世界に守られたエルフ、オラリオにて   作:アパオシャ

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第四話

黄昏の館にて

 

トントン拍子に話が進み、戦闘訓練と称した試験が行われる運びとなった。

 

「ラウル、レフィーヤ。君達も後進の育成を担う時期だ。任せたよ」

 

団長のフィンを見たヴァイトはその外見に特に思うこともなく、目の前の二人に集中する。ユグドラシルにおいて年齢や種族は当てにならないが、団長である以上はトップクラスの実力者か優れた指揮能力や運営能力を有しているのだろうと当たりをつけたのだ。

 

「じゃあ、始めるっす。これはあくまで戦闘の適正を見るためのものなんで勝利しないと駄目というわけではないっす」

 

「ですので、無茶はしないでください」

 

「了解。よろしくお願いします」

 

「それでは、始め!」

 

その瞬間、ラウルがレフィーヤの盾となるようにしつつもヴァイトに向かってくる。しかしその動きはぎこちなく、手加減に手間取っているのがよく分かる。

 

(二人とも素人にも分かるほどぎこちないがぶっつけ本番にしては上出来か。ただ力が入りすぎている。あれでは彼が怪我をしてしまう。注意を...)

 

「《集団全種族捕縛》」

 

フィンの思考はその一つの魔法で掻き消された。詠唱無しに魔法を発動したこともあるが、レベル4さえも行動不能にしてしまうその威力。二人を見るとダメージを受けた訳ではなさそうだが、身動きが取れずかなり困惑している。

 

だが彼らは歴戦の冒険者であり、困惑しつつもすぐさま次善策を選び取る。

 

「レフィーヤ、魔法っす!喋れるっす!」

 

そう。この魔法は移動を封じるものの、言葉は封じることはできない。

 

「解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり」

 

「《魔法付与 究極の妨害》」

 

瞬間、レフィーヤが持つ杖に集まっていた魔力が突如として彼女の制御を離れ、彼女に牙を剥く。

ユグドラシルにおいて魔法の発動に失敗した場合、魔力は霧散し無駄になるだけだが、この世界では異なる。制御を失った魔力はたちまち暴走し、爆発する。

 

「「レフィーヤ!!」」

 

フィンは魔力暴発を目の当たりにして、ラウルは直接目にした訳ではないが音と衝撃波で何が起こったかはわかる。彼女の魔法火力はファミリア内有数で、暴発しようものなら彼女の耐久ならばよくて重傷、悪くて文字通りの消し炭となってしまう。

 

試験どころではないと判断したフィンが彼女に駆け寄る。彼女を覆っている爆炎をレベル6の腕力にものを言わせ吹き飛ばすと、そこにいたのは多少けがをしたものの、明らかに被害が少ないレフィーヤだった。

 

そのタネは、ヴァイトが彼女に対して発動した《究極の妨害》にある。この魔法は味方一人を対象に発動する魔法で、その効果は魔法耐性を急上昇させる代わりに、魔法行使能力は壊滅的にするというものである。

そして、本来味方にしか使用できないこの魔法を敵のレフィーヤに発動した仕組みは《魔法付与》というスキル。エンチャントマジックと宣言することで発動し、消費魔力の増大と引き換えに一部の魔法を対象などの条件を無視して強制的に発動させるものであり、これを使うことで強化魔法の重ね掛けも可能となる。

 

ヴァイトは相手の魔法妨害と手加減を兼ねてこれを使ったが、自分の常識ではありえないことが起こり警戒して距離をとっている。

 

そんな事は知らないフィンだが、思考を巡らせる。

 

(恩恵なしで魔法を使ったとは考えにくい。そんな魔法でレベル4をどうこうできない。ならば他のファミリアからの移籍希望者か。ロキは入団希望者としか言ってなかった。あとは残りの魔法があればそれも知りたいな)

 

一通りレフィーヤの状態を確認したフィンはヴァイトに向き直ると、こぶしを構える。もともと自分が参加する予定ではなかったため武器は手元にないが、あくまで試験のため必要はない。

 

「二人は戦闘不能みたいだから、続きは僕が担当する。じゃあ、行くよ!」

 

その言葉に驚く二人だが、自分たちがいまだに身動き一つとれない以上、それ以上の実力者が必要になってくる。

うまく手加減しつつも一気に距離を詰めるフィンはこちらに向けられる手を見て警戒する。衝撃的な出来事で忘れかけていたがヴァイトが魔法を使うさいは必ず手をかざしていた。

 

「《魔法三重化 浮遊大機雷》、っ」

 

しかし、何も起こらない。フィンはヴァイトが僅かながら、言葉に詰まったのを、目を見開いたのを見逃さなかった。

それを誤魔化すかのように、ヴァイトは何もない箇所に目を向ける。

 

(効果が分かりにくい魔法?ブラフに存在しない魔法?罠系の魔法?いや、僅かだが動揺していたから恐らく失敗。基本失敗しないからこそあの動揺。だが罠を警戒させる目線といい、戦闘慣れしてる)

 

肉薄したフィンは拳を叩き込む。ヴァイトの対応は先程までの戦闘能力と比べて拙いものだったが、こういったちぐはぐさは魔法主体のエルフではよくあること。

 

「《衝撃波》!」

 

その瞬間、フィンはダメージと共に吹き飛ばされながらも考える。

 

(なるほど、接近されたらこれで距離を開けつつダメージを与えるのか。やはり先程の魔法はブラフ。これで手の内は割れた。合格なのは確定だがどこまでやれるか見てみたい)

 

先程の衝撃波は来ると分かっていれば耐えられないものではない。魔法名を聞いてから対処が可能。

 

再び距離を詰めに走ると、フィンの体が爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされる。それが都度三回。まだフィンはやれると言わんばかりに体勢を建て直すが戦闘用ではない服は既にボロボロで、これ以上戦えばその隙にとあるアマゾネスにお持ち帰りされかねない。

 

どうやって察知したのか、こちらに近づいてくる気配を感じながら、フィンは終了を宣言する。

 

結果、合格。

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