遠山キンジの独白 作:緋色
物語上はあまり変わりません
地面に寝かせるのも可哀想かと風呂敷を敷いてエル・ワトソンを寝かし、容体を確認する。
間宮は鷹捲―千の矢をすり抜け死を打ち込む技と聞く―と言っていたので死んでいるのかと確認してみているのだが――普通に生きているな。見た所気絶してるだけっぽい。
生きてるなら間宮をどうにかする理由はないな。公安に押し付ける羽目にならずによかったが。
適当に考えながらワトソンの脈をとり、気絶してるっぽいワトソンの瞼を開けての瞳を覗き込む。見たところ俺の
これなら2,3分ほどですぐに起きるだろう。
しかし振動技で服が弾けるにしても見たところ身体に溜まったモノが吹き出して服が弾けたように見える。
身に着けてたブレードが砕けて肉体が無事ってどういう事だ……?
「怪我は…ないな。服が弾け飛ぶなんてアホな事になるなら肉体の損傷もそれなりにありそうなもんだが…。今のが鷹捲か。聞いてた話と全然違うな。即死技だと聞いてたんだが……」
「よくわかりませんけど。技をイジったらやったらなんか服だけ弾けるようになったんですよ」
「間宮の術に武士に恥辱を与える卑劣な術があると聞いたことがあるがこれか」
桜ちゃんが名古屋の間宮に負けたと聞いた時に内容を頑なに教えてくれないわけである。
「いえ。鷹捲…ではあるけど…そうなんだけど…!?」
「何を葛藤してんだお前」
相手に恥辱を与えて相手組織のトップのカリスマを暴落させて仇討ちとか起こさせずに崩壊に導く技といった所だろう。下手に殺して死兵になられるより合理的な技といった所か。
流石忍者汚い。
「う……ここは……」
「起きたか。――一応聞くが着替え持ってるか?」
「……着替え?……――!?トオヤマ!?ボクに何を!?」
若干ぼんやりとしていたようだが自分がパンイチな事に気が付いたらしく、俺の上着を抱えて身体を隠すようにして距離を取ろうとする。
「見えそうだからあんま動かん方がいいぞ。それに万全じゃなさそうだしな」
「……くっ殺せ」
涙目で睨まれてもエロいだけなのだが。しびれでもあるのか動きに精彩が無いし……。すっかりベルセも萎えたな溜飲が下がったし。
「それはあっちのチビに言えよ。あー間宮ちょっと
「嫌です!いやらしいことするつもりでしょう!」
こいつ後で殴る。
「いやらしい事したのはお前だ。いくつか聞いたらこれの事に煮るなり焼くなり好きにしていいぞ。俺は別件というか本命もあるし。ワトソンもその方が都合がいいだろ。元から知ってる俺は兎も角間宮に知られたらアリアに迷惑しかならんしな」
「……そうだね。流れで戦う事になったけど君には聞かせられない話が多すぎる」
アリアの緋弾の件とか全く話してないみたいだしな。まああれ国家機密っぽいしなんか解決を義務付けられてるっぽい俺と違って間宮は知らん方がいいだろう。なんとか戦争は――アリア隔離の為に話してた方がいいか?
「……一つだけ聞かせてください」
「内容次第で答えよう」
「ワトソンが女子ならアリア先輩と結婚できないのに騙そうとしてたって事ですよね!?」
「それは…」
口ごもるワトソンに対して面倒なので口を挟む。
「イギリスはシビル・パートナーシップ(結婚と同様の事を一部認める制度)を導入してる国だから別に騙してねーだろ」
「なんですかそれ」
「結婚と同様の事を一部認める制度。あと英国じゃ同性婚はまだ審議中で2、3年後には成立する見通しらしいぞ?」
英国は同性婚出来る国だったよな?と一応ざっくり調べただけだがまだ法が成立しておらず逆にびっくりしたのを覚えている。
逆にこれあるなら騙してはないし、アリアも拒否してないようなのでエルを義妹扱いしてた理由でもある。
「――ッ!……兎も角!見張ってますからね変な事したら逮捕します!」
反論できなかったのかプンプンと離れて微妙に聞こえる位置に陣取ったので、落ちてた金属片を投げてもっと離れろアホと追い払う。
「トオヤマ。ボクは男としてふるまってたはずだが――女性ってわかって…いたのか?」
匂い。腰つき。歩き方。
といってもキモいだけか。どう答えるかねと思いつつも胡坐をかいて座り込む。
「…男なら大体喉仏が目立つからな。あとお前男の裸見ての反応完全に女子だったからな?隠す気あったのか?」
「誰にもバレたことなかったのに……」
いや、CVRの上位陣とかは普通に見抜いてたと思うが。逆に上位になると人の性癖に寛容になるから俺なんかが生きてる理由でもあるが。――女装は別に性癖じゃねえけども。
「……殺してくれ。後輩に負けるだけじゃなく男に裸を晒して……!?こんな恥辱は耐えられない。
「人に自分の殺し頼むなら自殺と変わらんだろ。あと俺は人殺しはしねえよ。殺さずに勝つ方がカッコいいだろ?」
「そうか。……いやその考えはわからないが負けた身だ。ボクの意見を押し通そうとするのは筋違いか」
別に俺が勝ったわけではないのだが。エルの中では間宮は俺の部下という扱いになっててそれ使った俺に負けたという認識らしい。面倒なので別に指摘はしないが。
「ボクは……貴族だ。負けたからには、今までのこと……仕返しはイーブンになるまで謹んで受ける。何をされても抵抗しない。好きにしろ」
ごしごしと手の甲で涙を拭ったエルは、キリッとした顔で俺を見下ろしてくる。
「イーブンだかオーブンだか知らんけど。そういう事男に言うもんじゃないぞ女の子なんだから」
そういうとなんかエルはなんかきゅん…とした感じになったぞ?なんか嫌な傾向だ話を逸らそう。
「そもそもなんでアリア狙ってたんだ?恋愛感情じゃなさそうだが」
「アリアをワトソン家に入れるためだ。男のボクと結婚すればアリアをワトソン家に入れられる。ボクは元々そのために――男子として育てられたのだ」
「
なんだその無茶苦茶な前提における賭けは。
「それは少し説明がいるな。
気高いというより自分らの地位を維持するための活動に思えるが――関係ないからツッコミはしないでおこう。
「だがワトソン家はその活動に於いて30年ほど前から凋落傾向にあった。過去の功績によりワトソン家の者は必ず上級幹部に取り立てられる。それほど買われている家なのに……だ。表社会で大成功していた分、逆にそこを蔑まれてさえいた。それで……」
「アリアを使おうとしたワケか」
そもそも有名なワトソンがそういう事で身を立てたのか?
とも思ったが元々軍医でシャーロックホームズの逸話でもバイタリティ溢れてた活躍自体はしてるからリバティー・メイソンの活動とほぼ同じか。
「ホームズ家はリバティー・メイソンに加盟してはいなかったが、その活動には共鳴していた。だから将来優秀な 探偵、或いは武偵に育つであろうアリアの誕生を知った先々代の当主がホームズ家と密約を結び……ちょうどその冬に生まれる予定だったボクの許嫁にしたんだ。生まれたボクが女子だった事は、ホームズ家には隠されていた。 結社の規則で養子は認められなかったから婚姻しか無かったんだ。ボクらワトソン家には……」
で、曾祖父の代は凄かったが息子と孫がボンクラで曾孫のエルが尻拭いをしてると。
笑えない話だな。
だがこの辺の話を聞くとどうもあの
あのカス野郎アリアが生まれることまで予知してワトソン家にアドバイスしたとか……。流石に考えすぎか。
「だが……トオヤマ。それは事態の裏面に過ぎない。アリアの身に迫る危険も本物なんだ。バスカービルのキミは『
「なんでだよ」
「アリアを守っていた殻金をいま保有している数も『
なるほど。
「エル。お前いい奴だな」
「何を!?」
家の為もあるだろうがアリアを助けたいのは純粋な心配でもあるようだ。
医者って奴はみんないい奴なのかね?エルは医者免許持ってるから人命救助に敏感なだけかもしれないが。
「言いたいことは何となくわかったが――『
何ならヒルダは殻金外してたし確実に揉めるだろう。
「そうかもしれないが味方という事で交渉しやすくはなるだろう」
「嫌だね。交渉も口喧嘩は苦手だし。悪党どもとつるむ気もねえよ。ぶん殴って取り返すだけだ。ま。だから俺に任せろよ」
ぽんぽんとエルの頭を撫でるとエルはまたきゅうん……と一段と女っぽくなった気がする。
なんでだ?
なんでこんなにエルに馴れ馴れしく優しくなってんだ俺…?
自己分析してみるとベルセはエルが間宮に負けて大分溜飲が下がった所で胸の膨らみと突起が見た事でノルマーレに移りエルがメソメソするから庇護欲が刺さったってところか?
「どうしても『
「ならない。というかその戦争に興味がない。が、取り返すためには参加しないといけないってわけだろ。周りも勝手に参加者扱いしてるし」
殻金の件がなければ絡む理由は0である。
「どんなに不利で危険でもか。キミがアジアの
「俺はシャーロックの顔面殴った男だぞ。今更なはなs――待てなんだそのランキング」
「な!?まさかシャーロックに勝ったのか!?」
なんだそのあり得ないことが起きたみたいな顔は。
「殴り飛ばして倒したけど――それよりなんなのそのランキング」
「そうか。イ・ウー解散は決まっていた事だから居合わせただけのトオヤマは取るに足りないと思っていたが――ボクが勝てるわけもなかったわけだ」
「あのボケ老人を高く評価しすぎじゃない?いやめっちゃ強かったけど。それよりランキングってなんだよ」
なんか話を聞いていないっぽいエルが覚悟を決めたように姿勢を正し
「トオヤマ。今までの無礼を詫びよう。そしてこれからはボクも協力する。せめてもの――償いとしてリバティー・メイソンへの『
「お、おう?それはいいけど」
で、結局ランキングってなんだよ?
「まだ話続きます?流石にアリア先輩が心配なんですけど」
話がいち段落したのを見て取ったのか間宮が戻ってきた。そういやアリアのこと忘れてたな。
「アリアはこの上だ。だが――」
そこで異変が起きた。
周りが一段と暗くなったのだ。唯一の光源であった非常灯の明かりが消えた……?
その代わり明るくなったのは――真上。
遥か上空、第二展望台のあたり!?
「――ッ!Watch out!High!」
直径2mぐらいの球状の光――いや雷だ!
「二人とも僕から離れろ!」
「危ない!」
立っていた間宮が盾になるように飛び出し、座ってたがゆえに反応が遅れた俺は飛び上がるように立ち上がろうとしたところをエルが俺を突き飛ばすように動いたせいで思いっきり体勢を崩し、やむをえずすぐに体勢を整えるために後ろへと転がるように倒れ
俺の視界が真っ白になった。
「「――!」」
悲鳴すら上げる間もなく球体の電撃が二人に当たり
虚空を劈く激しい
ヒルダめ!
何しやがるんだ!?
まあグダグダしたら狙い撃たれるよね