第六天魔王を完結させたら2話目を投稿します。
かつて始皇帝が興した国も1000年経ち、腐敗しきってしまった。その元凶は帝国における現在の大臣であり、皇帝を傀儡にすることで自身の欲望を叶えているのだ。そしてそのような腐敗した帝国ではあらゆる悲劇が日常的に民へと襲いかかっている。権力を笠に着た略奪や凌辱、果ては快楽のための殺人など、到底許すべきではないことがだ。
そんな大臣の暴虐を止めるべく、憤った民によって革命軍が組織された。また革命軍は帝国を確実に倒すため、非合法の組織を作ることで情報収集や暗殺をさせることにした。その組織の名は“ナイトレイド”。裁かれぬ悪を裁くべく夜な夜な帝都に現れる暗殺者たちの集団である。
ナイトレイドは帝都のやや北東にアジトを持っている。そのアジトで現在次の作戦が話し合われていた。
「今回の案件は安寧道と呼ばれる広く民衆に信仰されている宗教だ」
そしてナイトレイドのボス“ナジェンダ”の口から彼らの目標が語られる。アカメとマイン、レオーネにチェルシー、ラバとスサノオ、そしてタツミが時折質問を交えながら真剣に話を聞く。
革命軍は、単独での蜂起は失敗に終わると予測しているため、帝国西方の異民族の侵攻と安寧道の武装蜂起に合わせて革命の決行を予定している。異民族にはかつて帝国が侵略した彼らの土地の返還を餌に焚き付けた。ならば後は安寧道の武装蜂起の件のみ。
しかし革命軍が安寧道を重要視しているように帝国もまた注視していた。安寧道の教主補佐“ボリック”。彼が安寧道の教主を殺して、教主に成り代わるのを支援することで内部を掌握するのが目的なのだ。
そして革命軍は当然それを許すはずもなく、ナイトレイドに下された指命は『ボリックを討つこと』である。そのあとに安寧道の教団幹部を武装蜂起派で固めることで、帝国に対する革命の先駆けとさせるのだ。
「私達は安寧道の本部まで行き、ボリックを討つ」
そこでナジェンダは今回の案件における注意事項を皆に話す。しかし彼女自身もそれが信じられない、いや、信じたくないといった様子で重たい口を開いた。
「だがボリックの護衛に大臣お抱えの処刑人“羅刹四鬼”が出てきた。充分に、いや充分以上に警戒するんだ」
「待ってくれボス!」
そこに金髪の露出が多い女性“レオーネ”が異を唱える。それはその情報が本当かどうかということだった。上司であるナジェンダに情報の真偽を確認するということをやってしまったレオーネだったが、それを咎めるものはいなかった。ほかの面子も目を見開き、驚きを露にしており、また大臣が安寧道に本気で干渉するつもりなのだと分かり、苦々しく思っていた。……一人を除いて。
「なあ。羅刹四鬼って何なんだ?凄そうなのは分かるけど」
帝都に出てきて日が浅く、またナイトレイド一番の新参であるタツミだった。そんな彼に桃色の髪でツインテールの少女“マイン”が呆れながら説明する。
「いい?羅刹四鬼ってのはさっきボスが言ってたように大臣お抱えの処刑人たちのことよ。その名通り4人いて、皆無手で帝具持ちを殺した実績ありの強敵よ。いろいろと奇抜な体に改造済みっていう情報もあるわね」
「なっ、そんなやつらが出てくるんですか、ボス?!」
そのタツミの問いにナジェンダは座ったまま答えを返す。
「ああ。それとマイン、情報に誤りがある。やつらは5人だ。これは直接確認したから間違いない」
えっ直接?とその場の面々は疑問に思う。意味が理解できず、少し間が空くが長髪の黒髪で赤い目の“アカメ”が一番に彼らのボスに問う。羅刹四鬼に会ったのかと。
「そうだ。羅刹四鬼の5人目に聞いた情報だ」
「それは信用できるのか?」
険しい顔でアカメは尋ねる。今回の作戦は今後の革命の成否を左右しかねないほどの非常に重要なものだ。ゆえにその作戦に関する情報が敵から教えられている現状は許容しかねると判断したのだろう。口にはしないがほかのメンバーも似たような内心を表している。もっともそこにナジェンダに対する非難や不信感は存在しなかったが。
「情報も、そいつの人柄も信用できる」
「じゃあなんでそいつは羅刹四鬼にいるの?ナイトレイドに勧誘しないの?」
5人目の羅刹四鬼に思わぬ好評価で太鼓判を押したナジェンダに、間髪いれず栗色の女性“チェルシー”が問いかける。
その疑問は発せられて当然のものだった。ナジェンダが人柄を信用できるといった以上その人物の感性は革命軍寄りのはずである。民を思い、帝国から出奔した彼らと同じならば大臣の元で処刑人をやっているのが不可解極まりない。
それはナジェンダも過去抱いた疑問であり、ナイトレイド勧誘の際に直接彼にぶつけた質問でもある。
―――なぜ大臣の言いなりになっているんだ?お前はこの国の現状を分かっているはずだろう。
武道家として鍛練に明け暮れ、その余りの強さゆえに大臣に目をつけられてしまったが、彼は実直を体現したような存在だった。ゆえに彼のその答えも彼の意にそぐわないものだった。
「『大臣に人質を取られている。』それがヤツの答えだ」
日がな鍛練に励み、家族を守るため強さを求めた彼の思いは、薄汚い欲望によって踏みにじられてしまったのだ。それをうっすらとだが察したタツミはギリッ!と手を強く握る。
「だからヤツが表だって我々ナイトレイドに助力することはない。しかしこのように情報を渡してもらうことは出来る。もちろんヤツの情報だけでなく、こちらでも帝都に羅刹四鬼がいない裏付けは取っているが」
最近では監視が厳しくなっているのか、情報を流すのも苦労しているらしいが、とナジェンダは呟く。獅子身中の虫とならんとするのも難しく、大臣の信頼できる部下によって監視の目が強化されているのだ。
「ではいいか?皆、支度をしておけよ」
作戦を控えたボスによって各自の部屋へと解散していった。
◆◇
「ホント、どうしてこうなったんだか…」
「どうした、カムイ?なんか考え事か?」
「何でもない。持ち場につけ、メズ」
はいはーい、と適当に返事をして“メズ”と呼ばれた女性は“カムイ”という男性から去っていく。それをカムイは気にせず、一人ため息をつく。
転生してから16年。自分が暗殺者――それもとびっきりのクズに使われる――の身になってしまったことについてだった。殺人はもはや数えきれぬほどこなし、その全てが望まぬものだった。しかし同時に、それらは家族を守るためだと自分自身に言い聞かせ、正当化することで行ってきた。
始めのうちは相手の命乞いを聞いていたのに、それを無視して殺せるようになったのはいつだっただろう?
家族が人質に取られているんだと、必死に自己暗示をかける必要がなくなったのはいつからだろう?
強くなった実感を得られて楽しかった鍛練が、苦痛になってしまったのはどれくらい前からだっただろうか――――――?
家族を守るためとは言え、大臣の言いなりになって多くの人間を殺した手は拭いきれぬほど赤く染まっている。家族に顔を会わせる資格もないと思ってはいるが、それでも夢は捨てきれない。
―――家族に会えたら何を話そうか?
少年は捨てきれぬ希望を抱え、今日も大臣の人形として殺しに励む。