帝具がなくたって生きていけるさ   作:妖精の尻尾

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あけましておめでとうございます。

……え?今って12月31日の122時0分ですよね?
つまり12月中に投稿できたというわけです!(錯乱


同僚を斬る!

 少し自分のことを自虐的に思い返してみようと思う。

 

 

 前世での僕はつまらないヤツだった。いや、正確にはそう言われたことがあるというだけだが。

 他愛ない日常会話の中の、さらに他愛ない冗談にのり切れなかったあの時。

 友人が何気なしに言った。

 反応ぐらいしろよ、つまらないヤツだな、と。

 

 つまらない、確かにそうなのかもしれない。いや、そうだったのだろう。

 生きているのに、生きている心地がしない。何をしても充足感、自分でやったという手ごたえがつかめない。

 『自分』というキャラをプレイしているような感じをずっと味わっていた。

 心から楽しそうに笑い、悲しむ人たちを見て、ずれが怖くなった。だから調べてみたが、不思議の国のアリス症候群だったのかもしれない。

 

 けれど、そんな僕の人生に劇的なことなどなかった。

 ずれがあった?充足感が得られない?生きているのかが分からない?

 ああ、それでも僕は真っ当に生きることが出来た。

 生きる意味を知るため、なんて言って大それた事件をおこしたりはしなかった。むしろそんな事件はテレビの向こうのことだと割り切っていた。

 

 だからなのだろう。現代では珍しくもない、ありふれた死に方をしてこの世界に来たとき。

 ”死”を経験したがゆえに、ようやく僕は”生”を知ることが出来たんだ。

 

 

 

 

 この世界に転生する前、つまり※※※※としてずっと考えていたことがある。僕を悩ませていた命題がある。

 それは人としての極限。究極に突き詰められたその先。

 ”生”から浮いていた僕が、興味を持っていた唯一のこと。

 

 ──────人はどこまで強くなれるのだろうか。

 

 つまるところ、僕は”強度”というただ一点にだけ興味があった。

 権力だとか、財産だとか、異性だとか、そういうのにはなぜか興味がわかなかった。別にそれも度を越したレベルではなかったし、特別な理由があったわけでもない。

 生きるということが分からなかった存在が、偶然強さを自分の基軸に据えていたというだけのこと。

 

 そして僕は己を鍛え上げることにした。

 その結果、僕は強くなることが出来た。

 しかし、それはただ強くなっただけだった。

 

 

 

「空からの偵察……やってみるものですね」

 

 キョロク郊外の墓地。

 ナイトレイドはボリックの暗殺を確実に遂行するため、下見を行っていた。

 大聖堂に乗り込むため、墓地にあると噂される地下道を探しに来ていたのだ。

 しかし墓地の広大さ、および罠の存在の疑惑ゆえに、念のためという可能性として人員の配置をしようと、アカメと革命軍の男2名は話していた。

 

 けれど、そこにイェーガーズのランが強襲。翼の帝具”マスティマ”で偵察していたところ、偶然アカメを発見したために。

 空から一方的に翼の羽根を飛ばして攻撃していたが、アカメはそれをぎりぎりで躱す。少しずつ、しかし確実にランはアカメを追い込んでいく。

 必死に羽根を帝具”村雨(むらさめ)”で斬り落とすも、防戦一方に追い込まれるアカメ。まだ傷こそないものの、それも時間の問題に見える戦闘だった。

 当然のことではあるが、羽根を放つのは近ければ近いほど、威力、速さともに上がっていく。それゆえにランはアカメを仕留めるため、高度を下げ、アカメへと近づいていく。

 

「あと少し……ッ!!」

 

 いや、これは……──────?ッ、まさか!

 

 制空権を有する相手に、そうと悟られぬよう地上へと近づける。──────それこそがアカメの罠だった。

 わざと紙一重で避けることで、あとわずかで仕留められるという心理を生み出させる。少ないコストで勝利するという期待を膨らませ、しかし少ないコストを少なくない数だけ積み重ねさせる。それはアカメの卓越した技量がなしえる者だった。

 それにランは驚愕し、アカメの暗殺者としての技量を評価する。

 深追いは避け、偵察という本来の目的に徹するべきとして、冷静に引き際を見極める。

 ゆえにイェーガーズの隊長であるエスデスに、ナイトレイドの到着を知らせるべく去っていった。

 

「逃げたか……。冷静な男だ」

 

 

 

 

「壮絶な修行してるっつたろ!!!」

 

 しかしアカメが一息つく間もなく。

 羅刹四鬼の一人、イバラが現れた。──────革命軍の男2人の首を携えて。

 それに激高したアカメは、けれど冷静さを失わずイバラと切り結ぶ。

 

 否、アカメの帝具”村雨”は一斬必殺。極小の切り傷であろうと、そこから呪毒が身を蝕み、心臓の鼓動を止める。

 首や胸といった弱点を斬る必要なく、かすり傷で確実に殺しうる能力は非常に強力であり、『肉を切らせて骨を切る』という戦法を封じるに等しい。また、かすり傷さえ許されないというのは対峙する相手にとって、強いプレッシャーになる。

 ゆえにイバラがアカメと戦闘を続けて(・・・)いるのは、”一斬必殺”の圧力(プレッシャー)に耐え、すべての斬撃を躱すというイバラの能力の高さの証明になっていた。

 

「はーい、帝具没収ー!!!」

 

 ましてや、”村雨”の刀身を白刃取りすることの難易度は言うまでもないだろう。

 暗殺者として育てられたアカメの常人離れした身体能力。尋常ならざる速さで斬りかかるアカメを見極め、”村雨”を白刃取りによって止める。

 イバラは帝具をアカメの手から離させ、逆に自分がその柄を掴む。

 

「な、なんだぁ……この刀……ッ!!」

 

 だがそれがアカメの逆転を許した。

 妖刀である”村雨”が、イバラをその持ち主と認めなかった。ゆえにイバラは帝具から迸るおぞましい気に当てられ、動揺してしまう。

 当然、アカメがそれを見逃すはずもなく。

 

「ぐえっ……!」

「お前は村雨を禍々しい刀だと言ったからな。相性が合わないと思った」

 

 帝具の持ち主として認められるかどうかは、第1印象でおおよそ分かる。最初に見たときに、帝具のことをプラスに捉えれば所有者に成れる可能性は高い。反対にマイナスのイメージを抱けば、所有者になることはほとんどない。

 村雨を肩に置き、アカメは凛として冷たく言い放つ。

 動揺したすきに、アカメに首を捩じられて大きなダメージを負ったイバラ。

 さらにこの状況すらアカメの戦法だと知り、冷静でなくなってしまう。

 

「う、うぉぉおおおお!!!」

 

 怒りのあまり、ただ闇雲にアカメへと突撃していく。その様子には先ほどの戦闘で見せた技巧は微塵もなかった。

 ゆえにアカメは一撃でイバラを斬り捨てようとして────────────

 

 

 

 

「まったく、手がかかる」

 

 

 

 

 それ(・・)を防げたのは、奇跡だった。

 イバラの後ろから飛んできた斬撃。確実にアカメの命を奪うに足るものだった。

 

「くっ」

 

 咄嗟に村雨を横に構え、斬り払いながら衝撃を受け流す。また自分も横に転がり、追撃を避ける。

 アカメが懸念したように、追って斬撃がいくつか放たれる。

 不可視の一撃ではあったが、縦に伸びたものだったがゆえに草を揺らしていた。その前兆を正確に読み取り、無事全てを避けきる。

 

「ナイトレイド……アカメか」

「お前は、羅刹四鬼……カムイか」

 

 ここに帝国の最大戦力の一角と”元”帝国の暗殺者が(まみ)えた。

 

「イバラ……さっさと引き揚げろ」

「ああ……。いや、待て、あいつは俺の獲物だ」

 

 だがカムイはアカメにさほど注意を払っておらず、あくまで見ているだけ。目の前にいるから視界に収めているだけで、もはやアカメから目をそらしていても不思議ではないほどの様子だった。

 端的に言ってしまえば──────目が濁っていた。目的が分からず、終わりが見えず、現状が把握できない。ゆえに無気力。ただ一つの想いだけが、彼の身体を動かしていた。

 カムイはアカメを見たまま(見ないで)、イバラに撤退の指示を出す。

 不覚を取ったイバラは了承しかけるも、快楽を得るために殺しをしている彼はそれに反発する。

 いや、元々羅刹四鬼で最強だった彼が、年下のカムイにその座を奪われた。それには日頃からもやもやしたものを抱えており、それがここで出たということ。

 羅刹四鬼に序列やリーダーといったものは存在しないが、一番強いものに一目置くのは当然だろう。

 また、『次は同じ手をくらわない』という自負もそれを助長していた。

 

「……」

 

 同じ組織(羅刹四鬼)ながら、険悪な雰囲気になりかけ、睨みあう二人を見るアカメ。カムイは完全にアカメから目をそらしていた。……イバラは一応、アカメが視界に入るような位置にいる。

 イバラを仕留めきれなかったのは、彼女に焦りを覚えさせていたが、新たな敵の登場に落ち着かざるを得なかった。

 彼女は仲間割れを始めた敵を前に、その時間を使って思索を巡らせていた。この状況を打破するために。

 

 ──────イバラ。

 とどめを刺せなかったとはいえ、その首を捩じり、ダメージを与えたことは事実。ゆえに一対一なら次こそ確実に勝てる。

 ──────カムイ。

 実力はエスデスと伯仲していると聞いている。だが彼専用の奥の手(帝具のではない)があることにはある。ただし、使い方を誤れば彼の逆鱗に触れるため、今使うべきか否か……。

 

「……分かった。ならやりたいようにしろ」

「言われなくてもなぁ!!アカメちゃぁぁあああん!続きといこうぜぇ!」

 

 必死に考えていたアカメだが、事態は彼女に好都合な方へ転ぶ。

 イバラがアカメと一騎打ちをしかけ、カムイはそれを容認し、傍観する。

 『強い相手に恋をして、殺すことで快楽を得る』性癖であるイバラが、そのように動くことは予想できた。しかしそれをカムイが許したのが、アカメには不思議だった。

 けれど事態は動く。

 イバラが喜悦を顔に浮かべながら、襲い掛かってきた。

 

 

 

 

「まあ、どちらでも良かったんだが……」

 

 カムイがあそこで取れた手は2つ。

 すなわち──────イバラを気絶させて撤退するか、イバラとともにアカメを殺すか。

 前者の場合は非常に面倒なことになる。

 羅刹四鬼は皇拳寺から選抜される。つまり試合や殺し合いを幾度となく行い、互いに手の内が知れ渡っているのだ。

 遠距離からの攻撃手段を持ち合わせているゆえに、距離をとれば一方的に封殺できるが、イバラがそのようなことを許すはずもない。戦闘が始まれば近距離での殺し合いになる。

 総合的に秀でているのはカムイであるものの、年齢という壁は分厚い。経験に一日の長があるイバラを相手に、かつ手の内がばれているために、易々とは気絶させられない。

 

 結果としてイバラの気を失わさせ、連れて帰ることに成功したとして。

 それまでにアカメが逃げていれば良い。

 しかし、羅刹四鬼での仲間割れを好機として攻め込んで来たら?またはイバラとの戦いの間に仲間を呼ばれたら?

 そうなってしまえば……大臣の誹りを受けることは免れないだろう。

 

 では後者、イバラとともにアカメと戦うのはどうか。

 現在はアカメが優勢にたち、イバラは相当押されている。それを見る限り、イバラ一人ではアカメを相手取るのは厳しく、カムイも参戦すべきなのだろうが……。

 まず第一にイバラはそれを好まない。

 単独主義ではないが、変に性癖(フェチズム)をこじらせた結果だ。

 第二にイバラとはチームワークがないということ。

 イバラと手合せしたことはあるが、ともに肩を並べて戦ったことなど全くない。カムイがアカメより強く、イバラはやや劣るとしても、決してそれでは勝てない。1+1ではなく、ただ1と1が存在しているだけでは協力しているとは言えない。

 

 であれば、イバラをアカメと戦わせ、負けそうになれば”回収”すればよい。

 また、”回収”が間に合わずとも、大臣とてイバラの我の強さくらいは知っている。強ければ、失敗など起こりえないなどとも思っていない。

 他者の失敗には厳しく攻め立てるも、手駒であるカムイにはその強さを目にかけ、多少は甘いところもある。とは言え限度はあるし、そもそも彼の失敗は家族の死につながるため、まず失敗などないと考えている。

 またナイトレイドの悪名高さも、大臣の評価に貢献することだろう。

 つまりイバラが負けて死のうが、カムイにとっては別段困ることではない。

 

 などとそのようなことを再び考えて、自分の選択を省みながら、二者の戦いを見ていると決着がついた。

 イバラが悶えながら倒れこみ、アカメは息をきらせ、”村雨”に体重をかけながらもカムイをにらんでいる。

 10メートルは離れているが、互いに戦闘可能な距離である。

 

「ああ、さっきのか」

 

 アカメとイバラの戦闘はしっかりと見ていたつもりだが、全てを見通す天眼を持っているわけでない。

 イバラがカムイに背を向け、アカメの姿が若干隠れたときにわずかだが斬られたのだろう。

 精細さを欠いたイバラの動きではアカメの攻撃を避けきれなかったということだ。

 

「お前を生かす理由もなく、殺さねばなるまい。であれば死ね」

 

 出来る限り、人を殺す数を減らすために。

 だからカムイは常に作戦(ミッション)を復唱し、目の前の人物が殺すべきかを言葉にすることで、それを最終確認としている。

 それが分かりやすい戦いの引き金であり、アカメは帝具を構える。

 

 至る所に裂傷を作ったアカメは疲弊していた。

 ゆえに一息に距離を詰め、背後から(・・・・)襲ってきたカムイを避けることはできず。

 カムイは冥土の土産と言わんばかりに、また心技体整え、威力を高めるために、己の繰り出す技をぼそりと口にする。

 風を裂いて、唸りをあげる剛拳がアカメを貫かんとし──────

 

「……空手……」

「家族からの手紙を預かっている」

 

 その一言で止められた。

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