遠山キンジの独白   作:緋色

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重要そうなの子孫って部分だけで本人が―って設定は燃えるんだなあ
と思った


修学旅行

 蕾姫(レキ)が姫だろうとなんだろうと特に何も変わらない。

 昔の武将は結婚相手が何らかの事情で正室より格上の女を娶る場合、正室を格下げして側室にし新たに正室にする――という事もあったらしいが白雪的には今までと扱いは変わらないらしい。

 そもそもレキの方がいずれ子を成せばいいという感じで全くこだわってないのが大きいだろうが。

 まあ両方正室とか平等に愛せとかバカみたいなこと言われるよりかはマシか、そもそも白雪が勝手に増やしてるだけで側室も別にいらんのだがな……。

 なんかこの辺だけ俺の意思ガン無視されてるのはなぜだろう……。

 

 閑話休題(それはともかく)

 

修学旅行Ⅰ(キャラバン・ワン)

 

 文科省が定めた学習指導要領では「旅行・集団宿泊的行事/平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め自然や文化などに親しむとともによりよい人間関係を築くなどの集団生活の在り方や公衆道徳などについての体験を積むことができるようにすること」が学校が修学旅行を行う理由である。

 武偵校はそれをきちんと解釈し、チーム編成の調整旅行と化したわけである。なんか完全にはき違えてる気がしてならない。

 旅程表――いわゆる 『旅のしおり』には

 

『場所 京阪神 (現地集合・現地解散)

1日目 京都にて社寺見学(最低3ヶ所見学し、後ほどレポート提出の事)

2日目・3日目 自由行動(大阪か神戸の都市部を見学しておく事)」

 

 としか書いてない。

 ……武偵は自ら考え実行せよという建前でこうなってるらしいが教師は引率どころか観光で京都大阪神戸のどこかには一応いるらしいが必要なら学校に連絡しろと引率する立場すら放棄――文科省のガイドラインはガン無視である。

 真面目になんでこの学校が学校認可下りてるんだ……?

 首を傾げつつも品川を出たのが7時頃、現在9時過ぎ、車内アナウンスに促されながら東海道新幹線のぞみ101号から京都駅に降り立った。

 俺の背後からは、レキとハイマキも新幹線を出てくる。

 ……ハイマキ普通に新幹線乗れるんだな。盲導犬なんかを除いて大型犬?狼?は乗車不可だったと思うのだが武偵犬登録してると問題ないのか……。運賃は取られていたけれど。

 修学旅行に別に賛も否も特にないが旅行するだけで単位が雑に出るお気楽さは歓迎である。

 白雪は二日目に合流することになっているので今日は二人と一匹の旅になる。

 もっともアリアの裁判の関係で早めに東京に戻らんといけないわけだから実質自由なのは1日半ぐらいか?

 アリアは裁判の関係と伊Uの原子力潜水艦を海自に売り渡すとかで不参加である。

 ……あんだけ頑張ったのに美味しい所全部アリアが持ってくのはどうなんだろうか?

 まあ冤罪で親が拘留されてんだから大目に見るか、伊Uが悪いんだし。

 

「ノープランだけどどっか見に行きたい所とかあるか?京都は見どころ満載とは聞くし」

 

 ふるふるとレキは首を振る。特に意見はないらしい。

 察してくれってタイプじゃない分マシだが意見が全くないのも困るものである。

 

「じゃあ有名どころ。清水寺と金閣銀閣を見に行くか」

 


 

 あちこち観光に行く間、隣についてくるレキは終始無言だった。

 まあそれは別にいいのだが、観光客や舞妓さんが行き来する人混みを歩く際は、ちょん、と俺の袖をつまんだりしてくる。

 なんかちょっと可愛い。

 ただそういう時に限って同じ武偵高女子に見つかりよくない噂に火に油を注いでる。

 何度か撒いてはいるのだがその手の写真を撮られて、CVRからクロメーテル名義の方にあの男クズですよと写メが送られてくる。……CVRとは出くわしてないはずなのだが俺の知らん所で賞金でも掛けられてるのか……?

 とりあえず趣味が悪いとだけ返して着信拒否しておく。

 

「俺なんか隠し撮りして楽しいのかねぇ……」

「撃ちますか?」

「ウザいのはわかるけど隠し撮りの気配は何となくわかるし困る写真でもないからな。まあ手は打っとくけど」

 

 とりあえず暇しているであろうジャンヌに俺の事を隠し撮りされているモテ期に突入したから原因探ってくんね?と依頼を飛ばしておく。

 こういう時に本人が調べに動くと監視されてるから逃げられやすいため無関係の第三者に依頼するのが正道だ。

 

「……女ですか」

「まあ女だな」

 

 犯人恐らくクロメーテル厄介ファンかなんだろうし。

 ……最近レキが家に住み着いてるからうっすらと喜怒哀楽は読み取れるようになったが――なんか怒ってる……のか?

 まあ旅行中に水差されたら不機嫌にもなるか。

 

「なんか心当たりない女の恨み買いがちなんだよな。恨みじゃなくても襲われるけども」

「異性は奪うものです」

 

 レキを揶揄したわけじゃなかったが……そう取られても仕方ないか。

 

「恋は戦争ってか?同意しかねる価値観だな。現に俺の方が強かった――運が良かった?わけだし」

 

 戦争は原始的かつ暴力的な紛争解決手段だしな。

 喩えたやつはきっと軽く考えてる奴だろう。

 

「恋は落とすか落ちるもので戦争は暴力だな。戦わずに勝つのが最強と俺は教わったが」

 

 ヒステリアモードは女を傷付ける事を望まないが故の対処法とはいえ、女に襲われたら相手愛して落とせというトンデモ価値観な事は黙っておく。

 

「ま、誰も傷つかないのが一番さ。平和が一番よ」

「……」

「……?今誰かいたか?」

「こちらを注視している人はいません」

 

 そうじゃなくてレキから知らん視線を感じた気がしたんだが……気のせいかな?

 

「しかし思ったより早く3つ見れたな。いやこんなもんか?」

 

 昼過ぎになったので目に入った飯屋で軽く昼食を取ったわけだが――本格的にやることが無くなったな。

 土産屋で妹らに似合いそうな伝統芸能っぽい髪飾りを報酬代わりに買ってみたりもしたが、まあそこまで時間潰せるわけでもない。

 レキは文化財に全く興味なさそうだし、俺も京都の有名どころをせっかくだから見るかー程度だったので観光を続けるのも微妙だし。

 いっその事足伸ばすかな。1日目でしおりの内容さっさと終わらせて遊び惚ける先輩もいたと聞くし

 

「大阪に足を伸ばすぞ。買い物にでも行くか」

 

 と言うと予想外だったのかなぜか少し固まって、こくり、と頷いた。

 


 

 レキと暮らしていて呆れたことだが、レキは私服を持っておらず制服で過ごしているらしい。

 制服だけだとレキと出歩くときの服装が制服縛りになる。――レキは気にしないだろうけど俺が普通の私服で片方制服はかなり悪目立ちしかねない。

 そういうわけでこの機に私服でも買ってやろうというわけだ。レキは和風のものより現代風なものの方が似合うと思うので京都より若者向けであろう大阪へと来たわけだ。

 

「適当に店見て回るつもりだけど。なんか希望はあるか?スカートよりパンツがいいとか」

「キンジさんにお任せします」

「それが一番困るんだがなぁ……」

 

 まあレキの性格からしてゴテゴテしたものよりシンプルな物の方がいいだろう。あと動きやすさかな?

 銃の分解清掃とか仕事に関することはかなり几帳面だがそれ以外は最低限でいいという感じだ。

 となると洗濯等手間のかからんものにした方がいいか。

 ……なんか育児してる気分になってきた。

 目に入った『シャトンb』という店に入ってみると店内は森をイメージしてるのか、棚やケースが全部木製だった。装飾も葉っぱとかツタ植物を意識してるカンジだ。お洒落だし店員に丸投げしてもよさそうだな。

 隣のカフェと繋がってるのか紅茶の香り――となんか獣っぽいニオイがする。あ、にゃーって聞こえたから猫がいるのか。猫カフェってやつか?

 ハイマキも、躾されてるのか入口のマットでちゃんと足をふきふきしてからついてきたが野生動物は追い出されやしないかと若干不安に思ったが日焼けした茶髪の女性店員さんは「いらっしゃーい、おーかわええ!!」 などと、ハイマキに抱きついている。

 スゲエなこの人!?狼に躊躇なく抱き着いたぞ!?

 

「ちょっといいですか?彼女が喜びそうな服が分からないので選んでやってもらえませんか」

「ははーん?兄さん、あれやろ? 外堀から埋めようってんやろ? 一目で分かったで。ガード固そうな子やもんなぁー」

「むしろノーガードだから困ってんですが。餅は餅屋だと思いますし」

 

 体格を隠したり武器を隠したりすることが基準でお洒落自体にはあまり興味はないからな。

 クロメーテル時もCVRに置いてあるコスプレや探偵科(インケスタ)の変装用衣装を勝手に使うぐらいである。

 何着ても特に問題ない扱いされるので逆に何もわからないもんだ。

 

「任しとき!よかったなーお嬢ちゃん。この兄ちゃんが何でも買うてくれるってさー。ウチはお客さんの雰囲気に合う服を見つける天才なんや。ほなお嬢ちゃん、身長・体重を教えてんか。スリーサイズもなー、へへへ」

「150センチ、41キロ、76センチ、50センチ、73センチです」

「おーかわええなぁ。 より見るとキレーな顔しとるしなー。 ダイヤモンドの原石やで」

 

 若干不安になりそうなことを言いながらお姉さんは平然と答えるレキの背を押して店の奥へ連れていってしう。

 うーん。なんかあっち方面高めの服っぽいんだが……。なんか俺が買う事になってるし必要経費かな。必要経費かなぁ?どうも釈然としない。




キンちゃんは割と押しに弱い印象
押し売りなら殴れるけどしれっと決められるとよほどじゃないと断れない
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