遠山キンジの独白 作:緋色
台所では白雪がレキに料理を教えている。
3食カロリーメイトは許されなかった…というより俺が飯作って振る舞うのがよくないという感じらしい。飯作れるくらいで更にモテるとは思わないし振る舞う機会は――そういやちょくちょくアリアが食いに来てたな。
なんか知らんけど俺が料理上手という謎の噂が流れてて実は優良物件なのではという話もあったし――白雪の危惧自体は当たってた…?
常在戦場を旨とするレキは粗食?であるべきと訴えたが白雪の圧に秒で負けていた。
どういう風に言いくるめたのかは知らんが白雪が先でレキが後の順番になるらしい。何の話か知らんけど多分俺の意思聞かずに決める事じゃないと思う。
ここ数日で急速に仲良くなってる気がするがその分だけ知らん所で知らん協定ができてるっぽい。
レキが四六時中ついてくるのもそうだが、しれっと俺の周りに女子を近づけないようにすべきという指令も追加されたらしい。
陽菜と桜ちゃんに指令を出してなかったら監視にこの二人も加わることとなりかねなかったので過去の俺はグッジョブである。その代わり一人の時間ほぼ無くなってるわけだが。
脱走しようとしたらレキに狙撃で足止めされたりするし、白雪に先回りされてたりと謎に封殺されている。
そのせいか知らないが不知火も諦めたのか他の人と組むらしく、俺はチームを3人で組むことにいつの間にかなっていた。
「先行きが不安しかない」
なぜか妹がオメカケ?とやらにジョブチェンジしてるのもそうだが、なんか知らんが俺が狙われてるっぽい。
アリアを狙うなら色金絡みだと思うが俺を狙う意図がわからん。ココとやらは金銭欲が強そうだったので俺が狙われる理由がマジで読めん。雇われ復讐代行でもなさそうだし。
どっちにしろ本格的な喧嘩もありそうな予感もあるが――どっちにしろ装備は整えなければならない。
努力は裏切らないってわけじゃないが使い続けた道具の方が体に馴染むというか動きが最適化されるものだし。
白雪にバタフライナイフの修理を頼む。ブラドナイフも作ってくれとついでに頼んだがそっちは拒否された。当たり前か。
追加武装は父の形見のデザートイーグルとシャーロックから盗んだスクラマサクスである。
シャーロックの言い分だと国宝みたいな事を言ってたので間に合せとして使い、ナゴジョの脳筋が伝手があるらしい関の刀を注文中である。本当はシャーロックと戦う前に欲しかったが急だったので無理だった。
スクラマサクスは銘にラグナロクとか書かれていて調べてみたら英国の失われた国宝とか出てきたので――本当はイギリス大使館にでも捨て――渡しておきたい所だが刀が時間が掛かるのか正月前後になるらしい。出来合いでもいいのだが、どうせなら名刀が欲しいし。俺は国宝とか銘を見てないからバレる事はないだろう(遠い目)
「武器もだがこっちも考えないとなぁ」
なぜか知らんが留学生共がクロメーテルの事を嗅ぎまわってるようなので代理というか囮を探しているのだが候補がいない。
というかなんで学校紹介のパンフにクロメーテルが勝手に使われてるんだよ。囮か?
「というわけでしばらくクロメーテルのフリして通ってくんない?」
『嫌よ。というかなんで私の番号知ってるのよ?』
「お前の本の奥付に載ってたが?」
教師共に抗議しても梨の礫なので対応のために電話で鈴木とやらに頼む。
「大丈夫大丈夫。
『覗きに気付いてたの?だとしてもジャンヌにでも頼みなさいよ。一時期フリしてたのだから』
「あいつは今別の事頼んでるし、それにお前ならどうなっても困らないし」
『毒してあげましょうか?』
「色仕掛けか?なら俺にときめいて貰うぞ♡」
『――っ。私は見る専だから』
「そーかい」
興味ありそうだしクロメーテル役押し付けてしまおうと思ったが無理なようだ。
仕方ないか。クロメーテルのCVRから転科及び存在抹消は受け付け拒否されるし――下手に出来る事示したのが悪かったか……。
「じゃあ、代わりに薬でも調合してくんね?」
『薬?』
「そ。知っての通りだと思うがβエンドルフィンを出したり抑えたりするのが欲しいわけよ。できれば経口摂取がいい」
『……それ私によく頼めるわね』
「?」
『私は毒使いよ。あなたが私を信じる事なんてどこにもないでしょ?それに――毒が入っていたら怖いもの』
「じゃ、信じるから頼むわ」
『は?』
「もし俺が死んだらお前が描いたカナの本が兄さん――キンイチが知ることになるだろうからな。兄さんにバレたらお前の命は保証できないな」
『――っ。卑怯じゃない』
「それお前が言うの?まあちゃんとしたの作るんだったら本破棄して定期的に買うし」
『こっちが本命ってわけね』
「別にドア・イン・ザ・フェイスじゃないんだけど――まあいいや頼むわ」
『待ちなさい。やるなんて』
「あ、作れないの?合法薬作れないのに頼むのは間違ってたね。ごめん」
『それくらい簡単よ!そ「じゃ、頼んだ」ブツッ
通話を切って一息吐く。本命は断られたけど次善は通ったって所か。
どこでもどんな時でもヒステリアモードになれれば理想だが――
となると方向性は異なるが武偵用の中枢神経刺激薬なんぞもあるし、ドラッグと違って規制されないものが理想だが――まあ使う時は追い詰められた時だろうし、そこは大して気にすることじゃないか。
ベレッタも違法改造してるから今更だし。
「キンちゃ~ん。ご飯できたよ~」
「今行くー」
やることは多いがまずは腹ごしらえかな。
デザートイーグルの試し撃ちなどで戦闘スタイルの見直ししつつ、機を伺っていると意外と早くチャンスは来た。
蘭豹がプールを壊したとかでレキの授業が放課後に回されたため久々の自由時間を手に入れたわけだ。
そこで向かった先は――テニスコート。
あいつは女子テニス部に所属して青春を謳歌しているらしい。
きゃー!ジャンヌさーん!
なんか1年の黄色い叫びで見つけたが……
細長くまとめた2本の銀髪おさげを頭の上でポニーテールみたいにまとめたジャンヌが鋭いレシーブを放ち、縦ロールのテニス部員と激しいラリーを繰り広げていた。
あいつテニス強いんだな。なんか意外だな。
女子にモテるらしくキャーキャー駈け寄られながらコートから出てくる。
「――遠山」
「ジャンヌ。――お前なんで俺に会う前にテニスしてんだ?」
「級友に誘われてな……少々待て着替えてくる」
バツが悪かったのか少々顔を背けたジャンヌはテニス部と別れを告げて着替えに向かう。
……それはいいとしてなんかテニス部にめっちゃ見られてないか俺?気のせいか?
少々居心地が悪い中、待っているとジャンヌはすぐにやってきた。制服に着替える際に髪型も元に戻したらしい。少し残念だな。新鮮だったのだが。
「で、なんで距離取ってんだお前?」
「あまり近づくな。 遠山」
「なんでだよ」
「私はさっき、クラブ活動でほんの少し汗をかいた。シャワーを浴びるヒマが無かったのだ。濡らしたタオルで身体を拭き
「俺は特に気にしないが――気にするなら何で会う前にテニスしてたんだ?まあいいや歩きながら話すぞ」
歩き出した俺に対してジャンヌはちょっとためらうように眉を寄せてから姿勢よく歩いてきて、俺の横についた。
ふわ、と風が吹くと確かにジャンヌの方から若草のようないい香りがする。香水とはそれ単体では不完全なもので、女性本体の甘い匂いに組み合わさることで最もいい香りになる――んだったか?
汗とかは特に気にならないあたり身体に合っているのだろう。
「お前がアリアと別れてレキと組んだ事情報科でもちょっとしたニュースだったぞ」
「あー、アリアって人気らしいしな。別れるというか円満終了なんだが――兄さんも見つかったし。組み続ける意味もないし」
「いや人気なのはお前だ。遠山。お前は武偵高、特に強襲科では戦闘能力において卓越した才能を持っていると見なされ一目おかれている男なのだ。私もお前の評判を聞いて少し見直したぞ」
「評判は評判でしかねえけどな。それよりレキの話だ。というかレキが暴走気味で困ってんだよ。必要な説明しないしな……」
「ふむ。確か敵が迫っているんだったか?」
「俺を狙うとかイ・ウーの残党じゃねえのか?始業式にも中国人のココというのに襲われたし」
「ココ?私の知る限りイ・ウーにはそんな奴はいないし。――イ・ウーは崩壊したからこそ
「……よくわからんけど大変なんだな」
……勧誘ねえ。それ見逃していいものか?
場合によっては――
「待て遠山。なんだその目は!?勘違いしないで欲しいのだが自らの研鑽のために教え合う場が重要だっただけで今はこの学校で満足しているし。私は世界征服等に興味はないからな!?」
まあ今ん所処す理由はないか。
レキはレシピから1mmも変えない調合のイメージ
キンちゃん的には策士自称してるジャンヌはなんかあったら敵になるだろうなくらいの距離
夾竹桃は珍獣