遠山キンジの独白 作:緋色
アリアが固まってる所に一緒に遊びに来ていたのかクレープを持った理子もいて
「やっ、やるじゃんキーくん! レキュは2周目からでないとルート入れない超ムリゲーキャラなのに!もうズギューンキスだ!ズギューン!ドーン!ドーン!」
クレープを口に押し込んだと思ったら大興奮の理子は自分のブラウスの中に手を突っ込み、内側からパンチを突き出させるような仕草をしている。クレしんのOPで見たなこの動き……ていうか女子がそんな動きすんな。
「よくわからんけど妹扱いしてたらこうなったからムリゲーではないと思うが」
いや頭撃ち抜かれる前に制圧しないと死ぬから一般的にはムリゲーかな?
暴れ回る理子が『ドーン!』でアリアにぶつかって、2人そろって両脚を真上に上げるぐらい盛大にスッ転んだ。
それでようやく金縛りが解けたらしいアリアが、がばっ!と起き上がってきて
「あんたはいい!!」
「なにが?」
アリアはギロっと鬼みたいな顔でこっちを睨んできた。
「あ、ああ、あんたはいい!バカキンジはそういうヤツだって分かってたから! そうよねそうよね!あんたは!そっ、そういう、おっ、おとなしい美人がだぁい好きだもんねッ! しっしっしっ、白雪とか!」
「俺の好みは姉だが?別におとなしさは関係ないと思うが……」
カナは割とおっとり系に見せかけたおもしれー系だし(冷蔵庫にデザートイーグル入れてたりする)、姐御は天然だったりするしな。
「あんたはいい!黙ってなさい!」
「お前はちょっと落ち着けよ」
なんか話聞かないモードに入ってるな……。こうなると決めつけで動くから何言っても割と無駄なんだよなぁ……。
「そんな事よりレキ!あんた……やってくれたわね……!!校内ネットで見たわよ!あんた、あたしに断りもなくキンジと2人チームの申請をするなんて…!それは『パートナーの横取り』! 風穴モノのルール違反よ!」
伊Uの件は一応とはいえ終わったしパートナーの横取りには該当しないはずだが?
それは
「レキ。俺それ知らんのだが?」
「私が今後パートナーになると言いました」
「……え?あれ遂行されてたの?」
「はい」
はいじゃないが。チーム申請のタイミング的には始業式前か?受付開始は一応今日からで離れてたのそれぐらいだし。
不知火が怒ってたのこれか。レキとの行動とか無駄に詳しかったしあいつ諜報能力高いな。
「…だとして勝手に出すなよ。こっちも予定あるんだし」
「そうよ!パートナー横取りは無しだからね!同じパーティー組むのは有りなんだから」
「…?まあ俺は好き勝手動けるように1人で好き勝手したい奴と組んで有名無実化する予定だったし。そうでもないのにパーティー増やす気無いけども」
「え!?」
アリアが裏切られたって顔をしているが――そもそもアリアとパートナーとして組むというのが初耳である。
というか昨日、学校来れる頻度少なくなるとかイギリス帰るとか言っててたし円満終了の話じゃなかったのか。
朝練参加したりクレープ食ってたりと充実した学園生活してる様だが……アリアから縁切りされるような事したっけ?
「アリアは――キンジさんの、何なのですか」
俺の横で、レキが抑揚の無い声を発した。
が、これなんか怒ってないか?
今のレキの質問をどう受け止めたのか知らないが、アリアはわたわたと震える指で俺を指す。
「べっ別に、これとはそのたっただのパートナーで――バカよ!」
「なんでかちょくちょくバカ野郎ってよく言われるな~」
近寄ってくるCVRの子を妹扱いしてるのが悪いんだろうか?
ちょくちょく奢って太った?って聞く趣味のせいだろうか?
「私はキンジさんのモノです」
「モノ扱いしてないよ?妹だよ?」
知ってか知らずかレキがよくわからないことを言い出したので一応否定するが誰も話は聞いてくれずに理子が「ふおおっ!」と鼻息交じりの声を上げ、アリアはがくーん!と槍でいきなりヘソを突かれたみたいに体を前に折り曲げた。
「あんた……レキとそんな遊び……」
「遊びではありません。本気です。アリア。あなたは今後、プライベートでキンジさんに近づかないようにして下さい。キンジさんにはこれからも昨夜のように一緒に部屋に泊まり昼もできるだけ私のそばで過ごし夜も一緒に寝てもらいます」
レキの言葉の連打に、アリアは一々殴られたように反応する。
……アリアからの俺に対する好感度なんか高くないか?
せいぜいハイジャックで緊急着陸して、
「アリアとキンジさんが信頼し合っていることは知っています――しかし恋してはならない」
「信頼?恋?俺アリアに好かれること特にしてないんだけど?」
「キンジさんはキンジさんですのでその言葉は何も信用できません」
「信用ないなぁ……」
妹扱いが性癖だったのだろうか?
でも本気で嫌がってた気がするし違うと思うが……?
「あ、あんたはどうなの!レキと組むの!?」
「え?だから一人で好き勝手やりたいんだけど――レキも勝手に行動したのはアレだけどアリアも同レベルだぞ?お兄ちゃんがいなくなって寂しいのは理解できなくもないけど。俺に相談してから決める事では?どっちも」
「だからあんたは兄じゃない!」
――パシィッ!
レキがアリアにビンタした。
――え?……は?
「え?レキなんで殴ったの?」
「アリアは兄ではないと言いました」
「…」
「…」
「え?それだけ?」
「アリアはキンジさんの妹になったと聞いてます」
「レキに言ったっけ?」
「私が先に妹になってます。つまりアリアは私の妹です」
「レキも私の事を妹扱いしてたの!?」
「妹ではないと言いましたので姉として打ちました」
突然の展開に多少整理していると理子がちょいちょいと袖を引っ張ってくる。
「キーくんキーくんどゆこと?」
「ん?俺もふんわりとしか理解してないけど。俺が妹扱いしてるじゃん?なんか知らんけど家族認定されているっぽい。で、アリアも家族認定されてたけど否定したからキレたのかな…?」
「それだとレキュも割と理不尽じゃない?」
「まあそうだけど。レキは少数民族らしいから家族――というか主従関係に近い価値観なんじゃねえかな?」
数日過ごした体感だと、陽菜みたいな感じが近い気がする。ただ陽菜は忍的な主従だがレキは武家的な主従な感じがする。そういう意味では白雪が近いか?
「俺が当主で、他を配下と見立てるとレキの言いたいことも何とかわかる――気がする」
「キーくんを立てないから怒ったってわけかー」
「というかレキ内での序列がレキ>アリアなだけな気もする」
アリアが無意味に貶めるから怒った点もありそうだが――レキは妹萌がわからんのだろう。
「通り魔の留学生に
じわ……と涙を浮かべたアリアはそんな事を言って走り去った。
「あーすまん理子任せた」
「しょーがないねー。アリアー!理子りんを置いてくなー!」
俺が何言っても逆効果な気がするので理子に任せる。
二人が見えなくなった所でレキに向かい合う。
「レキ。俺にも都合あるし勝手に決めんな。護衛までは勝手にやるのはいいとして」
「はい」
ホントにわかってんのかねぇ……。
「で、なんでアリアを近づけたくないんだ?あんまケンカしないで欲しいんだが?」
「『風』が命じたのです。キンジさんとアリアを近づけてはならない、と」
「……嫉妬?」
「違います」
「じゃあ『風』が遠くから命令したのかよ」
「はい」
「……何?ヘッドホンで命令でも受信したのか?」
「――違います。
統合失調症かな?『神の啓示を受けた』とか『宇宙人が命令してくる』とかそう言うのと似ている。
いやブラドは頭の中でやり取りするとか言ってたし解離性同一症かもしれん。
「……………………………………聞いてみてもいいか?」
「はい」
渡されたヘッドホンで音を聞いてみたが――何も聞こえない。いや微かにノイズ――環境音が聞こえなくもないような……。
少なくとも命令的なのはまったく聞こえない。
「ホントに風の音しかわからんな……。返すよ」
「そうですか」
若干落ちこんでるようにも見えるレキを連れ――何かする気分でもないのでもう帰ることにした。
「キンちゃん――どういう事?」
「待て何がどういう事だ。とりあえずその刀を納めろ」
その判断は間違っていたようだ。
部屋に帰った所で出張から帰ったらしい白雪がまたアポなしで部屋に来て――部屋にいたレキを見て不気味なフフフと笑い声をあげる。
「レキさん――キンちゃんの部屋にお泊りしたんだよね?レキさんの服乾かしてるもんね?今日は雨も降ってないのに不思議だね?」
しまった。
レキが荷物持ってきて泊まってたし前に白雪が泊まってたから危機感薄れてた。
「白雪さんですか――挨拶が遅れました。レキです。キンジさんのモノです」
「…キンちゃん?」
「待て。お前は何か誤解している」
「?白雪さんはキンジさんのモノじゃないんですか」
「そうだよ!レキさんはどういう事なの!?」
「あーこれはだな……どう説明すればいいんだろうかこれ?」
「白雪さんが先にキンジさんのモノになって次に私がキンジさんのモノになっただけです」
「それは何も説明になってなくね?」
しかし、なぜだか白雪は理解したのか。
「レキさんはオメカケさんだからね?」
「はい」
波長が合ってるのか鎮静化したっぽい。
いやなんでだよ。
アリアとのやり取り要約
妹「お兄ちゃんなんていなくなれ!」
姉「許さん」
兄「え?……え?」
……レキが思ってたより動き回る