遠山キンジの独白 作:緋色
さく
しがらみ
起きたら留置場だった。
……はて?なんでこうなってる?
多分寝ぼけて捕まえたっぽいツインテールがぐったりしてるが……
あの後の事を順番に思い出そう。
救護新幹線が連れてきたのは平賀文だった。
彼女は手際よく窒素で膨らますシリコンの風船を爆弾と化した洗面所の隅々まで広げて気体爆弾を真空ボンベに押し出し、時速410kmの加速せざるをえない状況まで追い詰められたもの新幹線は無理な急ブレーキで減速のGに耐えるために妹ら+ロリ達を抱きしめて怪我させないようにしたためにフルボッコになった俺を除き――無事、東京駅に到着した。
いや洗面所と16号車両は多少燃えたから無事ではないか。
まあ犯人捕まえたから問題ないだろう。車両切り離しも無罪だろうたぶん。
「か、身体中が痛い……」
東京駅の新幹線ホームに降りると、当たり前だが人払いがされており無人だった。
爆発した際の盾にするつもりだったのか、駅には無人の山手線、京浜東北線、中央本線、東海道本線の列車が密集して停められて、停止標識の周囲には爆発に備えて土嚢が積み上げられてる。
……JRの損失はとんでもない額になりかけてたんだな……。報酬は期待できそうか。
「あはっ!作業料として、これは貰っていくのだー♪あややがイタダキなのだ!」
後ろから平賀さんが
「俺は構わねえけど公安か防衛省に没収されると思うぞそれ」
「ノープロブレム!あややが説得して手に入れますのだ」
そういや平賀さんは公安に顔が利くのか違法改造のキンジモデル改造を公安に認めさせてたな。ならいいか。
「火遊びは程々にな」
俺は苦笑いしながら、ぽん、と商魂たくましい平賀さんの頭に手を置いてやった。……ヒステリアモード切れてきたから眠くなってきたな。サイズ的にちょうどいいし――
「遠山くんが怪しい顔してるのだー……。あややじゃなくて他の人にするのだ」
胡乱な気配を感じたのか平賀さんに逃げられる。
しょうがないしアリアでも抱き枕にするか……?レキは怪我人だし。そんなことを考えていると、次にドラグノフを肩に掛け直しつつ裸足のレキがホームに降り立ち
「東京ぅ~、東京ぅ~、お降りのお客様はお忘れ物のないようお気を付け下さいッ、と」
最後に、調子外れなアナウンスをする武藤とアリアがココ2人をズルズル引きずって出てきた。
重ねられてホームに転がされたココ姉妹は……近づいたら噛みつきそうな表情で俺達を見回しているな。
武藤がインカムを外しながらコキコキと肩を鳴らす。
「武藤……お疲れ。ありがとよ」
「礼には及ばねえよ。 武偵憲章1条。 仲間をナントカって言うだろ。って……オイオイ。 出られんのかこの駅。土嚢まで積みやがって。俺、駅弁っつーか龍陽軒のジェット焼売を買おうと思ってたのによ」
「
「キンジ、後は任せたぜ。 そいつらは尋問科にでも引き渡してこってり搾ってもらえ」
「いや俺もねみーから寝たいんだけど……」
「お前が見張ってねーと逃げるだろ」
一刻も早く爆泡の分析をしたいらしい平賀さんと、駅弁マニアでもある武藤は新幹線のホームから小走りに出ていった。
避難指示出てるなら売店も閉まってるだろうに押し付けられたな。
見ればアリアといつの間にか降りていた理子がココをひん剥いてナイフや鉤爪、煙幕缶など、次々と武器や道具を取り出しているが……何であいつら下着姿なんだ?しかも真っ赤なランジェリーだし――色気づいてんなぁ……。
ココはアリア達に任せて見回すと――レキは力尽きたのかホームに正座するように座り込んでいた。
大怪我してるのにここまで無理に来たから限界なのだろう。
救急車でも呼んでやるか――いやこの騒ぎだし外に待機してるかな?
近寄るとドラグノフをきつく抱きしめ涙を流していた。
「……レキ」
想定外すぎる光景に思わず傍らに跪く。
「もう……聞こえないのです」
「何がだ。鼓膜の損傷か?俺の声は聞こえるか?」
その声が聞こえたのか俺の方を見てまるで子供の様に嘆く。
「風の声が――もう、聞こえない。風はもう、何も言いません」
声が聞こえてるようだが意味が分からない。……いやレキは璃々色金の巫女だかどーだか言ってたな。璃々色金=『風』なのだろう。たぶん。
『風』に命じられるまま、それこそロボットのように生きてきた。
その指令が無くなったと言う。
「俺は聞いたこともないから何とも言えんが。聞こえない時期ぐらいあるんだろう」
「ずっと風の声が聞こえていました。なのになぜ――。アリアとキンジさんを引き離せという勅を破ったから――?」
「今も見てんの?じゃあ俺の恰好良さに惚れて照れてんだろ」
「――風が私を見捨てたのならばキンジさんは私をどうしますか?」
「病院に連れてくけど?」
「――なぜ」
「家族だろ」
その言葉にレキが目を見開く。
何に驚いてんだこいつ?
「お前が俺の事ウルスだの家族だの言ったんだろ。いや俺が妹認定したのが先だっけ?まあどうでもいいけど。そーいうのも含めてとりあえず怪我治しながらゆっくり考えな。相談には乗ってやるから」
な?っと気軽に頭に手を載せて目を合わせるとレキは――きゅぅ……っと赤みが増して顔を伏せた。
黙ってドラグノフの握把と銃床を左右の手で支えしばらくそのまま固まっている。
熱でもあんのか?とりあえずレスキューでも呼んだ方がいいか?
そう思って立ち上がった所で――レキはホームに吹き込んできた一陣の風にすっと顔を上げた。
「anu urus wenuia...
これは歌か?
「Celare claia ol...,tu plute ire,urus claia
その詞は、どこの国の言葉か分からない。部分的には日本語のようにも聞こえる。
そして、レキの声。綺麗だ。声量は慎ましやかだが、本物の歌手のように正しい音階で歌い、美声に言葉を失ってしまう。
「Raios Zalo Ado,Ясни,яснинанe――
立ち上がったレキが歌う巣から旅立つ鳥を思わせる、美しく瑞々しい歌
その旋律が続くと共に、ホームに流れ込む風が強まっていく。
これは別れの歌か?
レキの歌が進むにつれ『風』が祝福するように見送り人が旅立つ人に送る花束を吹き流し、宙に解けバラバラになった花はさらに風に揉まれて、無数の花びらを空中に散らした。
その色とりどりの花霞の中レキはホームを歩いていった。
誰もいない、 端の方へと。
「anu urus wenuia...
強まった風に俺が目を閉じた時、最後に見えたものは初めの歌詞に戻って歌が終わる刹那、振り返ったレキの生まれ変わったような、清々しい、端正なあの顔は――わずかに微笑んでいるようだった。
風が止み再び目を開くと、もうそこにレキの姿は無かった。
――振られたかな?
ため息一つ吐いて慌ててるアリアが役に立ちそうにないのでココを見張っていると、武藤たちに連れられて出てきた自衛隊の爆発物処理班と……その後から警視庁のお偉方、武偵高の蘭豹、綴といった先生たち、そして事後処理班――武偵高の生徒が何人かやってきた。
それで気が抜けて――
で、留置場か。
柵の外を見ると呆れた顔の警官に見られていた。
「起きたか遠山。それ解放しな」
「……眠かったんで手近な物に抱き着いてただけなので他意はないんです」
真っ赤になってるココはぐったりしている。多分これ炮娘だな。
適当に抱き着いてそのまま寝たから纏めて留置場に放り込まれたといった所か。
「寝ながら暴れるココを押さえ続けるのは驚嘆に値するが――それは取調室で聞こう」
「有罪前提の奴じゃんそれ――しくったなぁ」
とりあえずベッドにココを寝かせてから牢から出て警官の後をついて行く。
――当たり前だけど装備は全部取り上げられてんな。ココ逮捕の件でセクハラ無罪勝ち取れるだろうけどド真面目な警視庁のお偉方に見られてるから厳しいかもな。桜ちゃんの件もあるから一部から相当嫌われてるし
「入れ」
「へいへい。カツ丼くらいは出ますかね?」
「そういうのは自腹だ」
「わかってますよ~」
「では――あとは任せます」
中にいる人に敬礼して扉を閉じて去って行く警官を後ろに金縛りにあったように動けなくなる。
「遅かったわね」
「なんでこのタイミングで姐御が!?」
「桜から連絡入ってね。調べてたら
……そういえばそんな理由で京都警察動かすよう頼んだなあ!?
「せっかく久々に米軍の粛清に関わってたのに外されて気分が悪いの――」
「拷問!?いや今回大惨事防いだんで許してください!」
「それを差し引いて――犯人抱きしめて寝てたから四分の三殺しね。それ終わったら狩りに行くわ。いないよりマシでしょ」
「それで制裁喰らうの納得いかないんですけど!?仕事ちゃんとやるんで勘弁してください!」
結果半殺しで中華系の貿易会社を探る羽目になるわ。武偵高では逮捕されたと誤解されてるわで散々な目に遭うのだが。それは別の話。
歌頑張ったけど漢字とウルス以外よくわかんない
原作時間があるんで挿話ねじ込む?
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はよ次の巻行け
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珍道中やれ