男として生まれた立花響が修羅場に遭う話   作:勝機を零した、掴み取れん

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みなさんのおかげで日間ランキング入ってました。ありがとうございます! 気づいたらめっちゃ伸びててびっくりしました。
今回は以前言っていた時間軸とか無視した番外編を投稿します。
この作品が続けばこの物語に繋がるのかもしれませんって感じの内容です。
一応番外編という事で1話の前に挿入していますがこれで合ってますかね?


番外編
ちょせぇとザババ


 ある日の土曜日の朝、響はキッチンで朝食を作っていた。

 

 以前の彼は料理を作るなどということはあまりせずに冷食などで済ませるか、未来が作ってくれたのを食べるという事が多かった。

 

 そんな彼が料理をする。しかも一人分ではなく数人分を作っているのには理由があった。

 

「おはようございます……響さん」

 

「おはようデース……」

 

 リビングの扉から二人の少女。月読調と暁切歌が入ってきた。

 

「おはよう。調ちゃんに、切歌ちゃん。もうすぐご飯出来るから待っててね」

 

 二人は響の家に同居していた。もちろんそれには理由がある。

 

 フロンティア事変という大規模な事件が収まって一ヶ月後。

 その事件に関与していたF.I.S.の構成員の二人は政府によって身柄を拘束。

 

 米国政府の裁判の介入により、二人は未成年でありながら口封じという名目で死刑適用を受けていたが、これを日本政府が米国政府が行った情報隠蔽に対する糾弾を行うことで事態は収束した。

 

 その結果F.I.S.の構成員の死刑適用は白紙となり、彼女達は日本政府の特別保護観察下に置かれる事になった。

 

 そして、その二人の観察員の内の一人が響となっており、彼女達は彼の家に住むことになったのだ。

 

 尚、響本人の主張は一切受け付けてはいなかった。

 

「いただきます」

 

「やっぱりお兄さんの料理は美味しいデース!」

 

「そう言って貰えると嬉しいねぇ」

 

 響からしても二人が美味しそうに自分の料理を食べてくれるのは嬉しく、もっと上達したいと思わせてくれていた。

 

「……」

 

「……調ちゃん? 大丈夫?」

 

 響は無言でこちらを見つめる調を心配していた。もしかして自分が作った料理が美味しくなかったのではないかと。

 

「……私、響さんに謝らないといけない」

 

「……?」

 

「……あの時、初めて会った時、私は貴方のことを偽善者と言ってしまった。けど、こうして一緒にいてわかった。響さんはあの時からずっと、私達のことを助けようとしてくれていたんだって……だからあの時、酷いことを言ってごめんなさい」

 

 フロンティア事変の始まり。

 

 F.I.S.がライブ会場で行ったテロ行為とも言える各国への宣戦布告。

 その時の戦闘において調が、響へと発した言動を後悔していた彼女は、彼へ頭を下げた。

 

「……気にしなくていいよ。あの時はさ、お互いの事を何も知らなかったんだから。調ちゃんが俺の事を不信に思うのも仕方がないんだ。だからこそ、こうしていられるのが俺は嬉しい。だから、大丈夫」

 

「……響さん」

 

 そう言って響は微笑む。

 

 そして調はフロンティア事変が収束した後、自分達に会ってくれた時の響の言葉を思い出す。

 

『確かに、調ちゃんや切歌ちゃんが行ってきた事は、世界からすれば許される事では無いかもしれない。だけど俺は、君達の味方であり続けたい。それが偽善であっても、俺がしたい事だから……』

 

 調は、やっぱり彼が好きだと実感する。

 

 自分を受け入れ、許してくれる彼を。

 

 ただの自分勝手な甘えかもしれない。

 

 それでも、自分の目の前で微笑んでくれる彼の姿は間違いなく自分にとっての『英雄』だった。

 

 ────

 

 響はまだリビングに来ていない子がいる事に気づく。

 

「……呼びに行くか」

 

 彼は椅子から立ち上がってそのままリビングから出る。

 

 そして自室の隣の部屋の扉を開ける。

 

 女の子の匂いが充満している部屋。その奥のベッドでは銀髪の少女が寝ている。

 

「クリス。朝ごはん出来たよ」

 

 彼女の名は雪音クリス。

 元々は二課に配属される予定だったシンフォギア装者の一人であり、彼女もまた壮絶な過去を持つ者だった。

 

 響とクリスが出会った当初はお互い敵同士であったが紆余曲折の果てに二課の一員として共に戦うようになり、フロンティア事変が起こる前から彼女は響の家に住んでいた。

 

 

 

 

 

 響はクリスの身体を揺する。

 

「……ん、ひぃびぃき?」

 

「うん、そう、俺だよ」

 

 寝惚けているのか、彼女の呂律は回っていない。

 

 そして彼女は彼の首に腕を回し、そのまま自身の大きな胸へ引き込んでいった。

 

「……っ!?」

 

「えへへ……ひびきぃ……しゅき」

 

「んー!!」

 

 彼女の胸の中で窒息しそうになる響は必死に彼女の身体を叩いてしまう。

 

「……っ!!」

 

 そのせいで、彼女の目は完全に覚めてしまった。

 

「なにしてんだこのバカやろーっ!」

 

 自分が彼にした事を理解した彼女は顔を真っ赤に染めて、何の罪もない彼の頬に思いっきり平手打ちをしてしまった。

 

 

 

 

 

「響さん、大丈夫?」

 

「……まあ、大丈夫」

 

 それから数分後。左頬に綺麗な紅葉が出来た響とクリスは、調と切歌と共に朝食を食べていた。

 

「絶対大丈夫ではないのデース」

 

「……」

 

 調は不機嫌そうな表情を浮かべる。

 何も悪くない彼が痛い思いをしているのが許せないのだろう。

 

 響の隣でクリスは朝食を食べているが、彼女は食べ方が下手で、口の周りにご飯粒が大量についていた。

 彼女の食事のマナーがなっていないのは過去の出来事が原因ではあるので、仕方がない事ではあるが。

 

「……クリス、ご飯粒ついてるよ」

 

 そう言って響はテーブルに置いてあるティッシュを取りだし、彼女の口の周りを拭いてあげる。

 

「……んっ、ありがとう」

 

 クリスは少し顔を紅くする。

 

「俺がいないと何も出来ない人間になっちゃダメだよ。クリス」

 

「別に……そんな事にならねぇって……」

 

 実は彼女はあざとい。本当の彼女は、もう既にちゃんとした食事のマナーは出来ているのだ。

 

 しかし、響が居ると別である。

 わざとこうすることで響が世話をしてくれる。

 自分を見てくれる。

 

 それが、彼女が得られる安心感なのである。

 

「クリス先輩……響さんを困らせるのはやめてください」

 

 朝っぱらからドス黒いオーラを放つ調。それは憧れの存在が他の女性に目移りしている事と、彼女が彼に平手打ちをしていた事への怒りも混ざっていた。

 

「……ああ? 急にこの家に住んではあたしとこいつの暮らしの邪魔をしに来たのはどこのどいつだよ?」

 

 負けじとクリスも調に対抗する。

 この様はまるで虎と熊のいがみ合いである。

 

「ふ、二人とも落ち着いて」

 

「そうデス! 私とお兄さんが一緒になると決まっているのデス!」

 

 そう言って切歌は響の隣の席に移動して、彼の腕に抱きつく。

 

 そして……修羅場は始まる。

 

「……なら、ここでこいつに決めてもらうか? この三人の中で誰が一番なのか」

 

「……いいですよ」

 

「デスデース!」

 

 三人のドス黒い視線が響一点に集中する。彼は誰が相手だろうとこういう役柄なのである。

 

「響さん。私……響さんのためならどんな事でもします」

 

 恍惚とした表情で、調は響を見つめる。

 

「お前があたしを一番に選んでくれるならこの胸を好きにしてもいいんだぜ? お前、胸デカイの好きだよな? 部屋に隠してたグラビアの写真集もみんな巨乳だったもんなぁ!?」

 

「わあああ!! なんで今それを言うんだよっ!」

 

「響さんは胸の大きい子が好み……」

 

 飢えた獣のような表情でクリスは見つめる。

 

 一方で調は自分の平坦な胸に手を当て、気持ちが落ち込んでいた。

 

 そして急に性癖とグラビア雑誌の事を暴露されたので響はとても焦っている。

 

「……私はお兄さんの事を絶対に離さないデス。だからお兄さんも私の事を離さないで欲しいデス」

 

 独占欲に塗れた瞳で切歌は見つめ、胸を押し当てるようにさらに抱き締める力を強くした。

 

「あたしだよなっ!?」

 

「響さん……!」

 

「お兄さんっ!」

 

 三人からの詰問。それに対して響の答えは……。

 

「……とりあえず朝ごはん食べない? 冷めちゃうし話の続きはそれからでも……」

 

 響は答えを有耶無耶にした。

 

 そしてその答えに、クリスの何かがプツンと切れた。

 

「……ああ、そうか。ならあたしの今日の朝ごはんはお前だっ!!」

 

「なんでそうなるんだよっ!」

 

 物凄い勢いで行為を迫るクリスを必死に抑える響。

 

「お兄さんは優しいけど、その優しさが色んな人をダメにしてきました。だからちゃんと答えないとダメじゃないデスか?」

 

 しかし切歌がクリスを抑えてた響の耳に優しく囁いた。

 それに驚いた響は力が緩んでしまい、彼はクリスと切歌に床へと押し倒されてしまう。

 

「調ちゃん……助けて」

 

「響さん……」

 

 響は調へ助けを求める。

 

「響さんは優しすぎます。その優しさが色んな人を救い、色んな人の気持ちをおかしくしてしまっている事に気づいた方が良いと思います」

 

「調ちゃん……?」

 

「私が……響さんの身体に直接教えてあげます。誰が一番、響さんを愛しているのかを……」

 

 天井を見上げている彼の視界に三人の女の子の顔が映る。

 

 他人からすれば羨ましい光景かもしれない。

 

 ただ、彼からすればそれは修羅場としか言いようがない。

 

 そして、何より一番怖いのが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、みんな……何してるのかな?」

 

「……未来?」

 

 この修羅場は、ほんの序章にしか過ぎない事であった。

 

 

 

 

 

 




下手すると本編よりも番外編更新してそう
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