遠山キンジの独白 作:緋色
金の次
銀
大通りから少し逸れた小道の一つにシルバーという名の店がある。
その店の水曜日の午後6時からは武装職Onlyの時間と――少々、危ない香りのする店だ。
そんな店に迷いなく歩を進めるのはとある有名人。
――カランコロン
「いらっしゃーい。まだ準備中…ってアリアかよ。久々だが元気してたか?」
「見ての通りよ」
「英連邦を中心に活躍してるとは聞いてるが…お疲れの様子だな」
準備中だと言ったのに数年ぶりにも変わらずズカズカ入ってきたアリアがカウンター席に着いたのを見て、言っても無駄とオレンジジュースとパイナップルジュースとレモンジュースを同じ量合わせて氷を入れてシェークしてグラスに注いだシンデレラをアリアの前に出す。
「なに?子供扱いする気?」
「営業時間外に酒を要求すんじゃねえよ。準備が終わってBARタイムになるまではそれで我慢しとけ。昔なじみのよしみで奢ってやるから。営業時間になってからなら注文受け付けるぞ」
面倒な酔い方するアリアに酒を飲ませたくないが……。まあ成人してるからある程度慣れて大丈夫になってるかもしれない。たぶん。maybe。
準備を適当に進めるがあまり時間かかる事でもなく、仕入れも問題なかったのですぐに手持無沙汰になり、少し早いがOPENに変更してからアリアと駄弁る事にする。
「あんたBARしてんの?妙に似合ってるわね」
……知り合いが来るとよく言われるんだよな。あと女騙してそうとか。
余裕がある分、おっさんの魅力があるらしい。意味がわからないがまあ千客万来だし良しとするか。
「まあやる事もないし俺は隠れ家的なBARを細々やろうかと思ってたんだが――白雪に押し切られて昼はカフェ、夜はBARになったんだよ」
昼間は白雪と共に商いをしている。
夫婦で経営してる個人経営のカフェというのが刺さったらしい。
「隠れ家?表に武偵徽章をデカデカと描いといて?」
まあこの店、表に武偵徽章がデカデカと描かれているので店としては結構目立つんだよな。
「アレは俺じゃなくてカフェにたむろする武偵高生が勝手に描きやがったんだよ。消そうかと思ったが近所から治安良くなったとかで消しにくいし」
「……メニューに饅頭とかお煎餅があるみたいなんだけど?」
「結構、需要あんだよ。というかないことにクレーム入れられたんだわ」
過去にとある武偵事務所が立ち上げたのはいいものの――まあいろいろあって饅頭屋になって食べる防犯グッズという形で定着した結果、日本の武偵事務所には大体ある一品として定着しているのだ。特に武偵校周りでは武偵校の学生をバイトとして雇って饅頭を売る事で防犯になってるらしく。警察が立ち寄るという張り紙より効果的な防犯になっているそうだ。
……誠に遺憾ながらここのカフェも武偵校の学生がバイトとしているため、逆に置いてないと不審がられるのである。誠に遺憾だが。
「末妹が高3になってここのカフェでバイトしててな。おかげで妹目当てに武偵高の客が結構来ててな…。BARの時間には出禁にならないって理由で教師まで来るぞ?」
ここに就職目論んでるようだがちゃんとした場所で就職して欲しい……。というか兄離れして欲しい。息子にデレデレなのもよくないが。
弟はヒーロー活動してるし、妹はヒーロー業の協力しつつ個人で色々やってるというのに。
「それ蘭豹でしょ」
「一人で来たなら叩き出すけどそうでないならまあ……」
「他にもいるの?」
「まあそれなりに」
意外と需要あるのか呑みに来る武偵はそれなりにいる。気を使わなくていいのがいいらしい。
男性客だと好き勝手にピザだのなんだの買ってきて飲みにくるアホもいるし、ここいらの武偵は大体利用してるんじゃなかろうか?
あと面倒なのは姐御とか獅堂あたりか。店貸し切りにしないと揉め易いし。
「アリアも有名になったよな。鬼武偵として有名になるとはねえ」
「あんたは逆にもみ消されるような事にばかり首突っ込んでたみたいじゃない。おかげでここ最近活動すらしてない事に気付くのが遅れたわ」
「活動はしてるっちゃしてるんだが……まあアングラ系に偏ってたのもあるし、表沙汰にすると困るらしいからな。偉い人的には」
俺は困らないが、政府の闇に絡んでる事も多かったし表沙汰に出来ない事は理解できる。
理子辺りは表沙汰にすれば死刑一択のハイジャック犯だったし、表沙汰にならなかった結果更生?したわけだし必要なのは理解できる。納得はしにくいが。
「店なんてするなんて――引退するつもり?」
「半分引退って所だな。前線勤務引退させられた後は定職としてはココで働いてる。武偵業は依頼の仲介とガレージ業が主だ。そこの部屋に貸し武装詰め込んでるぞ」
「それ何処に需要あるのよ?」
まあ個人で大金稼いで装備や設備を維持してるようなお貴族様にはピンと来ないか。
「結構、個人でやってる武偵に需要があってな。武藤達とも提携してるから捌くのも借りるのもな」
「ふーん?」
個人で事務所開く武偵はそれなりにいるのだが……ぶっちゃけ依頼を継続的に受けられるような信用がある武偵が開くという事はまずないので食い詰め闇落ち率が結構高い。同業者が潰しに掛かる事も結構あるしな。
そんなのに提携という形で依頼を横流ししつつ武装とかを売りつけるわけだ。
まあ大体初見じゃ信用されないが――合縁奇縁という流れで過去の実績から何とかなってるから軌跡というのは無駄にならないものらしい。というか変な有名人となった知り合いが多いためその辺と会わせるとうまくいく。
……結果、面倒くさい事件に巻き込まれてる気がするが必要経費だろうたぶん。
まあ陽菜がここを拠点に陰から支えてるらしいので大問題にはなってない。たぶん。
「?
「大した事じゃないが…ちょっとな…」
「あんた何したの?怒らないから言いなさい」
「
「あんたホントに何してんの!?」
まあ反逆防止システムの存在とか酔った勢いでげろったら人道派ヒーローがキレて計画的に遺伝子情報全滅させて反逆防止用の合成化合物(かなめが寿命伸ばすために食べてるキャラメルみたいなの)を本人に教えただけなのに酷い言われようである。
ここら辺、似たような研究をしてる所を潰したりと後始末が鬼のようにめんどくさかったのと仕事サボって私用でやったので過去の功績と相殺で追放で済んだわけだが――まあ話すような事ではないな。
桜ちゃんはガチギレしていたが桜ちゃんのキャリアに汚れを付けるわけにもいかないのでさっさとやめたけど。
「そういえば偶に理子と喧嘩してるらしいとは聞くけどガチなのか?」
「本気と言えば本気だけど興行的な本気ね」
確かお宝を盗むと予告状を出して怪盗VS探偵と興行しているそうだ。
ふらっと勝手に店に来て店員やってる姿からは想像できないが配信とかで人気のコンテンツらしい。あと編集で映画みたいになってるらしいがそっちは興味ないので見てはいない。
「そういえばレキはどうしてるか知ってる?」
「レキは子供連れてフリーの武偵しながら世界を旅してるようだぞ。呼べば来るけど。年末年始は顔出すんで」
子供同士ですら主従やってるのがどうかと思うが、そういう事には頑固なのでもう好きにさせてる。
まあ別に強制してないことは伝えてるのであとは本人らの問題だろう。こういうのはもう本人同士で何とかするしかないのだ。
というか兄さんの子供には主従発生してないあたりなんかおかしい。
「……。あんた結構付き合い続けてるのね」
「俺は特に変わってねーよ」
「変わったわよ」
そうかな?あまり自覚はない。
喧嘩が強くなったくらいで別に変ったわけではないと思うが、夢から覚めたかのように疎遠になったやつもそれなりにいる。
アリアも元服以降疎遠になった方である。
有名人な分耳にする機会は多かったのであんまり自覚はなかったが、直に合うのは数年ぶりだったりする。
「で、協力して欲しい事でもあるのかい?」
「……ないわ」
「素直じゃないな。まあ依頼なら受けるぞ?引退したから最近暴れ足りないし」
全力を出す機会がないと鈍るのは万国共通である。
限界を超える行為を繰り返すのは良くないが勝率の高い戦いに慣れたのはあまりいい事じゃないだろう。それ故にS級でも苦戦する依頼は錆を落とすにちょうどいいだろう。
「安心しろよ。お兄ちゃんは最強なんだぜ?」
将来どうなるのかいろいろ考えてもよくわからない。
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