遠山キンジの独白 作:緋色
目が覚めたら知ってる病室だった。
何度か入院してせいで馴染の武偵病院の個室だろう。
起き上がろうとして気が付いた。
……腕が動かねえ。全身も痛いがそれは良くあることなのでどうでもいいが――全身包帯巻かれているのはどうでもよくない。
まるで重傷人じゃないか。
とりあえず腹減っているので点滴を口で引き抜き病室から出ることにする。
見た所、日が差すような時間のようなのでヒルダとの喧嘩からざっくり15時間は経過しているようだ。つまり最低でも二食は食い損ねている。腹が減るわけだ。
「あ」
「?あぁ、アリアか。財布ねえから飯代立て替えてくれない?腹減ってしゃーない」
扉を開けた所で見舞いに来たらしいアリアと鉢合わせた。
アリアがいるって事は理子らも無事かな?
「あんたはなんで動けるのよ」
「動けるからに決まってんだろ。飯食ったら回復のためにしばらく寝る」
「……。――今日は土曜だから食堂は開いてないわ」
「マジかよ。怪我より先に餓死しちまう。近所の店まで行くか」
「すぐに病院と話付けてあげるからあんたは寝てなさい!」
と、強引にベッドに戻らされた。
全身に軽度の火傷、内臓器官も軽度の火傷。
そして最も重症なのは腕の筋繊維が千切れて骨にもひびが入っているらしい。あと背骨にひびが入っているとか。
そりゃ腕が動かないわけだ。
「雷にうたれて運がいいのか表皮のⅡ度熱傷で済んでいるね。うまく外側だけ焼けたから死ぬには至らなかったようだけど。普通は心臓止まるんだけどね?とはいえ動ける状態じゃないんだけど……戦闘系Sランクは生命の神秘だね。腕の怪我は火事場の馬鹿力か何かかな?自爆っぽいから今後気を付けないと二度と腕が使えなくなるよ?」
「完治どれくらいかかります?明日までに治してください」
「無理だね。最低でも二週間は入院は絶対だから。病院で処置を定期的にしないとすぐに悪化するから絶対に 脱 走 しないように」
「……飯多めに出してください。はよ治したいんで」
「それはこちらが判断することだね」
そう言って医者は出て行き入れ替わるようにアリアとワトソンが顔を出した。見た感じいい感じのコンビに見えるな。
「理子はどうなった?――ついでにヒルダは?」
「理子は今病室で休んでるわ。キンジが呼んだ夾竹桃がすぐに解毒してくれたから検査終わったら昼にでも退院できるそうよ」
……あぁ、そういえばいたな。スカイツリーの下に夾竹桃がいたけど――間に合ったのか。よかった。
「ならいいが――ヒルダはどうなった?逃げたか?」
逃がしたんだったらすぐに追撃に動きたいが――現状戦力だと無理だろうなあ。
レキに
しかしそれは杞憂だったようで――
「ヒルダは君と――相打ちになりボクが
そう言って取り出した写真は包帯でミイラみたいになっている姿だった。あの時の怪我でそうなるとは思えないが。
――というかあいつ超回復能力あるはずなのにどうしてこんな感じに?
「なんだこれ?玉藻の結界で焼かれたのか?」
確か玉藻の結界は鬼が入ると死ぬとか言ってたはず――あれ?じゃあこの病院いるなら死ぬんじゃね?
「玉藻の結界はこの写真に写っている
魔臓の損傷も疑問が残るがもっと不可解な点が出て来た。
「理子が輸血した?」
「これには理由があってボクはここに着くと同時に、ヒルダの血液型を調べた。結果は、B型のクラシーズ・リバー型。人間では170万人に1人しかいない珍しいものだったよ。その血を保存しているのは世界中でシンガポールの血液センターだけで、取り寄せるのに2日はかかる。そして……ヒルダは、この昼を越せなかっただろう」
「話が見えてきた。理子の血液型がそれだったんだな?」
「Yes」
なるほど。理子の血液型と同じでレアなものだからブラドは理子を手放したがらなかったのか。
ヒルダは――そのことは知らなそうだったな。知ってたらもうちょっと賢く動くだろうし。
「『戦役』に参加して敗北したものは死ぬか……敵の配下になるのが暗黙のルールだがヒルダは従わないかもしれない」
「『戦役』?」
なんでそこで首をかしげるんだアリア――そういえば殻金抜けた影響か記憶全部抜けてたしなんとか戦役の説明も一切してなかったな。
「……妖怪は価値観古いから決闘したら配下にしやすいらしいぞ」
「なんか誤魔化そうとしてない?」
「俺も巻き込まれてるらしいがよく知らん。興味もない」
チームで別れてること以外マジでなんも知らんからな。あとは緋弾が標的になってることぐらいか。
「話を戻すと。ヒルダが治ればすぐに逃げるか復讐に動くかもしれないのでアリアとボクが交代で監視することになると思う。トオヤマはしばらく動けないだろうし」
「明日までに治す伝手ない?」
「無茶を言わないでくれ。ボクの見立ててはもっと悪くて君は1ヶ月入院だからね?」
入院自体は別にいいのだが。問題はバレると面倒くさそうなのがいるってのが問題なだけで。
「ヒルダを脱走させないためにプランを練るよ」とワトソンは去って行った。
残ったのは何か言いたげなアリアだけである。
「……」
「……」
――気まずい。
なんで何か言いたげに落ち込んでるんだこいつ。
「……用事無いならなんか食い物買ってきてくれないか?結局飯は昼になってからと断食続行で腹減ってるんだけど?」
「用事はあるんだけど……あるんだけど……」
「あたしは――あんたのパートナーに相応しいのかな……」
「ん?妹だろ?」
「真面目な話してるの!」
真面目に返してるんだけどな……。
「新幹線の時もあんたに怒られたし――今回は終始足手纏いだった。でもあんたは違う。ずっと駆け回って全員を助けるために動いてたし、あたしが電気で動けなくなっているときも最後まで一人立ち上がって戦っていた」
……新幹線で怒ったのは敵の前で喧嘩するというフレンドリーファイアの危機だったからだが、そして今回はなぜか恨みつらみとか無さそうだがクスリ盛ったワトソンが悪いだろ。あと電気は運がよかっただけだし。
「あんたは強い。あたしが知らないだけできっともっと強い。あたしじゃ手が届かないぐらいに」
……。
ああこれあれか。目の前で
目下の問題は一定戦力相手の時にアリアが逃げてくれない事が問題か。
自認がSランクエリートなのが仇となって
そもそも俺が協力プレイはそこまで得意じゃないんだよな……。
役割完全に分担できるなら丸投げって形ができるが同じ場で役割似ているとどうも難しい。
姐御は個々人でどうにかしろみたいなスタンスだし、まともに喧嘩できる一石とかならお互いの攻撃の巻き添え気にせずやれるから結果的に協力プレイになりがちだが。
バスカ―ビルだと俺が暴れて他がフォローに回る形が一番いいと思うんだが。アリアは納得しないんだろうな。だからこそ落ち込んでるんだろうし。
陽菜なら捕まらんように陽動や裏からの闇討ちするし足手纏いだと判断したら下がるし、桜ちゃんはそもそも戦闘で役に立たないと割り切ってるのかすぐに下がるし。
……戦妹らって優秀だったんだな。
それはさておき
「『ムリ』『疲れた』『面倒くさい』。自分の可能性を自ら潰す事になる良くない言葉。だったか?チームの一員として置いてかれてる気がするなら努力したらいいんじゃねえの?」
「それは……」
「あと勘違いしてる様だが
「え?」
「お前の目にどう映ったのか知らないがアレは溜めも大きいし隙も大きいから単独での運用は考えてない。本来なら味方が気を引いてる間にブラドに撃ちこむ想定の技だ。そして袋叩きにするための起点にするつもりだったんだ。俺は(偶然そうせざるをえないだけだが)協力することも考えてるぞ。だから――」
「強くなればいい、俺に置いていかれないくらい」
遠くから聞こえる喧騒とは逆に静かな部屋にその言葉が響く。
……なんだこの雰囲気。
軽く励ますだけのつもりだったのに真摯な願いみたいになっちまった。茶化して誤魔化すか。
「すぐに追いつくから」
「は?え?ちょっと?」
何かを決心した様子のアリアはそう言って部屋から出て行った。
……うん。次来た時にでも軽く連携訓練とかの話するかそうすりゃ誤解も溶けるだろ多分。
やることもないし寝る――「キンちゃん様!?怪我は大丈夫ですか!?」
「病院だから静かにしようね」
「あ、はい。キンちゃん様が入院したって聞いて居ても立っても居られなくて急いで戻ってきました」
いそいそと扉を閉めた白雪は改めて俺の全身を見て
「お労しやキンちゃん様。代われるものなら代わりたい」
「それは俺が泣きたくなるからやめれ。火傷の跡とかは残るだろうけど命に別状はないし。入院は長引きそうだが」
「キンちゃん様をお世話します」
「しなくてもいいよ。どうせ来週までの命だし」
「そんなに悪いの!?」
「いや来週『
「あ」
『
火傷の痕もあってクロメーテルの分も出れないだろうからネタバレして二重に殺されそう。
今のうちに姿消す算段でも考えとくべきか……。真面目に公安に就職するか……。
「ん?そういや白雪って治療術使えるんだっけ?治せたりする?」
「今は璃璃粒子も降ってないから治せます。キンちゃん様のキンちゃん様含めて治せなかったら命を絶ちます!」
「いや命は懸けないでくれ――あれ?なんで扉に鍵をかけるんだ?おいちょっと待てなぜ脱ぐ。ちょ、ま、――ああああああああああああああああ!?」
卵肌にされた
全身治りました
オカルト治療キャラは便利ですね
火傷痕って結構えぐいので白雪さんは真面目に治療しました
あとキンちゃんは治療に体力使うので餓死しかけてると思う