帝具がなくたって生きていけるさ   作:妖精の尻尾

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遅くなってごめんなさい。
感想はきちんと読ませていただいてます!
遅くなりますが、感想への返しはしますので少々お待ちを。



傲慢を斬る!

 安寧道本拠地”キョロク”。

 帝国将軍エスデス率いる特殊警察”イェーガーズ”は、安寧道の教主補佐であるボリックを護衛するために、ここへやってきていた。

 イェーガーズの面々は、ボリックと面会するにあたって正装していた。慣れない服に居心地悪そうにするウェイブやセリュ―を、エスデスが嗜め、ついにボリックと対面する。

 

「帝国最強と言われるエスデス将軍に来ていただけるとは……。心強いですなあ」

 

 周囲に美女を侍らせ、ゆったりとした椅子でくつろぐボリック。

 エスデスはボリックに対し、宿を要求し、ボリックもそれを受け入れる。

 しかし当然それだけで終わるわけもなく、天井裏からの視線(・・・・・・・・)を感じたエスデスは視線の主をやや威圧する。

 

「出てこい」

「ほーう、さすがお気づきでしたか」

 

 帝国最強の名を欲しいままにしているエスデスだが、そんな彼女のことをボリックは正確に認識できていなかった。犬や猫が銃の恐ろしさを、その外見から把握できるだろうか?実際に撃っている場面を見て、理解が及ぶだろう。

 それはつまり、大臣直属の彼ら(・・)の凄さはボリック自身も知ることであり、彼らという尺度でエスデスを把握できたのだ。風聞ではなく、ようやくエスデスの実力を理解できたとも言える。それも片鱗程度にしか過ぎないが。

 エスデスへの認識を改め、ボリックが内心感心しながら指を鳴らすと、突如数人の男女が現れた。

 

「こやつらこそ、教団を牛耳るために帝国から預かった暴力の化身――――」

 

――――皇拳寺羅刹四鬼!!

 

 ボリックはイェーガーズに告げる、イェーガーズが護衛に来たゆえ彼らをナイトレイドの撃退に回せると。

 しかし、その言にセリューはかみつく。ナイトレイドは腐っても帝具持ちの暗殺部隊、帝具を持たない羅刹四鬼では力不足であると。

 

「――――ッ!!」

「心配はいらねぇよぉ」

 

 

 セリューの首元に羅刹四鬼の一人、”イバラ”が手刀を添える。

 

「生身で帝具使いを倒したこともあるんだぜぇ」

「私たちが回収し、大臣に送り届けた帝具は5つ」

 

 生物型の帝具であり、所有者の五感および身体能力に作用する(タイプ)でないといえ、セリューもまた帝具使い。帝具使い同士が戦えば必ずどちらかは死ぬとまで言われる帝具戦、それを潜り抜けた彼女は決して戦士として劣るものではない。

 けれどそんな彼女の背後をあっさりととったイバラは過去の戦歴を告げ、またそれに羅刹四鬼の一人”スズカ”が具体的に補足する。

 

「いくら帝具が強力と言えど、使う者は生身の人間」

「なら勝ちようはいくらでもあるってことだね」

 

 ”シュテン”もまた、帝具使いとの戦いにおける真理――すなわち帝具の破壊ではなく、使い手の暗殺をしてきたことで勝ちを得たと言う。”メズ”も同調し、彼らの強さが過去の経験に裏打ちされたものだと暗に告げた。

 

「お前たちも実績があるとはいえ、油断しないことだな」

 

ッ!!??

 

 背伸び(・・・)をしていた少女を軽く脅かして(・・・・)、やや優越感を覚えていたイバラ。しかし彼の背後にエスデスが氷柱を添えていたことに、イバラだけでなく羅刹四鬼は皆、目を開き愕然とする。

 彼らは紛うことなき強者である。修羅場も当然いくつも経験してきた。

 しかし、いくら心に隙が出来ていたとしても、命を取られる寸前まで気付かなかったというのは初めてのことだった。

 

「……すげぇなぁ、将軍さんよぉ。惚れちまいそうだぜぇ」

 

 強敵に恋をすることで、その敵を殺したときに背徳と快感に酔いしれるイバラ。それはエスデス(帝国最強)が相手でも同じだった。

 

「しかし、足りんな。あと1人いるだろう。出てこい」

 

 どこかに向けて話しだすエスデスに疑問を抱く一同(イェーガーズ)

 羅刹”四”鬼、つまり4人から構成される集団であるから、出そろったのでは?

 そんな彼らと対照的に、羅刹四鬼はそれぞれ異なる反応を示す。

 

「……会いたくないんだってさ」

 

 言外に構うな、と告げたメズ。やや曖昧で、柔らかな表現は、もう1人のメンバーの強い拒絶を意味していた。

 イェーガーズの1人、ウェイブはそれに噛みつく。

 

「いや、それはダメだろっ!顔合わせくらいしとかないと」

 

 敵であるナイトレイド。そのうちの幾人かは顔が割れ、帝国に指名手配されているが、当然まだ素性が不明な者もいる。

 敵か、味方か。それが分かるように互いの面通しは必要不可欠である。

 

「困ったものです。なかなかのじゃじゃ馬のようで、こちらに耳を傾けようとしないのです」

「そうか。相変わらずのようだな」

 

 ボリックはため息をつき、敵愾心をむき出しにして隠そうともしないことに面倒だと思う。

 またエスデスは数年前に会ったとき、己を満足させる殺意を出していたことを思い出し、それが変わっていないだろうことに満足する。

 

「では、久々のご対面といこうか。あまりこういう挑発は好きでないが……。出てこい、大臣の卑しい飼い犬(家族を言い訳にする人殺し)

 

―――――ッッッッ!!!!!!

 

 

 

 それ(・・)に誰もが畏怖した。第一印象は――――災害。

 暴力の化身と言われた羅刹四鬼の誰よりも、らしく、およそ台風が人の形にとどまったかのよう。

 

 すなわち羅刹四鬼の番外にして例外、正しく”暴力の化身”が姿を現した。

 

 

 

 

「死ぬか、エスデス」

 

 激情が内で渦巻き、無意識に外に漏れた非制御下の覇気が皆の肌を刺す。

 しかし、それに反して言葉は軽い調子で、それこそ朝食のメニューを尋ねるかのような気楽さで告げられた。

 また目の前で桁外れの覇気と殺気を放っているのが同一人物と思えないほど、目は濁り、思考を放棄した怠惰に染まっていた。

 

「ここで一戦やるか。それも面白そうだ」

 

 たとえエスデスが挑発だと言ってたとしても、決してそれを聞き逃せなかった。つまり、少年にとって見逃せるはずもない明らかな地雷。

 ゆえに殺気を放つ少年(・・)はこれまでもないほどに、己を研ぎ澄ませていた。

 対峙するエスデスも、目的が護衛任務であり、ここで暴れるのはまずいと分かっていてもなお、少年の殺気に滾る己の興奮を隠せない。いや、隠そうともせず、むしろ意識を戦闘に切り替えてギアを上げ始めていた。

 

 億劫そうな顔をして悪鬼羅刹の殺気を放つ少年と、餓えた獣の如き顔をして氷河期のような覇気を纏うエスデス。

 両者ともに戦略レベルの存在であり、対軍規模同士の衝突はもはや戦争と等しい。

 すなわち、ここで彼らがぶつかれば言語を絶する被害が出るのは当然だということ。

 

 

 

 であれば――――それを止めないはずもない(・・・・・・・・・)ということになる。

 

「ストップ、カムイ。それ以上はやめて、お願いだから」

「隊長、これ以上は護衛に差支えが出ます」

 

 少年、カムイとエスデスの激突が必然だと言うなら、それを避けようと周りの者が尽力するもの、また必然。

 羅刹四鬼からはメズが、イェーガーズからは好青年と言えるランが制止を呼びかけた。

 

「―――……」

「では、またの機会か。次こそ全力で―――邪魔が入らぬ戦い(いくさ)がしたいものだ」

 

 すると、それまでのことが嘘のように、殺意も何もかも凪いでいった。

 けれど彼らがもたらした余波による被害は出ていた。護衛対象であったボリックは意識がもうろうとし、傍の女性らは気絶していた。

 カムイは、もはや用はないと言わんばかりに部屋から立ち去ろうとする。しかし、意識が曖昧なボリックの近くで一度足を止め、冷たい声色で告げる。

 

「……『五体満足で守れ』とは言われて(めいれいされて)いない。調子に乗ったら――――四肢を刎ねる」

 

 そしてカムイは、その場にいる者たちを機械染みた抑揚でぞっとさせ、部屋から出ていった。メズは慌てて後ろを追いかけていき、残りの羅刹四鬼も緊張から解放されて、ため息をつきながら去っていった。

 

「ふっ、暇つぶしには事欠かなさそうだ」

 

 一人愉悦に浸るエスデスに、イェーガーズは何とも言えない複雑な心持ちだったと言う。

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