「驚いたよ。魔法を四つも使うとは。何か特殊なスキルでも持っているのかい?」
無事に着替えを済ませたフィンがそう問いかける。何せ、オラリオだけではなく、この下界全体の常識として、神の恩恵で発現する魔法の数は3つで、特殊な魔法を使えるごく一部の者だけがそれ以上の数を使うことができる。
それに対して、ユグドラシルの魔法システムでは異なる。
「いや、こっちの地元では私レベルの魔法職ならば300~400の魔法を使うことができるし、特殊な条件を満たすことで600を超えることもありますよ?」
「は?」
その言葉に言葉を失うフィン。そんな様子のフィンや驚きのあまりこちらに駆け寄ろうとするレフィーヤとそれを抑えるラウルにちょっとした面白さを感じつつも、ヴァイトは続ける。
「とはいっても普通の人は100個も覚えていれば上出来で、最初に覚えた魔法はお役御免になってくるから忘れられることが多い。ちなみに、私の友人に魔法を600どころか、自分が使えない系統の魔法を含め2000以上も覚えている人がいる」
「ちょっと待ってください。系統とは何ですか?そもそも魔法って個人個人で発現するものが違うから覚えることに意味が見いだせないといいますか…」
自分の得意分野の魔法において、常識はずれの発言を続けるヴァイトにレフィーヤが質問を投げかける。
「?魔法はレベルが上昇したときに3~4個習得可能な魔法の中から習得していくものですよね?なんか先ほどフィンさんが魔法4つ程度で驚いていたのも私にとっては不思議なんですが…」
話しているうちにこの場にいる四人の顔が『何言ってんだこいつ?』みたいな顔になり、とりあえず室内で続きという流れになった。
室内にて
「おぉ~フィン、その様子やと合格のようやな。じゃあ早速ステイタスを刻もうか」
話が続くかと思えば、偶然遭遇したロキにヴァイトを持ってかれた三人だが、ヴァイトのステイタスが分かったほうが話が早いと思い、特に引き留めることもなく、送り出した。
ヴァイト・フォン
LV:100
力 :I0
耐久:I0
魔力:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔法
:
:
:
スキル
世界守護:神の権能・世界の力に対する拒絶権。世界の守りを得ている場合に限り有効。
世界樹:とてつもなく早熟する。ステイタス数値に対する能力がとてつもなく低下する。
レベル上昇時に3つの位階魔法の習得権。
異端妖精:魔法威力の低下。消費魔力の大幅低下。
レベル100。幻覚を見ているのか。だが自分は超越存在。幻に惑わされることはない。ヴァイトのステイタスを確認してから、ロキの中では同じ問答が繰り返されている。いくらこのレベルの原因といえそうなスキルがあるとはいえ、非常にまずい状況になっている。ギルドによるファミリアへの徴税額は人数や平均レベル、最高レベルなどを考慮し決定される。つまり、支出が増える。
自分だけではどうしようもないとフィンたちが待つ部屋に向かう。自分のステイタスを確認したヴァイトはステイタスの説明を聞きこんなものかといった表情をさらしている。
(こいつ…改宗やないのに何でこんなことになっとるんや…)
あまりの衝撃に表情が抜け落ちた表情を見たフィンたちが驚いているが、何かを言われる前にロキが訊ねる。
「なあ、こいつのレベルはなんぼやと思う?」
「んー、低く見積もって5、実力の底は見えなかったから上はわからないかな。ステイタスの結果待ちだったんだけど、その様子なら…7かな?」
「「団長より上!?」」
「…100や」
言葉が出ないとはまさにこのこと。彼らが囲むテーブルの上に投げ出された写しを見るとやはり100と書いてある。
「レベル100!?」
叫んでしまうのも仕方ない。とはいえ、スキル欄を確認して落ち着きを取り戻したが、何かとファミリア運営の事務仕事をするフィンとラウルは税金のことを考え頭が痛み出した。
「レベル...100?」
その言葉に気付いたフィンが振り替えると、そこにいたのは緑髪のエルフに金髪の人間、そして中年ドワーフ。どうやら放心している間に集まったようだ。他にもアマゾネスの双子や狼人の青年もいる。
ああ、不味いことになった。
頭痛で乱れる思考の中で、フィンはそう思った。
ヴァイトの特徴
ヴァイトは生まれつき最上級クラスの身分におり、敬語は使うなと親から教育を受けていたが、周りから敬語を使われているうちに、敬語を覚えた。しかし、それを使う機会が今まであまりにも少なく、敬語の使い方が拙い。
彼の職業レベル構成はグリモワールのデメリット軽減のために様々な系統の魔法職を1だけ取得しているが、大半は魔力系。とはいえ、つまみ食いしているため純粋な魔力系魔法詠唱者と比べ純粋な能力は低め。とはいえ、その圧倒的な手札から魔力切れ以外で負け知らず。