遠山キンジの独白 作:緋色
「先に言っておく。おれはかーなーり強い」
「タダの人間ごときが
さてアレの娘なら同じ様に雷で強化されるのだろうが天候は雷注意報は出ていないからそれは考えなくて良いだろう。問題は弱点である四つの弱点……魔臓だったか?を同時破壊しなければ倒せない事だ。
なぜか知らないが両方の腿に目玉みたいな文様が見えるあたり彼女もバチカンに呪われて弱点が見えているのだろう。
あと二つはどこだかわからんから服を剥くか。
流石に
今から銃じゃなくてスクラマサクスに持ち替えた方がいいかと考えていると
……ぞぞぞ
っとヒルダが沈んだ。
「はぁ!?」
地面に沈んだ!?いやよく見ると影だけは残っているから影に潜ったのか。なんか黒丸あるし。
格闘・電気タイプじゃねえのかよこいつ!?
これどうすりゃいいんだ?ゴーストダイブ的にはガード無効だった気がするから距離取るしかないか?幸い影に潜ってるだけで謎ワープはしないようなので逃げはできるだろう。
影が重ならなければいい感じか?
とりあえず二、三発、黒丸に銃弾を撃ち込んでみるが――沈むことなく地面が多少抉られた模様。
物理無効か――やっぱゴーストタイプか?詰んだな。逃げるか。
「遠山、逃げろッ! 30秒は縛る!」
ジャンヌが
氷の結晶を纏ったデュランダルに影は地面と縫い付けられたような感じだ。こいつ割と万能ユニットだな。
ただ動きは鈍くなっただけでまだ蠢いている。
「ナイスだジャンヌ。全殺しは撤回してお仕置きだけで済まそう」
「そんなことされる覚えはない!さっさと逃げろ!」
あいつ後でケツ叩きだな。
そう思いつつ、ヒルダと知り合いらしく星伽の味方?らしいキツネ娘にこの場だけでもとりなしでも頼もうかと見ると――人工浮島の南側海の方を向いていた。
彼女だけでなく怪人たちは次々と南を向き始めた。
まるで何かが来たことを感じたように。
――いやまるでじゃなく何かが来たようだ。
小型のモーターボートのドルルルルというエンジン音が俺の耳にも聞こえてくる。
なんだろう。
すごく嫌な予感がする。
ごつん!と、空き地島に衝突するように接触する音に続きしばらくして――ばし!空き地島の南端、そのフチにちっこい手が掴まるのが見えた。
「SSRに網を張らせといて正解だったわ!あたしの目の届くところに出てくるとはね。その勇気だけは認めてあげるッ!そこにいるんでしょ!?パトラ!ヒルダ!」
甲高いアニメ声にんしょ!と空き地島のフチによじ登ってきた、セーラー服のピンクツインテール。
パトラは兎も角ヒルダも標的なら前もって情報共有しとけよあのピンクチビ。
頭が痛くなるが今の声に反応して明らかに影の向かう先が変わった。
――外の状況把握出来てるのか。だとしたらマズイだろう。
「イ・ウーの残党!セットで逮捕よ!今月のママの高裁に
「ややこしくなるから帰ってくれアリア!あとヒルダは地面に潜っている!足元の影に注意しろ!」
暴走機関車に何言っても止まるわけないので
一応終わった後とはいえ会議後にイ・ウー以外の各地の大使?とやらと揉めればそれだけで問題が雪だるま式に膨れ上がってしまう。下手すれば中立気取りが全部敵対する可能性すらあるし、味方に勝手にされたとはいえ
確実に味方してくれそうなレキは兎も角星伽が敵に回る可能性は極力御免こうむりたい。
――が、俺の祈りは虚しく通じず
「――手下を連れてきたのねッ!キンジ!いるなら援護しなさい!」
アリアはいきなり、ばきゅばきゅばきゅ!と問答無用にマズルフラッシュを光らせ――壊れた風力発電器のプロペラが落下し、
「そいつ敵じゃねえよ!?」
明らかに過剰な銃火器装備しているから真っ先に無力化しないといけないという判断は正しい。相手が敵の場合は。
今回中立表明していたリバティーメイソンの大使は明らかに警戒し始めた。
うん。問答無用で中立攻撃するような奴とか明らかにヤバいからな。カナ姉はあらあらとおっとりしててわからんが少なくとも敵対とは取ってないらしい。
そこは良かったが。
「あはっ! あははっ! 来た! 来た!」
何が楽しいのかハビという少女は鉄塊斧を小刀のように軽々と振り上げ踊ってやがる。
「神罰代行!」
「アホだろメーヤ」
あっちはあっちでなんか白雪と被るメーヤと魔女っ娘がドンパチを開始している。
って――やべっ!
慌ててヒルダの方に視線を戻すといつの間にか剣だけ残して影は消えていた。
マズイ!見失った!
辺りを見回しても夜と霧の影響もあって謎の影は見当たらない。
「キンジ!ジャンヌもいるの!?どういう事!?」
「ジャンヌのアホに騙し討ち喰らってな。
「最初は霧でよく分かんなかったけど、どうもそうらしいわね……。パトラはあんたのお兄ちゃんと一緒みたいだし――ヒルダは、逃げたみたいだし」
「それはわからん」
アリアは眉を寄せて周囲の全員を威嚇するように、
いつの間にやらキツネはなぜかいなくなって――尻尾の生えた毬が落ちてるし、リバティーメイソンとやらも消えている。
メーヤと魔女っ娘はカナ姉に割り込まれて休戦したらしく今夜は引くようだ。
「るー!るー!るー!」
とスクール水着みたいな紺色のコスチュームを着た女の子が歩行戦車から這い出してこっちに苦情を言ってる模様。――あのバッジは米陸軍の大佐の階級章だな。え?この胡散臭い催しに米軍も絡んでるのかよ。しかも敵対認定されたっぽい……。
やばい。頭痛すぎる。
「なぜ来た、アリア……! 気をつけろ、ヒルダはまだいる。それも近くに!逃げるぞ!ヤツはイ・ウーから『
「なんでここでそんな重要そうな情報出すんだ!?お前後で全部吐かせるからな!?」
超常の核だかなんだかの研究は何処も欲しがってるなら一番ヤバい奴だろそれ!?
タンタンっと地面を踏みつけて
やっぱり見失ったのが最悪だ。情報不足なせいでどう動くのが正解か全くわからん。
ジャンヌはダイヤモンドのように輝く氷の結晶を空気中に舞わせる。漂う氷は次第に数を増やし、霞のようになって俺たちの姿を隠しつつある。
この氷の靄に隠れて、逃げるつもりなのだろう。
アリア自身の影の中から
まるで、プールの水面から上がってくるかのように――あの時のブラドと同じように瞳を金色に光らせたヒルダが半笑いで浮き出てくる!
「
「何語よそれ?まあいいわ――|Intai gandeste,apoi porneste Prilejul te face hot...《良く確かめてから来れば良かったのにねえ。まるで飛んで火にいる夏の虫・・・》」
おそらくルーマニア語で何か言うヒルダに振り返ろうとするアリアだが――既にヒルダが真っ赤なマニキュアをした右手でアリアの後ろ首を掴んでいる。
しまった。人質に取られた!?
――パァン!
頭上から銃声がするのと同時に
意識が逸れたのを見て握力を殺すようヒルダの腕に
「――っ!ただの
「痛そうだが?」
「生意気ねえ遠山。――でも愚かな男は後よ」
と、ヒルダは真っ赤な口を開いた。
その口には緋色の金属を被せた2本のキバがアリアの、白い首に――
がぶうっ......!
と、突き立った。
「~~~~~~ッ!」
痛みに赤紫色の目を見開いたアリアの顔のすぐ脇を
「嬉しい誤算だわ。私は
空き地島にキンキンするような高笑いが響く。
Fii Bucuros! Fii Fericit!
……なんかすごいまずい事になった気がする。
キンちゃん視点だと秒で敵が増えまくってる