黄昏の館。その一室にアニメの作画ミスのごとく突如として現れたヴァイトら一行。その部屋はたまたま誰もいなかったようで、目撃した人はいなかった。
「何!?今の!」
突如として起こった未知の出来事に混乱しているティオナはヴァイトに問いただす。出会って間もないが、既に何かあったらヴァイトの仕業という認識が出来つつあった。
「《上位瞬間移動》といって、距離無制限、誤差無しで瞬間移動する魔法です。一緒に飛べるのはせいぜい四人ですが」
その説明に目を丸くさせる二人とは対称的に、ガレスが微かに残念そうな表情を見せた。
「ガレスさん、どうかしましたか?」
「ああ、すまん。遠征...大規模なダンジョン探索にその魔法があれば便利じゃろうと思ったが100人を越えるとなると荷が重いじゃろう」
一定以上の実力を持つファミリアに課される遠征は数多くの冒険者たちが同時に向かうため、どうしても行進速度は遅くなり、それにともない必要な物資も増える。そこで大幅なショートカットができれば金銭的に非常に助かる。
道中は新人の訓練も兼ねているため、その点では損失がでるが、時間も資金も大幅に削減できる利点はそれを加味しても大きく、削減した分を後日訓練に回せばいい。
むしろそれぞれ一つの目的に絞った方が集中できる。
そんな青写真を描いていたガレスは申し訳なさそうにしていたが、ヴァイトは何も気にしていないとばかりに言い放つ。
「それなら《転移門》だね。ほら」
そういって魔法を発動させると、黒い空間の歪みが生じた。
「集団で転移するならこれなんだけど、問題点が一つ...」
ヴァイトがどこか自慢げに説明している最中、門から一つの影が飛び出した。
「...《全種族捕縛》《真なる死》一つあって、こういうこと」
「なるほどな」
そういって門から突如として現れたカーバンクルを始末し、ドロップアイテムの宝石を仕舞い込む。金欠娘たちが物欲しげな目で見ていたが、ヴァイトからすればまだ貢ぐほどの関係ではないため無視した。
フィンとこの魔法について相談すると言い、考え込みながら退室したガレスと入れ替わりで、ラウルが入室してきた。
どうやら物音が気になったようだ。
「どうしたんすか?って、ヴァイトさん!いつの間に帰って来たっすか!?リヴェリアさんヤバイことになってるっすよ!?」
あえて考えないようにしていた問題を突きつけられたヴァイトは呻き声をあげ、視線をさ迷わせる。
「でもどうやって帰ってきたっすか?館の外周はリヴェリアさんを筆頭にフェアリーフォースの面々が見張ってるはずなんですが...もしかして、透明化の魔法っすか?良いっすね。数百も使えるんすよね?羨ましいっす」
「ああ、いや。《上位瞬間移動》といって...」
「すごいんだよ、ラウル!ダンジョンの深層から一瞬でホームに移動したんだもん!」
「うえぇ、マジっすか、ダンジョン攻略か様変わりしそうっすね。だからさっきガレスさんが上の空だったんすね」
そろそろご飯の時間ということで、話しつつもヴァイトたちは食堂に向かうこととなった。その道中でも、質問が続いた。
空は飛べるんすか? 飛べるよ?
武器のメンテは出来るの? 劣化の抑制が限度かな
キャンプの作成は? 《要塞創造》があって、百人強なら入る
そんなこんなで食堂の扉に手を掛けた瞬間、別の扉から声が聞こえてきた。
「済まないな。こんなことを押し付けてしまって」
「お気になさらず、リヴェリア様。しっかりと鋭気を養ってあのエルフの風上にもおけない奴を絞めてやりましょう!その間、我々がしっかりと見張っておきますので、お任せください!」
「ありがとう。では、頼んだぞ」
聞き覚えのある声を聞き、つい固まっていたヴァイトは、近づいてくる声から逃げなくてはならないのに動けず、扉が開く。
そこにいたのは、緑の髪をもつ美しいエルフの王族。
瞬間、目が合う。刹那、真顔で見つめあう。
リヴェリアの美貌が憤怒を宿した笑顔を象っていくなか、ヴァイトの頭にはとある音楽が流れていた。
ペロロンチーノが見せてくれた著作権切れのアニメ、そのエンディング。メフィストという、悪魔の名前を冠した音楽のイントロが。
第八話
邂逅