男として生まれた立花響が修羅場に遭う話   作:勝機を零した、掴み取れん

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最近シンフォギアにハマったので初投稿です。


本編
彼は修羅場に遭う


「おはようございます」

 

 特異災害対策起動部二課のオペレーター室に一人の少年が入ってきた。

 

「おはよう、()()()。朝から早いな」

 

 赤色のシャツを着こなした屈強な大人であり、この本部の司令官である風鳴弦十郎は響という少年に挨拶を返す。

 

「まあ、自分はここで住み込みで働いているようなものなので……」

 

「ははっ、それもそうだな。しかし……響くんも本来なら今年で高校生になるんだ。折角の青春をここで過ごすのももったいないだろう? 俺たちの力を使えば君に新しい家を提供することも出来る……どうだ?」

 

「そうですね……少し、考えてみます。ただ……今の自分にとってはここの居心地はいいんです」

 

「……そうか。それならば、君の意見を尊重はするし、じっくり考えるといい。子供のしたい事をしてあげるのが大人の務めだからな」

 

 そういって弦十郎は響の肩に手を置いてあげた。

 

「……ありがとうございます、師匠」

 

 

 

 

 ────

 

「よっ、響。こんな所で何してんだ?」

 

 響が本部の渡り廊下を歩いていた時、一人の少女が後ろから彼の肩に腕を回してきていた。

 

「奏さん、おはようございます。これからトレーニングルームに行こうと思っていました」

 

 それを聞くと赤い髪の少女、天羽奏は半ば呆れたような顔で響を見ていた。

 

「相変わらずだな……響は若いんだからたまにはどこか出かけてもいいんじゃないか?」

 

「そういう奏さんも若いじゃないですか……。いいんですよ……学生でもない俺はこれくらいしかやる事がないんです。それに……いつ強大な敵が出てくるかもわかりません。そのためには強くなっておく必要があると思います」

 

「昔の翼みたいな事言ってるな。……そうだ! 今度アタシとデートしないか?」

 

「えっ!? 奏さんとデート……?」

 

 響は女性に対する免疫はあまり無かった。

 そのため、奏と一緒出かける自分を想像してしまい、顔を赤くしてしまっていた。

 

「どうした〜? 元人気アーティストとデートなんて滅多に出来る経験じゃないぞ〜?」

 

 顔を赤くした響を見て奏はニヤニヤと悪い笑みを浮かべ、さらに顔を近づけていた。

 そんな響を可愛いと思っていたのだ。

 

「お、俺みたいな人より……奏さんには相応しい人が沢山いると思いますよ……」

 

「いいや……響以外には有り得ないかな……。アタシと翼は響のおかげであの時死なずに済んだんだ……命の恩人だよ」

 

 そう響を見つめる奏の表情は普段の男勝りなものではなく一人の乙女としてのものだった。

 

「そ、それよりもっ! 奏さん、体調の方は最近どうですか?」

 

「ちぇっ、話はぐらかされた。体調の方は良好だよ。響がアタシの代わりに戦ってくれているからね……」

 

「なら、良かったです……。それが俺に出来る事ですから」

 

「……初めて響が戦うなんて言ってた時はアタシも翼も猛反対していたのに、今じゃ頼りになる男になったもんだ」

 

 奏は響の引き締まった腕を優しく触っていると再び彼は顔を赤く染める。

 

「かれこれ二年近くノイズと戦ってきてますから……嫌でも慣れてきますよ。ただ、それだけ戦い続けてもみんなが安心して暮らせる世界には程遠いですね」

 

「……そのためにも強くならないといけない……だろ?」

 

 響は奏の問いに頷く。それを見た奏は微笑みながら、彼の肩に回していた手を離した。

 

「トレーニングを欠かさないのも良いけど、たまには息抜きでもしろよ? でないと頭パンクしちゃうからな。なんか困ったらすぐに相談しな」

 

「奏さん……ありがとうございます。俺、トレーニングしてきます」

 

 そう言って響はトレーニングルームへと向かった。

 

 そして少し歩いた後に止まり、奏の方へ振り返る。

 

「俺……奏さんの歌がもう一度聞きたいんです。だから俺は、奏さんがもう一度アーティストに復帰出来るために、奏さんや他のみんなを守るために戦い続けます。あ、あと、デートの件は少し、考えておきます……」

 

 そう言って響は再び廊下の向こうへと駆け足で走っていった。

 

「……全く、響のためなら好きな時に、何回でも歌ってやるっての。可愛いヤツめ」

 

 奏はそんな彼の後ろ姿を優しく見つめていた。

 

 

 

 

 

 ────

 

「響さん、ここにいましたか」

 

 トレーニングルームの扉が開かれ、黒のスーツを着た大人……緒川慎次が現れた。

 

「緒川さん、お疲れ様です。どうしましたか?」

 

 響はトレーニングを辞め、緒川の元へと来ていた。

 

「トレーニングを終えたあと、時間ありますか?」

 

「はい、特に予定は無かったはずなので……」

 

「響さんが良ければなのですが……翼さんを迎えに行ってくれないでしょうか?」

 

「大丈夫ですけど……本部に来るならすぐですし、迎えに行く必要ありますかね?」

 

「でも、響さんが迎えに来てくれれば、翼さんはきっと喜んでくれますよ」

 

 緒川は笑顔で響に返答する。

 そんなもんかな〜と響はまだ納得してはいなかったが、別に減るものではないと思い、緒川の頼み事を了承する。

 

「ありがとうございます、響さん。翼さんは十五時には学校が終わるので、それまでに校門の前にいれば大丈夫だと思います。翼さんの事、よろしくお願いしますね」

 

 そう言って緒川はトレーニングルームを出ていった。

 

 響もトレーニングを終わりにし、迎えに行く準備をするために一旦シャワールームへと向かった。

 

 

 

 

 

 ────

 

 現在、響は風鳴翼の迎えのために彼女が通っているかつ、その地下に特異災害対策起動部二課の本部を備えているリディアン音楽院という女子校の校門の前で待機していた。

 

 制服姿の女子達が下校している中、大きめの白いパーカーに緑色のカーゴパンツ、黒のスニーカーを履いたカジュアルな響の格好はあまりにも浮いていた。

 

 また、女子達は響を見て不審に感じる者もいれば、恍惚の表情を浮かべる者もいた。

 実際、彼の顔は整っており、そういう感情などを抱くのも無理はなかった。

 

(早く翼さん来てくれないかな……)

 

 そんなものとは裏腹に響は周りからの視線を浴びる事を恥ずかしがっていた。

 

 彼女を迎えに行くことは前から何回かあり、その際は部活に励む生徒も多く、ここまで多くの人が下校することは無かった。

 

 しかし今日は入学式の日であり、新入生の子たちが一斉に下校する事となっていたのである。

 

(俺も普通に生きてればこの子達みたいに楽しく高校生活を送れていたのかな)

 

 彼はどこにでもいる普通の学生だった……二年前までは。

 

 そして、その時に起きた事故がきっかけで彼は特異災害対策起動部二課に身を置き、普通の学生という肩書きはとうに消えてしまっていた。

 

 自分だって青春を謳歌してみたい。そんな気持ちが込み上げてしまい、響は勝手に落ち込んでしまっていた。

 

(普通なら、俺は今でも未来と一緒にいたのかな。未来……元気にしているかな)

 

 響は同い年の幼馴染の女の子の事を考えていた。小さい頃から一緒にいて仲が良かった。

 

 彼が被害にあったツヴァイウィングのライブで起きた事故。その場には彼をライブに誘ったその子もいたはずだった。

 

 しかし、彼女は親の都合でライブに行けず、結果として響だけが被害に遭う事になった。

 

 だけど響は彼女が来なくて良かったと思っていた。もし、あの時彼女を失っていれば自分の心はどうなってしまっていたか分からなかったから。

 

(未来……あの時以来会ってないから分からないけど、流石に今も生きてるよな? 心配だ……)

 

 幼馴染の事を心配して大きな溜息を吐く響。色々考え込んでしまっていた彼のメンタルは大きく落ち込んでしまっていた。

 

「……響?」

 

 そんな時、彼を呼ぶ声が聞こえた。

 

 しかし、響はどういう事だと頭の中で疑問を浮かべていた。

 

 リディアンに通っている生徒で自分の事を知っているのは翼しかいないはずなのだ。

 

 なのにその声は翼の声では無い。

 

 一体誰だ……という気持ちの中、自分を呼んだ声の方に振り向く。

 

 振り向いた目の前には、大きな白いリボンを後ろに結んだ黒髪の少女が立っていた。

 

 響は彼女を知っていた……忘れた事なんて無かった。

 

「……未来?」

 

 その子は先程考えていた幼馴染の女の子……小日向未来だったのだから。

 

「響……やっぱり響なんだよね……!?」

 

 響は未来が目の前にいることに心の中で大きく喜んでいた。

 しかし、それとは別に不味いという心境が彼の冷静さを保っていた。

 

 特異災害対策起動部……政府の人間となってしまっていた今の響は、秘密保持のために二年前から家族や知り合いに連絡をとる事ができていなかった。

 

 つまり今の彼は二年前の事故で亡くなったか行方不明者になっている。

 なのに生きているとわかってしまえば、今まで消息を絶っていた説明を求められるのは確実だったからだ。

 

「……未来、久しぶり」

 

 それでも彼はずっと心の中にあった幼馴染を無視するような事は出来ない優しい子なのだ。

 

「響……!」

 

 未来は彼が間違いなく響と理解をすると、うっすらと涙を浮かべ勢いよく彼に抱き着いた。

 

「会いたかった……! ずっと会いたかったよ……!」

 

「俺もだよ……。未来の事、忘れた事なんて無かった」

 

 響は咽び泣く未来を優しく抱きしめる。周りの目なんて気にしていない、今はただ目の前にいる人を大切にしよう。そう思っていた。

 

 

 

 

「……ねぇ、響」

 

 泣き止んだ未来が次に発した言葉。そのあまりにも鋭くも冷たい声に響は一瞬身体を震わせた。

 

「……私ね、ずっと辛かったんだ。二年前のライブで響が死んだって聞いてからこれからどう生きていけばいいかわからなかったの。私にとって響は大切な人だった」

 

 未来は響の胸に顔を埋めているため表情は見えなかったがとてつもない圧を彼は感じた。

 

「私がライブに誘ったせいでこうなってしまった。どうすれば償えるのかなって。私も死ねば響に会うことができるのかなって、何回も思った」

 

「……未来」

 

 響は心が痛かった。自分のせいで優しい幼馴染の心を壊してしまっていた事を。

 

「だから、響が生きているってわかった時、本当に嬉しかったの。もう掴めないと思ってた響の手がここにある……もう絶対に離さない」

 

 未来の低い声に彼の背筋は凍る。こんな彼女の声は聞いた事が無かった。

 

「だから……どうして生きてたのに連絡してくれなかったのか……おしえて?」

 

 そう言って彼を見つめる未来の瞳は暗く、濁っていた。

 

 未来から放たれるドス黒いオーラに恐怖を感じていた響に修羅場は訪れる。

 

「私も教えて欲しいわね。響に私達以外の女の子の知り合いがいたなんて」

 

「つ、翼さん……」

 

 リディアンの校門から青髪の少女、風鳴翼が響の方へと向かっていた。

 未来と似たようなドス黒いオーラを纏いながら笑っていない笑顔をして。

 

「……へぇ」

 

 低い声を出した未来のドス黒いオーラがさらに濃くなったのを響は感じた。

 

「響は翼さんと知り合いになっていたんだね? ずっと響の事を想っていた私を放ったらかしにして。まさか連絡していなかったのも私にバレたくなかったから?」

 

「い、いやっ! これには訳があって」

 

「……いいよ、聞いてあげる。でもね……話せば許されるなんて思っちゃダメだよ?」

 

「そうね、響。三人でゆっくり話しましょう……大丈夫、時間はたっぷりあるから」

 

 あ、終わった。そう彼は悟った。

 

 彼は二年近く戦ってきた。その中で色々な体験、恐怖を経験していたが今回の修羅場はそれまでのと比にならないくらいの恐怖が存在していた。

 

 そして、右腕を未来に。左腕を翼に掴まれた響は彼女達のされるがままに引っ張られていき、リディアンを後にして行ったのであった。

 

 また、あの風鳴翼の付き人と思われていた男の子が別の女子生徒と抱き合っていたと学校内で噂になったのは別の話




感想・評価くれたらめっちゃ嬉しいし、続き書くのを頑張ります
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