推しの夫【本編完結】   作:蓮田ヒトリ

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ルビーメイン回です
人物紹介の前に一つ投稿しているので、そちらを見ていない方はぜひご覧ください。


紅玉はなおも光り輝く

⭐︎⭐︎ルビーside⭐︎⭐︎

 

 

「宮崎ー!」

「高千穂ー!」

「「いぇーい!!!」」

「いぇーい……」

 

 私達星野一家は今宮崎旅行に来ている。というのも、パパが高千穂でお仕事の予定があり、私達の小学校卒業旅行も兼ねて一緒にきたのだ。パパもスケジュール調整してくれたおかげで最終日は一緒に旅行できる!

 本当はついこの前5歳になった私達の末っ子、真理亜も連れてくる予定だっだんだけど、社長とミヤコさんが自ら預かることを進言してくれたので今回はお留守番だ。私達みたいに前世の記憶は無さそうなのにいい子で泣ける。ちなみに、斉藤さん家も真理亜と同い年の子がいるので今も楽しく過ごしているらしい。

 勿論邪魔なんて言うつもりはないけど、パパもママも産まれたばかりの真理亜に付きっきりで少し寂しかったのは本当だ。そんな中でママと一緒にいれるのは本当に久々ですごい嬉しい!お兄ちゃんがいるのはちょっと邪魔だけど、今の私は許容しちゃう!

 

 

「へ〜、チーズ饅頭だって!美味しそうじゃない?」

「わー!美味しそうー!お兄ちゃんも食べる?」

「いや、俺はいい」(前世で死ぬほど食べたしな……)

 

 

 前世の私はここら辺に住んでいたけど、体が弱いこともあってあんまりこういうのは食べれなかった。だから懐かしさもあるけど新鮮さもあって超楽しい!今の私は高千穂を楽しんでるランキングNo.1なのだ!!

 

 

 

「あっ、ここら辺……」

「…………」

 

 

 高千穂を色々観光していてしばらくすると、丘の上に病院を見かけた。前世の私の死んだ場所、そして、私がママから産まれた場所。そう言う意味では、一番思い入れの深いところかも。

 

 

「あー、二人は知ってる?あの上の病院で二人は産まれたんだよ〜?」

「知ってる」

「前社長が酔っ払って教えてくれたよ?」

「えー!?あのグラサン、私には誰にも言うなって言ってたのに…………」

 

 

 不貞腐れるママも可愛い!ってそうじゃなくて、私達身内しかいない宴会の席だったからっていうのもあったと思うよ。

 その時もママもいたけど、成人した時のお酒飲みだったので既にダウンして聞いていなかったらしい。ちなみにパパはずっとニコニコしてて適当に相槌を打っていた。お酒が入ったパパは普段のキリっとした姿からはかけ離れてぽやぽやしていたのがとってもかわいかったなあ。

 

 それにしても、ここに来るとどうしても前世のこと、ゴロー先生(せんせ)のことを思い出す。

 私がずーっと一人だった時にそばにいてくれて、いつも励ましてくれて……あの頃の私の心の支えは、アイとせんせだったのは間違いない。

 せんせがいなかったら頑張って生きようなんて思えなかったし、アイドルになろうとも思わなかった、私に生きる意味をくれた人……。

 あの人はアイドルオタクだから私がアイドルになればまた会えるかもしれないし、いつかママみたいにドームで公演やって、皆んなが知っているようなアイドルになってせんせに会うんだ。

 

 そう言えば、七年前の初のドーム公演も今までのライブも、私がママの子供になってからはせんせの姿は見れなかった。勿論私の存在自体がアイのスキャンダルだからきちんと探せてはいないけど、それでもそれっぽい人は見つけられなかった。

 まああの人結構運が悪いみたいだし、倍率もめちゃくちゃ高いから病院で泣きながらサイリウムでも振っているんだろう。その姿を想像するだけでつい顔が緩んじゃう。

 ま、まあ?ママもお世話になったみたいだし?お礼として私のチケットくらいは渡してあげてもいいけどね?……せんせ、喜んでくれるかなあ……ふへへ…………!

 

 

「…………でも、ちょっとママの戒めみたいな場所でもあるんだ」

「いましめ?」

「う〜ん、ルビーがアイドルになるなら言ったほうがいいかな……私の担当だったお医者さんがね、殺されちゃったの」

「!」

 

 

 え?

 

 

 

「犯人は私のファンでストーカー。すぐ捕まったけど、私の出産日にあの人は死んじゃったの」

 

 

 でも、まだ、他にもお医者さんはいるし、私の担当だったってことは、産婦人科の先生じゃ…………

 

 

「若くて優秀な先生だって言われてて、色んなところにお手伝いしていたんだって。ゴロー先生って言ってたっけ」

 

 

 あ

 

 

「だからルビーもアイドルになるなら極力身バレには気をつけて…………ルビー?」

「おい、ルビー、どうしたんだ」

「ルビー?おーい、もしもーし……これヤバいやつ?」

「ルビー!ルビー!」

 

 

 だって そんな せんせ 私は じゃあ なんのために

 

 

「ルビー!!!!」

「…………え、なに?お兄ちゃん?」

「どーしたの?疲れちゃった?もういい時間だし、宿に戻ろうか?」

「え、ううん!まだまだ元気だよ!」

「…………俺が疲れた。風呂入りたいから帰る」

「…………そっか!じゃあ帰ろう!ルビーもほら!」

「……………………うん」

 

 

 そうして宿に戻り、ママが部屋付きのお風呂に入っている間に早めに出てこっそりとインターネットを開き、せんせの名前を調べると、一番上の記事が目に入ってしまう。

 

 『アイドル、アイのストーカーによる凶刃で、一般男性死去』

 

 恐る恐るその記事を見てみると、被害者の名前に『雨宮吾郎』という文字が確かに書いてあった。

 諸々の事情が上手く隠されているけど、その被害自体は確かにあったみたい。

 嫌な予感が、一番最悪な考えが当たってしまった。当たって欲しくなった。それでも目の前の文字が、詳細に書かれている内容がこれが現実だって否が応でも分からされてしまう。

 お風呂上がりなのに震えが止まらなくて、長風呂していないのにのぼせたみたいに眩暈がして、目の前が真っ暗になって、ああ、もう、なんか、どうでも……………

 

 

「おい」

 

 

「…………なに」

「なにじゃねーよ。旅行初めのテンションはどうした」

 

 

 突然、お兄ちゃんが声をかけてきた。

 

 

「別に、ちょっとそんな気分じゃないだけ。明日にはパパも来るしちゃんと……」

「すでに取り繕えてない時点で自分がいっぱいいっぱいだって自覚しろアホ……で、どーしたよ」

「お兄ちゃんには関係ないでしょ」

「は?」

 

 

 急にお兄ちゃんから聞いたことのないような低い声でびっくりするけど、今の私はどうにも止まらなくてお兄ちゃんを睨む。

 

 

「ハァー…………前世のことだろ?」

「ッ!?な、なんで……」

「生まれた時から一緒にいるんだから分かるっつーの……こればかりは俺くらいしか話せんだろ。言ってみ」

 

 

 ……お兄ちゃんは、本当にずるい。ぶっきらぼうで、前世からアイのオタクで、それでも言葉の節々から優しさがにじみ出ていて、一瞬、せんせと姿が被って見えちゃった。

 そのせいか、当時の状況ともうせんせに会えない今の状況を思い出して、思わず目から涙が出てしまう。

 

 

「あのね」

「おう」

「私、好きな人がいたの」

「……そう、か」

「私が病弱だった時の支えの人で、アイドルをやろうって思えたきっかけの人で」

「ふむ」

「私のおかげでママも推してくれて、モラリストでたまにいじわるだけど、それでも両親に避けられていた私には確かに救いになっていて」

「ふむ…………ふむ?」

「でももう会えないってわかっちゃって、私これからどうしたらいいんだろうって……」

「…………」

 

 

 沈黙が流れて、どうしたらいいのか分からなくなって、お兄ちゃんの顔が見れない。こんな理由で、とか思われていないかなって不安に感じて急いで言い繕う。

 

 

「って、私の前世も知らないし、こんなこと言われてもしょうがないよね〜!別に犯人も捕まっているみたいだし、私のすることは何もない!だからお兄ちゃんもそんなに気にしないで──」

「やっぱお前アホだろ」

「あ、アホ!?傷心中の乙女に向かってよりにもよってアホ!?」

 

 

 唐突な暴言に流石の私も驚きを隠せない。いい加減グーが出そうなところに、頭をかきながらお兄ちゃんが提案してくる。

 

 

「あー、そうだな……ほら、俺らみたいな前例がある以上、その人も生まれ変わってるかもしれないだろ?前世の記憶はないかもしれないが、いずれ会うかもしれないぞ?」

 

 

 ぱちくり。

 

 

これじゃやっぱ弱いか……言うしかないか……!ルビー、実は俺──」

「その発想はなかった」

「あめ…………お?」

「そうじゃん!もしかしたら会えるかもしれないじゃん!超天才!お兄ちゃんありがとう!大好き!!」

「うぐっ、お、おお……そうか、元気出たならよかった……うん」

 

 

 そうと決まれば、やるべきことはただ一つ!せんせが記憶を思い出すくらいすごいアイドルになって、せんせを私の前に引きずり出す!勿論本当にそんなことできたら超ロマンティックで、俄然やる気が上がってきた!

 

 

「たまにはお兄ちゃんのリアリストな意見も役に立つもんだね〜」

「どう言う意味だコラ」

「んふふ、なんでも〜?」

「あーいいお風呂だった〜あれ?ルビー復活?大丈夫だった?」

「うん!もう完全復活です!」

「そ!ならよかった!」

「今何もよくない!ちょ、せめて服着て!?」

「いやあ、あんまりこういうところ来たことないから忘れちゃってさ〜。別にママの裸なんか昔よく見てたでしょ?」

「俺もう来年から中学生!!本当やめろ!!」

「ただいま〜…………ん?」

「あっ」

「まずっ」

「アイさん?」

 

 

 結局ママが服を着させられた上で正座して説教されていた。パパとママめっちゃ仲良いし、いずれせんせともこんなこと出来るかなあ……?

 ううん、もうせんせじゃなくても、こんな関係を持てるような恋をしてみたい!そのためには、やっぱりアイドルかな?だって、ママもアイドルしてたからパパと出会ったんだから!

 よーし、そうと決まればママ(アイ)に並ぶアイドルに、いや、超えるアイドルになってみせる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やべー、まさかさりなちゃんだったとは……」

 

 

 俺はもうほぼ風化していた前世の記憶を遡る。あんなに好意をぶつけてきてくれたさりなちゃんが、まさかの実の双子の妹になっていたとは……。ところどころその面影はあるように感じたけど、世間は狭いというか何というか……。

 

 

「前世の頃から引っ張り続けている恋心……もし俺が先生だとバレたらと思うと……」

 

 

 こうして俺は、墓場まで持っていくであろう秘密を抱えたのだった。

 

 




ちなみにルート次第では小学生との間に生まれた双子夫婦という地獄の(ある意味幸せな)星野一家が誕生します

次の番外編の話はなにがいいですか?

  • 有馬かなは告らせたい
  • 星野真理愛の苦悩
  • 星野一家のインタビュー
  • かぐや姫と宝石たち
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