男として生まれた立花響が修羅場に遭う話 作:勝機を零した、掴み取れん
明日から連休開けて仕事で忙しくなるので投稿頻度落ちるとおもいます。
すみませんがよろしくお願いします。
色んな事が起きた後の次の日の朝、響はベッドから目を覚ます。
「あっ、響。おはよう」
そして、目を開けた先には制服姿の未来が立っていた。
「……おはよう、未来。なんで部屋に入れてるんだっけ?」
「忘れたの? 響の家の合鍵、私も持ってるんだよ?」
「……そうだっけ?」
先程まで眠気が残っていた響だったが、その発言を聞いて眠気が吹き飛んだ。
「朝ごはん出来てるから、早くリビングに来てね」
そう言って未来は微笑んで寝室から出ていった。
着替えを終え、リビングに入った響は朝食が置かれたテーブルの前の椅子に座る。
響の大好きなご飯に味噌汁、焼き魚とこれぞまさに朝食とも言うべき品揃えである。
「いただきます」
響は両手を合わせ、未来の作ってくれた朝食を口に運ぶ。
「……美味しい」
「ふふ、良かった。響にそう言ってもらえて」
「昔から未来は料理とか出来る子っていうのはわかってたけど、ここまでとは」
「リディアンの寮で一人暮らしするんだから、
これくらいは出来ないといけないと思って、頑張った甲斐があったよ」
嬉しそうに笑う未来を見て、響も少し笑う。
「どうしたの?」
「……いや、そう言えば俺ってあの時からずっと戦うことしかしてなかったなって」
響は自分が二課に入ってからの生活を思い出していた。
「任務が終わればトレーニング。それを一日中していた時もあったんだ。でも今はこうして誰かとご飯を食べたり、他愛もない会話をしている」
「……普通の人からすれば当たり前の事も出来ないくらい、前の俺は変だったんだろうなって……。でも今、俺がこうしていられるのもあの時、未来がいてくれるおかげなんだ。ありがとう」
「私も、響とこうして一緒にいることが出来て嬉しい」
「でも、いつの間にか家にいるのはちょっと怖いけどね」
朝食を食べ終わった後、響は食器を洗っていた。
未来も手伝うとは言ってくれたが、ご飯を作って貰ったのに片付けまでしてもらうのは良くないという事で、彼女にはリビングのソファで時間までゆっくりしてもらうようにしていた。
はずなのだが……。
「あの……未来さん? このままだとお皿洗いにくいんだけど……」
未来は響に抱きついていた。とても上機嫌な事が雰囲気から伝わる。
「やっぱり響の傍が一番安心する。私、やっぱりここに引っ越そうかな」
「リディアンからは遠くなっちゃうけどね。というか今日だって、寮の方がすぐ学校に行けるんだから、わざわざ逆方向の俺の家に来なくてもいいのに……」
「響は何も分かってない。私は響に会いたいの! それとも私が響の家に来るのに都合の悪いことでもあるの?」
「……ないよ」
響は少し言葉を詰まらせた。実際、都合が悪い事があるのだ。
「……どうせ、一人暮らしで誰にも邪魔されないからって部屋でえっちな本でも読む気なんでしょ?」
響は一瞬身体を震わせた。もう既にバレていたのだ。
とはいえ彼も思春期の男の子である。そういう欲があっても仕方がないのだ。
「……別にそういう事なら、全部私がしてあげるのに……響がしたい事、なんでもしてあげるよ……?」
恍惚な表情を見せながら、彼女は彼の耳元で優しく囁いた。
響は顔を紅くしながらも、必死に煩悩を消すかのように、食器を洗う事に集中する。
それから十数分後。
未来は学校へ向かうために、響は彼女を送っていくために玄関で靴を履いていた。
「ねぇ、響」
「何……っ?」
未来の声を聞いて彼女の方へと振り向く響。
そして、未来は彼の唇を塞いだ。
「……えへへ、いってらっしゃいのキスだよ?」
「……俺も一緒に行くんだけどな」
響は顔を紅くしてそっぽを向く。未来に振り回されてばかりだが、満更でもないという表情をしている。
そして、他の女の子が関わらなければとても良い女の子で、自分の精神が参ることもないのに……とも思っていた。
二人はリディアンへ向かう道を歩いていた。
未来は相変わらず響の腕に抱きついており、彼自身は周りの視線から耐える。
「……青春だな〜」
響は小さく呟く。
こんな生活を送るなんて昔の自分は想像できたいただろうか。
彼がそんな事を考えていると、もうリディアンの正門へと着いていた。
「またね、響」
「うん……また迎えに来るよ」
リディアンの校舎へと向かっていった未来を、響は見送っていた。
────
お昼休み。未来は入学して初めて出来た三人グループの友人と、リディアン内の学食を食べていた。
「……ねぇ、ヒナ。そう言えば今日一緒に来てた男の子って誰なの?」
仲良しグループのリーダー格、安藤創世は彼女と一緒に学校まで来ていた響の事を聞いていた。
「……響の事?」
「あの方は響さんと言うのですね。入学式の帰りにもいましたが、とても学校内で話題になってましたよ」
「まるでアニメのキャラクターみたいなイケメンだったわね!」
お嬢様のような少女、寺島詩織とアニメが大好きな少女の板場弓美は当時の響の印象を話す。
「……響は私の幼馴染なの。二年前に離れ離れになったんだけど、たまたまこっちの方に住んでいたみたい」
「響さんと言うのですね。それにしても二年ぶりの再会とは……」
「イケメンの幼馴染との久しぶりの再会。まるでアニメのヒロインみたい……!」
「あとその子、私服でヒナと来てたけど学校は行ってないの? 」
「うん。ちょっと事情があるみたいで……」
未来がそういうと創世はあまり良くないことを聞いてしまったと思い、気まずそうな表情をする。
「大丈夫。響もそんなに気にしてる事じゃないと思うから」
「なら……いいんだけど」
「そういえば、その響さんは私達が入学する前から有名な方だったらしいですね。風鳴翼さんの迎えに何回か学校に来ているという話を聞きました」
「私もその話聞いたことある。噂では翼さんの使用人って話だけど実際どうなんだろう」
三人は響の事で考えている。
実際、政府の人間となっている彼の情報は外部にはあまり知られてはいないので謎の深い人物になっているのは仕方がないのだが。
「でも、私はヒナとその子がただの幼馴染ではないって感じはしたけどね」
創世は少しニヤニヤした表情で未来を見る。
「というと?」
「だってさ〜。いくら幼馴染との再会とはいえ、たくさんの人がいた中で抱き締めたりする?」
彼女は、入学式の終わりに未来と響が抱き締めあっていた現場を見ていた一人であった。
「確かに……あの時は凄かったですね。逆にそれで私達は小日向さんを知ったのですけど」
「それに、今日だってあんなに嬉しそうに抱きついて登校してたのも見たんだから! 本当、見せつけてくれるわ……」
「あ、あの時はつい勢いで……! た、確かに響の事は幼馴染以上の事は想ってはいるけど……!」
「まあ……! それはお熱いですね!」
響が相手だと暴走する彼女だが、彼がいなくなってから人と話す事をあまりしていなかったため、他人との会話に慣れていなかった彼女は珍しく慌てていた。
「……ヒナ、頑張りなよ。その子が翼さんと知り合ってるなら、もしかしたら翼さんに想いを寄せてるかもよ」
「確かに、翼さんは今ではトップアーティストですから。そんな人を好きになるのも無理は無いと思います」
「……そうだね」
三人は翼が一番の強敵になる。そう思っていた。
だが、実際は未来の方が一枚上手ではあった……というか彼女があまりにも周りのイメージとは反しての肉食系なのだ。
「……でもその人、翼さんとも仲良さそうに見えたし……もしかしたら女ったらしの面があったりする?」
そして今の創世の発言に、未来は彼女達の思っている事と、自分が響にしている事と乖離している事に気づき、閃いた。
「……そうかも。響って昔から優しくて、女の子にモテてたけど、あまりそういうのに気づいてなかったりするの」
周囲を巻き込んで、外堀を埋めていけばいいのではないかと。
「まるでアニメの主人公みたい。朴念仁で色んなヒロインに好意を寄せられてるのに、本人は何も分かってない。そういうのはね、こっちからわからせてあげないといけないの!」
弓美は響の不甲斐なさに一人で怒っているが、実際の所は未来の方が響に自分の気持ちを打ち明けてはいるし、彼の優しさにつけこんで行為を迫ったりしている。
「……そうだね。私、頑張るっ!」
「よしっ! 私達もヒナの事応援するし、何かあったら手伝うからね!」
創世の言葉に他の二人も頷く。
「みんな……ありがとう!」
こうして、未来の恋を応援し隊は結成され、響への理不尽はさらに増えるばかりとなった。
未来さんが強すぎるし、もう一人のメインヒロインのはずの翼さん勝てるのかこれ……?