遠山キンジの独白 作:緋色
Bandire
バスカ―ビル結成から幾日経過した。
護衛とかで俺の部屋に住んでたレキは元の自分の部屋と俺の部屋の2拠点生活する事になったらしい。
レキは会話中だろうと9時前にシャワーを浴びて9時に寝るし、生活リズムが微妙に合わなかったがココ逮捕で護衛も必須ではないという判断で元の部屋を拠点に時々こちらに住むという形だ。
これには部屋に二人きりだとハムスター理論するという謎の白雪理論で押し切られたわけなのだが、レキが9時きっかりに寝るし下心0だから一緒に住んでも問題なしという認定が覆るような何か危機感でも持つ出来事でもあったのだろうか?女心は全くわからない。
ジャンヌから決闘状が届いた。
フランス語のレタリングの筆記体でなんか書かれていたがフランス語は得意ではないので読めん。
幸い裏に和訳が書かれていた。
『遠山キンジ殿
10月1日 夜0時
空き地島南端 曲がり風車の下にて待つ
武装の上 一人で来るように
ジャンヌ・ダルクより 』
今夜の月が替わる日付変更前に来いって事かな。
武装して来いとの事なのでケリ付けようという話なのだろう。
ちょうど日付変更あたりでジャンヌの監視は一応解かれるからそこで報復といった所か。当日の前後も含めて荒れてたらしい璃々粒子の嵐は完全にやみ快晴となるらしい。
つまり十全に魔術?超能力?を使えるコンディションになるという事だ。
「でも復讐されるほど恨まれる心当たりはないな。逃げるなら兎も角」
まあ今日まで割とただ働きさせてたし思っていたよりだいぶ恨みを買っていたらしい。ジャンヌは
それはそれとして喧嘩吹っ掛けてくるならキッチリ沈めて屈服させる必要がある。
前回は慢心と数的有利があったからどうにかなったものの、あのレベルの策士が陰に隠れて闇討ちの為に動かれたら面倒くさすぎる。素のポンコツ差を加味しても俺が死ぬ確率は6割は下回らないだろう。なんだかんだ言って暗躍者としては一流ではあるのだ。あれでも。
だから裏切りの兆候には目を光らせてたつもりなのだが――いや目を光らせてたこそあまり罠の仕掛けにくい空き地島が舞台なのか?
あいつは〆る
そしてデュランダルには転職して貰おう。
決して名剣デュランダルが欲しいだけではない。名実ともに今持っている
とりあえず
真夜中の人工浮島の上は暗い上に、濃霧に覆われていた。
不明瞭な視界の左右には、東西に整然と並ぶ風車の柱が続いている。
なんだか、不気味な風景だ。今日は霧の予報はなかったはずなのだが……この霧自体は自然のものではない感じがする。肌感覚なので気のせいかもしれんが。
不意打ちを警戒しながら、4月に飛行機がぶつかって曲げてしまった風力発電機の下まで歩いていく。曲がってる風車なんてここぐらいだしな。
流石に機体の残骸は解体除去され、この辺も元の空き地に戻っている。まあ決闘には最適かな?
「遠山、こっちだ」
掛けられた声に振り向くと――少し離れた所に、白銀の鎧を着たジャンヌが立っていた。
「正装か?俺も
彼女の西洋甲冑は、かつて地下倉庫で戦った時よりも重装だった。あのとき着けていた
特にこだわりはないがただの喧嘩じゃなくて決闘だから相手の流儀に合わせるくらいの礼儀はあるつもりだ。
「立ち会いはいないのか?上にいる奴か?」
そう言って見上げると動かない風車のプロペラに、制服姿のレキが腰掛けていた。
「間もなく0時です」
いつもは肩に掛けているドラグノフ狙撃銃を体の前で抱えている。かなり警戒感を高めている雰囲気だ。
警戒を俺に向けてるわけではないがジャンヌに向けてる感じでもないな。いやジャンヌへは多少警戒してるがなにかもっと別のものを警戒している感じだ。
「レキが立会人か?ジャンヌとの喧嘩の」
「……お前は何か勘違いしてないか?」
「何がだ?」
――雰囲気が妙だな。
二人とも喧嘩の前というか喧嘩もあり得る交渉前って感じの雰囲気だぞ?
何か来るのかと周囲を探ると――曲がり風車を大きく円形に囲むように複数の強力なライトが灯った。
急な眩しさに腕で目を覆った俺が再び周囲を見ると。
光に晒された霧に、俺たち以外にも幾つかの影がある。その姿形が、どれもこれも普通じゃない。不気味な連中が、半径50mぐらいの周囲に集っている。
その装いはみんなバラバラで、まるで仮装大会のコスプレ集団みたいだが――そういうお遊びじゃない事は本能的に分かる。
罠か?
タイマンじゃないなら一旦包囲から突破して各個撃破か逃亡か。ジャンヌを瞬殺して盾として利用するか。
「仕掛けるでないぞ、遠山の。今宵はまだじゃ。儂も大戦は86年ぶりで気が立つがの」
「あん?何を――誰だお前」
なぜか俺の事を知っているような口ぶりで話しかけてきたのは梵字が描かれた藍色の和服を着た、アリアより小柄な女の子だった。ん?女の子?なんかかなり年上の雰囲気を感じるが。
切れ長の鋭い眼は日本人っぽいが、長いその髪は濃い金髪、というかキツネ色だ。
目を覆いたくなる事に、こいつの頭には2本のキツネのような耳がピンと立っている。ピクッと動いたのを見るに飾りじゃないらしい。
よくわからないが敵ではない――っぽい?という事はジャンヌが呼んだ助っ人ではない?
一気にこの集まりがわからなくなってきた。
「先日はうちの
殺気が霧散したのを見てか恭しく俺たちの方にお辞儀してきたのは糸みたいに細い目をした男。張り付けたような笑顔に丸メガネをかけ、色鮮やかな中国の民族衣装を着ている。
ココを身内として扱うという事は
そいつから離れた地面ではゾゾゾゾ……と、黒い影が動いている。
おかしい。あの影はおかしい。上に物が無いのに影だけがあって動いている。
影は集まって人形になったかと思うと地面から起き上がってきて
「お前がリュパン4世と共に、お父様を斃した男か。 信じがたいわね」
理子の甘ロリとは違う白と黒を基調とした不吉なゴシック&ロリータ衣装に全身を包んだ金髪ツインテールの少女になった。白い手には夜なのに黒いフリルつきの日傘を持っており、背には蝙蝠のような形の大きな翼が生えている。
その翼が本物である事を示すように、バサッと一つ羽ばたいた。
リュパンと共にやったのなんて
他にも3mはある全身を現代的な装甲に覆われた戦車みたいな巨人や、白い法衣にそのグラマーな身体を包み十字架のような大剣を背負ったシスターと大きなとんがり帽子・肩には大ガラスという絵に描いたようなチビの魔女がそれぞれ垂れ目とツリ目で睨み合っている。シスターはバチカンの十字架持ってるし、魔女の方は眼帯に逆卍――ありゃナチスか?
周囲には他にもトレンチコートを着て長剣を背負った美形の白人男、トラジマ模様のネコ科動物のお頭つき毛皮ワンピースにした原始人みたいな女の子――角が見えるし鬼か?イヤホンから聴く音楽にノッてコキコキ体を揺する姿勢の悪いピエロ――様々な怪人が集結している。
「ほほほ。 トオヤマキンジ、久しぶりぢゃの」
視界の端に、きらきらと砂金が舞い、霧の向こうから、2つの人影が見えてきた。
肌も露わな衣装を着た片方の女はパトラ。
もう片方は濃紺に着色された大鎌を担ぎ、『ハーイ』ってカンジで俺に手を振るカナ姉だった。
……カナ姉がいるって事はそこまで問題ある集まりじゃない?
アイスブルーの瞳で一同を見回したジャンヌが……どうやら司会者らしく、凛とした声で語り出した。
「では始めようか。 各地の機関・結社・組織の大使たちよ。
バラバラに唱和した怪人たちを横目にどう動くべきか何もわからない。――マジでなんで呼ばれたのかすらわからない集まりだが――とりあえずわかることはある。
明 ら か に 変 な 事 に 巻 き 込 ま れ た
どう読んでも決闘状だよなこれ