男として生まれた立花響が修羅場に遭う話 作:勝機を零した、掴み取れん
今回ちょっと物語動くと思います。
それではご覧下さい。
その後、翼は響と共に未来をリディアンの地下にある本部へと連れていき、弦十郎に自分勝手な行動で彼女に響の過去の事を話した事を報告し、深く謝罪した。
弦十郎は響が二課に配属されてしばらくした時に、彼から大切な幼馴染がいて、ずっと心配しているというのを聞いていた。
そして、未来がその子である事を理解し、彼女が響の力になりたいという覚悟を見た弦十郎は、未来を民間協力者として二課に協力してもらうことを了承した。
結果として未来も情報を知っていて良い人物になったことで、弦十郎はあまり翼の事を叱ることはなかった。
「響〜。えへへ」
次の日、響が生活している本部の一室。
そこではベッドの上に座っていた未来が同じく座っていた響をぎゅうっと抱きしめていた。
「……未来、時間も遅いし……そろそろ離してくれないか」
「いやっ! ずっと響と一緒にいるのっ!」
そう言って未来は抱きしめる力を更に強くした。今の彼女はまるで駄々をこねる子供のようだった。
「……私と一緒にいるの……いや? もしかして翼さんの方が良かったの?」
未来は光を失った瞳を響に向ける。それを見て彼は少しだけ寒気を催した。
「そんな訳ないだろ。俺だって未来と一緒にいれて嬉しい。別に翼さんとかじゃなくて、もう夜遅いから……早く家に戻った方がいいと思う」
部屋の時計は二十時を示していた。普通の学生からすれば大分遅い時間ではある。
「私はリディアンの寮で生活してるし、本部からならすぐだから大丈夫だよ。それに……明日は休みだから、その時は響の部屋で寝泊まりすればいいし……」
「……俺が良くないからそれはやめような」
未来の着ている制服からする女子特有のいい匂いに、響は本能を刺激されていた。
いくら幼馴染とはいえ、二年振りに会えば人は大きく変わる。成長して、魅力的になった彼女の言動に響は耐え切れるかどうかわからなかった。
────
「……すぅ……すぅ」
それから約一時間後。未来は響に抱きついたまま寝てしまった。
「……大分疲れてたのかな」
新しい学校生活、そして響との再会。色んなものが重なってしまったのだろう。
響は彼女を起こさないように静かに身を剥がし、そのままベッドに寝かせてあげた。
「……未来、可愛いなぁ」
響は、こんな可愛い子が幼馴染で、しかも自分の事を考えてくれてるなんて俺はなんて幸せなやつなんだと考えていた。
そんな時、彼が持っていた携帯から着信が入る。
「……はい」
「響くん、俺だ」
相手は司令である弦十郎からだった。
「こんな時間に申し訳ないが、ノイズが現れた。対処の方お願いできるか?」
「……はい、わかりました。すぐに現場に向かいます。ごめん……未来。ちょっと行ってくるね」
弦十郎からノイズの発生源を聞いた響は、寝息を立てる未来の頭を優しく撫でた後、部屋を後にした。
────
小日向未来にとって立花響は大切な幼馴染だった。
小さい頃から内向的で友達のいなかった自分に、初めて友達になってくれた人。
それは小学生になった時、中学生になった時でも変わらずに傍にいてくれた。
気づけば彼女は彼の事をずっと追い、一人の男の子として好きだった。
彼女は、この気持ちを彼に伝える事が出来なかった。
それでも、響と一緒にいられる。そんな関係がずっと続けば良いと、彼女は思っていた。
「……響が、亡くなった……?」
だがそれは、あの日を境に叶わなくなってしまった。
彼女が彼に自分の気持ちを伝える事すらも。
彼が事故にあったツヴァイウィングのライブ。それを誘ったのは未来の方からだった。
自分から彼をライブに誘ったのに、親の都合で行けなくなってしまい、そのせいで彼一人だけが死んでしまった。
自分のせいで。
そのとてつもない後悔が彼女の心を壊した。
そんな彼女は荒んでいった。
そして、彼の後を追うために自殺を図ろうとした時もあった。
だが、彼女にはそんな勇気もなく、未遂で終わった。
「私、どうすればいいの……? 教えてよ、響……!」
その時の彼女は彼の名前を零しながら、ずっと泣いていた。
響が亡くなったと知ってから数日後。彼女の元に響の母親が訪れた時があった。
「これ、未来ちゃんが持っていて欲しいの」
そう言って、響の母は事故現場に唯一残っていた彼の遺品でもあるリュックを未来に渡した。
中にはツヴァイウィングのグッズが入っており、彼がライブに行けなくなってしまった未来のために買っていたのだろう。
「……響はね、未来ちゃんの事を大切に思っていたの。学校から帰れば未来ちゃんの話を沢山してくれていた……。だから未来ちゃんには響の分まで生きていて欲しいの」
「でも……私がライブに誘ったから響は……!」
「……未来ちゃんは何も悪くないの。だから自分を責めないで……。響もきっとそう思っているから」
未来は、響の母親を見て凄いと思っていた。
自分の大事な子供が亡くなっているのにそれでも他人を気にかけてくれている。
「……わかりました。私も今を生きていきます……響のためにも」
だから自分も、ここで終わってはいけない。
響のためにも生きないといけないと心に誓った。
それから数ヶ月。
彼の母親のおかげで生きる意味を見つけた彼女は無事に中学を卒業し、リディアン音楽院へと入学した。
「私、頑張るからね……響」
そして、未来は彼の忘れ形見であるリュックを背負い、リディアンの寮を後にして、新しい生活へと向かった。
そして、その帰りだった。
「……響?」
未来が正門を抜けた先、響にとても似ている人がいた。今も生きていればこんな風貌だったのではないかと思っていた。
だから未来は、思わず彼に声をかけてしまった。
「……未来?」
その人は自分の名前を呼んだ。その時、未来は確信した。
彼は響だ……と。
「……未来、久しぶり」
響がそう微笑んだ時、未来は思いっきり彼に抱き着いた。
夢でも、それでも嬉しかった。自分の最愛する人が目の前にいる。
もう二度と……離さない。
────
「……あれ、私、寝ちゃってた?」
響の部屋のベッドで寝ていた未来は目を覚ます。彼の机に置いてある時計は夜中の一時を示していた。
「……響? どこ?」
ベッドから起き上がった彼女は部屋にいなかった響を探すために廊下へ出た。
一通り歩いては見たが響の姿はなく、夜中のためか他のスタッフの姿も見えなかった。
一旦部屋に戻る未来だったが、彼女は響が傍に居ないことに対する不安とストレスを抱え始めていた。
あれから三十分経った。響はまだ帰ってこない。
過去の出来事で一度壊れてしまった心。そしてまた響に出会えた事で復元し始めた。
しかし、一度壊れてしまったものは完全に元通りにはならない。
それは、彼女が彼に大きく依存するようになるくらいには歪となってしまっていた。
そこから更に一時間が経過する。
彼女は響がいない不安で動悸を感じてしまっていた。
早く帰ってきて欲しい。
もしかしたら、あの時の響は夢だったのか。本当の響はもう死んでしまっているのではないか。
あまりの不安に良くないことばかりを考えてしまっていた。
「嫌だ。早く響に会いたい……!」
様子のおかしくなってしまった彼女は今にも泣きそうだった。
「あぁ〜。疲れたぁ〜」
そんな時、部屋の扉が開かれ響が部屋に入ってきた。
「……! 響ッ!」
未来は響の姿を確認してすぐ彼に抱き着いた。
「み、未来? 起きてたんだね」
「私……私! 起きたら響がいなくて、もしかしたらまた私の前からいなくなったんじゃないかって思って……!」
「……ごめん。未来が寝ちゃった後に夜間任務の方に行ってたからさ。でも大丈夫。俺はここにいるよ?」
「良かった……!」
未来は安心して笑っていた。
響は抱き締めていた未来を離すと、ベッドの方に向かい、着ていたパーカーを脱いで、ベッドの上に置いた。
そして、中に着ていた黒いインナーによって強調されている、鍛えられた背中を未来は見つめていた。
小さい頃から自分を守ってくれていた彼の背中。それもずっと大きくなり、今は自分以外の人達も守るために戦っている。
「もうこんな時間だと未来を寮に送っていくのもちょっと難しいよな……。 かと言って俺の部屋に泊まるのもアレだし……」
未来が知っている頃の響はどちらかと言えば可愛いと言われる部類の顔だった。
しかし、今の成長した響の顔は凛々しく、自分以外の女子が惚れるのも無理はないと思う。
そんな男として立派に成長した彼に、彼女は女としての本能が燻られていた。
(だから翼さんも……響の事が)
そんな時、胸に痛みが走る。
自分の好きな人が、想いを伝えられなかったせいで別の誰かに取られてしまう。
「他に使える部屋がないか探すしかないな。未来もそれでいい? ……未来?」
──そうなる前に、奪わないと。
未来は、響をベッドに押し倒した。
「……未来?」
あまりの急な出来事に、動揺していた響。
だが、顔を紅くし、荒い息をあげながらとろんとした瞳で自分を見つめる未来に、彼も顔を赤くしていた。
そして未来は、無言で自分の唇で彼の唇を塞いだ。
「……っ!?」
響は彼女を離そうとするが、未来はそれ以上の力で彼を押さえつけていた。
お互いの舌が絡み合う深いキス。それは長時間にも渡って続いた。
そしてやっと、未来は白い糸を引きながら唇を離した。
「響……響……!」
だが、呪詛のように何度も彼女は響の名前を呟き、間髪入れずにまたキスをする。
キスなどされたことも無い響は、頭がショートしていて、何も考えられない放心状態になっていた。
そして未来は、恋人繋ぎのように彼の両手をがっちり絡め取り、そのまま彼を好き放題にしていた。
「響……愛してる。もう絶対に離さないから」
393は強いなぁ〜(白目)
基本作者なんも考えていないんで、ついてこれる人向けの作品になると思います(適当)