紅茶を入れてくれた執事っぽいおじいさんにお礼を言って口をつける。

 なんか熟成されたいい香りがする。

 ふむ。

 

「果実汁ください」

「こちらに」

 

 声かけてすぐに出てきた。

 すっげーよおじいさん、自分の求めていること的確に応えてくれる。

 それにこの果実汁すっごい美味しい。

 何か高い味がする。

 

「相手の意思を先読みしてこその執事です」

 

 執事とか知らんけどそうなのか…………。

 

「改めてごあいさつを、リヒト様。わたくし、「や、リヒト」どうやら来られたようですね」

 

 執事のおじいさんの自己紹介を遮って現れたのは旅の仲間、最後の1人。

 

「今日もミディア・オーディトリアムに会いに来たのかい」

「毎日会いに来てるみたいに言う「それも当然のことだ、ミディアの魅力は老若男女問わず惹きつける。君もそれは例外ではないのだ、恥じることはない」

 

 ミディア、貴族であり生粋のナルシストだ。

 

「ミディア様ですわっ!! 相変わらずお美しいですわっ!! わたくしも負けておりませんけどもっ!!」

 

 …………貴族ってのがナルシストなのかもしれない。

 

 

 

「で、これなんだ」

 

 何もわからず誘導されるままに茶をしばいている。

 

「茶をしばくとは一見物騒ですがある地方で生まれた言い回しですね」

 

 解説ありがとうございます。ですが解説が欲しいのはそこではない。

 見たことの無いお菓子に、値段が分からない高級な家具、そして手入れの行き届いている花園。

 あきらかに自分がいる場所ではないことだけが分かる。

 しかし動けない。

 

「こちらお菓子のおかわりにございます」

「いただきまふ!!」

 

 おかしおいしい。

 とまらない、やめられない。

 今まで食べたお菓子がマズいわけじゃないが、ここにある物全部ひたすらにおいしくて止められない。

 

「ミディアの魅力が眩しすぎてお菓子を食べる手がとまらないようだね」

「お前関係ねぇよ、美味いもんくれてありがとな」

「関係ないさ、僕と君の仲だからね!!」

 

 ドヤ顔が似合う。

 これはミディアだから似合うのか顔が良いから似合うのか、個人的にはミディアがドヤ顔しなれている説を押しておく。

 

「それにしてもみんな揃っていないのは残念だね」

 

 紅茶を飲みながら心の底から残念そうにつぶやくミディア。意外といえば意外だ。仲が悪いとは思っていないが、デザートの争奪戦では遠慮なくぶつかりあう関係だ。

 ケンカするほどなんとやらか、女性同士でもそれが適用されるのかは生憎男の自分では分からないが。

 

「せっかく良いお菓子に綺麗な花園、そしてミディアがいるのに楽しめないのは残念というしかあるまい!! せっかく二人の好物も用意したのだけどね!!」

 

 いやこれ自慢したいだけだ。

 単純に私すごいでしょって言いたいだけだ。

 子供っぽいと思いつつルーシーやカレンには刺さるのだろう。

 これまた男には分からない内容なのでいつも眺めてるしかいない。

 服だの装飾品だの比べたらお菓子があるだけ今日はマシだが。

 

「ミディア様、ご用意していた例の物はいかがいたしましょうか」

「む、忘れていたなではジイ、用意を」

 

 何か用意してくれたみたいだが、生憎庶民の出身である自分に分かるかはどうだろう。

 ルーシーやカレンは職業柄いろんな芸術品なんかを知っていたが、自分にはよく分からない。

 というか呼び方ジイでいいのか。

 

「執事でもジイでもお好きなようにお呼びください」

 

 ジイさんでもいいのか、なんか違う気もするけど。

 

「構いませぬよ、ではこちらをどうぞ」

 

 持ってきたのは子供でも抱えることができそうな布の被った箱。

 そこまで重そうじゃないが、やはり腕輪とかもしくは高級なお肉とか?

 

「ミディア、前にも言ったが俺には高いものの価値はよく分からんからそこまで気を使わなくて「リヒトに見せようと思ってた黄金オニカブトだよ」スゲェ-!!!!」

 

 昆虫図鑑を見ていたら男子なら必ず目にする黄金色に輝く鬼模様の三本角カブトムシ!! 森林に精通している狩人でも滅多に見つけることができない、一部では本物の黄金と引き換えにされているとも言えるコイツをこの目で見ることができるとは…………。

 

「想像していた以上の喜び…………は良いのだがジイこれは大丈夫なのか? 今すぐ医者を呼んだ方がいいのではないか?」

「お嬢様、男という生き物はいくつになっても少年の心を忘れないものなのです」

「そうなのか……………………ジイも見たいのか?」

「許可さえいただければすぐにでも」

 

 ふぉぉぉぉぉぉ、お菓子も花園も知らねぇ!! 今日はコイツを眺めて過ごす、決定!!

 

「良し! これからも頼むぞゴールド!!」

「いや待ちたまえ、何勝手に名前をつけているのだ」

「そうか、ミディアの意見も聞かないとな」

「いやそうではなく」

「ジイさんは何か提案あるか!!」

「やはり黄金だけでなく鬼の要素を含めたいですな、ゴール・オーガのような」

「それ採用!!」

 

あとはコイツが暮らせるための環境づくりだな、大きめのガラス細工の箱を作ってもらって、村の誰か飼育に詳しい人いないっけ、

 

「まったく、庶民はそそっかしいな。やはり貴族とは生まれついての」

 

 でもいつもいるわけにはいかないし、いや暇なやつがいるしアイツに頼んでおけば大丈夫か? でも大雑把だし不安は残るか、

 

「例え心揺れる出来事を目の当たりにしても動じることなくエレガントな佇まいを崩さないのが貴族」

 

 そうなると持ち運びができるよう特注の箱を注文したほうがいいのか、やっぱりまずは飼育方法について勉強するべきか、

 

「上に立ち、庶民を導くものとして何かに盲目になることなど言語道断、広い視点であらゆるものを掌握するべし」

 

 ここでうだうだと考えていても仕方ない、今すぐ準備しなければ!!

 

「ミディア!! 今日はありがとな!! 今度お礼をするから何でも言ってくれ!!」

「おいおい、ミディアと君の仲だろう? フフ、期待しているとも」

 

 じゃあ今日はこの辺でお開きに、

 

「いい加減話を聞け!!」

 

 振り向けばお怒りの貴族が1人。

 

「こっちに話しかけてたのか」

「リヒト気付いていたのかい?」

「なんかしゃべってるけど俺たちに向けてとは思って無かった」

 

 あとなんか怖くて。

 

「ふ、貴族の威光に眩しくて見ることができなかったのは仕方ない」

「言ってない」

「平民からすれば貴族に声をかけることも戸惑ってしまうだろう」

「そうなのかい? かわいいとこもあるもんだね」

「じゃあなんで俺はお前と話してんだよ」

 

 ただでさえミディア相手で疲れるのに、そこへ一人増えようものなら自分の手に余る。

 

「あーそのどちら様でしょうか」

「ふ、よくぞ聞いてくれた。だがここで普通に自己紹介をしても貴族らしくない」

 

 自己紹介に貴族らしさとかあるのか…………知らないことばかりだ…………。

 

「自らではなく人を間に挟むことで相手がどの情報を求めているのかが分かり、会話をスムーズに進めることができるのです。貴族の方々は仕事も多いので」

 

 まさかのちゃんとした理由があった。

 ただただカッコつけたいだけとか思ってたので心の中で謝っておく。

 

「ミディア様、どうぞ紹介をして頂いてもよろしいでしょうか」

「…………─────黄金オニカブトを譲ってくれた!! はず!!」

「ミディア様!?」

「曖昧かよ」

 

 めっちゃ良い人じゃん。本人もっと別のこと言ってほしいみたいだったけど。

 白目むいて落ち込んでいるそばを通りすぎると、今度はこっちの横に立ち肩に手を乗せる。

 

「こっちはリヒト、いずれオーディトリアム家を継ぐ者だ」

「本人が知らねぇ情報勝手に増やしてんじゃねぇよ!!」

 

 周りにいた人全員こっち見てるわアホ!!




今でもカブトムシやムシの動画は見ます。
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