遠山キンジの独白   作:緋色

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大阪語よくわからん
全部せやかて工藤で再生されてる


アベック

 レキの服選びの間、さっそく仕事が終わったらしいジャンヌからの報告を受けていた。

 

「OK。予想通りではあったな。その依頼のすぐそばにクロメーテル名義でその犯人の写真撮れとでも依頼出しといてくれ」

『なぜお前がクロメーテル名義で出す?お前の名前でやればいいだろう』

「なんか知らんが俺がクズだってクロメーテルに撮った写真送りつけられてて困ってんだと」

『……わかった。クロメーテルには迷惑かけたからな。罪滅ぼしだ』

「すまんね。せっかくの旅行中に」

『大変なのはお前もだろう。では』

 

 無機質な電子音を確認してから通話を切る。

 これで一旦は収まるだろう。旅行を終えたらココとのケリを付けたいしこの旅行中に作戦でも立てるか――チーム組むことになってるし白雪と合流してからかな。

 ……通話のために外出たのは失敗だったかな。――見られている。

 通話中に見つかった感じかな。というか遠巻きに監視してるのなんでだあいつ。

 

「職業病なのか視線には敏感なんだが――何やってんだアリア?俺盗撮しても金にはならんぞ?」

「してないわよ!?」

 

 反射的にツッコンで存在がバレてしまったって顔をしているが――なんでこいつ大阪にいるんだろ?広島の呉に原子力潜水艦引き渡しに向かうために修学旅行サボったんじゃなかったのか。

 顔も見たくないって言ってたのにわざわざのぞき見するとは――あれか口で嫌いって言った手前自分からどうしようもできないで困ってんのか?

 

「今盗撮依頼出してるアホ潰しに動いてるから骨折り損のくたびれ儲けだな。小遣い稼ぎならもう少しマシな事しろ」

「だからしてな――あんた盗撮されてんの?」

「……あーお兄ちゃんはモテモテなんだ」

「面倒だからって説明投げるな!」

 

 これ以上に説明することなんてないんだが。

 

「で、なんか用か?あんまり時間取れないが」

「うっ。あんたの口からちゃんと聞いてなかったし――レキとも別に……だからそのっ」

「時間取れないって言ったんだが……。レキと仲直りしたいのね。修学旅行後に時間見つけて話合わせるからそれでいいか?俺が口出したら余計拗れそうだから場所だけセッティングするから」

「そ、それもだけどあんたと!あんたの意見が聞きたいって言うかどうしたいのか!」

「……アリアがなにを言いたいのか纏めてくれよ。……時間切れだな。旅行終わったらちゃんと話そう。それでいいだろ?言いたいこと纏まってないのに話すと事故るぞ?」

 

 店員さんが戻ってきたのか店内キョロキョロしてるし、なんかプライベートで近づくのがアウトらしいしレキにアリアの事勘付かれたらヒートアップしそうだ。

 

「あんたこの店で何してたのよ」

「ん?レキと買い物。んじゃ空いてる時間今度メールでもしてくれ」

 

 ひらひら手を振ってから店内に戻ったが――固まったアリアが店内から見えるな。見つかると面倒だが――まあレキも撃ちはしないだろ。たぶん。

 さっきの店員さんがこいこいと手招きするのでそっちに向かう。

 

「彼女さんほうっておいて何してるんや?」

「ちょっと電話するために外出ててね」

「ほーん?まあいいわ。どや」

 

 そういって見せつけてきたのは――黄色い園児をかぶり水色スモックを着て無言で立っているレキは、ご丁寧に「れき』と書いた名札まで胸につけている幼稚園児の制服……!

 店員さんが気を利かしたのか俺以外にはレキの姿が見えない立ち位置とはいえ、おみ足が、スゴい事になってるぞ。丈だけ園児服に忠実なのか、驚愕のミニっぷり股下1センチを切ってるぞ。

 これどう考えてもアレなコスプレじゃねえか!?

 

「な……ん!?」

「兄さんー、ええリアクションやったで。しかしなんでやろ。この子ミョーに子供っぽい服が似合う気がするんや」

「無垢なんでやめてやってくださいよ。レキも断っていいんだぞこういうの」

「?」

 

 あ、何が問題なのか全くわかってないっぽいな。俺のリアクションにレキは自分の姿を少し見回している。

 

「兄さんこれはツカミちゅうもんや。でも夜用に役立つと思うで? へっへっへ」

「あれ?ここそういう店?レキ。着替えて別の店行こう」

「待ちぃ。ちょっとしたジョークや。ノリ悪いなー。こういうのもあるってだけや」

 

 次はちゃんといいもんやでーとレキを連れて奥へ向かう。

 ……次ふざけたら問答無用で帰ろう。

 ただホントにジョークだったらしく次に彼女が「森ガールや」と称してレキに着せてきたのは、トナカイ柄のぞろっとした衣装、その次は理子が普段着ているようなヒラヒラしたフリルだらけのロリータ服。

 どちらもレキが着ると印象によりモデルやアンティークドールのようにハマっている。

 しかしこれらの服は狙撃銃を構える時に袖がジャマそうだったので武偵的な観点からNG。

 最後に、店員さんが「次が本命や」と店の奥から出してきた服を試着することになった。

 レキがノーメイクな事に驚いたサービスでメイクもしてくれるとの事でレキとお姉さんは本格的に試着室に籠もる。

 

「……いやー、ホンマにダイヤの原石やったな。会心の出来や」

 

 シャラッとカーテンが開いた向こうから、白いミュールの足が出てくる。

 きちんと薄化粧をしてもらい、梳いた髪をセットして、白を基調としたノースリーブのワンピースを着たレキは――キレイだ。

 素材の一部に薄絹を使っているらしい白い布は、店内の光に晒されると身体のラインを薄い影絵のように透過し、透明感のあるレキのイメージをより強めている。

 普段とのギャップが大きいのもあるだろうがそれを差し引いても、元々作り物のように端正な顔立ちをしたレキはこうやって服装や化粧で磨き上げられると、本当に目を引き寄せられてしまうな。

 

「……これは誉め言葉にしようとすると陳腐になるな。キレイとしか言えない」

「せやろー?」

 

 なぜかどや顔する店員さんは置いとくとして、特に表情のないレキだが流し目するように全身鏡を見るその視線は何となく満足げだ。

 ――気に入ったのかな?

 

「えーそれでは願いましては――やな」

 

 俺もレキも文句が無さそうだと見たらしいお姉さんは、チョコレート色の電卓を出して

 

「ワンピにミュールにインナーが上下でほい。こうや」

 

 差し出された電卓の数字を見た俺は少々顔が引きつる。

 わかっていたが想定の1.7倍くらいの値段はする。

 それなりに服装検査(ドレススキャン)出来るつもりではあったがファッションの世界は恐ろしい。――単位落としかけたから、なるべく任務受けるようにしたから財布にそれなりの余裕があるが――節約しないとな……。

 

「キンジさん」

 

 それを見抜いたのか知らないが、お嬢様然としたレキがきちんとリップをした唇で声をかけてきた。

 す、と流し目するようにレキの視線が動き――それを追うと。

 

『大好評! 本日15時よりシャトンb&シャトン・カフェ合同イベント

☆シャトン・コール ☆

優勝者には当日お買い上げのシャトンbの商品を全品半額キャッシュバック!』

 

 どうやら隣と繋がってるカフェとのイベントらしい。

 

「このイベント参加費とかあんの?」

「ドリンク2杯以上注文でや。カップルならお茶しばけて一石二鳥やろ?」

「どうりでカップルが多いと」

 

 イベント狙いで『シャトンb』で服を買った男女の客が『シャトン・カフェ』で駄弁ってたワケか。

 

「ま、損はしないし参加するか。猫好きだし。レキもいいか?」

 

 こくんと頷き歩み寄ってきたレキから香るファンデーションとミントの匂いに若干ヒスりそうになりながらもイベントに参加することにした。

 店員さんによればシャトン・コールとはこの店独自のイベントで、シャトン・カフェを歩いている猫を何匹自分のテーブルに呼び寄せられるか競うものだった。

 参加資格はカップルの男女、制限時間は1分。 席を立ったら失格で、手で猫を掴んだりしてもいけない。

 ……これ無理だな。よっぽど懐いてない限り猫は初対面に近づこうとしないし、こういうイベントで声掛けたらむしろ逃げる。

 『参加カップル名:キンジ・レキ』と黒板に名前を書き、紅茶を頼む。

 少し期待していたが猫が好みそうなものはメニューにはなく、それどころか猫が好まない柑橘系が多めのラインナップだ。

 その割に猫はストレス感じてなさそうだし商売上手いんだろな。

 

「それでは準備ええでしょうか? はい、はじめ!」

 

 そんな俺の緊張をよそに、カフェ側のお姉さんがマイクとスピーカーを通じて宣言する。

 店内にいた何組かの男女は、一斉に「おいでおいで」 などと猫なで声を出したり口笛を吹いたりして猫を呼び始めた。

 もちろんそんなことすれば猫が近づくわけもなく――

 

「おいで~」

 

 手招きしてみるがそっぽ向かれる。こりゃダメそうだな。

 

「よくは分からないのですが猫を集めればいいのですか」

 

 冷めかけの紅茶を前にちょこーんと座っていたレキが他人事のように聞いてくる。

 

「まあそういうイベントだな。猫好きなんだが難しそうだ」

 

 なんか俺動物に好かれないんだよな。スキンシップうざそうに思われてるのだろうか。

 面倒になって勝負放棄気味になった俺とは対照的にレキはしばらく黙ってから猫たちの方を向きすらせず、相変わらずの無表情顔でばち……と1つ長いマバタキをし

 

「ニャーン」

 

 と、言った。

 

「!?」

 

 唐突に可愛いのやめろと言う前に店内の空気が変わる。

 店内の猫たちが一斉に顔を上げた。

 見回せば、一斉にこっちのテーブルというかレキの方を見てるぞ。猫たちが。

 え?なに?怖!?

 

 服屋のお姉さんと、カフェのお姉さんが揃って声を上げる。

 呆然とする俺のテーブルの下に猫たちが…1匹残らず集まってきた。

 

「これで良かったでしょうか」

 

 しれっと言ったレキの足元ではシロ、クロ、プチ、トラ。

 猫たちが教祖に呼ばれた信者みたいに集っている。

 レキはどうやら、動物とコミュニケーションができる不思議少女らしい。

 

「……猫言語って習得できる?」

「キンジさんには無理です」

「……そうか」

 

 なんか全てにおいて負けた気がする。

 

「シャ、シャトン・コールはキンジ・レキのアベックがトップ・コーラーや!」

 

 悔しいのはわかりますけどカフェのお姉さん、そんなスピーカーを使った大音声で言わないでくださいよ。

 

「これからも仲良く、愛し合うんやで!うちらも応援するで!」

 

 シャトンbのお姉さんは「うちの姉妹は勉強しまっせ!」と言いつつ、他の客たちにもよく見えるように俺に半額キャッシュバック券を手渡してくる。

 これはこれで、この店の気っ風の良さを宣伝してるわけか。商魂たくましいな。

 

「はい、勝利のチュウ! チュウ!」

 

 と、シャトン・カフェのお姉さんはヤケクソ気味に言っている。

 客たちもノセられて、「チュウ! チュウ!」とチュウコールだ。

 

「どうする?キスする?」

「立って下さい」

 

 すっ。

 皆の手拍子の中、愛想笑い一つせずのレキがかたん、と立ち上がり、釣られて立ち上がった俺の避けるヒマを与えず距離を詰め、ダンスのように腰を抱き寄せて俺の頬にぴと、と唇を寄せたレキに、店内がワーキャーと大盛り上がりする。

 

 !?!?!?!?!?






キンちゃんの知らないガールズトーク

「先ほど言ってた夜用とは?」
「そら兄さんと一緒に寝る際に盛り上がるやつや」
「?」
「あー、嬢ちゃん無垢そうやしなあ。付き合ってからチューしたり一緒に寝るやろ?その時に着るんや。兄さんに任せればええで」
「キンジさんの子を作るためですか」
「げっほ!?ま、まあそうやな。服買って貰ったらチューしてあげな。一発やで!」

レキは間違った?知識を覚えた。
園児服を手に入れた。
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