遠山キンジの独白 作:緋色
3分おきに10キロずつ加速しないと爆弾が爆発する
これは本来の到着時間より早めに爆発するだろう。その前に停めないとな。
運転手の確保と他に爆弾が仕掛けられてないかのチェックに人手がいるな。一般人は邪魔だし。
そう考えていた所で武藤に手招きされたのでそっちに向かう。
「今不知火と計算したんだがなアナウンスがマジなら19時22分までだ」
「…19時22分?」
「どこの駅にも止まらずこのペースで加速していったら……そこで東京に着くんだよ」
武藤と不知火の言葉に腕時計を見れば、現在の時刻は18時2分だ。
「タイムリミットまであと80分ってことか」
「もっと早いかもしれないぜ。 さっきのアナウンスは加速し続けろ、っつってたな。この新幹線はN700系、東海道区間の営業最高速度は時速270㎞だ。40分後にはそいつを超える」
「……超えたらどうなるんだ」
「安全運転はできねえぞ。 車体やレールにムリがかかるし、カーブで脱線の危険もある」
「……何キロまで出せるんだ」
「設計限界速度は350から360って言われてるけどな。本当の限界はJRも公表してねえんだ」
と言う武藤の横で、 不知火が携帯の電卓機能を使って速度と時間をすぐ計算する。
「―――スピード不足だよ。 19時過ぎには時速350㎞、最後は410㎞必要になる」
「ウワサじゃ……試験車両で397㎞まで出したって聞いた事があるけどな。 それ以上どこまで出せるのかは誰にも分からねえ。410なんて、未知の領域だぜ」
40分後からは危険走行、1時間後からは設計限界突破最後は、未知の領域か。
東京まで帰れないで、ドカンって可能性も大きいな。コイツは。
「音速で仕留めるしかねえか……爆弾は運転席の後ろの洗面所だ。密封されてるから空気と反応する爆弾だろうな……。武藤は最悪運転してもらうからとりあえず待機として。不知火。伝手で何とかしろ。俺はどうにかできる奴に心当たりはねえ」
「無茶言うね?まあ心当たり当たってみるよ」
不知火が心当たりとやらに電話している間に理子の方に目を向けるが動く様子はない。
ツァオツァオとやらが乗車客を把握しているなら真っ先に理子を動けないようにするだろうから当たり前だろうが。
乗り合わせていた3人の
「やー遠山侍君は頼りになりますねえ!吾輩は役に立てそうにないから共に後方へ移動させて貰いますよ」
「いたのか土御門――不知火といた女お前か。狩衣じゃないから気が付かんかった」
「吾輩はあっちの方が気楽なので普段から着てるのですがねぇ?亮が嫌がるので仕方ないですよ」
なんか気になる事を言いつつ、それじゃお任せしますぞーと言いながら後方へと消えていった。
そういや不知火が女と組んだとかで軽く騒ぎになってたがどういう関係なんだろうか?今はそれどころじゃねえか。
「キンジ。理子は動けない。席が感圧スイッチになってるそうよ」
「人間スイッチか……。動かねえからなんかあるんだろうとは思ったが」
他に解除できるとなると爆弾と新幹線に詳しい人間か。犯人殴って解除させるかか。
「キンジ、アリア。聞け」
どうするかと考えていた所で緊迫した理子の声に、俺とアリアが振り向く。
「『
ガンガンッ、ガキンッ!
何回かの金属音に続いて、車両の先頭運転室が扉を叩き割って出てきたのは――
「
「
時は金なりと言い切ったココは清の民族衣装の背からぶうんっ 小柄な体に似合わない、蛇のような大刀を振り上げ俺にウィンクなんかをしてきやがる。舐められてるなあ……。
持ってるのは柳葉刀
青龍刀と呼ばれる薙刀のような形をしている青龍偃月刀の柄が短い中国刀だ、刀身の重さで肉と骨を断ち切る発想としては戦斧に近い武器だ。
「この列車、お前たちの棺桶なるネ! きひっ!」
ココの肩越しに見える女性運転士が半ベソで振り返っており助手席には誰もいなかった。ココは運転助手を追い出して、そこに乗り込んでいたわけか。
うええんという泣き声に振り向くと、16号車中央付近で、まだ避難できていない妊婦さんに子供たちが泣きつ
いていた。どうやら体調を崩して動けないらしい。16号車に残ってる一般客は彼女らだけだ。爆弾の件もあり後部で作戦会議してたのが裏目に出たな。
……。
よし。はよ終わらせるために殴るか。
「10分だけ遊んでや――ゴハァ!?」
一息に近づき
警戒はしていたが舐めていたのか反応が悪かったココは横隔膜の一時的な麻痺を引き起こし、呼吸困難になって蹲る。
「ウ、
「いやそもそも俺を不利な状況に追い込んで足手纏い付きにして全力出させないから振り回されてただけで――普通に俺の方が強いし」
組手しても勘で対処しまくって制圧できないアリアと違って徹底的な分析派はなぜか知らんが俺の事を侮る傾向にある。理子とかジャンヌとか。――シャーロックもか。
音速の衝撃波関係の技をいくつも継いでる以上住んでる速度域が違うので見誤りやすいらしい。
「油断するな。キンジ!やられたフリだ!」
「チィ!」
手錠をかけようとしたところで理子が叫び、ココは舌打ちしてシャボン玉を周りに吹き付ける。これは!?
慌てて距離を取りつつ風呂敷を取り出して風を送ることでシャボン玉を割り連鎖爆破させる。激しい衝撃によりシートが吹き飛ぶほどだったが、これ以上下がると残っている母子を巻き込みかねないため、防弾風呂敷であえて受けて衝撃を最小限にする。
「――っ!!」
衝撃を後ろに行かせないために無理に受けた反動で崩れ落ちかけるが気合で耐える。
だがこれはダメージですぐには動けねえぞ!?
「――白雪!キンジと親子を
「俺にはいらねえよ!」
状況を察したのか叫んで飛び出したのは抜刀したアリアだった。
双剣を下段にクロスさせたコンパクトな構えで狭い通路を駆け、人並み外れた運動神経で座席を飛び石のように渡っていく。
ココは片手で青竜刀を一回しして
「来来、シャーロック4世ッ!」
大きなハサミのように構えたアリアの日本刀と、ココの青竜刀が激突するのを他所に白雪が妊婦を支え、俺が子供たちを守りながら15号車へと避難する。
「キンちゃん!血が!」
「掠り傷だ。ったくようイケメンが台無しだ」
少々顔を焼かれたが怪我としては血が出てる程度でそこまで大きくはない。
問題は爆破の衝撃からの回復に時間がかかりそうなところか。まだしびれてやがる。
「謀ったわね、卑怯者! 初対面の時に『ココ』って名乗っておいて偽名とはね! ツァオ・ツァオ!」
「それは欧州人の間違った呼び名ネ。イ・ウーではシャーロック様がそう呼んだヨ、だからココは皆にそう呼ばせてたネ。
なんか二人が叫びながら喧嘩しているがアリアもココも銃を使わない。新幹線とは、鋼鉄の箱のようなものでさっきの爆発の被害は座席くらいで済んだようだが壁や天井に当たって跳ね返る弾丸で自分が傷つかないようにするためだ。そして飛び道具での援護は難しくピンクと黒のツインテールが、四つ巴の図のようにグルグル目まぐるしく入れ替わる。
「白雪――この女性を任せる。乗客の中に医者がいないか探してくるんだ。 俺はアリアと2人でアイツを逮捕する」
妊婦を支えて15号車に入った白雪にそう告げる。
「はっ、はい!でもキンちゃん私が戦った方が――」
ダメージで万全に動けない事を察しているのか白雪に気を使われているのをすっと人差し指で黙らせる。
「このくらいハンデだ。あれは近接戦のエキスパートで白雪は今不安定なんだろう?そっちの方が心配さ。それに俺だと怖がらせちゃうしね」
ちらっと子供たちを見ると不安そうに見ている。
「頼んだよ」
白雪の事をじっくりと見ながら高めたヒステリアモードの笑顔で送り出す。
さぁ。反撃開始だ。
昔は原作で
間違え方がとんでもなくて笑う