遠山キンジの独白 作:緋色
桜ちゃんズボンかぁ……
……ありだな?
スラリとした巫女が、2mを超える和弓から二の矢を放ち、しゃんっ!と魔物を祓うような鈴の音が再び上がり鷹の矢羽をつけた竹矢はココが盾にしていたバイクに突き立ちガソリン漏れを起こさせた。
凄い腕だな。
何発かUZIを応射したココは、すぐさまバイクに飛び乗ると
「ココは代々、逃げる時は逃げるヨ。 最後に笑えばそれでいいネ。再見」
「待て!逃がすかゴラ」
咄嗟に近づいて袖をつかむがトカゲのように袖を切り離して、ガソリンを垂らしながら車道を外れ藪から木々の間へと姿を消してしまう。
こうなると追跡は無理だな。一瞬ガソリンに火を付けようかと思ったが山火事になるだけなので却下する。
エンジン音も、どんどん遠ざかっていく。
ああいうヒット・アンド・アウェイが平然とできるタイプは経験上、逆に手強いぞ。不利になったら即逃げして勝つまでしつこくやってくるからな。
弓を手にした光岡自動車の高級車、ワインレッドの卑弥呼のボンネットに乗った巫女が、警戒するように山岳方向を見ている。スラッとした美女に成長してたから一瞬分からなかったが白雪の1個下の妹の風雪か。あんな弓上手いのか。
「キンちゃん!何があったの!?」
シートに座っていたのは、先月粉雪を迎えにきた美人の運転手とホトギアゲハを指にのせた白雪だった。
「襲撃されてた。レキはさっきのヤツにやられた。敵に狙撃手がいるから病院はまずそうだ。すぐに医者を呼んでくれ」
ビルの多い市街地は、狙撃手にとって最も有利な地形の一つ、街にある病院を狙撃銃で襲われたら手も足も出ないぞ。こっちはあのクラスの狙撃手に対抗できそうなのレキぐらいしかいないのだから。
風雪はその言葉を聞いてレキの傍らに片膝をついて様子を見る。
「この傷は銃創ではありませんね」
「俺もよくわかってないんだが。爆発でやられた。多分化学反応で大気中で爆発させた感じだな。傷跡が一か所の爆発じゃなくて数か所で爆発したのが被弾したような感じだ。……白雪、治す術は今は使えないのか」
「普段なら、少しは出来るんだけど……いま、私の力は不安定なの」
「何とか粒子が濃いんだったか……運が悪い――いやだからこそ狙われたのか?」
白雪の治療は雑な応急手当よりかは信頼できるから任せたかったが――天候のせいか何もかもうまくいかないな。雲が月を隠し不安を掻き立てる。
「星伽分社にレキ様をお連れしましょう。そこに医師をお呼びします」
と言った風雪は、巫女服が血に濡れることも厭わずレキを抱きかかえる。
「宿借りるだけだったのにとんだ面倒ばかりかけてすまん」
レキはもう一台来ていた車の後部座席に運び込まれ、それを支えながら俺も隣に同乗した。
「悪いのは襲撃者です。遠山様が星伽の味方ならば星伽は遠山様の味方です」
『それはケースE8だ遠山。
「でしょうね。ココの資料が欲しいんで送って下さい。こっちはこっちで勝手にやります」
ケースE8。「内部犯の可能性が高いので周知は出さない。信用出来る者にのみ連絡を取り、当事者の手で解決せよ」という意味の符丁だ。
まあ大して期待してなかったから別にいいけど。
『――それはできない。もし非武装の市民が巻き添えになるようなら改めて連絡しろ。あとは殺すな遠山。お前は武偵だ。殺したら殺す』
少し逡巡したようだが最後に低い声でそう言い電話を切られた。
相手は留学生――確実な証拠がないと秒で問題が膨れ上がるため踏み切れないのだろう。
ベルセの残り香を嗅ぎ取られたのか少々背筋の凍る釘を刺された。確かにレキをやられて少々気が立っていてココを殺しても気にはならないぐらいの精神状況を自覚する。
自分より物騒な姐御や常識的なストッパーの桜ちゃんいないし、全肯定気味の白雪とレキと一緒にいたから知らずに緩んでたらしい。
最近緩んでたところにこれだったから自分でもブレーキが壊れかけてたか。
「そうだな。目的は逮捕だ。手足の二、三本折りたい所だが――それは単なる復讐だな。正義じゃない。格好良くはない。白雪にモテない」
運転手している美人さんの目が怪しくなってきたので独り言で誤魔化す。
白雪が隣で聞いてるけど大した問題じゃないだろう。
「とりあえず敵の情報――いやまずは」
桜ちゃんに連絡して情報得るより先にやれることがあったな。
『なにかね?忙しいのだからマキリ君に連絡したまえ』
電話を掛けたら待ち構えていたかのように即座に繋がる。胡散臭いおっさんは予知でもできるんか?
「あの人はあんま権限ないでしょ。――京都で中国人に狙撃されたんで○○~△△までの山を山狩りしてほしい」
『自分で何とかしたまえ』
ばっさりであるがこっちにはまだ動かせそうな情報はある。
「大きな密輸ネットワークが暴けるかもですよ」
『根拠は?』
「山の中で罠張って狙撃で追い込まれたんですが、その際に訓練された
『ふむ。5頭までなら前例は聞いたことがあるが20頭はないな。狙撃手の人相及び特徴は?』
「今移動中なんで戦闘中の写真は送れませんが――ココを名乗る女で黒髪ツインテールの140cmくらいの少女です。銃はUZIと破壊済みですがレミントンM700。ラジコンヘリでの銃撃と山のあちこちに爆弾のようなものが仕掛けられてるようです。バイクのCRM250ARに乗って逃亡した後は不明。ただガソリンタンクに穴開けたので乗り捨てている可能性は高いですね。協力者はタクシー会社からタクシー盗んだ男で170cmくらい。中肉中背で逃げることに特化した鍛え方してますね。二人の似顔絵は後で送ります。ココについての詳細は桜ちゃんの方が詳しいです」
『
「はい。山では20頭のシャー・ペイを撃って行動不能にしているので獣医も一緒に動かしてください。狙撃手の拠点は――」
伝える事を伝えて電話を切って一息つく。
これでシャー・ペイが死ぬことはないだろう。多分。
「キンちゃん。今電話してた人は……?」
一緒に同乗していた白雪が意外なものを見る様に
「警察のお偉い人――おっさんにあとでこき使われそうだが背に腹は代えられねえからな。そっちは連絡付いたか?」
「電源切っているのかアリアにも理子ちゃんにも繋がらないよ」
「そうか。正直気になる事があるから協力してほしかったが――仕方ないな」
アリアは兎も角理子と繋がらんのは痛いな。
ラジコンの手口からして理子はなんか知っているか聞きたかったが――協力してる敵かもしれない。最悪戦闘になるかもと想定しておくか。
「では――お願いします」
「任しときや
有力な神社には会社のように本社と支社がある。その支社にあたる神社を分社という。
とはいえ分社は本殿は杉のある小山の上に在り、周囲は入口の鳥居以外全方向が漆喰の塀で武家屋敷のように防御されている。
濡れたアスファルトの匂いがする道から、待機していた寵巫女――白雪や風雪のような正規の星伽巫女に仕える幼い巫女たち――がレキを担架で運んでいく。心配なのかついて行こうとするハイマキは途中で獣医に捕まって治療を受けさせられている。
救護殿とか言う場所に運び込まれたレキを診るのは若い女医。見た所プロの
星伽に呼ばれるなら身元も保証されてるから安心だろう。
「白雪――ちょっと手伝ってくれ」
「何をするの?」
「レキのスコープの写真を現像するのと――人相書きだな」
「え?」
キンちゃんのスキル
似顔絵
元々絵は得意でも不得意何でもなかったがCVRの化粧術で無駄に顔の特徴とそれに会った化粧を学ばされたので特徴を押さえたそれっぽい見た目の顔を書ける(85点ぐらいのデキ)
探偵科の授業で判明した