遠山キンジの独白 作:緋色
「いつまで寝てんの。チコクするわよ」
「……あと3時間――と21時間」
「ずる休みしない!」
キンキンとしたアニメ声に嫌々起きる。
通学カバンを持ったセーラー服姿のアリアが、腰に手を当ててキッと俺を見下ろしていた。
アリアが勝手に侵入しているが――偶に朝早くに来て飯食って登校するんだよな。
別にいいけど気まぐれに来られると食材の有無により困る。一人なら最悪抜きでいいけど妹にひもじい思いさせるわけにもいかない。そして飯作って食べさせた後、自転車に乗せて登校がパターンだ。
白雪と朝被った時はバス通学に切り替えるが――そういやあんまり被った事ないな?避けてるんだろうか?
「昨晩はお楽しみだったようね」
「なんの話だよ」
「口紅ついてるわよ」
「寝る前に化粧は全部落とすから、んなわけねえだろ。リップとかもな」
「……あんた化粧すんの?」
あっぶねー。寝ぼけてたから普通に答えちまった。
クロメーテルには昨日なってないからバレねえはずだが、なんかぼろ出したか?
「あー、男だって化粧するぞ。傷跡隠すためとか人相変える時とか。平たい顔族に見えないようにするためとか」
「そういえば潜入よくやってたわねアンタ。――そうじゃなくて理子といたのね。楽しそうな寝顔してると思ったわ」
「楽しそうな寝顔する要素ねえよ」
「あたしはここの下で理子と擦れ違ってる。それにリビングに、同じお弁当を2つ食べた空のトレーがあった」
「……そういやいねえな。自由だなあいつ」
言われてから思い出したが昨日は理子を慰めながら寝落ちしたんだったか――いないって事は気恥ずかしくなって逃げたか?
それはそれで面倒なことになったな。――まあ準備は必要だし逆によかったかもしれんが。
「否定しないのね」
こめかみにD字の血管を浮き上がらせるアリア。
お前の身体どうなってんの?
「なんでキレてんの?ていうかお前こそ、ここに来ていいのか?ワトソンに言われてるんだろ?キンジの部屋には行くなって」
「べっ別に……あたしに、ワトソンの指示に従う義務はないわ」
「よぉーく従ってて、来なかったじゃねーか。最近。んで、来たって事はワトソン味方に出来そうなの?できないならできないで別にいいけど。面倒くさいから邪魔されたくはないし」
「いやそれは…結婚とかあるし、結婚しないのに味方してなんてとか都合良いのも…」
モニョモニョ言い訳しとるがほぼ初対面の要求に今までの俺に対する行動はお前にしか都合良い内容じゃないんだが、何で俺関係ない所だと常識持つんだよ。
甘えか?甘えてるならストレートに可愛く甘えろ。
一応ワトソンはアリアの味方するって公言してるんだから難易度はそこまで高くないはずだが――いやこいつに交渉出来るイメージないな。ロンドンでも手柄全部横取りされてたらしいし、要領悪いというか小細工下手というか。少しぐらいなんかの要求通そうとすらしないのは予想外過ぎる。
普段の唯我独尊っぷりはどこ行った。
「あんたはいいの?あたしとワトソンの婚約」
「お前の家の問題で俺はあくまで部外者だし。仮に気に食わなく思っていようとそれを決めるのはお前だろ。人を言い訳に使おうとするな」
普段から妹扱いしすぎたせいで俺が人の家の問題に口出す権利あると勘違いしたのだろうか?
アリアは家の事ほぼ言わん癖に何を口出ししろと言うのか。
相変わらずわけわからん。
「勝手に決められた婚約者ってだけなの。そんな話あたしにはまだ早いし――パートナーだって彼が勝手に『なろう』って言ってるだけ。だから、あんたが自棄になって理子に走ることは無くて……」
「俺から言わせればアリアと理子の立ち位置は同じなんだがな」
どっちも助けを求めてる被害者として。
アリアは緋弾だかのせいで呪われてるようなものだし、理子はブラドの虐待による
人を襲う動物を駆除する際に動物が可哀想だと考えていいのは全く無関係な人間だけであり、駆除する人間が可哀想だから討たないなんてのは許されないようなものである。
俺はどうにかして助けなきゃいけないポジションでもある。見捨てるのは寝覚めが悪いし、義見てせざるは勇なきなりだ。相手が望んでようが望んでなかろうが助けると決めたら助けるのだ。その際に被害者への感情も被害者からの感情も度外視するだけで。
「え――」
しかし、アリアはそれを聞いてなぜかショックを受けた様子である。
「何を驚いてるんだ?」
「あ、あたしはちゃんとしてるから!」
「そうか。俺の手伝いいらんのならワトソンの説得任せた」
「え。いや。違――」
「ちゃんとしてないって事?まあアリアに荷が重いのは事実か?」
「出来るわよそれぐらい!」
見てなさい!と肩を怒らせて出ていった。
……何しに来たんだあいつ?
『遠山侍君がお探しの吸血鬼は塔で会えそうですね。ラッキーアイテムは毒草、あとアンラッキーアイテムは雷ですね』
「別に頼んでないし。あと土御門。雷はアイテムじゃねえ」
昼休みに急に電話してきたと思ったらこれである。
というかどこから聞きつけたんだこいつは。
『雷のイメージが強すぎますけどイメージ的に塔は未完成って感じがしますね?』
「聞けよ。というかなんで知ってるんだ」
『?神崎氏がSSRに網を張らせていましたので。神崎氏に伝えた場合は素材が手に入らなさそうなので遠山侍君の方が伝えた方が融通利くかと』
「……アリアが勝つとは微塵も思ってないんだな」
一応あれでもSランクで上位の戦闘力持ってるという評価なのだが。
短気でゴリ押し傾向があると
『あっはっはっはっは!遠山侍君がメインであの指の持ち主倒したのなら、あの化け物の同族を討てるのは遠山侍君以外は無理ですよ。というかなんで遠山侍君は星伽巫女もいないのにアレに勝てたんですか?ホントに人間ですか?』
「純度100%の人間じゃボケ。勝てたのは神の加護というか妹の加護みたいなもんだ」
『なるほど。意味わからないので解剖させてください』
「断る」
『先っちょだけ!先っちょだけですから!』
「それ信用するやついねえだろ」
なんだその何一つ信用できない言い回し。
「あ、そうだ。魔術的に遠隔で物割ったりってできるのか?イヤリングとか」
『それ答えて何かメリットあります?』
「あー吸血鬼がそんな脅しをしてたような聞いてないような?」
『へー』
「……吸血鬼の素材いらないんだっけか?」
『いります!遠山侍君が言うものは予め術式を刻んでおいて任意で破壊するタイプのものですね。イヤリングくらいなら10kmぐらい離れてても念じれば破壊できるもの作れますよ。結構古い術式なのであまり破壊力はありませんからうまくやれば顔に傷がつくくらいですかね?耳は多少千切れるでしょうが。正直爆弾の方がお手軽ですね』
「なるほど」
理子がしていたあのイヤリングは中に液体が入っている。
そして材質として壊れやすく、壊れた際に肉に刺さるようにデザインされていた。
刺さった所で多少怪我する程度だが中に液体が入っているなら話は別だ。十中八九、中の液体は毒である。
『予知夢――占いの結果も含めて御礼は吸血鬼の五体フルセットでいいですよ。あ、ちゃんと実験できるように拘束しといてくださいね。五体フルセットなら小分けにしてもいいですよ』
「だから頼んでねえし。予知夢って寝てただけだろ。恩の押し売りにしても要求が尊大過ぎるわ」
『ではでは』
「聞けよ。ってもう切れてるし」
果てしなく疲れる相手である。
基本
いやあの時も変な気配がするとかで勝手に持って行ったんだっけか。
勝手な行動にしても読めなさ具合は理子といい勝負である。
「あーそうか。ブラドの時と似てるのか」
そう考えると昨日の理子の行動も説明できる。
ハイジャックの時もブラドの時も色仕掛けして都合よく動かそうとしてきたし、ヒルダを倒して欲しいって事だろう。
放課後にでも捕縛して毒取り除くか。
「……となるとあいつかぁ……」
無駄にあいつに借りを積み重ねるのは嫌なのだが仕方ない。理子に払わせるか。
キンちゃん'sメモ
相手が助けなければならないポジションにいると恋愛感情が消え義憤になる。
完全にそういうポジションじゃなくならないと論外認定
?「火事で取り残されてる人助ける時にそういう感情持つ方がおかしいだろ?そんな感じだから普通だろ」
敵対者の方が可能性ある
ワトソン
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エル
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リタ
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ワトソン