推しの夫【本編完結】   作:蓮田ヒトリ

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かなり難産でした。多分続きます。


有馬かなは告らせたい

 私、有馬かなには気になっている人がいる。

 そいつは私より年下で、そのくせ生意気で、イケメンだけどその澄ました顔がムカつく奴で……でも、苦しい時に私のことを助けてくれたり、今の私がいる一番のきっかけのような、私の唯一のライバル。

 星野アクア。アイツには、まあ、感謝していなくもない。

 というか、事あるごとに私を助けてくれたり、色々相談して来たり、アイツ私のこと好きすぎじゃないだろうか。ま、まあ、私は人気役者でビジュアルもいいし?惚れる気持ちも分からなくもない。芸能人の恋愛ゴシップはかなりリスキーだけど、どうしてもっていうなら、受け入れてやらなくもない?くらいには気になっている。

 ただ、アイツはシャイなのかそんな素振りを見せない。ならばしょうがないので、私自ら告白させるようなシチュエーションを作ってあげてやろうと、そう思っている。

 

 

「はい、これにて撮影終了です!お疲れ様でしたー!!」

『お疲れさまでしたー!!』

 

 

 とは言っても私はプロ。こんな恋愛映画のヒロイン役でも私情は挟まない。むしろ、これで嫉妬して向こうが行動を起こさないか期待心配しているくらいだ。……アイツが嫉妬している姿なんて想像つかないのが悔しいところなんだけど。

 

 

「かなちゃん!初めて起用したけど、とってもよかったよ!」

「ありがとうございます。私もいい経験になりました」

 

 

 撮影最終日で最終撮影が終了したので打ち上げムードになっている中、監督が話しかけてきた。普段の撮影はキリっとしているのに、オフになると結構馴れ馴れしいのよね……。実力はある分本当にいい経験になったし、悪い人じゃないのは間違いないんだけどね。

 

 

「そういえば渡していなかったかな。はいこれ」

「?これは?」

「今回の映画の一般チケット。他の観客と同じ状態で見たいって人も多くて、いつも撮影終わりに映画に関わってくれた全員に渡しているんだ。」

「あ、ありがとうございます。でも、いいんですか?」

「もちろん。私が撮った映画は全ていい映画。誰もかれもに素晴らしい2時間を届けられる自信がある。それは出演者も例外ではないよ」

 

 

 プライド、ただそれだけと言った監督に、私の生きる世界はこんな人が五万といるところなんだと、改めて自覚してつい身震いする。勿論これは武者震い。

 そして、これはアクアを揺さぶるのに使えるのでは、と私はいい考えを思いついた。

 

 

「監督、お願いがあるんですけど──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「映画のチケット?」

「そ。監督からもらったから、せっかくならあなた達に上げようと思って。兄妹水入らずで行ってきなさい」

「ふーん……」

 

 

 ところ変わって高校の放課後、私は星野兄妹にチケットを渡した。もちろん監督には許可を取ってある。一般チケットだし、問題はないだろう。

 

 

「あ、みなみちゃんとこの映画観に行く約束してるからパス。お兄ちゃんにあげる」

「へー?それは残念ね」

 

 

 私が監督にお願いしたのは、その一般チケットを4枚に増やしてもらうこと。友人におすすめしたいからと言ったら快く準備してくれた。正直その分のお金払うつもりだったけど、断固として受け取ってくれなかったから罪悪感に苛まれていたりした。

 ともかく、あらかじめルビーの友達であるみなみにチケットを渡しておいたのだ。こういう時に人脈が役に立つ。あちら側も快く受け取ってくれて、私が渡したことも秘密にしてくれた。というか彼女妙に恐縮してたけど、そんなに怖いかな私……子役時代より高飛車なつもりはないんだけど……。

 

 

「じゃあ、友達とでも行けば?」

「駄目だよロリ先輩!お兄ちゃんに友達がいないんだから」

「えっ……ごめんなさい」

「謝んな。さすがにいるわ。というか男同士で恋愛映画観に行くなんて普通しねーんだよ」

 

 

 勿論それはリサーチ済み。アクアが恋愛映画を一緒に見に行くほど親しい友人はいないことは織り込み済み。まあ、センシティブな部分な可能性もあるのでここを利用するのは気が引けるけど、これもアクアがさっさと告白してこないせいよ。これはそう、自業自得なんだから!

 これでアクアが誘える人はいない……そう、ここにいる私以外にはね!さあ、観念して私を恋愛映画に誘いなさい!

 

 

「じゃあ父さんと母さんに渡すか」

「は、ハァ!!!?」

「うぇ、どしたのそんな大声出して」

「な、何でもないわよ……」

 

 

 まさかの両親に!?恋愛映画のチケット渡すの!?そんなの想定してないわよ……!

 というか、二人の両親がイマイチ掴めないのよね。二人が所属している苺プロの社長の息子娘らしいけど、私には何か違和感がある。どちらとも面識はある私からすると、社長の方にはどこか面影あるけれど奥さんとは特に似ていないのよね……。

 そんな疑問は今は置いておいて、この状況はまずい……!なんとかしてやめさせないと……!

 

 

「け、結構青春してる映画だから、観るなとは言わないけど、ご両親にはキツいんじゃないかな?」

「…………いや、母さんなら嬉々として見るな。そんな時間があるかはともかく」

「うん、なんならアクアの分買って三人で見に行くと思う。なら私も2回目行きたい〜」

「まだ見ていない映画をか」

 

 

 和気藹々と家族談義している横で、私は冷や汗だらだらで思考を巡らせる。このままじゃアクアと映画デートの計画が水の泡に……!

 もう決定しそうな雰囲気に、私はつい、アクアの服の袖を引っ張ってしまう。

 

 

「……有馬?」

「…………わ、私、今回ちょっと気合い入れて演技してるから、その、演技、指導、的な?アドバイスとかあれば、教えて欲しいなって……」

「いや、いいけど……むしろ俺の方が指導してもらう側だぞ?」

「それはそれでいいの!あと、感想と魚は鮮度が命って言うでしょ!?だからもう観てすぐ、5秒後くらいに感想が欲しいな〜!!」

「へー、そんな言葉あるんだ」

「いや聞いたことないぞ……」

 

 

 勢いで変なこと言っちゃった〜〜!ヤバい、アクアの顔が見れない……!

 

 

「ハァ……よく分からんが、一緒に観に行くか?」

「…………!うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 映画館デート当日……

 

 

 

「って、なんで五反田監督も一緒にいるの!?」

「演技のアドバイス欲しいって言ったの有馬だろ。これでも演技指導のプロなんだから、有馬にも良いアドバイスくれると思うぞ」

「なんで誘われたのに罵倒されてんだ俺……ってかこういう感じって聞いてたら俺も断ってたぞ……」

 

 

 

 本日の勝敗、有馬の勝ち

 監督が空気を読んで二人きりにしてくれたため。




たくさんのアンケートありがとうございました。他のアンケート入れて下さった話も順次投稿できたらなと思っております。
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