推しの夫【本編完結】   作:蓮田ヒトリ

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特殊タグの扱い難しい・・・

一部内容に変更を加えました。


ベビーシッター

⭐︎⭐︎ルビーside⭐︎⭐︎

 

 

 私の名前は星野ルビー!今をきらめくピチピチの二歳児!

 何を隠そう、私には前世の記憶があり、世界のトップアイドル(私調べ)のアイの子供として生まれ変わったの!

 最初はアイに子供が出来た‼︎‼︎‼︎???みたいな衝撃を受けたけど、今は充実した赤ちゃん生活を満喫しています!

 

 そして、私の家族は私を含めて四人いる。

 まずはやっぱりママ!私の前世からの最推しオブ最推し!

 めっちゃ可愛いし綺麗だし歌も上手いしダンスもできる!そしてなにより魅せ方が超絶上手い!誰も彼もがアイに、ママに目線を奪われるの!

 

 そして、私の双子のお兄ちゃん。星野アクア。

 私と同じ前世の記憶を持っていて、アイのオタクだったらしい。正直自分のオタクが息子になるなんてママ超可哀想だけど、まあ自分から母乳をねだるみたいなクソムーブは自重しているので、まだ許せるかな。

 そしてなによりアイが好きなのもきちんと伝わってくるので、お兄ちゃんのことはそこまで嫌いじゃない。キモいから貶しはするけど。

 

 そして私のパパ……パパが、ねぇ……。

  パパ……パパがねぇ……。

 そうして私は、初めてパパを認識した時のことを思い出した。

 

 

「ほらルビー?パパでちゅよー?」

「なんですかその紹介……」

 

(えっっっっっっ!!!!?パパがいるなんて聞いてない!!!)

 

 

 起きていられずずっと寝てばかりの赤ちゃんの体だった私にとって、それが初めてのパパとの邂逅だった。

 だって私達処女受胎で生まれてきたんでしょ?知ってるんだから。パパなんていないはずだよね????しかも前世の私とそんな変わらない年齢だよね!??しかもどこかで見たことあると思ったら斉藤ダイヤ!!?えっ、斉藤ダイヤってアイの弟だったの!!!?いやでもパパってことは近親…………。

 そんな処理しきれない情報量に幼児の脳が耐えられるわけもなく、私は不本意ながら泣き始めてしまった。

 

 

「ふ、ふぎゃー!おぎゃー!おぎゃー!」

「あらら、オムツかな?ちょっと準備してくるからあやしてて!」

「えっアイさん?えー……ほ、ほーら、ルビー、すぐママが来るからねー。よしよし」

 

 

 そうやって私を抱き抱えられると、ものすごい安心感に包まれた。ゆらゆらと揺らしてくれるリズムが心地よく、それでいて決して落とされるような不安感もない。

 それでいて彼の声、私は知らなかったんだけど1/fゆらぎという安心感を与える声で、すっかり私は眠りについてしまった。

 それを見た私の兄が『前世持ちが小中学生くらいにあやされてる……』とドン引きしていたとか。いずれあんたもこうなるんだからな!

 

 それから起きた私は正気に戻り、ある決意をした。

 

 

「こんなんで勝ったと思うなよ……!絶対にママを取り返してやる!!」

「何と戦っているんだよ」

「そもそも、私の認めた男じゃなきゃ話にならない!これは見極めなの!」

「何様だよクソ厄介オタク」

「娘様ですけどー?それに、アイツにお世話され始めたら、推しに四六時中オギャリ放題という夢のような時間が短くなっちゃうじゃない!ちょっとは考えたら!?」

「お前は自分の発言のキモさを鑑みろ」

「てかアイに男がいるなんて、誑かされたに違いないわ!お兄ちゃんは心配じゃないの!?」

「いや、そんな感じの人じゃなかったけどな」(前世でも会ったことあるし)

「もういい、お兄ちゃんがやらなくても私がやる!」

 

 

 それからと言うものの、パ……アイツがいるたびにぐずったり、変なところにハイハイしたり、とにかく困らせようとした。ママがいるとき?そんな困らせることなんかしないけど、何か?

 しかし、その度にパーフェクトな対応をしてきて、アイがとにかくもてはやすところをみて歯軋りが止まらなかった。特にハイハイした時なんか動画撮りつつ安全なところに誘導という高次元なことされた。

 何なの!?本当に中学生!?私達と同じ前世の記憶があるって言われた方がまだ納得いくよ!?

 

 でも、一緒に過ごしていくうちに、私やアクアのことをとても愛してくれているっていうのがちゃんと伝わってきた。言葉にはされないけど、少なくとも前世の両親とは比べるのも烏滸がましいくらいには大事にされているのが分かって、なんかむず痒い気持ちになった。

 そして何より、見るからにアイと相思相愛なところを見せつけられた。恋する乙女はより美しくなるとか聞いたことあるけど、あんなに輝いているアイを見たことは一度だってなかった。

 そしてパパ(・・)にあやされているお兄ちゃんを尻目に、私は敗北を認めた。星野ルビーはクールに去るぜ……。

 

 そんなこともあって、もうパパに対して対抗心とかはない。むしろ末長く幸せになって、ついでに私もその幸せをお裾分けして欲しいくらいにはパパのことが好きだ。けど、最初どうにかして存在を消してやろうとしていたこともあってどこか気まずい……!

 勿論パパは優しいからそんなこと気にしないし、そもそも赤ちゃんの抵抗心なんて可愛らしいものなんだろう。それでも私は気にしちゃうの……!そういうわけで、ちょっと心の整理のためにもパパから距離を置いている。その度に寂しそうにするパパの表情に罪悪感がチクチクと……!

 

 ちなみに、私達家族はママの姓である星野一家で通すらしい。籍はさすがに入れてないからまだ別姓だけど。

 別に私はママの名前で嬉しいからいいんだけど、パパのお兄ちゃんでもある社長が聞いたところ、パパは苗字も公開して活動してたのに対してママは苗字を公開していないから、何かとこっちの方が都合がいいらしい。

 それでも社長は食いさがってたし(自分の苗字がある子供が欲しいらしい)ママも施設生まれだからそんなに愛着がなかったらしいけど、パパが「アイさんの苗字が名乗れて嬉しいです」とか言ったからママに押し倒されてうやむやにされていた。全く羨まけしからんので私も混ざったけどね!

 最終的に「アイが今後斉藤姓を名乗った時に自分の事務所の社長と結婚したと邪推されないため」ということで、星野一家となったという。ちなみに社長は崩れ落ちていた。そんなに悔しがるならミヤコさんと子供作ればいいのにね。あ、そうすると私達のお世話係がいなくなるのか。やっぱりもうちょっと待ってね。

 

 そんなこんなで少し一方的に避けているある日、いつものように仕事行く前にママの母乳をもらいながらお兄ちゃんのオタクの僻みを嘲笑いつつ過ごしていると、つい催してしまったのでお兄ちゃんには目を背けてもらう。赤ちゃんライフはまさに天国だけれどこういうところが我慢できないのが難点だ。

 ……まあ、すぐ察してくれてすぐ目を背けてくれるところは、少し評価しないでもない。オタクのくせに。

 大声で泣くと、休んでいたミヤコさんが疲れたような顔をしてオムツを替えてくれる。ママがお仕事、パパが学校やお仕事の時はミヤコさんがお世話してくれることになっているのだ。

 ちょっと申し訳ない気もするけど、私の世話はアイのために尽くしているのと同義なんだからむしろ癒されるはずなのに、なんでこんなに疲れているんだろう??

 

 

「は〜、なんで私がこんなことしなきゃならないのよ?私は社長夫人なのよね……?ベビーシッターやるために結婚したんじゃないのに!ハァ、こんなことあんたらに愚痴っても仕方ないけど……」

(アイに尽くせて幸福以外何物でもないはずなのに、頭おかしいんじゃない?)

(まー前世の職場で子供の世話は大変だってよく知ってるからなあ……同情はする)

 

「てか、なんでダイヤくんの子供!?いやダイヤくんの子供の世話はいいけど、まだ中学生、しかも年齢から逆算して小学生の頃にアイさんを妊娠させたってことでしょ!?普通に事案じゃん!!闇深すぎでしょこの業界!!」

(あ〜……それはそう……)

(意外と彼女の言っていることに正論が見受けられるな)

 

 

 確かに、よくよく考えなくても普通に事案だよね……パパが至極当然のように私たちのお世話をしてくれているから時々忘れそうになる。私前世でもなっていないけど、中学生ってもっと子供っぽいはずだよね……。

 むしろたまに私達と一緒にアイに撫でられているから、傍目には赤ちゃんと一緒に可愛がられる歳の離れた兄くらいにしか見えないと思う。そもそもアイもお母さんというより構いたがりのお姉ちゃんくらいにしか見えないだろうし。

 ママの魅力がとどまることを知らないばかりにこんなことになるなんて、これが美しさゆえの苦悩って奴ね。

 「美少年と仕事できると思っていたのに……ダイヤくんと育児の勉強って仕事って言えるのかしら……?」とボソボソ呟いているミヤコさんから、不意に不穏な空気を感じる。

 

 

「あー、てかこれって不祥事の隠蔽よね……これネタに売ったら金になるんじゃ……」

 

「うわっやばっ!どうする!?殴って記憶消す!?」

「いや、幼児の筋力と体格差じゃ無理がありすぎる…!」

「一応冗談で言ったんだけど本気?」

「とりあえず、俺に考えがある。話を合わせろ」

 

 

 そう言ってお兄ちゃんと一緒に机に登ると、突然お兄ちゃんが喋り出す。なるほど、超常現象として私達に注意を向けさせるつもりなのね。

 なら、私はどうしようかな…… てかお兄ちゃん演技あんまり上手じゃないね……私がフォローしてあげないと……うん、よりインパクトのある名前……アマテラスとかでいいかな……口調は仰々しくして……あっ手を伸ばしてきた、ここで……!!

 

「慎め。我はアマテラスの化身。貴様らの言う神なるぞ」

 

「か、神……!?アマテラス……!?い、いや、そんなわけ……!」

「よく考えてもみよ。我はアイとダイヤの子供ぞ?」

「な、なるほど!」

(あっ、それで納得するんだ……)

 

 

 なんかお兄ちゃんが(それで納得するんだ……)みたいな顔してるけど、当たり前でしょ?アイの子供は神の子っていう常識知らないの?

 その後、色々丸め込もうと脅したり揺さぶったり条件を出したりしていると、だいぶぐらついているように見える。あともう一押しで行けそうかな。どうせこの人は私達とは同類(・・)だから、有効打は分かりきっている!

 

 

「そうさな……もし仮に貴様がこのことを告発したとしよう。そうすれば、我が父はとても悲しむだろうな……?」

「すぐやめます!!!!!」

「うるさっ」

「うむ、精進するがよい」

 

 

 お兄ちゃんがうわって顔をしているけど、まだまだオタクの生態を分かっていないわね。推しが金をくれって言ったら生活費削っても渡すし、推しがやめろって言ったら両手足縛ってでもやめるのが一般的なのよ。(個人差はあります)

 そうして私達は便利な協力者を得たのだった!ラッキー!

 

 

 

「…………アイさん、またテレビつけっぱで寝ましたね?」

「え"!?あれぇ?ちゃんと消したはずなんだけどなあ〜?」

「嘘をつくと一緒に寝ませんよ」

「それは困る!!本当に覚えがないんだって〜!」

 

「…………お兄ちゃん?」

「やべっ、忘れてた!ごめんアイ……!」




誤字修正ありがとうございます。非常に助かっています
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