世界に守られたエルフ、オラリオにて   作:アパオシャ

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第十一話

遠征前日

 

僅かに太陽が顔を覗かせる早朝に、ロキファミリアの幹部陣や一部の団員がホームの前に集まっていた。

 

「じゃあ、ベート、アイズ。任せたよ」

 

先遣隊として選ばれたベートとアイズが他の団員たちに見送られながらダンジョンに向けて出発した。

 

ファミリアでも突出した移動速度を誇るとはいえ二人だけであり、非常事態に見舞われたら危険ではあるものの、レベル5であるため、指定された場所までであれば問題ないと判断された。

 

見送りが終わると、残った団員は駆け足で解散した。既に大半の準備は終わっているものの、遠征に向け個人的にできるだけのことをしておこうとするのは遠征前であればよくあることであり、夕方からロキがステイタスの更新に忙殺されるまでがセットである。

 

翌日、バベルの前にて、ロキファミリアの遠征隊が集合していた。ここにいない団員は傷病の類で参加できないものやホームの警備を任されている者だけである。

 

団長のフィンが首からかけたネックレスを握りこむと数秒間黙り込んだ。そして、手を放し顔を団員たちに向けると拳を掲げ短く宣言する。

 

「遠征を開始する!転移門が展開され次第突撃!」

 

フィンの視線が二人に向けられると、片割れが詠唱を開始する。

 

「ウィーシェの名のもとに願う。森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来れ。繋ぐ絆、楽宴の契り。円環を廻し舞い踊れ。至れ、妖精の輪。どうか――力を貸し与えてほしい《エルフ・リング》」

 

遠征の準備期間のそのほとんどをヴァイトと過ごしたレフィーヤは多くの魔法を習得した。それによりヴァイトの役目を共に果たすこととなった。

 

ヴァイトはレフィーヤの魔法を侮っていた。数多の魔法を使えるとはいえ長い詠唱を必要とし消費も大きいためだ。しかし、彼女はヴァイトのワールドアイテムでも不可能なことを可能とした。

 

「「《魔法効果範囲拡大化:転移門》」」

 

本来、スキルによって可能な魔法強化を、魔法+強化という形ではなく最初からそういう魔法と定義することで無理やり発動可能としたのだ。

 

発動された二つの魔法によって生まれた二つの黒い空間のゆがみは遠征隊を挟み込むように出現し、隊員たちは風を吹き出しているそれをしっかりと視界に定める。

 

「行けぇ!」

 

その号令を皮切りに次々と門の中に駆け込んでいく。都市最強の片割れと評されるロキファミリアの遠征を目当てに集まっていた野次馬たちが今起こっている出来事に理解が追いつくことはなく、移動は終了し役目を果たした転移門は縮小し消滅した。

 

 

ダンジョンに転移した隊員たちは本当に転移したことに驚いていた。事前に詳しく説明されていたとはいえ、実際に地上から見覚えのあるダンジョンに一瞬にして移動したことは今までの常識を破壊するには十分であった。

 

とはいえ、彼らも多くの経験を積んできた冒険者である。すぐに落ち着きを取り戻すと、キャンプを展開する。ここが遠征中の拠点となるため、手を抜くことは許されない。

 

特に手間取ること無く設営が終わると、食事の準備に取り掛かった。

本来ならば朝に出発し早く目標を終わらせようとすべきではあるものの、一部の団員はまだダンジョン探索に向けた気持ちへの切り替えができてなく、また低レベルの者に顕著だが、急激な気圧の増加により不調を訴える者が出ている。

 

こういった問題を予め予想していた団長の指示で、順応期間の確保のため夕方に出発し一晩を安全な場所で過ごすこととなった。

 

想定外にもヴァイトの加入に伴い、余剰が発生しつつある食料をふんだんに使い調理を進める団員たちは言い様の無い希望を抱いている。




ヴァイトのどうでもいい(?)豆知識

ヴァイトは結構好き嫌いが激しく、嫌いな食べ物を食べるスピードはかなり遅くなる。とはいえ、食べないということはしない。
彼は食べたくても食べられず死んでしまった人がいることを知っているから。
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