男として生まれた立花響が修羅場に遭う話 作:勝機を零した、掴み取れん
お気に入り150件に評価色付きました。みなさんのおかげです。ありがとうございます!
響が未来に襲われた当日の昼。彼は目を覚まし、ベッドから起き上がった。
そして彼が横に目を向けると、はだけたブラウス姿の未来が寝ていた。
「俺は……?」
響はあの時自分が何をされたかのかを思い出そうとしていた。
口の周りはべっとりとしており、服も汗でベタついている。それに、身体中が筋肉痛のような痛みが残っていた。
「……とりあえずシャワー浴びるか」
身体の不快感を感じた彼は、未来を寝かせたまま浴室へと向かった。
シャワーで身体を流していた響は、唇に手を当てていた。
「俺は……未来にキスされたんだよな……?」
あの時自分が何をされたのかを思い出した響は顔を紅くしていた。
今まで戦う事にしか生きてる意味を見いだせず、青春を謳歌する事に興味など無かった彼が、キスをされた。
しかも、数年ぶりに再会した幼馴染にだ。
『響……愛してる。もう絶対に離さないから』
響は意識を失う前に聞いた、未来の最後の言葉を思い出した。
「……未来は俺の事が好き……なんだよな?」
そうでなければあんな事しない。響は自分で考え、彼女をそうさせてしまったのは自分が原因なのでは……と納得していた。
「……なら、俺がしないといけないことは……」
そう言って響はシャワーのお湯を止めた。
「……響」
シャワーを終えた彼は、部屋着に着替えてから部屋に戻ると寝ていたはずの未来が起きていた。
「未来、おはよう」
「響……。私……私っ! 響の事を無理矢理……!」
「……まず、シャワー浴びてきた方がいいかも。多分お互い汗すごいし、シャワー浴びれば落ち着くかも」
「ああ……うん。わかった」
しんみりとした未来は響の言われるがままに動き、そのまま浴室の方へと向かっていった。
シャワーを終えて、リディアンのジャージに着替えた未来は響と共にベッドの上に座っていた。
「……えっとさ、いきなり聞くんだけど、なんであんな事したの?」
響は単刀直入に、自分を襲った理由を俯いたままの未来に聞いた。
「……響を奪われたくなかった」
「……へっ?」
「私は……響が好き。私以外の女の人が響の隣にいるなんて嫌なの……私じゃなきゃ嫌なのっ!」
「……未来」
「それで……感情がグチャグチャになって気づいたら私……響の事を……!」
未来は嗚咽混じりに泣きながら、響の方を向いた。
「最低だよね……私。こんな事しても……響に嫌われるだけなのに……!」
そんな未来の肩に響は手を置いた。
「話してくれてありがとう。でも俺は大丈夫だから。ちょっといきなりの事で混乱しちゃったけどね」
「……怒らないの?」
「うーん。男からすれば女の子にキスされるのは嫌だとは思わないかな〜なんて。それに……未来ならいいかなって」
そう言って響は微笑む。
「昔から未来は俺の傍にいてくれた。それは今も変わらないし、俺を支えようとしてくれる人を嫌いにはなれないよ」
「……響」
「俺は未来の事を大切な幼馴染としか見てなかったんだ。けど、そう思ってたのは俺だけだった。この気持ちが変わるか分からないけど、俺はなるべく未来の事を受け入れたいと思ってる」
そう、彼が未来にしなければいけないと出した答えは、受け入れる事だった。
自分が生きている事を伝えなかったせいで彼女はこんな風になってしまった。
これは間違いなく自分の責任。それならば責任は取らなければいけない。
それが彼が二課として生きてきて学んだ事だった
「だから、別に我慢しなくてもいいよ。それに……未来がこうなったのは俺のせいでもあるし」
「……本当にいいの? このままだと私、どんな事するか分からないよ?」
「そんなもの、ドーンとこいだよ」
そう言って響は自信満々の表情を浮かべて胸を叩く。
「それに、たった一人の悩みも解決出来ないのに、もっと多くの人を救うなんて無理な話だからね」
「……本当に、優しすぎるよ……響は」
「でも、俺が他の人に取られるって言うのはよく分からなかったかな。俺、女の子の知り合い少ないし……」
「……わからないならいいよ。響はそのままでいてね。カッコよくて、優しくて、私だけを見てくれる響で……」
そう言って未来は再び響を押し倒した。
「あの……未来。またいきなりするのは……」
「……こんな私を受け入れてくれるんでしょ?」
「言ったけど、その……早すぎない?」
「ごめんね……でも私、我慢する事なんてできないよ……」
その質問には答えずに未来は、響と身体を重ねるように抱き締めた。
────
「……で、こんな時間になったと言う訳か」
「本当にすみません……」
夕方の本部内の社員食堂。
そこで響と未来、弦十郎の三人は食事をとっていた。
しかも、夜間任務から帰ってきてずっと未来の相手をしていた響にとってはほぼ一日ぶりの食事である。
響はこの時間まで部屋にいた経緯を少しぼやかして弦十郎に話したが、それはほぼお見通しであった。
流石はOTONAである。
「俺としては、響くんが青春を謳歌してくれて何よりだとは思う。二課で戦う者ではあるとはいえ本来、学生として生活しているはずなのでな」
そう言って弦十郎は笑う。
彼からしても、今まで戦うことしかしてこなかった響が色んな経験をするのは、自分の子供のように嬉しい事だった。
「しかし、ここは二課の本部だ。他の職員もいる中でそういった行為に及ぶのは周りの迷惑になりかねない」
「まあ、そうですよね……」
「ということでだ。俺からの独断で申し訳ないが、響くんには明日から本部が管理しているマンションに引っ越してもらう」
「……えっ、でもそんな急にできるものなんですか?」
「そこに関しては問題ない。遅かれ早かれ、響くんがこうなることは予測済みだ。だからいつでも君が引っ越しができる準備はしてあったのでな」
あまりのトントン拍子に響は思わずポカーンと口を開けている。
「ともかく、食事を済ませたら響くんは荷物をまとめる準備をしてもらおう。未来くんも、彼の手伝いをしてくれないか?」
「はい、響のためなら!」
未来は笑顔で答えた。心の中ではとても好都合だと、喜んでいた。
「……頑張れよ、響くん。これから君に起こることはノイズと戦うことよりもずっと過酷だぞ」
「えっ……それってどういう……」
弦十郎は響の左肩を叩き、彼の言葉に足を止めることなく食堂を後にしていった。
────
次の日、弦十郎の手配によって新しい住居となるマンションに引っ越した響は未来と共に元々いた部屋にあった荷物を運んでいた。
「……ふぅ、荷物はある程度整理したかな」
「意外と早く終わったね」
「うん、二課の職員の人達が手伝ってくれたおかげだよ。もちろん、未来もね」
ある程度の家具は新しい住居の方に用意されていたので大きい荷物は持ってくる必要がなかった。
元々響は物をあまり置かないタイプだったために持っていくものは洋服などで済んでいたので、荷物の整理は早く終わった。
「……うーん」
「……どうしたの? 響」
「いや、ベッド……大きくない?」
未来と共に洋服を寝室のクローゼットに入れ終わった響は、シックな部屋全体を眺める。そして、ひとつの疑問が浮かんだ。
目の前にあるベッドが一人用にしては大きすぎる……と。
一人暮らしならシングルサイズのもので充分なはず。しかし、そこにあるのはクイーンサイズ。二人が一緒に寝るサイズなのだ。
確かに、寝返るをよく打つ人間なら余裕のあるサイズの方がいいが、それならセミダブルで問題ないはず。ここまでの大きいサイズはいらない。
しかも枕が二つ備え付けている。つまりこれは響以外に誰かが一緒に住む前提の物件となっていたのだ。
そして寝室だけではなく、他の部屋ですら男が一人暮らしするには広すぎると響は感じていた。
「確かに……」
──まるで私と響が一緒に暮らすみたいだね
その時の未来の低い声に、響は背筋が凍る感覚を覚えた。
そして何度目だろうか。未来は響に馬乗りになるようにしてベッドへと押し倒した。
「……ねぇ、響。ここなら、どんなに激しくしても誰にも迷惑かからないね……!」
ハイライトの消えた瞳を宿した未来は息を荒らげ、興奮していた。
「ち、ちょっとタイムっ!」
そんな時、玄関のインターホンが鳴る。
流石に来客が訪ねてきている状況で襲われる事はない。
響は安堵の表情をし、未来は凄まじい形相で舌打ちをする。
「よっ! 元気してるか?」
玄関のドアを開けると、そこには奏と……とてつもない圧を放っている翼がいた。
「あっ、奏さん……と翼さん」
翼から来る圧に、響は思わず身を引いてしまう。
「ご機嫌用、響。それに……どうして隣に小日向がいるのかしら?」
「こんにちは、奏さんと翼さん。私は響の引越しの手伝いをしていたんですよ」
未来と翼、お互いが凄まじい雰囲気が漂っていた。
「……奏さん、なんとかしてくださいよ」
「この二人をなんとかするのはアタシには無理かな〜。それにさ、なんか面白そうじゃん?」
「俺は全く面白くないんですよ……!」
片方が一触即発の間合いを取り合ってる中、もう片方の二人はヒソヒソと小声で話す。
「……小日向さん。どうやら昨日は響と一緒に寝たらしいわね」
「はい。響の身体、凄く暖かくて……凄く気持ちよかったです」
「み、未来っ! その言い方誤解生むからっ! キスしかしてないでしょっ!?」
「……へぇ、キスはしたのね、響?」
「……あっ」
不味い。そう彼が思った時は遅かった。
「詳しい話、ベッドで聞かせてもらおうかしら?」
そう言って翼は響の腕を強引に掴み、未来と共に寝室へと向かった。
「つ、翼さんっ! ちょっと待ってくださいよ! 奏さんっ! 助けてっ!」
「頑張れよ〜響。恋する乙女の気持ちを受け入れるのも男の使命だぞ」
奏は飛びっきりの笑顔で恐怖に怯えている響に手を振る。
「……そういえばこの部屋、弦十郎のダンナが翼のために前から準備したんだよな……。頑張れよ、翼。あの感じだと、未来ちゃんかなり強いぞ」
響を叱る翼の声がマンションの部屋中に響いている中、奏は親友の恋が成就する事を期待していた。
どこかのタイミングで番外編として時間軸を無視した、クリスや他のキャラの短編物投稿したいと思ってます。
ぶっちゃけこの平行世界だとクリスとかマリアとか出る気配ないですし……。