遠山キンジの独白   作:緋色

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分岐点

 正直、勝てる気がしない。

 が、殺す気で絡んでくる奴相手に馬鹿正直に相手したら普通に殺されて終わりだ。

 桜ちゃんは腰が抜けたのかへたり込んで動けないみたいだし、俺が戦ってる間に逃げてくれる事は望みが薄い。

 何か気を逸らさなければならない。

 

「どこのモンだ?俺の名前知ってるなら俺のバックに桜田門組(警察)が付いてるのは知ってると思うが」

「四課の影響かしら?そういう言い方は――よくないですよ」

 

 ――違和感。

 警察を敵視するような犯罪組織ならこの手の発言は流すか乗るイメージがある。しかし、ひとみは発言を諫めた。

 これは広義の身内に対する反応だぞ?近い関係なら怒るにしろ乗るにしろわかりやすい感じが出るが好意的な遠い身内には反応に困ってこういう事を言う。

 ひとみも偽名臭いし、過去の警察関係者の特徴をプロファイリングしてみるが近い存在が浮かばない。

 しかし、これだけ戦闘力の高い警察関係者は思い当たる。

 公安0課。

 正式名称「警視庁公安部公安第0課」。特別高等警察いわゆる特高を前身とする職務上の殺人が容認されている「殺しのライセンス」を持つ公務員だ。

 与党との結びつきが強く総理の私兵とか蔑まれてるらしいが、国家資格で選抜される武装検事と違い殺害人数が多く、これは日本を守るためなら悪を殲滅するダークヒーロー的な思想が蔓延っているとか。

 

「もしかしてこいつら追ってたのか?」

 

 辺りに転がしている犯罪者達は気絶させたから使えないが、何なら起こして囮にすべきか?

 

「――ハイエナはよくないわね」

「手間取ってるのが悪い」

「それの上が出てくるまで待ってたのよ。あれだけ派手に暴れたおかげでそれの上は尻尾切って逃げたでしょうね」

「あー、それは済まんかった。――でも俺は兎も角この子狙う理由にはなんねえよな?」

 

 これだけははっきり確認しとかなければならない。

 とりあえず殴り込み掛けて捕らえる俺のスタイルは各方面から恨みを買いやすいし、今回もそれで地雷を踏んだのかと思った。しかし、その場合桜ちゃんを狙う理由が薄い。

 

「遠山君は女を守る時が一番強いと聞いてました。姿をわざと見せて遅くノチゥを使ったにも関わらず反応はギリギリ。期待外れ」

「お眼鏡にかなわなかったと。というかその評価誰が出したんだ?いや心当たりいっぱいあるけど」

 

 神懸った虚ろな目で判断しにくいが今若干目が泳いだ?

 後ろめたいと思っているのか?

 なら、そこを攻めるべきか。

 

「義見てせざるは勇なきなり。――俺は格上でも義…正義の為なら戦えるタイプだぜ」

「義はどこにあると?私は正義よ」

「今回の俺達は先走った事を除けば間違ったことはしてねえ。後ろから刺されるほどの間違いでもねえ。――否定できないだろ?」

「――ッ」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。俺は下に就いても義を通す事を優先するからな」

 

 正直、頼みのヒステリアモードも女への攻撃が意識が薄れるから制圧方向で思索するがすべてのパターンで返り討ちに会うイメージしかできない。相手が手加減しているからこそ底が見えないのも原因だが、片腕が動かないのが大きい。めっちゃ邪魔になっている。

 あーもう泣きたくなってくるぜ。

 

「下ね…。私、人と行動するの嫌いなのよね」

「それには半分同意。一人で戦う方が気楽だから――な!」

 

 会話中に銃撃するも空中で弾けるような音がして弾が逸れていく。

 なんだ?超能力(ステルス)か?

 弾切れになったベレッタを収納し、警棒を振り回すがあっさりと掴まれ()()()()()()

 指の力が異常だな。人体を掴まれたら破壊されかねん。解体屋(ばらしや)ジョネスかこいつは。

 

「脆い」

「一応これ。頑丈さがウリなんだけど、今日の件で何枚始末書書かされるんだ俺!」

「その心配はいらないわ。死ぬもの」

「散らせるもんなら散らせてみやがれ」

「そう」

 

 鋭く指が胴体に刺さり、刺されただけじゃ説明が付かない激痛が走る。反射的に拳を入れようとするがひらりと躱される。全身が動きにくくなるこれは経絡とかそこら辺を破壊する技だろう。足つぼマッサージみたいなあれだ。

 動きが鈍ったらそのまま弄られるぞ俺。

 

 計3箇所順番に指で抉られた。

 

 やばい死ぬ。

 痛みで身体が朦朧としてきた。

 

「まだ立てるなんてしぶといわね」

「打たれ強いもんで」

 

 教務科(マスターズ)体罰フルコースを何度も受けてなければ倒れていただろうな…。感謝はしねーけど。

 こうなったらイチかバチかで死中に活を見出すべきなんだろうが、頭回んねえし生き延びられる気がしねえ。それでもどうにかしようと頭の中の記憶や知識をひっくり返す様に思い出す。助けてくれ天国の父さん。俺に力をわけてくれ!

 朧げに浮かぶ父の姿はやさし気に微笑み言う。

 

『キンジ。殺しに来た女を愛してあげなさい。そうすればHSSは最強になれる』

 

 期待した俺がバカだった――あれ?これ走馬灯じゃね?

 死んでたまるか!

 武器もなく残っているのは拳だけだ。相手はこっちの全部を見切ったと思って興味を失いつつある。ここからの逆転はあり得ないと――なら、想定外の一撃で撃ち抜くまでだ。

 ヒステリアモードの反射神経は爪先で時速100km、膝で200㎞、腰と背で300km、肩と肘で500km、手首で更に100km、それを同時に動かせば音速に等しい最強の一撃が放てる。――理屈上は。

 ならやれるはずだ。主人公は土壇場で限界を越えると相場は決まってる。

 

「『桜花』!」

 

 ――パァッン

 

 空気をぶっ叩いた音が周囲に響き渡り、血が飛び散る。

 ひとみの顔の横を拳が通り抜けており、自分の腕は血塗れだ。

 どうやらヒステリアモードの俺はコンクリートぐらいなら砕けそうな一撃で女の顔を吹っ飛ばすのを嫌がったらしい。

 音速に近い速度ゆえに腕が負担に耐え切れず、桜が散るように出血を起こしてダメージを受けてしまったのだろう。――詰んだなこりゃ。

 

「今のは――」

「キレイな顔に傷つけたくなかったもんで」

 

 あ、やべぇ。もう立てねえ。

 何とか座り込む形になったが、もうこれどうやっても戦えないな。

 どうにかしようと口だけも回さなければ

 

「今回は俺の負けだな」

 

 何言ってんだ俺。負け認めたら見限って殺されるぞ。

 

「――諦めたのかしら。なら星に「次、喧嘩で俺が勝ったらキスしてやんよ!」

 

 こうなったらヤケクソだ。迫りくる死の気配に指差して笑い飛ばす。

 

「――キス?」

 

 コテンと理解不能な事をかみ砕いてるのか小首を傾げている。

 何その仕草カワイイ。

 

「なんだしたことないのかキス?マウストゥマウス。接吻。口吸いだ」

「キスを知らないって意味じゃないわ。なぜそれを言い出したのかしら」

「テストかなんか知らんけど俺に役得あってもいいだろ?今後の人間関係もあるし」

 

 たぶんこれテストじゃなくて八つ当たりだろうけど。

 八つ当たりで死ぬのは嫌だ。なんかちゃんとした理由で死にたい。正義の戦いとかそういうカッコイイ感じで。

 

「したいの?キス」

「美人となら大歓迎だ。なんならキスするか?敗者の義務だキスされてやろう」

「キスする気はないわね」

「…そうか。残念だ」

 

 完全に戦闘態勢を解いてふざけてる姿を見て毒気が抜けたのか、殺気もいつの間にか収まってるし神じみた雰囲気も無くなってなんだか子供っぽい雰囲気が出て来た。これが素なのかな?

 

「でもいい考えね。班での活動なんて下らないと思っていたけど。――部下ね。いいかもしれないわ」

 

 なんかやべー地雷踏んだ気がする。

 

「赤点だけど。最期の一撃もあるし今後に期待って所ね」

「そーですか」

 

 トントンといくつかのツボ?か何かを押されたと思ったらさっきまで巡ってた全身の痛みが消えていた。

 マジか。痛みを与えるのも消すのも自在とか拷問向けじゃねえか。

 

「強くなったらまたテストしてあげる。――また会いましょう」

 

 そう言って消え去った。

 あの女また来る気かよ。完全に厄介な相手に眼を付けられてんじゃねえか俺。

 

「やってらんねー」

 

 もう面倒臭いからそのまま倒れて寝る。

 

「遠山先輩!血が!この出血量は死にます!目を開けて下さい!」

 

 なんかギャーギャー騒いでるが寝るだけだバカ野郎。

 

 

 

 

 

 ――後日、病院で目覚めた俺は失血死しかけてた事を知った。

 あと事情聴取で根掘り葉掘り聞かれ、やらかした分は功績と相殺という形でお咎めなしとなったそうだ。

 なんで生きてるんだろ俺?




マキリさんは他の補助任務中にキンジを見つけてストレス発散してただけで本気ではないです。本気なら最初の一撃で頭吹っ飛ばされてます。
気に入られなければ消されてましたけど


以下疑問(読み飛ばして下さい)
公安0課のメンバーと秘匿されるものだと思うけどキンちゃんはどこでマキリが犯人だと知ったのだろうか?父の件含めて名前も含めて隠蔽される気がする。
ここら辺の肉付け考えないとなあ

原作何巻まで読んだ?

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