遠山キンジの独白 作:緋色
上に繋がってるチンピラというのは後ろに組織がいるという優越感からか見抜きやすい部類だ。
手の早いチンピラを返り討ちにすればそれだけでどんどん上へ上へと繋がるから楽なものである(※戦闘力と不意打ち防げる自信がある場合の話)。
損益分岐点を見損なえばチンピラが尻尾切りされて終わりだが、トントン拍子で幹部まで釣れたな。
中華料理屋なんてらしい場所である。
「だから、俺は人捜ししているだけでこいつらと関係ないならお前らに絡む理由はねえ。逆に関係あるから絡んできたんじゃねえのかよ」
「ウチのメンバーじゃないネ」
監視にワザと掛かって探ったわけだが関係ないマフィア組織の監視網だったようだ。
完全な無駄骨だったか……?
「――女子の方は先日、この街で見かけましたが先日の新幹線テロで逮捕されましたヨ」
「知ってる。関係者の身柄は日本警察も身柄探してるようでね。先に押さえて顔でも焼こうかと」
「その火傷カネ?」
「まぁね」
嘘である。理子に習った化粧術(あれ?変装だっけ?)でケロイドを偽装している。面子第一のマフィアにはこういう方が交渉しやすいわけだ。
「ハメられたからそれなりに恨みもある。おかげで損しかしてねえし」
結局、あの後姐御に攫われたからJRから金をとることも出来ず赤字である。他の連中は政府の口止め料とかで大金払われたらしいのだが――現状、捜査の理由は八つ当たりである。
本気で怒ってるのは伝わってるのか交渉自体はスムーズに進むな。
「んで、ここの人間じゃないならどこの誰だ?てっきりここは
「なんで関係あると思ったのかネ。うちは比較的クリーンよ」
「密輸に一枚かんでるからに決まってるだろ?報道ヘリに偽装したり気体爆弾『パオバオ』――だっけか?にはそれなりの組織が関わってないと難しいからなあ。デモンストレーションするんだったら事前に声掛けしてるだろ?」
気体爆弾のあたりでピクッと反応したな。俺の顔の火傷偽装も複数の破裂を受けたような斑だからこそ大体の事情は誤解してるのだろう。
「それなりの心当たりあるようだな」
「……『華紅艘』の連中だろうネ」
「華紅艘……?」
警察臭のする桜ちゃんを避ける裏社会の住民に絞って絡んでいったわけだが、まあまあの収穫だったな。
お互いに情報収集がそれなりに進んだので情報共有のために料理屋の個室で密談することになった。
「ここ二日の捜査で『華紅艘』とかいう中華系との交易を専門にする貿易会社にココの出入りを確認しました。出入りだけなんでガサ入れは難しいでしょうけど。手続きも何もかもが時間かかりすぎるし。あと運転手は情報0でーす。裏社会とはいえ情報出なさすぎだし。どっかに籠ってんじゃないかと」
表向きの情報として会社概要とかプリントアウトしたものを配るが姐御は一瞥して脇に置く。
一応苦労したのにその扱いかい。
「なんかヤクザがドンパチしてると聞きましたけど。先輩が原因ですか?というかそのダサい変装なんです?」
「化粧だよ。チンピラっぽいだろ?」
「ダサいという意味ではそうですね。やめてください」
「へーい」
不評なようなので金髪鬘と化粧――特殊メイクをはぐ。
ふむ。素肌だとスースーするな?大き目の絆創膏はがしたみたいな違和感がする。
「次は私ですね。ココさんの情報はありませんでしたが。運転手は聞き込みの目撃情報の結果、神戸市○○区●●通の建物に入っていくのを目撃したとの情報が入りました」
「――それこの建物だな。『華紅艘』の持ちビル」
「ここに隠れてる可能性は高そうですね」
思っていたより早く割れたものである。日頃の行いが良かったからか或いは罠か。
「最後は私ね。ココが吐いた情報や各地の捜査で『華紅艘』が関係してるのがわかったわ。運び屋としてステルスが関わってるから。最悪この女だけでも仕留めなさい」
そう言って取り出した写真はどっかの監視カメラの切り抜きっぽいが。
「ステルス――超能力者ですか?武偵校にもいますけど。手品の一種じゃないんですか?」
「あー。リアルで見ないとそういう結論になるのもわからんでもないが――実際に炎出したり氷出したりビーム出したり犬に変身するバケモノも――
「いやいやいやいや。そそそそそんなのいるわけないじゃないですか。お化けじゃあるまいし」
「……」
「なんで黙るんです!?」
「まあビビってる桜ちゃんは置いといて。ステルス相手ならステルス担当いないと厳しくないっすか?」
特にルールではないが。今年は立て続けにステルスと喧嘩した経験上ステルス相手にはステルスがいないと厳しい時もある。
物理的な攻撃の追加効果(例:刀を燃やす・剣に触れたものを凍らせる)ならいくらでも対応可能だが呪いだのなんだのはどうしようもない。というか不運になるとかなんだそれ。
「今、別件で手を借りれないわね。それに璃々粒子は明日まで濃く降ります。……すぐにビルに行きます」
「令状は!?」
「そんなものを待っていたら仕事はできません。強襲許可を取り次第すぐに動きます」
「ああ許可は取るんですね。ならいいです」
「急っすね。じゃあステルス戦に備えて
「なぜかしら?」
「姐御に攫われた後にJRに吹っ掛けることも出来なかったもんで――」
「――しょうがないわね」
雑にカバンから取り出したのは札束だった。金持ってんなー。
雑に投げられたそれをキャッチしてとっとと外に出る。
「行くよ桜ちゃん。上に顔覚えられたくねえし」
「あ、はい。先輩はあまりマキリさんを見習わない方が……」
「そういうんじゃないけど」
政権交代の余波でごたついてるとは聞いてるが、今の政権は親中というか八方美人タイプだというのは想像がつくし。政府のパワーバランスの変化は知らんが0課を敵視していた野党が政権取った以上、今政府の上に顔覚えられるのはあんまりよくないだろう。
時は夕刻。
逢魔時ともいえる時間は魔に合いやすい時間だと言われる。
そんな時間にカチコム事になるのは因果か否か。
「で、どうするんです?正面から殴りこみ?会社情報信じるならビルに10人もいませんが」
「侵入して殲滅」
「情報吐かせたいんで捕まえましょうよ」
「冗談よ。逃がさなければいいわ。逃がすくらいなら殺しなさい」
「姐御。冗談になってないっす」
目的のビルは後ろ暗い事でもしてるのか窓は全部ブラインドされている。どこからか出前を頼んだのか出前のあんちゃんがビルに入って行ったが……見た所多くてもに三人分くらいの量だな。
出てきた出前のあんちゃんに桜ちゃんが職質を装い写真見せて中にターゲットがいるのを確認する。
「運転手とその女性は中にいるみたいです。他には大柄のゴリラみたいな人もいるとか。他の人は見当たらなかったそうです」
「建物の見取り図的に裏口はなし。屋上の出入り口はあるから上下から攻めますかね」
「じゃあ二人は正面から行きなさい。私は上から」
「へいへい」
姐御が身軽に屋上へ行くのを確認してから普通に正面から入る。
シャッターのスイッチがあったのでシャッターを下ろして玄関を封鎖する。
「
確認の為か聞き覚えのある声がする。――あん時の運転手か。
玄関を見回しても監視カメラの一つも見当たらない。雑というかなんというか。被害に遭う事をこれっぽっちも考えてないな。
とりあえず見えにくい場所に
「まず一人。尋問してる暇はないだろうし、逃げられても困るし適当に拘束して上行くぞ」
「生きてますよね?」
「酸欠で気絶してるだけだ」
ざっくり隠し武器がないか確認したが『華紅艘』の文字を半分に切り落としたような変な札以外持ってないようなので後ろ手に手錠で拘束し両足も封じておく。
上から野太い叫び声が聞こえる。姐御も戦闘開始したのだろうか。
「派手にやってるな。通報される前にもう一人も逮捕すっぞ」
階段を上り2階へと「痛っ」――振り返ると桜ちゃんが階段で頭を押さえていた。
「何してんだ。置いてくぞ」
「なんでもありませ――ん!?」
まるで見えない壁でもあるかのように頭をぶつけた様子の桜ちゃん。
パントマイム得意な子じゃないし。ココでふざける理由はないからマジでなんか壁がある?
俺は素通りできたのに?一旦降りてみるが特に何も壁みたいなものは感じない。
とりあえず桜ちゃんを高い高いの要領で先ほど当たってた付近に何かあるのか桜ちゃんだけ通れない壁でもあるのか確認してみるが……何も当たらない。
「ふざけてる?」
「先輩じゃないのでふざけてません!」
少々顔を赤くしつつも先に上がっていった桜ちゃんを追いかけて登る。
階段を上った先はガラクタや貴重品なんかが雑多に所狭しと詰め込まれた部屋だった。
美術品の鑑定はあまり得意ではないがそれなりの値段にはなりそうである。
「先輩。この部屋変です」
「なんだ?人間ぶっ殺しゾーンでも見つけた?」
「なんですかそれ?じゃなくてこの部屋建物より明らかに広いです」
「あん?」
言われて見回してみると確かに見取り図に対して部屋の広さは3倍近くあるように見える。
おかしいな。鏡的なものも見当たらないが。
「先輩。なんかヘリみたいなのが見えるんですけど」
「ヘリみたいというかヘリだなアレ。奥の方には小型船舶も見えるが…どうやって入れたんだ?」
近くにはドッグフードにこっちはラジコンの機材か?
離れた所には中国からの密輸品と思われるコピー品が大量に置いてある。アサルトライフルM16の
が、少なくともヘリなんかが出入りできるはない。となると何かのトリックがあるのか?さっきの出入り口もなんか変だったし何らかのトリック…というかここまともな空間じゃなくて四次元ポケットみたいな空間なのか?
「勘合符がなければこのマヨイガには入れんはずだぞ人間」
知らない女の声にバッと銃を構えて振り返ると
鳥のような灰色の翼を生やした女だった。
「おおおおおお化け!?」
「ただの妖怪だろ。今風に言うなら獣人だっけか?
ビビって背中に隠れる桜ちゃんは何しに来たんだ?
まあいいや。とっ捕まえて終わらせよう。
「質問に答えろ人間」
「勘合符は知らんがあの男が持ってた
そう言ってとりあえずさっきの運転手が持っていた札を見せる。
「あの役立たず……。金払いがいいから璃々粒子が収まるまで匿っておったが余計な事を」
ふむ。味方ではないのか?
「で、なんだお前?天狗かなんかか?」
「否、我は
「そりゃ失礼。俺は遠山キンジだ。いざ尋常に「まあ待て。卑怯者」――誰が卑怯者だ!」
「ふむ。我は丸腰だがお主は銃を持っているだろう?お互いに素手ならば公平な戦いになろう」
「まあ俺も丸腰相手に飛び道具はどうかと思うが」
「ならば我とお主で素手で正々堂々戦おうぞ。我が勝てば財産持って堂々と去らせて貰うがお主が勝てば我を好きにするがよい」
「お前が逃げねえならそれでいいが」
何の自信があるのか堂々と一騎討を仕掛けてくるが――見た所身のこなし的に実力は桜ちゃん未満だな。
(先輩あの女の人は噓をついてる臭いがします。騙して人を殺そうという臭いです)
(でしょうね。俺が倒れたら撃て。
(先輩が倒されるような相手勝てるわけないじゃないですか!?)
(お前俺を倒すの目的じゃないの?それにあの女の実力は高く見積もってもCランクぐらいだし。ちなみに俺はDランクのままだけど)
(……う、それは)
(強さと勝敗は関係ないって事だ)
「じゃ、桜ちゃんは離れててな。じゃあ来いよ。俺らが相手してやる」
「では――死ぬがいい人間!」
「うおっ!?」
視界の端に辛うじて捕えた何かに対し咄嗟に腕を盾にして防ぐ。
腕に鋭い痛みを感じつつ距離を取って確認すると
「なんだこれ。羽!?」
――羽が刺さっていた。
「飛び道具は卑怯なんじゃなかったんですか!?」
「銃は卑怯と言っただけじゃ。それにこの翼は我の一部だから約束は守っておるぞ?悔しければ人間も翼くらい生やせばいい――な!」
再び飛んでくる羽――狙いは急所か!
パシィ!
「なに!?」
「小石飛ばすようなもんだろ。それしかできないなら特に恐れることはない」
ひらひらと指で掴み取ったそれを見せびらかしてアピールするがなんてことはない。
飛んでくるのがわかっていれば
速いと言っても大体160km/hといった所か。奇襲じゃなければ怖くはない。
「んじゃ逮h――バタン――あれ?」
急に力が抜けて床に倒れ伏す。
おかしい。身体に力が入らない。
「ふう。平然と動くからどうなるかと思ったが効きが遅かっただけか。驚かせよって」
効きが遅い――?動けない事から考えると――
「――毒か」
「口も動けなくなるんだが――うお!?モゾモゾ動くな。立てんようだがビビるだろ」
「んー。動けん。詰んだなこれ。遠山キンジここに死す。俺の灰は東京湾に撒いといてくれ」
まあ死体が残るかは怪しいが。
「む?そういえばキンジと言ってたな?ココが欲しがってたな。なら我が貰えば大幅昇級できるかもな?持って行こうか」
「そいつは無理だ」
「なんだ。負け犬の遠吠えか?」
「貸し作るの嫌なんだけど。しょうがない
「貸しより借りの方が多いんですけど!?」
「何を――ぎゃふん!?」
回り込んでいた桜ちゃんがコンセ?とやらに襲い掛かりギャグみたいな声を上げながらあっさりと捕まった。
相手雑魚とはいえあっさり解決したなおい。
あの後、遅効性の死ぬ毒も入ってたとこも判明したり、マキリさんが怪我してるのを初めて見たりとなんか色々騒がしく――後始末が大変だったが…ようやく帰ってゆっくりできる。
自宅に帰ると食欲を唆る匂いがする。
退院して帰れる日を連絡しといてよかった。
「…ただいま」
「キンちゃんお帰りなさい」
非日常の後の日常が一番癒されるものである。
西遊記のあいつです
より卑怯にしました
原作時間があるんで挿話ねじ込む?
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はよ次の巻行け
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珍道中やれ